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2023年12月27日のブログ記事で、「兵庫県特別支援教育第四次推進計画」へのパブコメ募集の案内を記載しました。▼兵庫県教育委員会が「特別支援教育に関する5か年計画」への意見を募集中! (2023/12/27の日記)その結果が、公式に公表されました。▼兵庫県特別支援教育第四次推進計画(令和6年(2024)年3月)(「兵庫県特別支援教育第四次推進計画」p2より)提出された意見等の概要とこれに対する考え方も公表されており、県教育委員会が、パブリックコメントを真摯に受けとめて検討されたことが、伝わってきました。パブコメされた人や、特別支援教育の今後についてご関心のある方は、ぜひ確認してみてください。意見の具体的な内容を見てみると、「通常学級の場において、共に生き共に学ぶ、真のインクルーシブ教育」を求める声が多かった気がします。僕が書いた意見もちゃんと取り上げられていて、感動しました。ありがたいです。
2024.03.14
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X(旧Twitter)をながめていたら、この情報に出くわしました。「高校通級」はまだ始まって数年で、僕の知る限り、基本的には都道府県立の公立高校のごく一部でしかおこなわれていないという認識でした。ところが、東京都は何年も前から、すべての高校で「通級指導」をおこなっているようです。#おそらく令和3年度から以前もそういう情報はどこかで聞いたことがあったような気がしたのですが、忘れていたので、このブログに書いておきます。どういうシステムでやっているのか、いろいろと気になるところです。▼通級による指導 (東京都教育委員会)▼「都立高校の通級による指導」 (東京都公式、PDF)上のチラシのなかでは、次のように書かれています。自分が在籍している都立高校で、在籍校の先生と専門的な知識やノウハウのある支援員によるティームティーチング形式などの指導が受けられます。「専門的な知識やノウハウのある支援員」というのは、民間の専門業者のようです。その業者さんだと思われる、以下のサイトも、見つけました。▼【代表ブログ】創る人と創る・都立高における通級による指導(発達障害の教育的支援「たすく代表日記」)イタリアのインクルーシブ教育についてのお話をオンラインでお聞きした時に、イタリアは学校の先生以外の専門家が学校や家庭に入り込んで、いっしょに支援や指導をおこなっていることを知りました。外部専門家との連携がインクルーシブ教育につながるものになっていけばいいなあ、と思います。詳しいことを東京の高校の先生に直接聞いてみたいです。#そういう知り合いはいないので、もしそういう方がこのブログを見てくださっていたら、ぜひ、コメント欄でお知らせください。
2024.02.08
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兵庫県教育委員会が、特別支援教育に関する5か年計画の試案をまとめました。来年4月からの5年間に関わる計画です。(令和6年度~11年度)それに対する意見を、現在、県民から募集されています。いわゆるパブリックコメント(パブコメ)ですね。#「らぶこめ」ではない。#にてるけど。▼兵庫県特別支援教育第四次推進計画(素案)に関するパブリックコメントの実施について https://www2.hyogo-c.ed.jp/hpe/tokushi/news/id-1592/ (兵庫県教育委員会特別支援教育課、2023/12/18)兵庫県民の一人として、特別支援教育に関わる者として、ぜひパブコメを送ろうと思っています。よかったら、あなたも、いかがですか?#兵庫県民限定締め切りは、1月8日(月)まで(必着)。日本人は、もしかしたら「お上が決めたことに口出しせず、従う」という国民性が強いのかもしれませんが、もはや、そんな時代ではありません。自分たちのことは、自分たちで決める。口出しするのは、当たり前なのです。県民なら、県民の教育に、大いに、口を出そう!いちおう、概要版もあるのですが、パブコメをしようと思ったら、概要ではなく、何ページもある試案全体に目を通さないといけません。#意見する内容が何ページ目に対するものかを書かないといけない。それがちょっとめんどくさい。▼兵庫県特別支援教育第第四次推進計画(素案全体:PDF)▼意見送信用Word(チラシの2ページ目が意見記入欄)とりあえず、送信フォーマットで「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」の5項目に分かれているのが実際には何ページから何ページの範囲までをさすのか、計画素案の目次部分をこちらに転載します。(画像は、素案全体PDFの目次に、該当項目の記号ア~オを追記したもの)また、僕が意見を言おうと思っている項目とページも、参考までにお伝えします。「おお!ちょうどそれについて僕も意見を言おうと思っていた」という方は、そのページだけでも読んで、意見を送ってもいいんじゃないでしょうか。↓僕が意見を言おうと思ったページと、そこに載っている内容p20 □ 就学先等の決定に向けた共通理解の促進 □ 合理的配慮の基礎となる環境整備(基礎的環境整備)の充実p23 □ 通常の学級等における特別支援教育の充実 □ 一人一人の違いや多様性を認め合える学校園経営・学級経営 □ すべての児童生徒にわかりやすいユニバーサルな授業づくりp24 □ 自立活動の指導の内容を参考とした専門性の高い通級による指導の充実p32 □ 通級指導担当教員と学級担任・教科担任との連携による一貫した指導・支援 □ ICTを活用した遠隔による指導の研究 p44-45 □ すべての教職員の学びの継続による専門性の向上 (p45「本人・保護者との合意形成に基づく合理的配慮の提供等についての研修の実施」)県教委の担当者よりも県民のほうが、当事者に寄り添った意見、経験に裏打ちされた具体的な意見が言えると思います。計画が上から下におりてくるものではなく、ともにつくるもの、自分たちがつくるものになるように、積極的に意見を言っていき、関与していけるといいと思います。パブコメの送信方法はいろいろあります。専用のフォームも用意されています。でも、僕はWordの様式の中に入力して、そのWordを添付してメールで送ろうと思っています。Wordのほうが、自分が書いた内容を自分で読み返しやすいし、送った後のファイルも管理しやすいからです。#自分が何を送ったかは、手元で確認できるようにしておいた方がいいです。#送る前に、3回は読み直そうと思います。
2023.12.27
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一昨日から、テストにおける合理的配慮の話題を続けて書いています。↓過去記事は、こちら。その1▼「漢字50問テスト」で書けない子への支援その2▼算数の「テスト」で書けない子への支援今日は、勤務市内で有志が集まる会がありました。すると、計算ができない子をテストで苦しめている事例が中学校でもあるようで、「そういう場合は、電卓を使ってもいいのではないか」というプチ議論が起こりました。会に参加していた人はおおむね電卓を使うことに賛成でしたが、「校内の他の先生は、なんていうかな」というのが気になるようでした。僕の場合、小学校高学年以上で基礎的な計算ができない子の場合、さらに高次の算数の学習に向かわせる際には、電卓は使わせていることが多いです。そうでないと、今の単元の学習が、進まないからです。それは、学びの権利保障の一環ではないかと思います。さきほど、「テスト 電卓 学校 合理的配慮」というキーワードでGoogle検索をかけると、非常に興味深い資料がヒットしました。東京学芸大学の増田謙太郎先生のスライド資料です。非常に分かりやすく整理されたスライドで、こんないいスライドを一般公開してくださるなんて!と、感激しました。▼(スライドPDF)「学校における合理的配慮」 (東京学芸大学 教職大学院 准教授 増田謙太郎 先生)上のリンク先のスライド資料の中には、「数学の定期考査で電卓を使用することを認める」ことへの反対意見が、4つの論点で整理されています。そして、その反対意見に対して説得するようなスライドが、後に続きます。すばらしい~!ぜひ、皆さんにも読んでいただきたいです。また、今回の記事タイトルにした「テスト 電卓 学校 合理的配慮」のキーワード検索ですが、これは、オススメの検索ワードです!この検索結果には、ほかにも興味深いネット上の情報やQ&Aがヒットしてきました。ぜひ、このキーワードをコピペして、ご自身でも検索にかけてみてください。(この画像はAIが生成したものです。実在の人物や学校とは関係ありません。)もうひとつ情報提供をさせていただくと、受験の合理的配慮に関するセミナーを先日視聴しました。そのセミナーが、現在、録画の閲覧申し込みを追加で受付されています。こちらも、関心がある方は観ていただけるといいのではないかと思います。(但し、有料です。詳しくはリンク先をご覧下さい。締め切りが2~3日後と迫っています。)▼(あとから配信のあとから申し込み)「高校入試における合理的配慮の誤解を解きたいセミナー〜子どもの学ぶ権利を守るために周りの大人に知ってほしいこと〜」 (学びプラネット様)以下は、蛇足です。言い訳です。最近いろんなところで口頭では報告しているのですが、僕はほかにも「漢字テスト」の具体的な支援として、「紙で配られるテストを、子どもがその場でデジタル化して、手書きの代わりにタブレットで文字入力で回答して提出する」というのを、今年度、ようやく実現にこぎつけました。このことについては「そのうちブログ記事に書きます」と予告したのに、まだ書いていません。明日は、そのことを、書くかもしれません。。。#そうやって、引き延ばすクセが付いています。。。#明日も、書かないかもしれません。▼わり算の筆算で手書き数字が雑で読み違えてしまう子のためのエクセル筆算シート (2021/12/22の日記)▼iOS『はんぷく計算ドリル 九九』は4択なので答えやすい! (2021/03/14の日記)▼「書くこと」の代替手段を当たり前に使える世の中にしよう! (2023/09/01の日記)
2023.12.07
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昨日は、漢字が書けない子の、漢字テストでの支援について書きました。▼ 「漢字50問テスト」で書けない子への支援今日も、同じような話題で、続けます。「テスト」というのは、学校ではかなり重要視されています。ただ、それがあまりにも絶対的なものとして君臨しているのは、学校の本質的な存在意義を考えると、おかしなことではないか、と思っています。僕は、「学校」の本質的な存在意義は、子どもたちが集団で学び合うところにあると思っています。「テスト」が子どもたちのあいだに分断を生んでいないでしょうか。「テストができない子は別の場所で」と言われて、分離教育につながっているようなことは、ないでしょうか。日本が真にインクルーシブ教育を進めようとするなら、テストの問題は、避けては通れません。「テスト」が、ある子どもを苦しめるものになっていないでしょうか。「テストとはそういうものだから」と教師の側が思考停止になっていて、子どもを追い詰めていることもあるように、思います。僕は、「テスト」についても、「子どもファースト」で考えたいです。テストについては特に、昔ながらのかなり強固な慣例があるので、ここを変革すると一気に変わる気もしています。現場の子どもたちの実態にそくして、改めてしっかりと考えていきたい、と思っています。今日は、算数のテストに同室支援で入りました。わり算の筆算で困っている子に、ちっちゃい九九表を渡して、それを見てやってもいい、という支援をしました。(写真提供:写真AC。僕の学校の実際のテストではありません。)九九を覚えていない子は、わり算の筆算なんて、できなくて当然なわけですが、そうすると、テストの時間がその子にとって、ただ苦痛なだけの時間になってしまいます。算数の場合、「九九表を見ながらやってもよい」というのは、僕は、支援としてはアリだと思っています。九九表があるからと言って、それで点数がとれるわけではないのですが、少なくとも「これがあればできるかもしれないから、やってみよう」と思えるきっかけには、なっているようです。「テスト」の支援、いろいろな方々と議論しながら、ホンネのところを交流したいテーマです。昨日と今日の、僕の書き込みは、人によっては、「テストなんだから自力でさせなくてはいけない。なんでそんなことをやっているのか。考えられない」と思って読まれた方も、いるのでは、と思います。いろんな方と、いろんな意見を、交流したいと思います。僕も、自分がやっていることが正しいと思ってこうやって書いているわけではなく、目の前の子どもたちにどんなことができるだろうと、迷いながら、いろいろ試している最中です。ぜひ、コメント欄等で、お考えをお聞かせください。▼「学習障害」やその「進路」 ~井上智さんの本をおすすめします! (2020/07/19の日記)
2023.12.06
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この3連休はLD学会の広島大会が開催されています。僕は、現地ではなくオンラインで動画視聴。仕事がたまっていて広島に行っている状況じゃなかったので、オンライン参加にしておいてよかったです。#広島は行きたかった。#広島焼き食べたかった。講演動画が山ほどあって、びっくりしました。持ち帰り仕事の目処がついたので昨日から見始めています。アメリカの支援教育やゲーム障害への対応などについて、詳しい話が聞けました。#ゲーム障害の子のための体操は自分でやって効果を確かめたよ。#ゲーム障害の講演を聞いて運動しないとと思って散歩に出かけたよ。LD学会では国内のことだけでなく、海外の支援教育の実情も、よく報告されています。特に今回の広島大会では、アメリカのIEP(個別指導計画)に絞って報告された広島大学の川合紀宗(かわいのりむね)先生のご報告が、とりわけ視聴しがいのある内容でした。「米国のIEPはどのように作成されているのか 経験者は語る」という講演動画です。インクルーシブ教育に詳しい落合俊郎先生のご紹介を受けて登壇されました。そういったところからも、インクルーシブ教育につながるお話がきけるかと、期待しながら視聴しました。「まずは通常級でできることをやってみる」「勝手に専門家だけで決めてはいけない。IEPミーティングには、保護者・本人も入ることが重要。」「日本は障害があるかないかの2層で考えがちだが、アメリカは3層で、フォーカスを当てて支援をしている」(RTIの考え方)「IEPフォームの中にアコモデーションやモディフィケーションの枠は以前はなかったが、追加された」などのことが、語られました。日本が参考にすべき点がたくさんあるんじゃないか、と思いました。お話の中では「アメリカはインクルーシブ教育を重視しているけれど国連の言うとおりにはしたくないので障害者権利条約は批准しない。むしろ国連より先んじたことをやりたい」ということも語られました。アメリカの人間っぽいところが感じられて、おもしろかったです。LD学会は会員数が多く、発達障害関係の多岐にわたる最新情報を定期的に入手することができるので、学びたい人にはおすすめです。今回の大会のオンライン参加のみを今から申し込むこともできます。気になる方はこのブログ記事の冒頭のリンクから、大会ホームページに行ってみてくださいね。▼オンラインのLD学会は、参加障壁が低い!(^0^) (2021/12/08の日記)
2023.10.09
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昨日は、かなり「たいせつなこと」を書いた気がしています。↓▼「大切なことは、なにか」 ~『イタリアのフルインクルーシブ教育』などから 今日も、昨日の話題の続きです。8/11のカナダのインクルーシブ教育学習会で、「個別の指導計画」の話題も、ちらっとだけ出ていました。#「個別指導の計画」ではありません「個別の指導計画」は、子どもひとりひとりについて書かれた、個別の目標や手立てを具体化していくもので、日本でも、チームとして「特別支援教育」に取り組んでいくにあたり、大変重要なツールであるとされています。以下は、文科省が示している様式例の1つです。(文部科学省「個別の指導計画の様式例」より例6のものを転載。)外国の場合は、「個別の指導計画」の元になった英語である「IEP」という呼称が使われることが多いようです。「IEP」というのはけっこう便利な言葉で、僕は自分用のメモの時にはわりとこの言葉を使っています。手書きにメモを書くときには格段に速く書けるので、研修の時のメモ書きの時には「個別の指導計画」と書かずに「IEP」と書くことが多いです。#厳密には、日本の「個別の指導計画」と外国の「IEP」は、ちょっと違う8/11のカナダのインクルーシブ教育学習会では、チャットで、教師による「指導」の計画ではなく、子ども主体の「学習計画」になるといい、という意見がありました。鋭い指摘だと思いました!それを受けて、外国では「個別の指導計画」が2段構えのものであることが、チャット上で別の方から、説明されていました。「海外のIEPは、指導側と学習側の2段構造になる。」とのことでした。そうなんだ!「個別の指導計画」については、僕自身も、かなりこだわって取り組んでいるところがあります。僕は通級指導を担当していますが、子どもの記録を挟み込んでいく記録ファイルの裏表紙には「個別の指導計画」を添付しており、いつでも参照できるようにしています。指導の場においていつでも確認できるようにしているというのは、けっこう重要なことかと思っています。カナダでは「IEP」は、「リソースティーチャー(支援担任のような存在)が、担任と協力して作成する」と説明されていました。(8/11の池野さんの話による)子ども本人が、自分の字で書いていることもあるそうです。イタリアでは「個別の指導計画」は、「PEI」と言うそうです。昨日ブログに書いた『イタリアのフルインクルーシブ教育』には、次のような記述が見られました。・教育実践の場においては、「特別な教育的ニーズ」を要する生徒への教育は、「個別教育計画」(PEI)に基づいて実施されるが、2020年に公表された省令では、「個別教育計画」の作成にあたっては、ICFの概念モデルを活用することが義務づけられている。(p299より)『イタリアのフルインクルーシブ教育 障害児の学校を無くした教育の歴史・課題・理念』(アントネッロ・ムーラ、大内紀彦 訳、大内進 監修、明石書店、2022、2700円)(参考リンク)▼ICF(国際生活機能分類)-「生きることの全体像」についての「共通言語」- (国立長寿医療センター 研究所 大川弥生、PDF資料)「個別の指導計画」を意味のあるものにして、活用をほんとうに進めていくためには、「ICFの概念モデルを活用する」とか「学習者視点のものにする」「本人が参画するものにする」といったことが、必要になってくると思いました。「障害」を「医学モデル」ではなく「社会モデル」として捉え、インクルーシブな環境下で本人の思いや願いをどう実現していくか、そういった方向性に「個別の指導計画」を役立てていけるといいですね。▼具体的な評価や記録を(通知表と個別指導計画) (2006/12/17の日記)
2023.08.14
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7月1日にインクルーシブ教育の学習会で話をしてくれ、と頼まれています。ここ1か月ぐらいは、その準備をいそいそと進めてきました。今回は、そこで配布資料として配ろうとしている、僕の過去の発表原稿の中から、一部を抜粋してお届けします。今回のテーマは、「通常学級内での通級担当による支援」です。通常学級内での通級担当による支援 通級担当は必要に応じて通常学級の授業に入り,対象児童だけでなくクラス全体の指導に関わることもある。通級対象児童が普段の授業でも安心して過ごせるように,通常学級の授業に通級担当等が支援に入ることは重要である。 私は通級担当として,常に「通常学級の中で対象児童が安心して過ごせること」を念頭に置き,それをめざしてきた。別室指導ありきではなく,現在学習中の単元内容や当日の授業の予定内容を担任から聞き,「クラスでみんなとやるか,別室でやるか」を決めていた。本人の意見を聞いて決めることも多かった。子ども自身がどこで学ぶかを決める権利をもっていると考え,それを尊重することは,子どもの権利条約や障害者の権利条約を踏まえれば,非常に重要であると考えている。 クラスの中で授業を受ける場合は通級担当がクラスでの授業を観察したり,授業中の支援をおこなったりすることで,普段の対象児のクラスでの学びを支えることにつながった。それは,たとえばクラスの中でどういうことで困っているかを見取って,「こうしてみれば」と適宜提案したり,クラスメイトとの関係の仲立ちをしてペア学習やグループ学習がどうすればスムーズに進むかの支援をおこなったりすることによってである。 具体的にクラスへの入り込み支援で使用していた支援ツールとして,「携帯用筆談ボード」があった。これは本来聴覚障害のある者のコミュニケーションのためのものであるが,書いたり消したりが瞬時にでき,視覚支援をするうえで大変使い勝手が良かった。支援者がヒントを書いて見せるといった使い方のほか,児童本人にこのボードに書かせることもあった。ノートに書くよりも大きな字で,その文字だけを目立たせて書くことになるので,漢字の確認や筆算の手順の確認などに有効であった。(2018 N市人権教育大会レポート「読み書きに困難のある子の学習保障」より抜粋)「通級担当」が日本全国で増えています。僕は、「通級担当」は、通級の部屋で待っているだけでは、あかんと思っています。子どもたちはふだん、どこで過ごしているのでしょう?子どもたちがふだん過ごしている教室に入ることなしに、ずっと別室で待機していては、子どもたちの普段の学校生活の改善に、結びつきにくいのではないでしょうか。子どもたちのふだんいる教室に入ることは、とっても重要なことです。僕は今日も通級対象のお子さんがいる教室に、入ってきました。その子だけを見るのではなく、教室内を影武者のように動き、いろんな子の観察記録を書きながら、一時的に声掛けをしたり、支援をしたり、して回りました。同じように「支援」を仕事にしている方々に、もしも参考になるところがあれば、幸いです。2023.6.29追記↓在籍学級内で学びが保障されることが、「インクルーシブ教育」の観点から言っても、必要なことであり、大切なことであると思っています。「通級は別室でその子に合った自立活動の授業をするもの」という捉え方が一般的だと思います。それを全面的に否定するわけではないものの、それだけになってしまうとクラスでの子どもたち同士での学びにつながっていきません。特に、近年は学級担任が不足しており、担任経験が浅い方が担任をされていて、いろんな子どもたちに対応した臨機応変な授業の工夫がされにくい実態があり、通級担当者がクラスに入っていって担任や子どもたちの実際の学びを「学びにくいAさんも一緒にできるようにしていく」ことが、よりいっそう求められているように思います。
2023.06.28
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特別支援教育のメーリングリストで教えていただいたマンガがおもしろかったので、紹介します。『君の名前をよんでみたい』(1) (ジュールコミックス)[ 飯田ヨネ ]「よんでみたい」がひらがななのが、ミソですね。僕は趣味で演劇をやっていたので、「俳優×発達障害」というテーマは僕の興味関心にどんぴしゃでした。第1巻中盤の、本人の意志を尊重するエピソードのところでじんとしました。(p89~91あたり。第2話の終わり際)興味を持たれた方、第1話の試し読みが、以下のURLからできますよ。これも、メーリングリストの先生に教えてもらいました。https://comic-action.com/episode/3270375685448195618ちなみに第2巻は5月発売予定です。通級教室を舞台にしたマンガも、第4巻がこのあいだ、出ました。こちらも愛読しています。『みんなが輝くために4 舞台は通級指導教室』(梅田 真理・河西哲郎)両者に共通する感想ですが、学校でも社会でも、障害に対する理解ということについては、人それぞれで、理解してもらえないことだって、多くあります。でも、そんな中で、理解者がひとりでもいれば、そこから明るい展望がひらけてくることも、あると思うのです。僕は以前ある団体の会報で「通級の先生はカウンセリング的なかかわりで本人の思いを聞き取って、周りに伝え、その子が過ごしやすくなるように環境を整える役割をする」といったことを書いたことがあります。学校の場合でも社会の場合でも、担任の先生や身近な人に必ずしも「障害」についての知識や理解があるわけではない。むしろ、現状はまだまだ不十分なことが多いと思います。ただ、それだったら、媒介になるような人とつながりをもって、その人に調整してもらったらいいんじゃないかな、と思うわけです。このブログも、「媒介」になりたいと思って続けているところがあります。理科でいう、化学反応を起こすきっかけになる「触媒」ですね。「きょういくユースフル! ~僕は触媒になりたい」▼特別支援学級や通級に入るために、診断書は必要???(2019/08/23の日記)▼『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』『発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?』 (2020/06/21の日記)▼『光とともに・・・』の未完のラスト2話が、雑誌掲載(2016/02/28の日記)↑上のリンクに関連して、『光とともに・・・』も今ならネットでかなり試し読みできることも、メーリングリストで教えてもらいました~https://manga.line.me/product/periodic?id=S114592&t=1667779200015▼『海ちゃんの天気今日は晴れ』 ~いわゆる「大変な子」を含めた学級指導の一例として(2013/05/07の日記)
2023.03.19
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『運動脳』の読書メモ、第2回です。(第1回は、こちら。)『運動脳』(アンデシュ・ハンセン、サンマーク出版、2022、税別1500円)今回は、第3章「集中力」を取り戻せ!の章を、紹介します。アンデシュ・ハンセン『運動脳』2(今回の範囲は、第3章:p113からp162まで)(・太字部分は、本の引用。 顔マークのあとの緑文字は僕の個人的コメントです。)・2000年前後に『タイム』誌は、あまりにも多くの子どもたちがADHDの投薬を受けていることに警告を発し、「子どもたちを薬漬けにしていいのか?」という疑問を投げかけて、おおいに議論を呼んだ。(p89より)・薬に頼らずにドーパミンの分泌量を増やす方法はないのだろうか。 ある。 そう、身体を動かすことだ。(p138より)ADHDについては一応いろいろと勉強してきましたが、投薬治療の是非については、なかなか悩ましいところです。 基本的にはクスリを飲んでなんとかするというのは、避けれるものなら避けた方がいいと思っています。 ただ、状況により一概に言えないところはあるので、一時的に試してはみるものの、すぐにやめれるようにしておくことや、周りの大人が投薬の副作用に気づきやすいように気をつけておくことは必要だと思っています。 僕がクラス担任から相談を受けたときには、「まずは、環境調整ですね」とお伝えすることが多いです。 もちろん、医療との連携を否定するものではありませんが。 実は、自分自身もADHDのことを初めて知ったときに、「自分もそうかも」と思いました。 そして、「クスリを飲んでよくなるなら、試してみたい」と思っていました。 魔法のクスリのような気がして、それに過度に期待したり、依存したりしてしまうのです。 ふりかえってみると、それはやはり問題であったと思っています。 ところが、この本では、なんとクスリよりも運動でADHDによる困難さも改善するということが、具体的に科学的に証明されているのです。 これは、ビックリです。 具体的な事例は、たとえばp145などを参照してもらえばと思います。 「息が上がり、心拍数を増やすことを目安にした遊び」により、「3分の2を超える子どもに集中力の改善」、「『行動の抑制』と呼ばれる力が改善」といったことが報告されています。 (黒地部分はp145より) p147においては、「わずか5分ほど身体を活発に動かすだけでも子どもの集中力が改善され、ADHDの症状も緩和される」と書かれています。 僕たち「教育」に携わる者にとっては、かなり役立つ情報であると思います。 「ADHD」と診断されている子どもたちが増えていますが、その背景には、子どもがあまり運動しなくなったということも、あるのかもしれません。 「クスリに頼りたくないけど、困っているんだ」という多くの人にとって、有益な情報ではないかと思います。 本書にも書かれていますが、クスリの効用を謳ったほうが製薬会社が儲かるので、そのことばかり喧伝されているということは、気をつけておくべきことです。 運動はタダでできて儲けにつながらないから、服薬以上の効果が実際にあったとしても、資本主義社会の中でその効果はどんどん忘れ去られていってしまうようです。 本書を鵜呑みにするわけではありませんが、「ADHD→クスリで改善」といったことしか頭になかった人は、バランスをとるためにも、本書を読んでおくといいと思います。・科学の研究は、本当に効果のある「精神を集中するためのギア」はサプリメントでも、脳トレ用のアプリでもなく、身体を動かすことだという事実を明らかにした。(p159より)ここもまた、驚いたところです。 僕が「効果があるだろう」と思っていた「脳トレ用のアプリ」も、本書では否定されているのです。 アンデシュ・ハンセンさんは精神科医。 その主張は、もちろん学会などにも発表しないといけませんので、根拠を明確に、しっかりとした調査・研究にもとづいてされています。 実はこのブログでも「脳トレ用のアプリ」に似たものはたくさん紹介してきたのですが、これからは、それにもあまり頼ることなく、「運動」を一番に考えた方がいいのかもしれません。いかがですか。やっぱり今回も、運動したくなりましたか?長くなりましたので、第4章以降はまた明日以降に持ち越します。第4章はうつ・モチベーションの科学という章タイトルです。これまた、興味深い内容です。では、また、次回!(つづく)▼【休校期間お役立ち情報】その13 登校後の運動を保障しよう(齋藤 孝『子どもの集中力を育てる』) (2020/05/23の日記)
2023.02.08
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昨日10/15(土)に、教職員向けのコグトレのオンライン研修会がありました。主催は、東京書籍です。▼学びの土台となる認知機能と「コグトレ」 ~学校での実践事例と効果~https://eventregist.com/e/EhYcGGOV9JWR勤務市のICT研究チームのメンバーに共有した、そのときの研修メモを、こちらでも共有します。コグトレは特別支援教育の分野ではかなり有名になってきた認知機能のトレーニングです。今、勤務市の通級担当者は、少しずつコグトレを指導に取り入れようとしています。今回はオンラインでコグトレを考案された宮口先生のお話と、小中学校の先生方からの実践発表の両方が聞けて、とてもありがたかったです。2022/10/15「学びの土台となる認知機能と『コグトレ』 ~学校での実践事例と効果~」研修メモ△ブレーキがかけられない。△立体図が描けない。 (立体図は7~9歳で描けるようになる。高学年なら描けるはず)・葉っぱの絵の点つなぎは、アセスメントに使いやすいので、よく使っている。★認知機能は、学習の基礎体力!・認知機能の弱さがある児童ほど、コグトレで伸びている。・通常学級で週3回程度トレーニング。・正しい鉛筆の持ち方でトレーニングする。(○▲■などのぬりえワーク) →意識化することで変化する。・斜め線を把握するのが苦手だと、文字を書くのは厳しい。 →コグトレで改善する。1人で文字を書けるようになる。・集中力が上がり、考えられる子に変わっていった。学校全体で取り組むことにより、学校全体が落ち着いた。・紙とオンラインを併用する方がいい。デジタルは、充電できていないなどのトラブルがあってできないときもある。・月1~2回では効果が出ない。九九や漢字の練習と一緒。最低でも週2回か。・コグトレオンラインをGIGA端末ですると、聴覚的記憶課題が1人でできるので、すごくよい。ただ、要支援の子ほど、充電できていないなどのトラブルは多い。・コグトレオンラインなら、子どもたちはどんどん取り組んでいく。・聴覚的記憶課題は集中力が付く。・最初に「これは難しいで」と言ってからさせている。うまくいかなくてもフォローする。★コグトレオンラインの紹介・自動採点 ・教材送信機能あり僕たちの研究チームでは11月から「コグトレオンライン」を使ってみようという話になっています。子どもたち一人一人が持っているGIGA端末でアクセスできるWebアプリです。1日5分の短時間で、子どもたちがゲーム感覚で取り組めるもので、無理なく続けられそうです。▼コグトレオンラインhttps://cogtr-online.jp/service/コグトレオンラインは学校の先生が教材屋さんに注文する対象になっており、教職員であれば注文できるようです。個人ライセンスでも月あたり100円と安くなっていますので、利用する価値は十分あるかと思います。学年の子どもたち全員や、学校の子どもたち全員が一括で利用する場合は、それよりもさらに安くなりますよ。ちょうど研修会の日が宮口先生のコグトレに関する新刊本の発売日でした。安いのでこちらは速攻で注文しました。研修会で宮口先生が示された図や事例は、こちらの本からの引用が多かったです。『「立方体が描けない子」の学力を伸ばす』(宮口 幸治、PHP新書、2022/10/15、990円)↓コグトレ教材のいろいろについては、過去記事で書きましたのでそちらもご参照ください。(関連する過去記事)▼衝動的な心にブレーキをかけるトレーニング ~宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』(2020/07/12の日記)
2022.10.16
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気持ちがあせって、なんでも速くやってしまう子がいます。それはそれで、その子の個性なのですが、速くやってしまうので雑になり、ケアレスミスも多くなるので、テストとかでは、とれるはずの点数がとれなかったりします。落ち着いて丁寧にやれば、実力的には80点なのに、65点になってしまうとしたら、くやしいですよね。そういう子たちのために、たとえば通級教室で「気持ちを落ち着けて○○する」というトレーニングをすることがあります。今回は珍しく僕の授業の実践報告です。ICTを自分の授業の中でどんな風につかっているのか、報告する必要があったので、まとめたものです。せっかくなので、ちょっと編集して、共有します。「こういう目的でiPadのアプリを教材として使っている人もいるんだな」くらいの感覚で、読んでもらえたらと思います。ある日の通級授業「きもちをおちつけて、集中しよう」<本時の目標>教師やタブレット機器からのフィードバックをもらいながら、注意深く見たり聞いたり書いたり考えたりする。<使用する機能等> iPadを使用:カメラ、写真(マークアップ機能)、「ひとコマ漢字」、「じゃんけん将棋」<ICT活用のねらい>・その場で撮ったノートの写真は具体的な見本を書いて見せるために使う。・「ひとコマ漢字」は手書き漢字テストの文字認識精度がよく、きれいに書けたかどうかのAIによるフィードバックも信頼できる。・将棋の対戦相手を人間ではなくAIが務めると、思考レベルがどの程度向上したかの指標が明確に得られる。<授業の流れ>1. 注意深く聴くトレーニング・文章の読み聞かせを聞いて頭の中にメモを取り、質問に答えることを5問おこなう。 (対象児童が選んだ本の中から、あるページを読み聞かせ、その記述内容について後で質問をした。)2. 算数の分数の計算で途中の式を書くトレーニング(ノートに書く)(この項目は、児童の普段の学習と直接つながりのある内容)・最初の3問は教師が書いてやったものをする。 後の問題は教師が書いたものと同じように自分でも「見やすい式」を書いてから取り組む。・間違ったものは、気持ちを落ち着けてやり直す。・教師は児童のノートを写真に撮ったものにマークアップ機能で書き込み、随時見本を見せる。3. iPad「ひとコマ漢字」(児童の学年の漢字)・筆順に気を付けて画面上に漢字を書く。・今後も正しい筆順で書けるように、「女は、くの一」などの聴覚的ヒントを教師から声掛けしてもらい、筆順を覚えるきっかけとする。・ゆっくり丁寧に書くと結果判定で★がもらえるので、それをめざしてゆっくり丁寧に書くことを意識する。iPa小学生の手書き漢字学習 : ひとコマ漢字(App Store)4. iPad「じゃんけん将棋」・自分で難易度を選んで、コンピュータと対戦する。・状況に応じて指し手を考えて、相手に勝つことを目指す。・見落としがあると負けにつながるので、盤面全体を注意して見ることを心がける。・一度負けても、悪かったところを反省してから再度挑戦する。・コンピュータ対戦で気づいたことを踏まえて、教師と対戦する。対戦!じゃんけん将棋(App Store)5. ふりかえり・本時のふりかえりをする。・本時以外のことでも、学校生活で気になることや、前回の通級以降にあった出来事などを話す。<補足>・ICTのみを使用した通級指導は、原則として行っていない。 今回も、部分的に使用している。・算数の普段の学習で「途中の式を書かずに間違えてしまう」と担任から聞いていたので、途中の式を書くことをあらかじめ示してから計算をさせたところ、ちゃんと計算できるようになった。<補足の補足>僕の通級では基本的に最初に「普段あったこと」を子どもに聞くのですが、なぜかこの日は最後に聞いていました。iPadは毎時間ふんだんに使っているわけではなく、いつもは最後の5分とかだけ使っていますが、この日は珍しく長めに使っていました。将棋型の思考ゲームは、「じゃんけん将棋」のほかに、「どうぶつしょうぎ」のアプリ版もよく使います。こちらのほうが、難易度の段階がかなり小刻みに分かれているので、上達がより一層はっきり分かると思います。どうぶつしょうぎ(App Store)GIGAスクール構想の端末としてiPadが入っている自治体もあるようですので、ご参考になれば、幸いです。通級でなくてもできる内容がほとんどなので、児童がiPadを手元に持っているようなら、普段の取組として自主的に続けることで、より一層効果は期待できると思います。
2022.10.03
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特別支援学校高等部を卒業した後の進路について、ご存じですか?特別支援学校高等部を卒業しても、「高卒資格」にはならないということは?「高卒資格」にはならないけれど、大学は受けられるということは?僕は少し前まで、大学を受けられるということを知らずに、「高卒資格がないから、大学に行けない」と思っていました。自分の無知を恥じ入ります・・・。そういったことを教えていただいている「全国連絡会」の案内チラシを見て、昨日はオンラインで、「障害児の高校進学を実現する全国交流集会」に参加しました。生の声をたくさん聞けたのがありがたかったです。支援学校から大学へ進学する事例については、ずっと気になっていましたので、情報を得るまたとない機会となりました。お話を伺えた当事者の方々はそれぞれ、自分の進路を自分で決めて進もうとされているところが、素晴らしかったです。進路選択は人それぞれですが、自分に合った進路を選び、仲間と過ごす機会を保障していくことは本当に大事なことだと思います。報告の中では出席されていないお知り合いの方の事例も紹介していただき、ありがたかったです。具体的な話がたくさん聞けました。自分でも調べてみたいことがたくさんありました。 障害のある方の進路については、当事者から学ぶことがたくさんあります。以下は、会の後で調べてみて参考になったサイトです。(参考情報)▼教えて!goo Q&A掲示板「特別支援学校 高卒資格 知的障害」 「特別支援学校は、高卒資格が、もらえるのでしょうか。~」 (質問日時:2013/01/13 回答数:3件)▼特別支援学校の高等部は高卒扱いになるの?大学入学の資格は取れるのか? (WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト内、2017/11/03記事、2019/09/23更新)▼知的障害の若者に大学教育を。福祉型大学「カレッジ」の挑戦 (LITALICO発達ナビ、2016/09/21記事)3つ目のサイト記事の2ページ目に「日本の知的障害のある若者は社会から隔離されていることが多いんですね。 一方、海外では障害の有無なしに学ぼうとする取り組みが増えてきています。」という記述があります。日本でも「障害の有無なしに学ぼうとする取り組み」を支援し、広げていく必要性を強く感じます。
2022.09.19
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学校などで子どもの困り感が強いときに、個別に専門家による心理検査や知能検査を実施して、その結果を指導や支援に役立てることがあります。ただ、本人へのフィードバックは、あまり重要視されてこなかった気がします。特別支援教育をテーマにした雑誌『LD/ADHD&ASD』2022年7月号を遅ればせながら読んでいましたら、最後のほうのページに、大六一志先生が「心理検査の結果報告書」というのを書かれていました。その記事の最後のほうに、「本人向けの報告書式」(同誌p63)のこともふれられていました。なんと、「学習アドバイスシート」という、本人向けの報告書式があるようです。・学習アドバイスシートという、本人向けの報告書式(熊上ら,2016)では、検査結果をグラフで示す際に、目盛りの数値を省略しています。 この方法ならば一層数値にとらわれることなく、特徴に目を向けることができるでしょう。(『LD/ADHD&ASD』2022年7月号 大六一志「心理検査の結果報告書」記事内p63より)僕は、「これは、いいなあ」と思いました。僕が検査を勧める際にも、「得意なことと不得意なことを客観的に把握して、これからの作戦に生かしましょう」といった提案をすることがあります。人それぞれ、「みんなちがって、みんないい」のを前提として、一人一人みんな違うのだから、あなたの特性を把握して、その特性に合った指導や支援をしていきましょう、というのが、本来の「特別支援教育」だと思っています。本来の、というのは、もともとの英語である「Special Needs Education」のそもそもの意図である、という意味です。だから、ニーズ(Needs)を明らかにするための検査=アセスメントが重要になるのです。熊上先生の「学習アドバイスシート」自体は、見ることができていないのですが、こういったやり方があるということだけでも知っておけば、本人に向けて結果を知らせるときに、使えるのではないかな、と思いました。なお、検査についての一般的な説明は、下の「LITALICO発達ナビ」さんの記事が、分かりやすいです。▼心理・知能検査の結果はどう読むの?IQって何の数値?検査結果の見方・活かし方が分かる『子どもの心理検査・知能検査 保護者と先生のための100%活用ブック』【著者インタビューも】 (LITALICO発達ナビ、2020/11/10記事)『子どもの心理検査・知能検査 保護者と先生のための100%活用ブック』[ 熊上崇 ]
2022.09.17
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学校に案内が来ていました。特別支援教育では最近ますます人気が出てきたコグトレ。これがアプリになっていました。なかなかよさそうです。▼コグトレオンライン (東京書籍、個別ライセンス1320円、学校の全児童生徒対象なら半額以下)▼コグトレオンライン パンフレット(PDF)体験版を申し込むと、数種類のお試しをすることができます。お試しの中にもある「さがし算」は単体でアプリにもなっています。▼コグトレ さがし算 初級 (iOSアプリ、LEDEX、610円) 公式サイトだと説明がとても詳しいです。▼コグトレ デジタル さがし算 初級|製品|レデックス株式会社動画による説明も分かりやすい。もともとは、紙のコグトレ。本を買うとできます。本のバージョンはすでにもっているので、お金を掛けてデジタル版でもするかどうか、迷うところです。本のコグトレのバリエーションもどんどん増えてきていて、びっくり。『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』 [ 宮口幸治 ]1日5分!教室で使えるコグトレ 困っている子どもを支援する認知トレーニング122/宮口幸治【1000円以上送料無料】医者が考案したコグトレ・パズル 注意力・記憶力・想像力がぐんぐんアップ!/宮口幸治【1000円以上送料無料】1日5分! 教室で使える漢字コグトレ 小学1年生 [ 宮口 幸治 ]小3/コグトレ 計算ドリル [ 小学教育研究会 ]『るるぶ都道府県がスイスイわかる!日本一周コグトレ・パズル』/宮口幸治【3000円以上送料無料】『社会面のコグトレ認知ソーシャルトレーニング(1) 段階式感情トレーニング/危険予知トレーニング編』 [ 宮口幸治 ]個人的には、下の本が、かなり面白そうでした。なぞときアドベンチャーの形式をとっています。主人公になりきって、謎を解くストーリー仕立てになっているのが、RPGみたいで、おもしろそう。『医者が考案したコグトレ・パズル なぞときアドベンチャー編』カードゲームも、出ていました。COGET コ・ゲット 基礎学習脳力を強化! 遊びながら脳力トレーニング [ 宮口幸治 ]おそるべし、コグトレの世界!なんでも、ありますね。
2022.05.01
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年度末です。今回は、ある1つのサイクルの終わりに意識したいことを書きます。年度末に限らず、1時間の授業、10分間の指導など、あらゆるスパンで応用できるはずです。少し古い本ですが、『見て分かる困り感に寄り添う支援の実際』という本があります。『見て分かる困り感に寄り添う支援の実際 通常の学級に学ぶLD・ADHD・アスペの子どもへの手立て 学研のヒューマンケアブックス』/佐藤曉【著】(2006) 【中古】位置づけとしては、「特別支援教育の入門書」という位置づけになるでしょうか。「支援のありかた」について、かなり具体的に示されています。この本の中には、いろいろな手立てが写真つきで紹介されています。知識やスキルが不十分な人にとっては、格好の入門書になること、うけあいです。一方で、経験が十分にある人にとっても、それぞれの具体例の背景にある「考え方」には、非常に学ぶべきものがあります。僕が特に覚えておきたいと思ったのは、本書の第9章「保護者とともに子どもを育てる」のところです。p157に、次のような記述があります。〇子どもをとがめることばは 一切使わない。 宿題ノートを見て、「もっときちんと書きなさい」と責めるのをやめ、 「(上手に書けているところを指しながら)この字で書いてね」 とさりげなく言えると、子どもとの関係は変わる。(p157より)この部分を読んだとき、衝撃が走りました。「そうか!モデルを大人が示すのではなく、モデルを子ども自身の中から見つけていくんだ」と気づきました。大人は、「こうしろ、ああしろ」は、いっぱい言います。僕も、言います。言いたくないのに、気づいたら、言っています。そして、子どもは、いやになります。関係が、悪くなります。悪循環です。悪循環を、良循環に変えていかなければいきません。そのために、どうするか?よいことの種は、すでに子どもの中にあるのです。見ようとして見れば、見えるはずです。見つけるのです。子どもの中のよいことを、見つけて、ただ、知らせるだけです。それだけで、いいのです。p165には、こんなことも書いてありました。 当然、プリントが最後まで終わらない日もある。 しかし、そういうときは、時間内にできたところまでを切り取ってノートにはった。 ノートには「できたこと」だけが残るので、宿題への嫌悪感がなくなる。(p165より)最後に残るのは何か、ということ。自動的に残るままにしておいたら、よいことも、悪いことも、コントロールできないままです。最後に残すのは何か。それは、決められるのです。「できたこと」だけを残すことも、できるのです。上に引用したアイデアは、保護者のアイデアだそうです。こういうことを思いつくということが、「すごいなあ」と思います。僕たち教員は、もっと保護者から、子ども本人から、学ばないといけませんね。先ほど引用したページをめくると、冒頭に次のような言葉が、書いてありました。 教師が保護者への対応で困っているとき、 保護者は、その何十倍も「担任対応」に苦慮している。(p166より)自分の視点だけに偏ってしまう、自分がいます。アドラー心理学で言うところの、「悪いあの人、かわいそうなわたし」状態です。視点を保護者に移すことを、さりげなく、そっと教えてくれる本書は、気づきの指南書です。いつものように、自分が特に印象に残ったところだけを引用しました第9章だけの引用になりましたが、全体は、10章立ての本になっています。本書全体の紹介は、紀伊国屋書店のサイトにありましたので、最後にそちらも載せておきます。『見て分かる困り感に寄り添う支援の実際』通常の小中学校の児童生徒の6%がLD・ADHD・高機能自閉症であるという。しかし専門性のない通常学級の先生方は子どもたちの困り感に合った支援、教育は難しい。そこでその具体的な支援をどのようにしたらよいかが、見れば分かる本。目次第1章 子どもが安心する環境整備第2章 子どもが安心する規律づくり第3章 課題と手だてのある授業第4章 形式のある授業・保育第5章 係・班活動と学級の自治第6章 学級の人間関係づくり第7章 個別支援はこうする―小・中学校第8章 個別支援はこうする―保育園・幼稚園第9章 保護者とともに子どもを育てる第10章 組織支援の取り組み(紀伊国屋書店Webサイト内、書籍情報より https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784054031524)
2022.03.26
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無料のオンライン講座があって、動画視聴期間が3月末までだったので、遅ればせながらようやく視聴しました。非常によい内容でした!発達障害理解のための基礎と実践講座 「発達障害を抱える子どもの社会的自立」なんと、まだ申し込めるようです。↓申し込みはこちら▼第24回 発達障害理解のための基礎と実践講座「発達障害を抱える子どもの社会的自立」 https://olympia.doorkeeper.jp/events/130211<プログラム>「読み書きが苦手な子どもの基礎理解と具体的対応」・講師:竹田 契一 氏「学力不振といじめと不登校と社会的自立」・講師:品川 裕香 氏(申し込みサイトより)講師のお二方は、特別支援教育を学ぶ者なら知らない人はいない方々。その講演が無料で聞けるとは、またとないチャンスです。特別支援教育に関わっておられる方、新年度に向けて特別支援教育をしっかり勉強したいと思っておられる方、ぜひ申し込んで視聴してみてください。著書もたくさん出版されておられる先生方ですので、講演が先でも、本が先でもいいですが、ネットの本屋さんで著者名で検索して、気になった本を読まれることもオススメします!以下、僕が今回の講演動画を視聴させていただいた感想です。「読み書きが苦手な子どもの基礎理解と具体的対応」・講師:竹田 契一 氏 <僕の感想>・専門的には通級担当者向けの内容ですが、多くの先生方に知っていただきたい内容です。・通級を新年度初めて受け持つ先生には、特に視聴してほしい!・後半は、具体的な指導方法が紹介されています。 例えば、僕が指導している子どもの中にも、長音を「こおえん」「ごちそお」という表記だと思っている子がいますが、そういった子どもにどんなワークシートを使えばいいか、示されていました。自分の指導に生かしていきたいと思いました!・単に指導法を紹介されるだけでなく、どの状態になることを目指すのかにも、ふれられていました。 「自動化をめざす」というのが、ひとつのキーワードかな、と思いました。・漢字が苦手な子に、どの漢字から学習させるのか、という優先順位の話もありました。 意味が大事なので、「読めて意味が分かる漢字を最初に学習する」というお話は、非常に重要なポイントだと思いました。「学力不振といじめと不登校と社会的自立」 講師:品川 裕香 氏 <僕の感想>・まず「自立」の定義からふれられていたところは、特に障害のある方のライフステージを考えるうえでは、重要なところかと思いました。・「いじめは絶対にいけないという共通認識が大事」(ゼロトレランス)という主張と、その具体的なところをお話しいただきました。現代の日本の子どもたちの状況を踏まえたお話で、説得力のある内容でした!・子どもだけでなく大人も、「好きな人だけとつながればいい」と考えがちな社会なので、「いろんな人とつながれるようにする」という学校での取組の重要性がますます増している、と実感しました。・ラジオ体操や交換日記など、できるところから、やっていきたいです。・最後の「自分だけは、自分のことをあきらめない!!」という合言葉は、特に心に残りました。以下、講師の先生のお話に関係する本の中から、特に僕がおすすめする本です!『読み書きが苦手な子どもへの〈つまずき〉支援ワーク』(通常の学級でやさしい学び支援) [ 村井敏宏 ]↑※僕が通級のアセスメントでめっちゃ活用させてもらっている 「ひらがな単語聴写テスト」がついています!!『怠けてなんかない! ディスレクシア~読む・書く・記憶するのが困難なLD』 [ 品川裕香 ] ↑※リンク先の内容紹介だけでも読んでください!!『心からのごめんなさいへ 一人ひとりの個性に合わせた教育を導入した少年院の挑戦』 /中央法規出版/品川裕香(単行本)そろそろ今年度が終わり、新しい年度がまた始まります。春休みは新年度準備が非常に忙しいですが、新しく受け持つ子どもたちのために、勉強もしっかりしていきたいところです。
2022.03.20
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最近は学会もオンラインです。今週末は、LD学会。▼一般社団法人 日本LD学会 第30回大会(神奈川)土日がメインではあるのですが、オンラインだと、なんと、今の時期からすでに、多くの講演が視聴できます。ICT活用に関する講演動画をいくつか観させていただきましたが、とても勉強になりました。特に、杉浦徹先生の教育講演「学びを支える文房具とICT」は、とてもおもしろかったです。専門知識がなくても十分理解できるお話しでしたので、ぜひ多くの方に聞いていただきたいと思いました。オンラインで、かなり参加の敷居が低くなりました。移動時間ナシ、交通費ナシは、当たり前。以前なら学会のときでないと聞けなかった話の多くが、事前から公開され、事後も視聴できるのです。(期間中ずっと視聴できる講演と、ライブ配信の講演に分かれています。 ただ、ライブ配信に関しても、事後のアーカイブ配信が予定されています。)視聴期間は、今回のLD学会の場合、12/31~1/31と、なんと約2ヶ月間もあります。これだけ長い期間があると、時間を見つけて、聞きたい話はぜんぶ聞けます。あいだをスキップして聞くこともできますし、巻き戻してもう一度、なんてこともできます。学会員でない方も参加できます。いろんなテーマの最新情報を得ることができるので、LD(学習障害)に関心のある方は、ぜひ申し込まれてみては如何でしょうか。一般申し込みは12月19日(日)まで受け付けられています。【通常申込 参加費】会員(一般・大学院生):5,000円非会員(一般):8,000円非会員(大学院生・親の会):6,000円非会員(学部生):5,000円お申し込みはこちら → http://conference.wdc-jp.com/jald/2021/participant.html※一般公開講演会(プレコングレス)の参加費は無料です。
2021.12.08
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「読み書き障害」関係の無料オンライン講演会が、12月4日(日)13時半〜15時半にあります。なんと、登壇される方が、この道の最先端を行く方ばかりです。東大先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授。入試での配慮などに詳しい近藤武夫・同センター准教授。菊田史子・一般社団法人「読み書き配慮」代表。米国でインクルーシブ教育に携わる学校心理士のバーンズ亀山静子さん。学校でのデジタルツール活用に詳しい井上賞子・小学校教諭。などなど・・・お一人お一人単独の講演を有料で交通費をかけてでもお聞きしたい方ばかり。これは、スゴイ!!主催は、朝日新聞社です。僕は、申し込みました。ちょうど朝日新聞のデジタル会員になっていたので、申し込みはわりとスムーズでした。(無料会員ですけど。)オンラインイベント「凸凹のある子の未来を輝かせよう~GIGA時代だからできる進学と学び」▼公式案内(申し込みサイトのリンクも掲載)「凸凹の輝く教育」は朝日新聞紙上の連載記事。書籍化にあたっての記念イベントのようです。『学びに凸凹のある子が輝くデジタル時代の教育支援ガイド 子ども・保護者・教師からの100の提言』 (ヒューマンケアブックス) [ 朝日新聞社 ]連載記事の内容は、次のリンク先などからも、読むことができました。▼「凸凹の輝く教育」過去記事一覧(古めのもの?)▼「凸凹の輝く教育」過去記事一覧(新しめのもの?)オンライン時代は、その世界でのトップランナーの講演が、無料で自宅から参加できたりするので、本当にスゴイです。オンラインセミナーは、一度はまると、やみつきになります。最後に、ご登壇される方の著書から、オススメの本のリンクもつけておきます。本当にオススメの本ばかりです。『育てにくい子は、挑発して伸ばす』/中邑賢龍『学校でのICT利用による読み書き支援 合理的配慮のための具体的な実践 ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ』 / 近藤武夫『読めなくても、書けなくても、勉強したい ディスレクシアのオレなりの読み書き』/井上智・井上賞子 ▼★『学校でのICT利用による読み書き支援』 (2018/02/19の日記)▼ 「読み書き障害」の理解啓発の必要性を訴える・・・つもりです。(^^) (2018/10/21の日記)
2021.11.26
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気持ちの切り替えが苦手な子、いませんか。やる気があったのに、急になくなり、何もしなくなる子とか。そんな子が喜んで意欲的になった仕掛けが、コレです。これを見せると、やる気ゼロだったのが、一気に目を輝かせます。(笑)ちなみに、もともとは歌を歌うトリでしたが、電池をつなぐコードがぶっちぎれたので、今は歌いません。パペットなので、手を突っ込む穴は、裏にあります。どこで買ったかはすでに忘れましたが、もしかすると10年以上前にオーストラリアに行った時に買ったものかもしれません。非常に愛嬌のあるカオです。こんなの出されたら、反応せずにおれませんね。こういうパペットを使うと、擬似的にヒトに見立てて、注意・叱責を直接ではなく間接的に伝えたり、パペットと僕のやりとりで、子どもに客観的な気づきを促したりできます。たとえば、僕がトリの役になって、子どもに「~~してみたら、どうかな?」と話しかけたり、子どもがこのパペットを手にはめている時に、その子ではなくトリに向かって、「早くこれをしてください」と注意を促すパターンなどがあります。直接叱らず、パペットを叱る。これ、秘伝です。(笑)
2021.10.18
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秋といえば、研修の季節です。オンライン上でも、実際上でも、10月は多くの研修会に参加しています。そのどれもが学びに満ちていて、とても刺激的です。今日は、特別支援教育に関わる内容で、皆さんにぜひ知ってもらいたいことをシェアさせていただきます。広島大学の氏間先生のホームページに、非常に詳しく報告されている内容です。▼広島県の小学5年生の合理的配慮への道! (広島大学氏間研究室「うじらぼ」ブログ、2020/11/28記事)合理的配慮を受けている小学生のお子さん自身が、自分に関することを積極的に情報発信されているというのが、素晴らしいです。一般的に小学生の時分は、まだ自分の言葉で伝えることが難しかったり、たくさんのことを頭の中で整理することが難しかったりします。そのため、当事者の声を直接的に明確に知ることは難しく、多くの場合、大人が「こういうことかな?」と慮ることをしていると思います。が、この事例は違います。たくさんの情報発信の中に「自分研究」というパワーポイントがあるのですが、自分のことを客観的に分析しておられて、とても小学生とは思えない内容です。これだけ詳しく自分の困り感に伝えられる小学生は、ほかにいないのではないか、と思います。このお子さんが「自分研究」の最後に書かれていることを引用します。なぜこのレポートを書いたかと言うと、大人の自閉症の人がこのレポートを書いて提出してもあまり大人は理解してくれなさそうだから子供である僕がレポートを書いて伝えようと思いました。今の日本は、自分の努力や力ではどうにもできない事を限界まで頑張らなければいけない。その結果、心の病気になり、不登校の子が増える。その原因を僕が自分研究して、発表することにより世の中の大人に知ってもらって、僕みたいに困っている人を救えるきっかけになると思って調べました。(「自分研究」最終スライドより)素晴らしいと思いませんか?このお子さんが書かれたものはほかにもたくさんありますが、特に「苦手な漢字を好きになる実験」は面白かったです。漢字を覚えるのが苦手な子どもたちの思いに寄り添うために、ぜひこちらも併せてご覧ください。特別支援教育に長く関わってきた者として、当事者の思いを知り、それをふまえることが最も大切なことであると感じています。合理的配慮についての理解を広げるためにも、ぜひ、こういった当事者からの発信を、多くの方に見ていただきたいです。 ▼読み書き障害についての福井県の冊子(無料閲覧可)がすごすぎる!2 (2021/05/22の日記)▼12.12(土)デイジー教科書事例報告会のご案内 (2020/11/20の日記) ▼GIGA スクール以後の、今後の方向性について (2020/07/18の日記)▼小学校市販テストの合理的配慮等(正進社のパンフレットより) (2019/05/19の日記) ▼業者テストの「ルビうち」が標準対応に! (2017/06/10の日記)
2021.10.17
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特別支援教育に関係する実践的な本には、いい本がすでにたくさん出ています。あまりにいい本がたくさんありすぎて、困ってしまうぐらいです。今日は、阿部利彦先生の名著『発達障がいを持つ子の「いいところ」応援計画』から、「ここぞ」というところを紹介したいと思います。『発達障がいを持つ子の「いいところ」応援計画』(阿部利彦、ぶどう社、2006、1870円)==================== 目次(「BOOK」データベースより) 1章 子どもたちから教わったこと/2章 大人のまなざしを変えよう/3章 心のストライクゾーンを広げよう/4章 「いいところ」応援計画とは/5章 「いいところ」応援計画の実際/6章 教師による「いいところ」増やし/7章 家庭や学校でできる「言葉かけ」の応援/8章 保護者と教師で「いいところ」応援計画をすすめよう====================僕が選ぶ、「ここぞ」というところは、104ページです。章タイトルは、・大人が「見過ごす能力」を身に付けるです。障害の部分をどう指導するかということよりも、子どもと教師の関わり方の部分です。このページから、要点だけをかいつまんで引用します。====================・要点を明確にして 「~してはいけない。~するように」と、 譲らない姿勢で「強く短く」指導する・「だだこね」や「わざとら行動」に対しては、 あえて見て見ぬふりをするといった 「見過ごす能力」を発揮する・見過ごす時と、ここぞと強く指導する時の 「メリハリ」(p104より引用)====================特別支援教育の専門性とは全く関係ないところですが、こういうところがえてして大事なのです。子どもとの関わり方における、教育の基本が、本質的に詰まっているところだと思うのです。実は今日、ここに書いてあるような「わざとら行動」に困らされていました。「わざとら行動」とは、「先生にかまって欲しくて、わざと悪い行動をしてしまう」というものです。(この説明もp104による)子どもによっては、この「わざとら行動」が非常に頻繁にあり、教師である僕たちが「どうしていいか、わからない・・・」と困ってしまっている状態にあるのです。阿部利彦先生の本を久しぶりに読み返して、大変よいヒントをいただきました。「わざとら行動」に踊らされないように、「見過ごす能力」を身に付けたいと思います。ちなみにこの本のほかのページには、子どもを見る視点や、具体的な支援方法も詳しく書かれています。僕は本書を読んだ時、「書くことの支援」の中にあった「グラフや図を写す時にトレーシングペーパーを使わせる」を読んで、すぐさまトレーシングペーパーを買ってきました。(p123)もう2年ぐらい前のことです。買ってきただけで使うのをすっかり忘れていたので、使いたいと思います。▼コロナ禍での学びと気づきを共有する ~新刊『オンラインとオフラインで考える特別支援教育』 (2021/07/01の日記)▼全ての子に「問題が読める」という前提を (2021/05/28の日記)▼『特別支援教育の実践情報』2021/2・3月号「デキる先生は持っている ちょこっと指導スキル」など、特別支援教育の雑誌の最新情報! (2010/03/05の日記)
2021.09.06
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特別支援教育の雑誌「LD,ADHD&ASD」2021年 7月号の内容が、とても充実していました。おすすめです!具体的に、どこがおすすめだったか、ポイントを挙げていきますね。まず、特集記事の■連携・協働による指導・支援から見る「通級による指導」担当者の専門性いろいろな方が詳しく書かれています。通級担当者として大事にすべきことをしっかりと確認できます。特に、p23の「意味」や「必要性」の話は、大事だと思いました!実践報告はかなり具体的で、中学校現場でなかなか進まない特別支援教育の現状や、それを打破するための丁寧な取組は、読みごたえがありました。(p24-27 「通常の学級との連携・協働による指導・支援(中学校) ~持続可能なLD等通級指導教室を目指して~」長野県の宮島崇先生による実践事例報告)ICT活用に関する情報も、わりといろいろなページに出てきました。そのものズバリの、■ハジメテ先生のためのICT活用の授業づくり入門 (第2回)/金森 克浩というページも。(本ブログにて、前回・前々回とそこでの紹介サイトを取り上げさせていただいています。)高校から進路先への「引継ぎ」についての情報も、普段なかなかふれる機会がなかっただけに、ありがたかった!(p40-43「進路・進学先との連携・協働 ~高校から進路先への「引継ぎ」について振り返る~」西宮香風高校の白井俊介先生による事例報告)アセスメントに関する情報も、かなり詳しく書かれています。そして、これはかなり役立つと思ったのが、■子どもの様子から特性を見取るアセスメント/山田 充いわゆる「観察」のポイントを具体的に列挙されていて、通級担当やコーディネーターにとっては、かなり役立つこと請け合いです。・教室に入った時・子どもの掲示物の確認・環境の確認・戸棚や机の確認・子どもの観察・先生はどんな先生か雑誌の中のわずか4ページの中に、これだけの充実した内容を詰め込まれていることに、驚きます。自分自身も通級担当として同じことを考えながら教室に入らせてもらっているので、「やっぱりこういうことが大事なんだな」と再確認させていただきました!ほかにもまだまだおすすめポイントがありますが、とりあえずこのへんで。盛りだくさんの内容は、目次からも見て取れます。最後に目次を転載しますので、チェックしてみてくださいね。=======================【目次】特集 連携・協働による指導・支援から見る「通級による指導」担当者の専門性特集について/杉浦 徹〈提言〉特別支援教育を担う教員の専門性の在り方/加藤 典子〈提言〉通級担当者の専門性とS.E.N.S養成プログラム/花熊 曉〈提言〉通級担当者の「連携・協働」の専門性/笹森 洋樹〈提言〉アセスメントができる通級指導教室/山田 充〈実践〉通級担当者の専門性が光る! 事例 通常の学級との連携・協働による指導・支援(幼稚園) ~その子らしさと育ちを支えるために~ 通常の学級との連携・協働による指導・支援(小学校) ~通常の学級と連携・協働していくために大切なこと~ 通常の学級との連携・協働による指導・支援(高等学校) ~通級という「居場所」があることで,通常の学級で“自分らしさ"を発揮する~ 保護者との連携・協働 ~保護者・担任・関係機関との連携~ 福祉・医療機関との連携・協働 ~横浜市情緒障害通級指導教室と地域療育センターとの連携の現状と課題~ 進路・進学先との連携・協働 ~高校から進路先への「引継ぎ」について振り返る~ESSAY マーブル模様の社会に/国沢 真弓街の中のユニバーサルデザイン (第6回) /髙橋 儀平発達障害の子どもに役立つ! ちょこっと支援の教材・教具 (第30回) /杉浦 徹発達障害のある子の指導に役立つ実行機能講座 (第2回) /森口 佑介ハジメテ先生のためのICT活用の授業づくり入門 (第2回) /金森 克浩心理検査を活用したアセスメントバッテリーの組み方 (第2回) /鳥居 深雪英語教育のユニバーサルデザイン (第10回) /村上 加代子ワーキングメモリーを支える学習支援 (第6回) /高川 康特別なニーズをもつ子どもの心へのアプローチ (第2回) /前川 あさ美一度は手にしたい本 みんなが輝くために(1)・(2) (梅田真理原作・著/河西哲郎マンガ) 子どもの心理検査・知能検査 保護者と先生のための100%活用ブック (熊上崇・星井純子・熊上藤子著)/田中 容子特別支援教育ステップアップ講座 (第13回)/山田 充S.E.N.S支部会紹介 (第14回) 愛知・高知SENS for S.E.N.S (第25回)=======================▼出版社公式サイトのこの号の内容▼通級(特別支援教室)の巡回指導について (2021/06/17の日記)▼高校通級の最先端の取組を知る ~『特別支援教育研究』2021/2月号 (2021/02/23の日記)▼舞台は通級教室! ~マンガ『みんなが輝くために』 (2020/06/20の日記)▼『発達障害通級指導教室の指導・支援法』3~逆行性(背向型)チェイニング/ロールプレイング (2011/04/21の日記)
2021.07.25
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何年か前に、「特別支援教育就学奨励費」の支給対象が、通級も含まれることになりました。▼特別支援教育就学奨励費(文部科学省のサイト内の説明) https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu_00001.htm文部科学省の説明を引用すると、特別支援教育修学奨励費とは、「障害のある幼児児童生徒が特別支援学校や小学校・中学校の特別支援学級等で学ぶ際に、保護者が負担する教育関係経費について、家庭の経済状況等に応じ、国及び地方公共団体が補助する仕組み」のことです。地域の小学校の場合、特別支援学級の子どもたちが基本的に対象となり、保護者にはその案内がされていて、申請も受け付けています。で、文科省のいう「平成25年度より、通常の学級で学ぶ児童生徒(学校教育法施行令第22条の3に定める障害の程度に該当)についても補助対象に拡充しています。」というのが、通級が関わる部分になります。平成25年というともうずいぶん前ですから、僕は冒頭で「何年か前」と書きましたけど、実際はだいぶ前ですね。。。僕は対象の拡充については知ってはいたのですが、実際に自分の受け持ちでそういった案内や支給申請をしたことがなかったので、少なくとも保護者に情報提供はしなければならないのではないか、とずっと気になっていました。勤務市や近隣の市町でも文科省の対象拡充通知を受けて条例を改正したり説明を変えたりしているところはなく、「これって、通級の保護者には知らせなくていいのかな?」と思っていました。そこで、詳しいことを、やっと調べてみました。どうやら、他校通級の場合に、公共交通機関を使って通級指導を受けに行っている場合に、その交通費の一部が援助される、というのがよくあるパターンのようです。※他校通級というのは、自分の学校とは違う学校まで通級指導を受けに行く形態のこと。(ネット上での各自治体が出している情報による。 自治体によっては自家用車の送迎の場合でも、家庭の収入の程度によって補助される。)僕の勤務地域では他校通級ではなく巡回指導を行うのが一般的で、僕の受け持ちの子どもに他校通級はいません。また、田舎なので、公共交通機関(いわゆる電車・バス)よりも自家用車による移動ばかりが使われています。(電車やバスもありますけど、本数が少なくて、小学生が他の学校に行くのに使われているケースはおそらくゼロです。)調べてみて詳しいことが分かったので、ほっとしました。▼通級(特別支援教室)の巡回指導について (2021/06/17の日記)
2021.07.08
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僕も少しだけ関わらせていただいた、次の書籍が発売になっています。 その名も、 『オンラインとオフラインで考える特別支援教育』! 『オンラインとオフラインで考える特別支援教育』 (編著:郡司竜平・野口 晃菜、監修:青山新吾、明治図書、2021/7、2376円) ▼出版社公式サイト ↑目次の詳細や、「はじめに」、中身の試し読みができます! 1冊の本ができるまでに関わらせていただいて、本になるまでの苦労の一端が分かりました。 コロナ禍でのたくさんの先生の取組をまとめた貴重な1冊になっています。 特別支援学校の先生、特別支援学級の先生には、特におすすめです! 本になってから初めて、最初から最後まで目を通しました。 「この先生の、この一言! コロナ禍での気づきが集約されているなあ」 と感じることが、たびたびありました。 コロナ禍での学びを書籍として整理し、共有化すること。 これはとても大事なことだし、この本の存在意義は、めちゃんこデカイ!と思っています。 (興奮してアラレちゃん語が飛び出てしまいました。ご容赦ください) たとえば僕が感銘を受けたのは、次のような言葉です。 「『学校』という場では、子どもの笑顔を引き出すことが最も大切である」 (p88、東京都の公立小教諭 川崎和子先生の言葉) 「『学校以外でも』学べることと『学校だからこそ』学べることの双方について向き合う機会となりました。」 (p158、神奈川県の特別支援学校教諭 櫻井有希先生の言葉) それぞれの先生がそういった思いを持つに至った具体的なところは、ぜひ本書を読んでいただければと思います。 僕も、それぞれの先生と同じことを思っていました。 たぶん、そんな先生方は、全国にたくさんいると思います。 コロナ禍での教育を共に考えてきた同志だからこそ、心から共感できることが、ここにあります。 ただ、人間はいずれ忘れてしまう生き物。 忘れてしまう前に、こうやって本を読んで、コロナ禍で抱いた思いとしっかり向き合い、確認しておくこと。 それは、めちゃんこ大切!と思います。 (また言ってしまいました。ご容赦ください。) しかも、この本に寄稿されている先生方は、校種も立場も、様々です。 自分の学校とは違う校種、違う学校で、「こんなことも、あったんだな」と、改めて気づかされます。 それぞれの場での真摯な取組から、子どもたちの今後に生きる学びが、きっと共有できると思います。 「学校の先生」以外にも、学校を支える専門的な立場の方々(SSWや心理士さん等)も寄稿されているのも、本書の特徴です。 そのおかげで、本書がよりコロナ禍での特別支援教育の取組を立体的に捉えたものになっていると思います。 学校現場での取組を、その学校の先生以外の専門的な立場の方が分析され、文章にまとめてくださっている章があるのですが、こういうアプローチは、本当にありがたい! 本書の元になるSNS上のグループを立ち上げられた野口晃菜さんは、次のように語っておられます。 (コロナ禍は)「一緒に考えていくっていう絶好のチャンスだった。」(p187) 「カリスマ先生の『特別な』話じゃなくて、身近な先生たちの話としてまとめたい」(p197) 野口さんのそんな思いを受け継ぎ、かなり長い準備期間を経てようやく世に出た一冊です。コロナ禍での学びをムダにしないために!チャンスに変えるために! ぜひ、読んでいただければと思います。 『オンラインとオフラインで考える特別支援教育』 (編著:郡司竜平・野口 晃菜、監修:青山新吾、明治図書、2021/7、2376円) ▼出版社公式サイト
2021.07.01
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通級(特別支援教室)の巡回指導について調べていたら、非常によくまとまったレポートを発見しました。▼発達障害通級指導教室の巡回指導校における取組 -担当者の役割と円滑な教室運営- (秦野 真一、上越教育大学学校教育実践研究センター「教育実践研究」第31集(2021)211-216)「巡回指導」というのは、担当教員が複数の学校を巡回する、という意味です。対をなすのは「他校通級」という用語です。「他校通級」というのは、指導を受ける子どもが、保護者の送迎のもと、他校まで行く、というもの。「巡回指導」は、専門的な指導をする教師が自分の学校まで来てくれる、という、子どもや保護者にとってはかなりありがたい制度です。僕はもっと広まっていってほしい、と思っています。僕のいる兵庫県ではわりとポピュラーなのですが、全国的には、まだあまり実施されていない気がします。ちなみに「特別支援教室」というのは、現状では東京都内だけでの名称です。もともと全国的に「特別支援教室」を作ろう、という動きはあったのですが、そのときは特別支援学級を置き換えるものとして構想されていました。もう10年以上前でしょうか・・・。今は通級の「他校通級」を置き換えて「巡回指導」を行うにあたり、東京都は独自に「特別支援教室」という名称を使っています。(東京での開始は、平成28年度。 同じようなことはそれまですでに他の都道府県でもやっていました。 教師巡回型の通級は全国的な取組です。)▼東京都の「特別支援教室」に関する保護者向けリーフレット (平成27年5月、東京都教育委員会)なお、特別支援教育の専門誌におけるほんの数ページの寄稿でよければ、↓こんなのも、あります。▼雑誌「特別支援教育研究」 発売日・バックナンバー (東洋館出版)↑上のバックナンバーのサイトは目次欄をスクロールしていかないと続きが見られないのですが、「巡回」で検索をかけると、2020年12月号と2021年1月号で通級の巡回に関する記事が表示されますよ。通級の巡回指導に関する情報はすごく少ないので、情報をまとめた本などの出版が待たれるところです。僕の知る限り、まだ本としてまとまったものは出ていないと思います。「通級指導」に関する本はいくつか知っていますが、巡回指導についてはふれられていなかったり、ふれられていてもすごく記述が少なかったりします。僕が書くしかないか?(^^;)(関連する過去記事)▼特別支援学級や通級に入るために、診断書は必要??? (2019/08/23の日記)▼「通級で期待される効果」 ~通級指導教室のマンガ『みんなが輝くために』2 (2021/02/04の日記)▼高校通級の最先端の取組を知る ~『特別支援教育研究』2021/2月号 (2021/02/23の日記)▼コントロールが苦手な子の、リコーダーの指導 ~イメージを大切に~ (2021/06/03の日記)
2021.06.17
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このブログは「きょういくユースフル」です。役に立つ情報というのはすでに本になっていたり、誰かがまとめていてくれたりすることが多いので、普段はそれを紹介させていただくことが多いです。自分の教育実践はめったに書かないのですが、たまには書いておきたいと思います。(^^;)今回は、「がんばりカード」についてです。類似の実践がたくさんありそうですが、とりあえず自分がやったことだけ、書きます。もともとは、約15年前。2006年のことです。当時、特別支援学級を担任していたときに作ったのが最初です。当時の勤務校では、障害のある子が「交流学級」の場の中で基本的に常に過ごすということをやっていました。そうすると「交流学級」の場の中でその子が何をどうがんばったのか、またはがんばらなかったのかが、担任の私に把握できない、という悩みから作りました。(実際にはいろんな先生方から、その子の様子は後で聞くのですが、情報に偏りがあり、どの時間も正確に把握するには、足りなかったのです。)自分のパソコンの中に、当時のデータがあります。それには、こんなふうに書いてありました。 これまで障担(※障害児学級担任。当時の言い方。今の「特別支援学級担任」)として動いてきて、1日中つけないという制約から学習実態や生活実態がはっきりつかめない時間帯があり、意味のある学習ができていないということを知りながら手立てを講じきれていないという反省がありました。 そこで、1日のうちどの時間帯でどれだけがんばったか、またはがんばれなかったかを簡単に把握し、本人を勇気付けると共に、具体的な手立てをうっていく具体的な資料としたいと思います。 なるべく交流学級や専科の先生の負担にならない形でのものを考えました。クラス内で発表ができたり、なにかひとつの学習が遂行できたり、または本人の机の横においてある個別用の課題ができたりしたときに、お手数ですがハンコをおしていただけますでしょうか。まだ試行段階ですので不備もあるかと思いますが、目に見える形で各時間ごとの記録を残していきたく、お願いいたします。(2006/4/24 自作「がんばりカードについて」より)上の文面でお願いしている相手は、通常学級の授業者(「交流学級」の担任や専科の教員)や、該当の子どもについてくださる学生ボランティアさんだったと思います。15年前のことなので、うろ覚えですが。当時の「がんばりカード」というのは、こういうものです。 ↓ イラストは、子どもに合わせて、その子の好きなものの絵を使っていました。上の例だと、電車が好きな子どもだったので、電車(?)っぽい絵になっています。「ねらい」と「方法」というのも、記述が残っていました。 ↓○ねらい ・本人にとって、自分がどれだけがんばったかが視覚的に分かり、次へのはげみになったり、いろんな人からほめてもらえる材料になる。 ・障担が入れない時間のすごしかたについても簡単に統計的に把握し、意味のある学習ができていない時間について優先的に手立てを考えたり個別指導を入れたりすることを考える材料にする。 ○方法 対象児童は移動教室の際もこのカードを持ち歩き、自分のがんばりの度合いに応じて毎授業時間担当教師からハンコを押してもらう。1日の終わりごろに○○(支援学級の担任である私)がかんたんにコメントを書く。教室の自分の机の上において帰る。システムとしてはわりと長期間機能していたように思います。その後僕はこの「がんばりカード」を、通級でもたまに使うようになります。様式は、上のものから、だいぶ変更を加えました。通級の対象児童も、僕が普段の様子を把握しきれないという点では、支援学級の比ではありません。毎日毎時間どうやって過ごしているのかが気になる児童も、かなりいます。(^^;)ただ、単なる実態把握としてだったら、このカードよりも、通常学級の担任との連携で、いろいろ他の方法も考えられます。「がんばりカード」の特色は、ただ1点、本人が目にする、というところにあります。上の「ねらい」の1点目(赤太字にしているところ)です。本人のがんばりを認め、励まし、その継続を後押しするツールとしてなら、今でもこれは役に立つと思っています。2006年当時のやり方では学校に置いて帰ることになっていました。しかし、その子が家に持って帰って保護者に見せて、保護者から「がんばったね」とほめてもらう、という使い方も、考えられます。今の僕は、断然、そっち派です。保護者・本人・担任・通級担当の4者をつなぐツールとして機能する可能性があります。そういうわけで、僕の支援学級時代の遺産である「がんばりカード」なるものを、もう一度ちゃんと活用してみようかと考えています。ちなみに、「夏休みがんばりカード」など、長期休業中バージョン、というのも作っていました。一方で、・がんばりは本来自主的に生まれるものであり、強制するようなことは、あまりよくない。・大人が子どもの毎時間を監督するという考え方については、管理的な側面が強くて、あまりよくない。という気もしています。そんなわけで、使い方には慎重を期したい、とも思っています。まあ、参考程度に、してください。
2021.06.10
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とってもうれしいことがありました。なんとこの間の日曜日のアクセス数が、3000を超えていました。このブログのアクセス数は1日あたり1000~1300くらいが平均なので、このときだけ、格段にぐんと多くなっていたのです。学習障害のお子さんの指導や支援に関する福井県の無料冊子の記事が、すごく読まれているみたいです。なんと冊子の作成に関わられた福井の先生からも、メールをいただきました。ブログがたくさん読まれると、そういったご連絡をいただくことにもつながるのですね。本当に、ありがたい限りです。このブログの情報が、特別な支援を必要とする子のために少しでも役に立つようであれば、こんなにうれしいことはありません。ブログを書いていて、よかったなあ、と思いました。まだ読まれていない方は、ぜひ!大人気ですので、乗り遅れるな。▼ 読み書き障害についての福井県の冊子(無料閲覧可)がすごすぎる! (2018/10/17の日記)▼読み書き障害についての福井県の冊子(無料閲覧可)がすごすぎる!2 (2021/05/22の日記)読み書きが苦手な子の指導や支援については、現場も、まだまだ試行錯誤のところがあります。つい先日も、全国学力学習状況調査がありました。「調査」のはずなのですが、一般的には「学力テスト」と報道されています。まあ、たしかに実質的には学力テストの側面もあるのですが、成績には一切加味されません。その時点での学力を把握するためのテストです。小学生は1枚もののテストしか普段は受けていないので、このときだけ問題冊子と回答用紙が別々のものを渡されて、慣れないテストでとっても大変なのです。こういったテストでも、読みが苦手な子のための配慮はあります。例えば、ルビつきの問題冊子がそうです。そういった利用も、ずいぶん進んできたように思います。ただ、ルビ付きだけでは十分でなくて、言葉の句切りに区切り線を入れてやる必要のある子や、読み上げを必要とする子も、なかにはいます。勤務校では、全国学力学習状況調査と同時に小3~小5にも、標準学力調査が実施されました。こちらは全国規模の悉皆調査ではなく、勤務市が導入している市内の統一調査。僕は、とある子のために、問題冊子の文章の意味の区切りに、シャーペンで線をせっせと入れてやりました。翌日の通級では「読みやすかった!」と言っていたので、当日はついてやれませんでしたが、助けにはなったようです。まだまだ「そんな特別扱いはしていいの? しちゃだめでしょ」と思われる先生もいらっしゃるとは思いますが・・・「問題を読める」のは、大前提ですよね。問題が読めないのに、テストを受けさせること自体、「そういうことを、学校がしちゃだめでしょ」と言われるのが、今の時代です。問題が測ろうとしている学力を正確に調べるためにも、全ての子に「問題が読める」という前提は保障してあげたい、と強く思います。
2021.05.28
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ご依頼をいただいて、他市の通級担当者研修会でICT活用についてお話させていただくことになりました。ありがたいことです。で、その日が近づいてきたので、重い腰を上げて情報をまとめていたのですが、その中で、福井県の読み書き障害についての冊子に増補版が出ていたことが分かりました。はっきり言って、僕の話を聞かなくても、この1冊だけ読めば、事足ります。 『「読み」や「書き」に困難さがある児童生徒に対するアセスメント・指導・支援パッケージ』 (福井県特別支援教育センター、R2.9 第2版) この冊子については、以前、ブログでも取り上げさせていただきました。その時は平成30年版(第1版)でした。▼読み書き障害についての福井県の冊子(無料閲覧可)がすごすぎる! (2018/10/17の日記)とにかく、役に立つ情報がコンパクトにまとまっており、分かりやすいんです!今まで僕が収集してきた数多くの情報の集積版が、なんと、無料。僕は、無料が大好きです。福井県には足を向けて寝れませんね。なお、第2版で追加されていた内容は、以下の通りです。=======================(1)基本的知識 (北海道大学 関 あゆみ 先生)(2) 教科書関連の情報 ・学習者用デジタル教科書の制度化(文部科学省) ・学習者用デジタル教科書(光村図書,東京書籍) ・ペンでタッチすると読める「音声付教科書」 ・音声教材BEAM ・総ルビ教科書(光村図書、東京書籍) (3)教材やアプリ,実践事例の紹介 ・漢字サポートROM(青葉出版の教師用付録) ・スマイル式プレ漢字プリントの実践例 ・「ディスレクシア音読指導アプリ」 の活用例 ・ノートアプリの活用例 ・アプリ「 Yomiwa JP Dictionary (多言語辞書)」 ・アプリ「 Office Lens (オフィスレンズ)」(4)合理的配慮関係の情報 ・「大学入試センター試験」で配慮を受けるには? ・「電気工事士試験」で配慮を受けるには? ・読字障害のある生徒に対する中学校・高校における5年間の支援事例 ・タブレットPCを使って読み書きを楽に楽しくするために(東京大学 平林 ルミ 先生)=======================第1版ではずっと知りたかった「運転免許の試験を受ける際の合理的配慮」について掲載されてて驚いたのですが、今回は「電気工事士」試験についての合理的配慮が載っていました。学校を出て社会で働くときのことまできっちり想定して編集されているところが、素晴らしいです。「特別支援教育」が制度化されたときに、「生涯のライフステージをサポートする」といった説明がされていたのですが、学校教育のみならず、その先をしっかりと見据えた支援がまとめられているところが、本当に素晴らしいと思います。僕は福井県は大好きですが、福井県民ではないので、更新された情報には全く気づいていませんでした。自分の話の中で紹介しようと思ってネット検索をかけずにいたら、更新に気づかないままでした。やはり、人に教えようとするのが、一番勉強になります。「通級教室におけるICT活用」について他の人に教えようとして、僕が一番勉強になっています。(関連する過去記事)▼読み書き障害についての福井県の冊子(無料閲覧可)がすごすぎる! (2018/10/17の日記)▼「学習障害」やその「進路」 ~井上智さんの本をおすすめします! (2020/07/19の日記)▼漢字が読めない子のための教科書(PC、タブレットでの支援) (2017/07/13の日記)▼ 希望する支援を本人に聞くアンケート (2017/07/30の日記)▼Wordの音声入力で読書感想文 (2018/08/24の日記)▼『読み書き障害のある子どもへのサポートQ&A』 (2018/10/13の日記)
2021.05.22
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今年度は「特別支援教育」に関する雑誌を3誌、購読しています。3誌も読むのはなかなか読むのが追いつかないのですが、非常に勉強になります。最近読んだオススメの号を紹介します。『特別支援教育の実践情報』2021年 2/3月号(明治図書、税別927円)なんと通算200号の記念号です。この号の特集記事が、すんごく、役に立つのです。特集名は、「デキる先生は持っている ちょこっと指導スキル」!「デキる先生が実はしている小さいけれど大切なこと」というテーマで、P6からP37まで長きにわたってズラズラ~っと、1ページごとに別のスキルが、読みやすくまとめられているのです。さすが200号記念号、現場のニーズにジャストフィットする特集記事だと思いました。しかも、僕の知っている先生方が軒並み寄稿されていてびっくりしました。(^^;)公式サイトから「もくじの詳細」をクリックすると、具体的な各スキルのタイトルが分かります。ぜひ、チェックしてみてください。▼明治図書『特別支援教育の実践情報 2021年2・3月号』公式ページたとえば「LDの子どもの理解と配慮ポイントを押さえる」といった内容があります。「○○の子どもの理解と配慮ポイントを押さえる」は、発達支援教室ビリーブの加藤博之先生が書かれているのですが、「ADHD」「LD」「知的障害児」「ASD」のそれぞれに分けて書かれているので、4月から新規に通級や支援学級を担当する教員にとっても、とても参考になるものではないかと思います。ASDの場合だと「その子の世界に入り込み、同じ時間を過ごすことが大切です。」(p17)と書いてあるなど、子どもとの関わりで役に立つ金言が短くまとめられており、子どもの世界を大事にする温かな著者のまなざしが伝わってきました。普通に書いたら何十ページ、何百ページになりそうなテーマを、1ページですっきりとまとめられているのは、本当にスゴイです。他の先生の寄稿にも共通して思ったことですが、どの方も本当に子どもを大切に思われていて、その結果こういう考えや支援が出てくるのだな、と納得できるものでした。各先生方が夢の共演をされる中で、それぞれがコンパクトにまとまった記事が読め、普通に本を買うよりもお得かもしれない、と思いました。辞書的に後で探して読み返す用途にも使えそうです。最後に別の雑誌の話も。少し前にご紹介した『特別支援教育研究』(東洋館出版社)についてです。(過去記事▼高校通級の最先端の取組を知る ~『特別支援教育研究』2021/2月号)最新号の3月号は、毎回の「通級」の連載記事に、なんと「知的障害のある子どもの通級による指導の実践の紹介」が載っています。知的障害のお子さんは通級指導の対象ではないのですが、特別支援学級に入っている子だけが知的障害かというとなかなか怪しいところがあり、こちらも、現場の隠れたニーズにマッチする記事では、と思いました。宮城教育大学附属小学校の川村修弘先生が、文部科学省の委託事業で研究されていた内容らしいです。「知的障害は通級の対象として認められていないのに、こんな記事を出していいの?」と最初思いましたが(笑)、研究事業として認可されて、されていたのでした。▼東洋館出版社『特別支援教育研究』2021/3月号公式サイトこちらの雑誌はこれまでの号でも今年度「通級による指導の極(きわみ)~自立活動の指導を追究する~」という連載記事がありました。4月から新しく通級の先生になられる方は、興味のある号を読んでみられるのもいいのではないでしょうか。
