雲のように水のように。

雲のように水のように。

『僕が選ぶ世界』の話。他5話



そして、彼は路上の真ん中で喜びに叫び舞い踊る。

周りを行く人々はそんな彼を冷ややかな目で眺め遠巻きに通り過ぎる。

それでも彼は気にも留めない、彼は自分が迷いから救われる導を見つけたのだから。

光を掴んだ者に周りのしがらみなど関係ない、ただあるのはありのままの世界だけ。

彼の心に不安や選択肢なんて見当たらない、彼の道には迷いや霞があふれている。

彼が見つけたのは答えなんかじゃないのだから。これから彼は知っていく。

道の先にたどり着いた時、何が答えだったのか・・・



『心のうた』の話。

見渡す限り一面ゆらゆらと揺れる水面しか見えない

先を示す印もなく、どこへ往けるあてもない

のどは嗄れ果てて動く気力も削がれてしまった

そんな時に僕が思う、たった一つの想い

「うたを歌いたい。心の底から思いっきりただ、詩を歌いたい」

自分という全てをここに、自分に示したい

これからどこへ往こうともあふれる気持ちだけは涸らしたくないから

だから、うたを歌い続ける。世界の果てまで届く事を思って。



『ことば』の話。

私は気づいてしまう、いや思い出しただけ

言葉とは口に出した時に初めて誰かに伝わる

紙の上に綴ったときに初めて物語が生まれる

心の中で繰り返した時に始めて自分に語りかける事ができた

とても伝わりにくくそして聞こえにくい

そんな言葉を私は書き記すんだ。



『時を知るもの』の話。

街を行く者達がよく見える。

彼らは毎日あちこちへと行ったり来たり、おそらく自分の前しか見えていない。

私はここで風を感じている。優しく降り注ぐ光と共に。

何かあるたび一喜一憂している彼ら。時に何もしない者もいる。

私は喜ぶ事もできはしないが、何もしていないようで生きている。

彼らは常に進み続ける。だけど何年経っても変わらない。

私はずっと変わらない。だけど常に変わっていく。

・・・何十年かして街はいつしか廃墟になった。
街の真ん中に大きな樹が一本、静かに街を見下ろしているだけ。



『意味のいらない話』

「・・・いつまで、そこにそうしているんだ?」

座ったまま、顔を上げると青年がこちらを見下ろしている。

逆光で顔はよく見えない。

「・・・・・」

僕は、ただぼんやり眺めているだけだった。

やがてその青年は去って行く・・・

幾日かが経ったある日、手を引かれた。

「一緒に行こうよ」

その子は、笑っている。

「・・・・・」

手を引かれるまま立ち上がった僕は、一歩踏み出す前にその場に倒れてしまう。

何日か過ぎた頃、一人倒れている姿だけが残った。

「立ち止まった者はそこで終わりだ。もうその先はない」

そんな言葉を残して、老人は行ってしまった。

そして、いく年が経った頃その場に僕はいなくなっていた。

その理由を僕は知らない。。。



『僕が選ぶ世界』の話。

 考えを他人にゆだね

 恋を運命にゆだね

 未来を時間にゆだね

 生きる事を世界にゆだねていた。

 何かに任せっきりの僕は

 やがて時間と運命、他人と世界に置いていかれるだろう

 そして、未来を、恋を、考えを、生きる事を失ってしまう。

 「そんなのはイヤダ!!」

 僕の中で誰かが叫んだ

 自分の全てを否定するために

 自分の道を創り出したいと思ったから

 ・・・僕は今歩いている、僕は今を歩いている。


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