★ぞうさん先生の子どもクリニック★



『ぞうさん先生の子どもクリニック』

と題された、小児科医・鈴木洋 (すずきよう) 先生のコーナーが、 中日新聞 (毎週火曜)『生活2006』ページにあります。

小児科医としての病気に関しての記事のみならず、子どもの捉え方や親としての接し方などについても、とても分かりやすく先生の人柄の滲みでた暖かみのある文章で寄せられているので、毎週楽しみにしています。

読みっぱなしでは、記憶も薄れてしまうし一人でも多くの子育て中の方にご紹介出来れば・・・と思い、記載していきたいと思います。

鈴木先生の著書はコチラ→ ぞうさん先生の子育てトーク 中日新聞HPは→ ココです


『未来を診る』 =2006.1.17=

新年を迎え、今年もクリニックに来る子どもたちが、1年でどのように成長するか楽しみです。
開院して15年、赤ちゃんだった子が中学生になっています。
お母さんがどれだけ一生懸命に子育てし、病気の時どれだけ心配したか、
子どもに語るのもクリニックの役割です。
小学生の時受診した子がお母さんになり、赤ちゃんを抱いて来院すると おじいちゃんの楽しみが少しわかる気がします。

クリニックは、風邪などの急性疾患の子どもが多く、毎日が真剣勝負です。
一週間が経ち病気も落ち着くとほっとしますが、一ヶ月過ぎるとまた風で来院します。
一年間風邪を何度か診ていると、いろんなところで子どもの変化を感じるのです。
子どもだけでなく、お母さんも新米ママからベテランママへと変身していくのです。

子どもは一年で目に見える変化を遂げます。10年経てばさらに大きな流れが分かります。
甘えん坊だった子どもがお母さんより背が高く大人っぽくなっているのです。
過去を共有するお母さんと思わずにっこり。
まだ子どもっぽいところはありますが、また10年後が楽しみです。

多くの子ども達の過去を知っていることは、これから出会う新しい赤ちゃんの
未来が少しは見えるのです。病気は先が見えないので不安と心配が伴いますが
少しわかると安心するものです。

大きい、小さい、早い、遅いなどの成長発達も同じです。
多くのお母さんは個人差の中で悩んでいるようです。個人差がわかるまでには時間が必要です。
新しい一年、新しく出会う子どもたちの今と未来を見るのことは小児科医として楽しみです。
成長するのは子どもたちだけではありません。
ぞうさん先生も新しい発見をしながら少しずつ成長しています。
今年もよろしく。                        こどもとともに大人も成長




『卒乳』 =2006.1.24=

先日、1歳を過ぎた子どものお母さんから「卒乳したら子どもがいろんな場面で抵抗し困っている」と言われました。
卒乳とは母乳をやめることで断乳とも言います。
断乳はお母さんが一方的に決意を込めてやめる感じがします。
一方、卒乳はある程度、子どもも納得して緩やかにやめる意味合いを感じます。

僕が小児科医になった30年前は、「10ヶ月になったらそろそろ断乳を始め、1歳までにはやめましょう。」と
言われていましたので、うまく断乳できない母親は悩み苦しんだのです。
医師や保健婦から「まだおっぱいあげているの」といわれてうつむき加減になり、
1歳半の健診でおっぱいを与えていれば、お母さんから「すみません」と言っていたのです。

1歳を過ぎた子どもには母乳だけでは栄養がカバーできません。
栄養というよりも、子どもの精神安定という役割に変わっていきます。
夜泣きのひどい子どもはおっぱいを吸わせるとうまく寝ます。
そのような子どもは母乳から離れられません。

しかし、昔から夜泣き対策の一つとして強力な断乳がありました。
一週間お母さんが鬼になると夜泣きがぴったりと止まるのです。
ところがすべての子どもがうまくいくわけではなく、現在は夜泣き対策としての断乳はあまりしていないようです。

