雲のように水のように。

雲のように水のように。

『彼の友達』の話。他3話



ある世界のある場所に、今まで戦争などした事のない国があった。
しかし、近年の世界情勢を理由にその国は「危険防止」と銘打って軍備を整え始めたのだった。
そうなって来るともう話は早いもので、法律から財政、同盟国との連携まで次々に戦争の準備が整えられていった。

ある日、その国の国防大臣はこんな噂を耳にした。
「この国には偉大な天才軍師がいるらしい、今は山の奥で隠居暮らしをしているそうだ」
それを知った大臣は、早速その天才軍師とやらを自分の軍隊へ取り込もうと調査隊を国中へ放った。。。大臣はとても行動力がある人なのだ。

やがて、優秀で仕事熱心な調査隊は一月もしないうちに件の「天才軍師」を探し出してきた。
と、言うよりも軍師は噂ほど隠れてはいなかったらしい。
さて場所さえ分かればと、大臣はその日のうちに使者を出していた。当然のように使者には沢山の金品を持たせて、莫大な財産とかなりの権力を与える旨が書かれた書状を持たせていた。
大臣には、「これだけの餌を目の前でちらつかせて食いつかない馬鹿はいない」という自信があった。彼には生い立ちや職業柄から多くの経験があったからだ。

しかし、なんとそんな大臣の思惑など何処吹く風とばかりに、使者達は追い返されてきたのだった。
少し驚いた大臣だったが、これぐらいの事はよくある事と、次々に使者を出していく。そのつど、条件を微妙に変化させる事も怠らない。
だが不思議な事に、噂では貧乏暮らしの軍師は一向にこちらの条件に応じる事は無く、むしろ使者達が説法を受けて舞い戻ってくるほどだった。
遂に痺れを切らした大臣は役に立たない部下に任せる事をやめて、自ら軍師の所へ出向く事にした。

出向いてみるとそこは小さいのどかな村だった。
小さい頃から都会育ちの大臣からすれば、懐かしさなど微塵も無いのだが、それでもどこか不思議な気持ちのする場所だった。
そんな村の外れ、少し山に入った所にその家はあった。
古めかしく小ぢんまりとした家なのだが、隅々まで手入れが行き届いて、そして静かだった。
「ふん、こんな汚い家に住んでいる奴が本物なのか?」
無駄に大きく、無駄に豪華で、無駄に清潔な建物こそが「立派」だという考え方を持つ大臣は、小声で文句を言いつつドアをノックした。

「はい、どちら様でしょう?」
中から出てきたのは、中背で少しやせ気味だが決して不健康ではない。何よりその顔立ちから、特に目からは何かしらの才気を感じる男だった。
「どうも、はじめまして。私はこの国で国防大臣という任に付かせて頂いている者でございます。じつは本日は先生に折り入ってお願いしたい事がございまして」
さっきの態度は何処へやら、かなりの低姿勢で年季の入った愛想笑いを浮かべ、勝手に軍師の事を「先生」と呼び、そして話は長かった。。。しかし、これが彼の仕事だったので仕方なくもあった。

家へと入った後、わざと本題へは入らず他愛の無い雑談をしていた。まあ、その内容は殆ど自慢話の部類に入るのだが。
それでも、軍師の男は嫌な顔一つせずに茶を飲み、時折相槌を打っていた。
「ところで先生。先生は生まれも育ちもこの国だそうですが先生ほどのお人なら、さぞ大勢の著名なご友人方が居られるのでしょうなぁ、いやぁ羨ましい限りです」
「ええまあ、特に有名ではないですが友人、と言うより私にとっては家族がこの国にはいっぱい住んでますよ」
珍しく饒舌になった軍師の様子に、すかさず大臣が本題を切り出した。
「そうでしょう!いやあ、さすが先生は良い事を言う!家族ですよ。この国に住む人は皆家族です!!当然私もその気持ちでいっぱいです!・・・どうでしょう先生、この大勢の家族を守るために我が部隊の指揮を執って頂けないでしょうか?もちろん良い条件を出させていただきます!」
軍師の笑顔は変わらなかったが僅かに眼光が鋭く光った気がした。

「しかし、いったいどちら様と戦おうというのですか?」
「おお!はい、実は我が同盟国が隣国の○○と近々開戦しそうでして、わが国も参戦しようかと」
思いっきり勘違いした大臣は嬉しそうに、報告を始めた。
「ああ、その国には私の友人(家族)が大勢いますね。これは助けてあげなくては」
「ええ?いや、しかしそれでは我が国が困ります!こちらの方が大事でしょう?」
「私にとってはどちらも大切な友人ですよ。こちらもあちらも、ありません」
軍師の言葉は静かだが大臣を黙らせるには十分な威圧感があった。
「で、では同盟国の要請のある、こちらの敵対勢力武力制圧の作戦は・・・」
「おお、懐かしい、その国にも大勢友人がいますよ。そうですか、ではその戦争を停めなくてはいけませんね」
段々と大臣の顔色が変わっていくのを軍師は当然知っていたが、かまわず続けていく。
「この国にも大勢友人がいるんですよ、ああ、この油田がある地域にも友達が」
・・・・・ッダン!!!
応接机を両手で叩きつけると同時に、勢いよく大臣が立ち上がる。
「あんた!ふざけるなよ!!ならいったい、一体誰となら戦えるって言うんだ!」
相変わらず涼しい顔で大臣の言い分を聞いた後、ゆっくりと考えるそぶりを見せてから、軍師が大きく頷いた。
「う~ん、そうですねぇ・・・ああ!この国の政治家には友達がいませんね。戦えますよ」
「・・・・・」
大臣はただ立ち尽くして、口をパクパク動かしているだけだった。