2021.03.05
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高等学校で「通級」が開始して数年が経過しました。とはいえ、通級がある高校は各都道府県においてほんのわずか。ここからどう広げていけるか、といったところだと思います。今年度僕が購読している特別支援教育の雑誌『特別支援教育研究』(東洋館出版)が、2月号において高校通級の取組をかなり掲載していました。今までのこの雑誌の特集記事はどちらかというと特別支援学校や特別支援学級に寄っていたように思っておりましたので、この号で高校通級の特集が大きく組まれたのはやや意外でした。こちらに載せられていたのが、どれも、とても素晴らしい取組報告なんです。ゼロから始まった高校通級を、工夫して実践されている取組の具体像から、大変勉強させていただきました。高校通級に興味のある方は、ぜひお読みいただければと思います。月刊『特別支援教育研究 2021年2月号』(通算No.762)(東洋館出版、税込890円)第1特集:高等学校における多様な教育的ニーズへの対応 ~特別支援教育の視点で捉える~ [論説] 高等学校における特別支援教育のこれまでとこれから 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 加藤典子 [実践] 高等学校における学校全体でチームとして取り組む特別支援教育 京都府立清明高等学校 塩見 匠 高等学校における多様な教育的ニーズに対応するUDLに基づく授業デザイン 東京都立中野工業高等学校 松戸結佳 高等学校における通級(SE教室)による指導の推進を目指して 千葉市立稲毛高等学校 清水範子 「なりたい自分」「夢の実現」を目指した自立活動 兵庫県立西宮香風高等学校 武田博子・白井俊介・阪口あつ子▼出版社公式サイト具体的な取組報告を読ませていただいていると、どの学校も、学校を挙げて取り組んでおられ、狭い範囲でとどまっていないなあ、と感じました。高校通級という制度をきっかけに、「みんなの学校」としての自校の特色をよりバージョンアップさせている、というふうに感じました。第2特集 「新しい日常」の中、子供たちの学びについて考えるも、タイムリーな話題で、よかったです。「家庭と連携し、繰り返し指導する中で、障害の重い子どもたちでもマスクを着用できることがわかりました。」(p25)などの、短くコンパクトな報告の中に、勇気や気づきをいただきました。(関連する過去記事)▼「通級で期待される効果」 ~通級指導教室のマンガ『みんなが輝くために』2 (2021/2/4の日記)
2021.02.23
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通級指導教室を舞台にしたマンガ『みんなが輝くために』の第2巻を読みました。『みんなが輝くために2 舞台は通級指導教室』(梅田 真理、学びリンク、2020/10、税別800円)「通級」そのものが舞台のマンガはかなり珍しい。と言うか、このマンガ以外にはまだないのではないかと思います。それぞれのお話でテーマがはっきりしていて、臨場感を持って困り感のある子のことを考えられるようになっています。第2巻は次のようなお話が収録されています。====================第5話 ぼくは体を動かすのが苦手第6話 通級指導教室はこうしてできた第7話 ぼくは計算が苦手 私は割合が分からない第8話 僕はうまく発音できない 読むことが苦手なんだ====================マンガが主体ですが、コラムのようなページもあり、そちらも勉強になります。第6話の後には「通級で期待される効果」というページがありました。「『達成感が自信につながり次への学習意欲を生む』ことが、 個々の特性に応じた通級による指導の一番大きな効果です。」(p76)という結びに、非常に共感しました。まさに!自分自身もそれを心にとめながら、今後も通級指導を続けていきたいと思います。通級指導教室の先生以外の学校の先生が読まれてもいいと思いますし、上の目次の「計算が苦手」などに当てはまる子どもに関わる保護者や支援サービスの方が読まれても、参考になると思います。オススメです!(関連する過去記事)▼舞台は通級教室! ~マンガ『みんなが輝くために』 (2020/6/20の日記) ↑こちらの記事では、他の発達障害をテーマにしたマンガにもふれています。 よろしければ合わせてお読みください。
2021.02.04
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過去に2度参加させていただいた「キミヤーズ塾」が、なんと次回はオンライン開催。メールで案内をいただき、さっそく申し込みました。日時は、2月27日(土) 13:00〜16:00。ZOOMによるオンライン開催です。参加費は2000円。詳しくは公式案内をご覧ください。申し込みもそちらで。▼特別支援教育を考える講義と実践のキミヤーズ塾オンライン公式案内 (こくちーずプロ)今回のテーマは「知的ピョンピョン好奇心:ことばとかずの授業づくり」ということです。キミヤーズ塾の村上公也先生はびっくりするような面白い実践をされてきた先生。特別支援教育について自主的に学びたい方には、ぜひオススメしたい研修です。いつもは休日に京都であるのですが、今回はオンラインということでとっても参加しやすい!ありがたいことです。なお、テキストをお持ちでない方は、事前に購入して読んでおくことをおすすめします。内容の濃すぎるテキストで、圧倒されます。研修に参加されずにこの本だけ読んでも十分刺激的ですよ。ちなみにあまりにも内容が濃すぎるので、僕は未だに読みかけです・・・5年以上かけて読んでるよ!『キミヤーズの教材・教具 知的好奇心を引き出す』(村上公也・赤木和重、クリエイツかもがわ、2011,3080円、DVD付き)ちなみに僕が参加した過去の研修ですが・・・めっちゃ面白かったです。・関連する過去記事▼教員向け 関西のおすすめの研修(2016/7/26の日記)↑このときは、オススメの夏の研修の1つとして最後に紹介させていただいていました。
2020.12.04
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特別支援教育についての日めくりカレンダーを作るという企画にお誘いいただきました。ちょうど明日、通級指導の巡回校に話をしに行くので実践をまとめていたところでした。研修に使うつもりのスライドを見ていると、わりとスルスルと出てきました。~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~「1人じゃない ほかにもいるよ つながろう」特別支援教育で一番大事なことを考えたときに、まず出てきたのが、コレです。教師も、子どもも、障害のある人も、ない人も、つながる。特別支援教育だけでなく、教育全体、社会全体の中で僕が一番大事にしていきたいことが、コレかもしれません。「つたえよう それが×なら なにが〇?」自閉症当事者への支援グッズを作成・販売されているおめめどうさんの「〇×メモ」のように、「ダメです」「やめなさい」だけではなく、正しい行動をセットで示すことの重要性を標語にしました。▼おめめどうさんの「〇×メモ」公式サイト「シンプルに ビジュアル化して シェアしよう」これは、授業のユニバーサルデザイン研究会の、「授業UDの3要件」を、そのままつなげたもの。かなり安易に標語にしちゃっていますが、五七五の語頭にそれぞれカタカナがきて、非常に目立つ感じに仕上がっております。↓関係する過去記事授業のユニバーサルデザインを!(2013年1月26日)授業のユニバーサルデザイン研究会の出版物は、分かりやすくて実践的ですので、何冊かはぜひ読んでほしいと思います。「授業UDの3要件」の説明も、本から知るのが一番いいのですが、ネット上だと以下の記事の中にいちおう含まれています。連載記事の中の1つですので、リンク先からたどれる他の記事もセットでお読みください。▼「授業のユニバーサルデザイン」の3要素⑨(第10回) (学びの場.com 戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表 笠原 三義 先生)「やり方は みんなちがって みんないい」現状では、特に日本の学校では、違うやり方が認められづらいですが、いろんなやり方がどんどん認められるようになってほしい、という願いをこめて、標語にしました。特に、読み書き障害のある子どもたちが普通教室にタブレットPCを持ち込んでデジタル教科書で学ぶということが、認められるようになればいいな、と思います。着実に、そういう世の中に、近づいていますよね。「みんなちがって、みんないい」は、金子みすゞの詩『わたしと小鳥とすずと』の中の名フレーズ。特別支援教育ではよく用いられる名文句です。「やり方は」と、対象を狭めてしまったのは、まずかったかな。本来は、もっと広く、多様性を尊重する考え方を示す言葉ですね。DVD>みんなちがって、みんないい 21世紀のまなざし金子みすゞ (<DVD>) [ 矢崎節夫 ]「教え合い 支え合うから 『学び合い』」支援を要するか要しないかにこだわらず、互いに関わり合い学び合う教室をめざす取り組みに惹かれます。二重鍵かっこの『学び合い』は、西川純先生が提唱されているものを指します。僕が西川純先生の著書を初めて読んだのは、2009年。この頃は『』ではなく「」をつけていました。『「座りなさい!」を言わない授業』~西川先生と「学び合い」の授業(2009/11/13)僕自身は通級指導担当なので『学び合い』が実践できていませんが、『学び合い』のもたらす可能性は無限だ、と感じています。古くからある共生共学の思想の中にも、「子どもは子どもの中で育つ」というものがありますが、今の世の中で現実的にインクルーシブ教育を進めるなら、『学び合い』がひとつのキーワードになるかなあ。「安心は すべてのベースだ 最優先」「特別支援教育のキーワードを1つ挙げろ」と言われると、「安心」はその筆頭に挙がります。僕が勤務する兵庫県が打ち出した「兵庫県特別支援教育第三次推進計画」でも、「兵庫県がめざす特別支援教育」の一つ目に、「すべての子どもが認め合い、安心して学べる環境」が挙げられています。▼兵庫県特別支援教育第三次推進計画(PDFファイル。平成31年3月 兵庫県教育委員会)他の地域でも、同じような傾向があるのではないでしょうか。「書字障害 少し書くのに エネルギー」書字障害の子どもたちは、全く書けないわけではありません。だからこそ、「がんばれば、書けるじゃないか」と思われてしまいます。そのため、担任の先生に「全く書けないわけではないが、書くことにすごくエネルギーを使うみたいなんです」という説明をさせていただくことがあります。それをそのまま標語にしてみました。ちょっと説明不足かな?「不注意は わざとじゃないよ 責めないで」今度はADHDのケースです。『うちの子はADHD』の中学生時代のエピソードを見て、田中康雄先生の解説を読んだことにより、思いつきました。『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』『発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?』(2020/6/21)「ちょっとまて なんと言ってる? 本人は」これが最後。「特別支援教育」の中心には誰がいるのか?もちろん、子ども本人がいるはずなんです。それを飛び越えて、周りがいろいろ決めて、本人の意向を確認していないときがあります。自戒を込めて、この標語。本人のことを、本人の意見を聞かずに決めるのは、やめましょう。~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~★~とりあえず思いついたのは、以上です。自分の考え方とか、子どもたちに知ってほしいこととか、短い文字数でギュッと凝縮して標語にしておくと、今後の教育活動にとてもプラスになりそうです。やはり、五七五の形にすると、歯切れがよくて、かなり覚えやすいですね。ちなみに、五七五の特別支援教育の教材としては「ソーシャルスキルかるた」というのがあります。今回の標語をつくるにあたっては、そこでかるたになっている標語もけっこう頭の中に出てきました。五色ソーシャルスキルかるた スタートキット<読み札+取り札> 遊びながらルールとマナーを身につける!▼公式販売サイト(詳細説明あり)
2020.07.26