北欧の国の育児書には2歳までは母乳を飲むように書かれています。
科学的というより文化的な要素があるようです。
断乳という言葉も数年前から母子健康手帳から消え、母乳を与えているかいないかに変わりました。
お母さんに心配させないようになってきたのです。
その結果、断乳から卒乳という言葉が多く使われています。
ただ、2歳過ぎると虫歯や歯並びの問題も出てくるので、そろそろ卒乳していただきたいと思います。 一方的な断乳より緩やかに




『おチンチンのはなし』 =2006.1.31=

赤ちゃんのおチンチンはとてもかわいいようで
大人たちは自然に触ってしまうようです。
そんなおチンチン、ときにお母さんを悩ますようです。
皮(包皮)に包まれたおチンチンはホコリ(恥垢)がたまりやすいので
健診ではきちんと皮をむいて洗うよう指導されるからです。

しかし、実際にやってみると非常に難しい。
無理に包皮の先端を広げると非常に薄いため裂けて傷が出来るのです。
傷ついた後におしっこをすると、しみて赤ちゃんは不機嫌になるようです。

だからお母さんは苦手なようで、頼りのお父さんといえば
「そんなこと覚えてない」と冷たい答えが返ってきます。

赤ちゃんのおチンチンの先端(亀頭)はふつう包皮状態で、
包皮の内面と亀頭の表面は癒着しています。
これを生理的包茎といいます。
新生児では亀頭が包皮に覆われていないのは、わずか4%といわれ、
成長とともに癒着はなくなり、包皮はただ亀頭を覆っている状態になります。
包皮を根っこに押しやると亀頭が見える状態を仮性包茎いい、
包皮を反転できない状態を真性包茎といいます。

幼児期は50%、小学生になると70%が仮性包茎になるといわれています。
大人の真性包茎は手術しますが、幼児期の真性包茎は待ちながら様子をみます。
しかし、ホコリがたまってバイキンがついて亀頭包皮炎を繰り返したり
おしっこをする時に出口が狭いため風船状になるときには
早く手術することをお勧めします。 そうならないためにも、優しく慎重に包皮の先端を広げる翻転訓練を勧めるのです。

子どもが成長してから子ども自身で解決したり、結果そうなる場合も多いでしょう。
おチンチンの皮をむく場合には、ゆっくり優しく無理せず少しずつ先端を 広げるようにしてください。




『新型インフルエンザ』 =2006.2.??=

現在インフルエンザのピークです。
ぼくのクリニックでは、先月30日から今月5日の間に訪れたインフルエンザ患者は78人でした。
厚生労働省の感染症サーベイランスでは、一医療施設施設の患者数が一週間で30人を超えると警報が出ます。
その後も10人以上発生している時、流行が続いているしてういます。
クリニックでは第3週21人、第4週32人と広がってきています。
昨年度のピークは2月中旬(第7週)の81人で、10人以下になったのは3月下旬でした。
今年も今後1ヶ月は流行すると思われます。
昨年の主流はB型でしたが、今年はA香港型です。
これらは従来のインフルエンザです。
今話題の鳥インフルエンザはH5N1といい、1997年人の患者が報告されました。
それ以降、これまで確定された患者数は7カ国165人となり、88人が死亡しています。

今のところ鳥から人への感染でとどまっていますが、突然変異すると
人から人への感染が危惧されます。
この新型インフルエンザはまだ出現していませんが、人類にとって未知なので、
ほとんどの人が免疫を持っておらず、大混乱に陥る可能性があります。

従来型は上気道の感染症です。
免疫力の低い高齢者、乳幼児は肺炎など細菌の二次感染で生命の危険もありますが、
殆んどが辛い症状が少し長引いた後、良くなります。
しかし、鳥インフルエンザは全身感染症と言われ、死亡者の多くは肺炎や多機能不全になっています。
現在、世界中の専門家がその対策に取り組んでいます。
人類は多くの危機に対し、英知、協力、信頼で乗り越えてきました。
人を信じる事こそ第一の対策といえましょう。  


© Rakuten Group, Inc.
X

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: