2013.05.02
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カテゴリ: 絵本
先月下旬に金沢で行われた「怪談えほん」のトークイベントについて書いてみたいと思います。

会場は金沢市の21世紀美術館近くにある石川近代文学館で行われました。
昔の四校を使用した施設で古めかしく、2階への階段や廊下もちょっと不気味で
今回のイベントにぴったりだなと思いました。

朗読と対談の二部構成で、読み聞かせがあったので、
子どもも聞きにきているのかな~と思ったけど、いませんでした。
私も長女を誘ったけど、この絵本の怖さを知っているからか来ませんでした。

部屋の明かりが消え、プロジェクターで絵本を拡大しながら
元フリーアナウンサーによる朗読が行われました。
年配のベテランといった女性でした。

この絵本をどんな風に読んで怖がらせてくれるのだろう?と興味津津でした。

出迎えの拍手もないまま、しずかに現れ、、
いきなりタイトルから、、
いるの いないの」

と大声でびっくりしました。
そのあとは、淡々と読みすすまれて、期待するような演出はありませんでした。。。

読み終えた後、アナウンサーの方がにこっと笑って、
こちらにお礼をしてくれたのを見て、なんだかホッとしました(笑)。

次に明かりもついて、お三方によるトークイベントが始まりました。

私は何度か絵本作家さんの講演会を聞いたことがあるのですが、
絵本作家さんではない方のお話を聞くのはあまりなくて、
とても興味津津でした。

東さんは内田百けん物語などを手掛けられている、
そういった恐怖の読み物の専門の方のようです。
しゃべり慣れていて業界人といった感じの男性でした。

堀内さんは出版社の編集者で、頭のいい担当者って感じの背の高い男性でした。

町田さんは「いるのいないの」の絵を描かれた画家さんで、
痩せてて、都会的で物静かな感じの女性でした。わたしよりは年上?

まず東さんが怪談好きな子どもを増やしたいというような想いで
この絵本を企画されたようです。

そして堀さんが、どんな方に絵本を書いてもらおうかと考えて
大御所を含め何人かの作家さんをピックアップしてあたってみたら、
声かけた全員が引き受けてくださったそうです。

普段は小説を書いている方達ばかりなのですが、
みんな絵本について興味があったそうです。

京極夏彦さんのご自宅の書庫にも絵本が沢山あったそうです。

まず文章が最初にあって、あがった原稿をみて、
10~20人の画家さんの中から絵の担当を決めたそうです。

作家さんに、どの画家さんに描いてもらうかを選んでもらったそうです。

どうして京極さんの作品を町田さんが描くことになったかとういのは、、、

最初は京極さんは丸木さんを好きとおっしゃってたのですが、
当時出版社に売り込みをしていた町田さんの絵のファイルを見せたら
「町田さんがいい」と決まったそうです。

町田さんは電話で依頼を受けた時、
普段なら「私以外の人の方がいいんじゃないんですか?」
と謙虚に受けて断ってしまっていたが、
今回はためらいもない「やります」と答えたそうです。

京極さんの原稿を読んで「おもしろい」と思ったそうです。

担当の堀内さんがわざと難しい内容をもってきたと冗談で言ってました。

その当時、仕事に困っていて、
できないと断ったらもう仕事が来ないと思って断らなかったそうです。

でも自分が今まで描いている作品と重なりがなかったそうです。
京極さんの小説も読んだことがなかったそうです。

原稿は文章が短く、文章通りに描くと同じ場面になってしまうそうです。

15画面をどう構成するか試行錯誤したそうです。

堀内さんが町田さんに「絵本やりたいんですか?」と聞いたら
以前、絵本を1冊作った時があったが、ひどかったそうです。

15画面の中では、描きたくない絵がでてきてしまうそうです。
町田さん的には、すごく絵本をやりたいという風ではなさそうです。

絵本の絵を描きたくないというのは
説明的な絵 を描きたくないからだそう。

文に書いてあることを、わざわざ描きたくなかったそう。
文には描いてない部分を描きたかったそうです。

前作では、そのズレを感じていたそう。

でも今回は最初から「文章通りに描きたくない」と伝えていたから
「いいじゃん」と開き直れて、そこから絵を描くのが楽になって入って行ったそう。

堀内さんは町田さんに「どういう絵を描きたいのか」を聞いたりしたら
京極さんの文のイメージや雰囲気をいかに伝えるか、
文章に書いてないことを、いかに絵で伝えるかを話してくれたそうです。