言葉だけ聴けば冗談にしか聞こえなかっただろうが、目の前の「天才軍師」の笑顔には冗談のカケラも無い真剣さと、何より確実に勝てるという絶対的な自信が溢れていた。

fin.

「世界は、家族でできている・・・みんながどんどん旅をして、友達が増えていけば、きっと、戦争も減っていく。だって、友達と殺し合おうとは想わないでしょ?・・・Go on a Trip for Peace!」・・・自由人・高橋歩さんの言葉より。。。



『終わらない劇』

人は劇的な不幸を恐れて

劇的な幸せなんかないと知っている

だけど、だからこそ劇的な人生(お話)に憧れるんだろう

でも劇中の人は劇に気付かない

それはそうゆうお話(人生)だから

気が付けばその一つ一つがとても楽しいと知るだろう

終わらないお話(世界)の中の

限りないお話たち(人々)



『とっても大切なダメな自分』

私は昔から『ダメな人間』だ。

いつも、何をやってもダメダメだった。

そもそも自分の事を「ダメな奴」と考えている時点でダメの深みに嵌っている。

そんなダメな自分は今も昔も変わらない、私はいつだって「ダメな人間」なんだろう。

「でもね、そんなダメな自分ってとっても大事なものなんだ」

「いつでも、何をしても自分はダメだと知っている自分は、少しの成功で大喜びする」

「皆にとっては当たり前の事、でも自分にとっては難しいこと」

「同じ成功でも嬉しさが違う。出来ない自分だからとっても嬉しい!」

いつもダメな人間だと思っている私は、出来ない自分をよく知っている。

「いっつもダメな人間の自分は、出来た時の嬉しさを忘れない!」

世界はとっても難しい。「だから世界はとても楽しい」

出来ない私が出来る自分へ、そうして成長していくのだろう。



『国々の四季』

大きな大きな空の下

広い広い台地

そんな世界を旅する人がいました。

ある冬の日。寒さに震えながら歩いていた旅人は、ある国に着きました
その国は、技術が発達していて、人々は冬でも暖かく暮らせています
旅人は、その国に滞在して人に国の様子を聞きました
尋ねられた人は嬉しそうに、そして少し自慢げに
「この国は元々、鬱蒼とした山々でたいへん住みにくかったのです。しかし、技術が発達して山や森を開拓し、地面を舗装してビルを建て、やがてこのように安心して快適に暮らすことが出来る土地へとなったのですよ。もちろん今でも開拓は続いています」
と語りました。

ある夏の日。天高く伸びた入道雲を眺めながら歩いていた旅人は、ある国に着きました
その国は、草木が青々と茂り、時折吹く透き通った風は心地よく
生命力が湧き溢れているようでした
旅人は、その国に滞在して人にこの国の様子を聞きました
尋ねられた人は元気よく、そしてどこか自慢げに
「この国は元々、ビルなんかの建物が建ち並んでいたんだ。だけどある日、大きな地震があって全て崩れ去ってしまった。それから人々は自然の姿を取り戻したくなった。やがて自然の恩恵と私たちの努力で命が芽吹き、幾百年してここまでの大地へと育ったんだ」
と語りました。

ある秋の日。木枯らしの吹き抜ける道を歩いていた旅人は『発達した国』を見つけた
その国ではあらゆる技術が発達していて、人々は外に出なくても快適に過ごせている様だった
そのため外を出歩く人は一人もおらず、静まった国に建ち並ぶビルは墓標のように見える
国の中には雑草も見当たらず、そして国の周辺も工場などの影響で緑は存在しなかった
空すらも狭く遠く感じるこの国で、生命の気配を感じる事なく、背を向けて旅人は去っていった。

ある春の日。柔らかく降り注ぐ日差しを浴びながら歩いていた旅人は『滅んだ国』を見つけた
その元国は中々立派な建物が並んでいた様だが、今では殆どが森に飲まれていた
半分壊れた建物やひび割れた道などを突き抜けて草木が生い茂り
屋根も壁半分も無くなったドームの中では、多彩な色の草花が鮮やかに咲き誇っている
・・・そして、鳥たちの歌声を聴きながら、旅人は昼寝をすることにした。


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