京極さんはすでに絵本というものを深く追求されていて
絵本の文章というものを的確に理解なさっていたそうです。

他の作家さんだと文章を書き込みすぎる場合があるのですが、
京極さんの場合は「絵にゆだねる」バランスのとれた文章がすでに完成されていたそうです。

絵本の本質というか、構造を読み解く力がすばらしく
「絵本を書く」ということに巧みさに東さんや堀内さんは感服されたそうです。

東さんいわく、京極さんは絵本を書くのに向いているそうです。
ちなみに小説では800字を3分でかける速さだそうです。

町田さんは、今回の仕事で沢山の資料を参考にしたそうなのですが、
いつもそうなのか?という質問では、絵本の仕事数が少ないので分からないそうです。

原稿にある「梁のある家」が分からず、
実際にモデルになる家へ調べに行ったそうです。

資料の写真を「見て描く」じゃなくて、「知りたかった」そうです。
「知っている」と自分でアレンジができて、
どこを強調すればいいのかが分かったので「知りたかった」そうです。

京極さんと町田さんの制作上の直接のやりとりはわずかで、
ラストシーンと少年が寝ているシーンのみの注文だったそうです。
他は京極さんのイメージ通りだったので、そのままだったそうです。

堀内さんがラストシーンに登場する「いるいなおじさん」のラフ画のコピーを見せてくださって、最初は足を投げ出して腰かけていたそうです。

町田さんいわく最初から「自分も顔だけのイメージ」があったけど、
なぜか遠慮したそうです。

ラフ画には、おじさんのとなりに猫が描かれていて、
それはおじさんのお友達だそうです(笑)。

原作にはなかったが、町田さんが独自に猫を登場させたそうです。
おばあさんのうちが猫屋敷だと解釈したとたん、
絵を描き進めるのが数倍楽しくなったそうです。

町田さんは白木という猫を飼っていて、猫好きで、
偶然、京極さんも2匹の猫を飼っているそうです。
でもそれは制作後、知ったそうです。

登場する猫のモデルは町田さんの知り合いの猫や
編集者の榊さんの飼い猫のジャッキーちゃんとかだそうです。

あと、お話の途中で、少年のアップの顔の絵は描きなおしたそうです。
最初は少年の足まで描かれていて、戸口の外には風景が見えた引き気味の絵だったそうです。

それは堀内さんが、子どもたちが絵本のような短いものでも飽きたりするので
話の最後までに1個、緊張感があるといいなと思い、
ドキッと引っ掛かりをもたせたシーンが欲しいと思い
よりその意味合いが強く伝わる構図に変更したそうです。

実際、発売後の感想では、おじさんより男の子の方が怖いというものがあったとか。

あと話の最後らへんに、おばあさんの不気味さをもう1回念押ししたいということで
おばあさんを登場するように絵を描き足したそうです。

下絵のアイディアで、少年が寝ている部屋の開いたふすまから
おばあさんがのぞいているというのは辞めたそうです。
結局、おばあさんの顔を1回も見てなかったな~と最後に気が付けば、しめたもの。

編集上は、出来上がってから絵描きさんが「描きなおしたい」と言いだすことはあるが
編集者から言うのはご法度なので、ないそうです。

「いるのいないの」は2010年の秋に企画ができて、
2011年初めに原稿があがったそうです。
予想よりも早くあがったとか。

特に「悪い本」と「まいまいとないない」の2冊は早かったそうです。
宮部さんが早かったので、それに影響受けた京極さんが「じゃあ、やらなきゃ」とがんばったそうです。

堀内さん的に、この怪談絵本シリーズは
子ども向けだけど、手加減をしないで作りたかったそうです。

東さんは、うめずかずおさんの漫画や本当にこわい小説の体験があり、
トラウマ絵本というものは決してネガティブだけなことじゃなくて、
子どもの創造性がそれによってかきたてられるのだとか。

発売後の読者の反発は特になかったそう。

一度は読んでみたくなる、子どもの好奇心の扉を開くような作品にしたかったそう。

依頼した作家さんの「怖がらせる」ということに対して低レベルじゃなくて
「本当に怖いってなんだろう?」と突きつめて出来たとか。
この作業によって、本質のエッセンというか、
作家の心の奥底の「秘密」に触れることができるそうです。

町田さんに「怖がらせようと思ったんですか?」という質問に、
文のまま描いていたら、普通の田舎の風景のある絵になってしまっていったので
これでいいのかと堀内さんに確認したそうです。

あと、おばあさんが覗いたりと、やりすぎないように注意したそうです。
怖がらせるために床の線を直線じゃなく、ゆがんだ線にしたほうが
気持ち悪くて異世界になるからいいんじゃないかとも思ったけど、
そこまでやるとやりすぎになってしまうので
分からないぐらいの感じに 押さえたそうです。

それに対して東さんが冗談っぽく「町田さんの絵は基本的に気持ち悪い絵だよね。
不気味でグルービーというか。」と言うと、
町田さんが反論して「私の絵をかわいいという人もいます」と言って、会場が受けてました(笑)
絵は見る人の心の状態を反映するのだとか(笑)。

町田さんが子どものころ、暗いところに「誰かいる?」と母に聞くと
最初はやさしく「いないわよ」と答えてくれるけど、
何度も何度もしつこく聞くと、怒られてしまった体験があって
怖さについて我慢してしまったそうです。
でも「いるのいないの」に登場するおばあさんは、
少年の気持ちに「いるね」と言ってくれて、やさしいなと思ったそうです。
そういう気持ちを分かってくれる人がいるというのがうれしくて、
町田さんは描いたそうです。

それに対して東さんは「見なければいない」という
不思議なものとの接し方、異界との接し方はアミニズム的なものがあり、
アイルランドにいるという妖精と人間とのかかわりにも通じるとか。

絵本では「こわいもの」と「おばあちゃん」は普通に暮らしているし、
「男の子」も、この後も暮していく訳で。

あと堀内さんが「最後のページは文章だけでも怖くて、
逆に絵をつけると半減してしまうことがあるが、
今回は町田さんのビジュアルが上をいっていた」ので、
とてもうれしくなって、2重の喜びを感じたそうです。

、、、などのとても興味深い制作の裏話トークで盛り上がりました。

会場には猫の顔のついた帽子をかぶった方や、おばあさんのかっぽうぎを着たかた、
そして絵本に登場する少年の衣装を身にまとった本物の少年などの
学芸員さんによりコスプレなどもあり、面白かったです。

トークの後は、文学館に展示の怪談絵本シリーズの原画を見ながら、
町田さんらお三方によるギャッラリートークがありました。

「いるのいないの」がモエという絵本雑誌の賞を取ったということで、
祝賀会用に町田さんが記念品にと、チロルチョコに猫の絵を描き下ろした原画もありました。

原画の下には下絵が展示してあり、制作の様子がとてもよく分かりました。

展示の最後には「いるのいないの」を再現した通路があり、
2次元でなく、3次元として楽しめて、お化け屋敷を通るみたいで面白かったです。

この怪談シリーズは、第二段の発売も控えているそうで、
今度はどんな怖さを見せてくれるのか、楽しみです。







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Last updated  2013.05.06 23:54:54
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