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「インクルーシブ教育」に関する本が多く出版されるようになりました。一昔前にも「インクルーシブ教育」(障害のある子も通常学級で共に学ぶ教育)に関する実践はありましたが、全国規模ではなく、ある特定の地域で取り組んでいて、なかなか周囲に広がらない、という状況であったかと思います。それが、全国的な広がりが見え始めた、と言っていいかもしれません。現段階での「インクルーシブ教育」について考えるワークショップがそのまま本になったものがあります。読んで非常に衝撃を受けました。「インクルーシブ教育」について考える際には、ぜひ読まれてみては、と思います。『「みんなの学校」をつくるために ~特別支援教育を問い直す~』( 木村 泰子×小国喜弘、小学館、2019、1500円)(リンク先で「立ち読み」ボタンを押すと、試し読みできます。)▼出版社公式サイトこのブログでも一時期とりあげさせていただいた映画「みんなの学校」。(2017/6/8「みんなの学校」上映会&木村泰子先生講演会 in兵庫県西脇市)インクルーシブな学校の代名詞のように使われ始めていますが、やはり、公立の小学校で取り組まれていることがそのまま映画になったというのが、大きいと思います。この映画をきっかけに、公立小学校のインクルーシブ教育を考える、というのは、たとえ映画の内容に批判的な考えを持っていたとしても、有効な研修方法ではないでしょうか。この本はワークショップを編集して収録したものですが、その場に登壇される先生方が、すごいです。=========================木村泰子、小国喜弘、星加良司、川上康則、川村敏明、前川喜平ら錚々たる講師陣の講義を受け、参加した全国各地の現役教員(大空小の現役教員を含む)らが白熱した議論を展開。(出版社公式サイトより)=========================考えと考えがぶつかりあい、対話から深化を図る。非常に質の高いワークショップだと感じました。上の商品写真では本のオビが表示されていません。オビにはこう書かれていました。=========================全ての子どもが安心して学べる「空気」をどうつくるのか――?=========================本来の欧米型の「インクルーシブ教育」は必ずしも「障害のある子も通常学級で共に学ぶ教育」だけを指すのではなく、もっと広範囲にいろいろな子どもを包摂する教育を意味します。本書では、そういった一歩進んだ「インクルーシブ教育」に向けての議論がなされます。東京大学教育学部「特別支援教育総論」のテキストになっているようです。キーワードはいろいろ示されますが、「障害の社会モデル」「学習権保障」の話は、おさえておかないといけないところだと思います。=========================・「障害」は個人の心身機能の障害と社会的障壁の相互作用によって創り出されているものであり、社会的障壁を取り除くのは社会の責務である。(内閣府「ユニバーサルデザイン2020行動計画」より)==================================================・授業のやり方やルール、そういったものをしんどい子に合わせて変えていく努力をすること自体が、インクルージョンの中身なのだということが(障害者権利条約の中で)改めて強調されている(p69 小国喜弘さんの講座より)==================================================・子どもにとって必要でないルールは極力なくしていくという発想が必要・多くの学校で行われている学習規律や学習スタンダードのようなものは問題である(p80 小国喜弘さんの講座より)=========================「〇〇スタンダード」には、利点もありますが、問題もあります。市内や学校内で統一してやっていくのは、大切なことではありますが、その中で不適応を起こす子どものことも、考えたうえで、子どもを中心に再考していくことこそ、大事にしていきたいと思います。学校現場での非常に具体的な場面に関する再考としては、次のような場面も本書の中で取り上げられています。=========================・「わかる人?」と挙手を促す場面。 あれはもしかしたら、わからない子の居場所を失わせている発言かもしれない(p111 川上康則さんの講座より)=========================こういった、現行の教室で当たり前にみられる光景を再考する、というのが、本当に大事だと思います。川村先生が本書の最後のほうの対話で、=========================・私自身は凄い先生でなくていいんです。 私の役目は何よりも、楽しそうにやっていることです。(p151より)=========================と言われていました。僕は、非常に共感します。木村先生も、こう言われていました。=========================・空気は自分がつくるものですね。(p162より)=========================明日の教室を作るための参考となる考え方と、勇気をもらえる本です。
2020.07.25
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通級の巡回先の学校から、今月末に特別支援教育の研修講師の話をいただいています。ありがたいことです。その研修のスライドづくりを進めているところですが、その中で発達障害当事者に関する話を、かなり入れ込もうとしています。研修内容を企画するにあたり、事前にアンケートをとらせていただきました。特別支援教育は、ニーズを大事にする教育ですからね。お聞きしただく先生方のニーズもしっかりと捉えておきたいと思ったので。アンケートの結果は・・・それは、まだヒミツです。研修会の冒頭で大々的に発表する予定です。ただ、発達障害の中でも「学習障害」やその「進路」については事前のアンケートでもかなり関心が高かったです。そこで、井上智(さとる)さんの本をご紹介しようと考えています。『読めなくても、書けなくても、勉強したい ディスレクシアのオレなりの読み書き』(井上智/井上賞子、ぶどう社、2012、1980円)▼出版社公式サイトの情報が、かなり詳しいです。 「読み書きができないために、学校でどんなつらい思いをしたか。」のところは、本書の中で、本当に身につまされるところです・・・。 リンク先には、目次がかなり見やすく提示されているので、目次だけでも、見てみてください!!2冊目の本は、つらかった時期を乗り越えて夢をもって挑戦する時期の報告。井上さんだけでなく、多くのディスレクシア当事者の希望がつまっています。『夢見た自分を取り戻す 成人ディスレクシア、50代での大学挑戦』(井上智、エンパワメント研究所、2018/11、1980円)大工をされながら、大学に合格し、学業と仕事を両立させられた井上さんのお話を読んで、読み書き障害のお子さんの支援をさせていただいている僕としても、大変うれしかったです。2冊目の本の中で、井上さんは、1冊目の本の一部が大阪教育大学の入試で、小論文の課題として使われたことを明かしています。「オレの体験を読んで、読み書きに困難のある子の心情を推し量り、教師ができることは何かについて述べよと問われたらしい。」(p158より)素晴らしい!大阪教育大学の受験生だけでなく、全国で、井上さんの体験から「自分にできることは何か」を考えてほしいと思います。僕も、常に考えています。
2020.07.19
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「コグトレ」で有名な宮口幸治さんの新書が話題です。『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書、宮口幸治、2019、税別720円)この本のタイトルは、「3等分してね」と言っても3等分ができない非行少年が多くいたことに由来しています。上の商品画像に、オビがついていますよね。そこに載っているような線で3等分したと思ってしまうようです。この本の内容は、なんとマンガ化されています。先月からWeb連載が始まったところで、ありがたいことに無料での公開中。新書版の冒頭部分の紹介にもなっています。▼ケーキの切れない非行少年たち - 原作 宮口幸治/漫画 鈴木マサカズ / 第一話 三等分できない少年たち | くらげバンチ「障害」と非行とが必ずしも関係するわけではありません。しかし、全く関係しないとも、言い切れません。たとえば、「こうすると、どうなる」という想像力が及ばないと、不適切な行動を衝動的にとってしまうことにもつながります。では、どうするか。この本には例として、かなり具体的なメソッドも紹介されていました。それが、著者があみだした「コグトレ」。特に印象的だったのは、「記号さがし」です。例えば、リンゴならリンゴといったふうに、指示されたマークだけを探して数えていく。しかし、単に同じマークをさがすだけではない。ある工夫が加わっています。それは、指示されたマークを探して数を数えるのだけれど、「左側にある決められた果物のストップ記号(例えば、ミカン、メロンなど)がある場合には数えず✔もつけません。」(P164)といった付加ルールがあることです。このルールにより、ブレーキの弱い子どもがブレーキをかけられるようになるそうです。単純だけれど、これは、なかなか理にかなっていると思いました。「コグトレ」の本はいろいろ出ていますが、こういった著者の意図をしっかりと理解しておきたいものです。以下は、「コグトレ」で検索して出てきた本の数々です。本当にいっぱいある!『1日5分! 教室で使えるコグトレ 困っている子どもを支援する認知トレーニング122』(宮口幸治)『社会面のコグトレ 段階式感情トレーニング / 危険予知トレーニング編 認知ソーシャルトレーニング』(宮口幸治)『やさしいコグトレ 認知機能強化トレーニング プリントして使えるCD付き』(宮口幸治)『1日5分!教室で使える漢字コグトレ小学3年生 漢字学習+認知トレーニング』(宮口幸治)『1日5分!教室でできる英語コグトレ 小学校5・6年生』(宮口幸治/正頭英和)学年が書いてある本は、他学年の本もあります。すごい数の本が出版されています。今すぐトレーニングの詳細を知りたい場合は、「コグトレ」の学会サイトにある認知機能強化トレーニング(COGET)のページに行ってみてください。(学会の正式名称は、一般社団法人 日本COG-TR学会です。)上で紹介した「記号探し」のプリントを含む、様々なプリントのサンプルがあります。いかしたBGMのコグトレ紹介動画もあります。ちなみに、「コグトレ」のトレーニングは大きく3つに分かれています。上のリンク先は認知機能強化トレーニングのCOGETですが、それ以外に認知作業トレーニングのCOGOTと、認知ソーシャルトレーニングのCOGSTがあります。詳しくは、学会サイトの「コグトレとは(https://cog-tr.net/cogtr/)」をお読みください。僕自身はコグトレに全く詳しくありません。今回の記事は、自分が勉強していくためのメモでもあります。子どもたち全てに有用だとは思いませんが、子どもの実態に合わせて活用していきたいと思っています。
2020.07.12
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前回ご紹介した2冊の本の著者「かなしろにゃんこ。」さんが、今年になって、あるメルマガに寄稿されていました。その中で、マンガの中にも出てきたご子息のリュウくんの進路を具体的に語っておられます。マンガを読まれた方は、ぜひ、こちらもアクセスしてみてください。▼【レデックス通信】 いい意味で"諦める育児"で、反抗期も親子で笑い合えた (レデックス株式会社 2020.2.28メルマガ記事(Webで誰でも閲覧可能))『漫画家ママの うちの子はADHD』 (こころライブラリー)(かなしろにゃんこ。、2009、講談社、1540円)↑第1作(上掲書)では小学生だったリュウくんが、もう21歳! 無事就職をされたそうで、メルマガ記事を大変興味深く拝読しました。レデックス株式会社さんは、発達障害のアセスメントやトレーニングに関するアプリを開発されており、僕もずいぶん以前からお世話になっています。メルマガは無料で購読できますので、興味を持たれた方は購読してみてくださいね。今回ご紹介した記事はマンガ家さんの寄稿だけあって、メルマガの途中にマンガ画像が。メールだと画像へのリンクをクリックしないと画像が見られませんでした。Webで読むと、最初から表示されていて、読みやすかったです。画像付きメールを受信する設定にすれば、いけるのかな?そのあたりは不勉強でわかりませんでした。(関連する過去記事)▼ADHDの理解のために、マンガ+専門家による解説の『うちの子はADHD』(2020/2/17)
2020.06.25
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昨日のブログで「通級」が舞台のマンガを紹介しました。▼舞台は通級教室! ~マンガ『みんなが輝くために』 そのつながりで、発達障害がテーマのマンガのオススメをさらに挙げていきたいと思います。過去にも紹介した『うちの子はADHD』。▼ADHDの理解のために、マンガ+専門家による解説の『うちの子はADHD』(2020/2/17)↑の前作がよかったので、シリーズ作も注文して読みました。『うちの子はADHD 反抗期で超たいへん!』 (こころライブラリー)(かなしろにゃんこ。+田中康雄、講談社、2017、1300円)僕は小学校の教諭ですが、将来像や進路のことはすごく大事なことだと思っています。経験年数が長くなると、教え子が成人していろいろな進路に進んでいるという情報を見聞きするのですが、若い人だと想像が行き届かないかもしれません。こういった本は、小学校卒業後のことが具体的にイメージできるので、保護者だけでなく、小学校の先生方にも、オススメです。ADHDの子どもの思春期の親子バトルを描いた本というのは、なかなかありません。親本人がマンガにしているので、伝わってくるものがすごく強いです。子どもの特性を理解することにも役立つし、大人の関わり方にもいろいろあることが分かります。専門家の田中先生の解説はこの巻でも端的で分かりやすい。全15ページ。Q&A形式。とても分かりやすく、勉強になります。たとえば、次のようなアドバイス。====================・子どもを責める前に、むしろ 「彼らが失敗してしまうような状況をついついセットしてしまった僕たちの問題」 と反省して、修正案を呈示したほうが 平和的に解決できる可能性が高い(p128より)====================本当にそうで、子どもを責めても何も状況が変わらずかえって悪化することが多いので、指導や支援を考え直すほうが、よほど生産的なことが、よくあります。子どものことを考えたよきアドバイスが目白押しでした。巻末には周りの子に特性を理解してもらうための「○○通信」のフォーマットもついています。同じ著者の次のマンガも、オススメ。『発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!?』 (こころライブラリー)(かなしろにゃんこ。、講談社、2012、1400円)反抗期編よりも前に出ていた本。著者が自分の子が思春期を迎える前に、高校や大学、会社や当事者の会などに取材をした、ルポマンガです。マンガなので分かりやすく、当事者の気づきや支援者の勉強につながると思います。将来への不安は、知らないことで増幅するもの。知ることで、不安や心配が軽減されるなら、知っていくことが大事なのではないでしょうか。マンガの中で著者が保護者の立場で自分の子のことを相談されています。そこで返ってくるアドバイスが他の子や他の家庭で当てはまることも、多いと思います。たとえば、マンガの中の会社訪問では「ADHDの人は自分の好きなことを教える能力は高いんですよ。 家電売り場の接客などなら 知っている知識で仕事ができます」と教えてもらっています。(p71)こういう具体的なアドバイスが、本当に貴重な情報だな、と思います。成人の当事者の方にも取材されていて、たとえば次のようなセリフなどが収録されています。「発達障害のない人と比べて能力の差で落ち込むことはありますけど 要は 長所と短所の差が激しいだけって 思っています」(p130)なるほど、と思い、とても勇気づけられました。いろんな仕事を経験したなかでの当事者の気づきをまとめた「ADHDの人の仕事体験」の章は、特に良かったです。
2020.06.21
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通級の本って、少し前まではほとんどなかったんですが、少しずつ本が増えてきました。通級担当としては、うれしい限りです。ニーズはどんどん高まっており、全国の通級担当者はどんどん増えています。それでも通級候補の児童・生徒全員が通級指導を受けられているわけではありません。「通級」についてまだまだ知られていない地域も残っていると思います。通級について知っていただくために、うってつけだと思ったのが、マンガ『みんなが輝くために』です。現在は、第1巻だけ出ていますが、続くようですので、第2巻も楽しみです!『みんなが輝くために』第1巻(原作・著: 梅田 真理、マンガ:河西哲郎、学びリンク、2019/12、税別800円)▼公式サイト====================■内容紹介(公式サイトより)本書は、ある小学校の通級指導教室を舞台に、学習障害などの発達障害のある子どもたちが抱える学校生活や日常生活での困りごと、指導方法などをマンガで分かりやすく紹介しています。原作・著者は発達障害教育、特別支援教育に明るい宮城学院女子大学の梅田真理教授。実際現場で発達障害の子どもたちと関わってきた経験から、子どもの困り感や保護者の不安、担任教諭の戸惑いなどをリアルに描いています。梅田真理教授による解説・Q&Aも収録しています。====================特別支援教育の分野で以前からご活躍されている梅田真理先生。通級をよくご存じの先生が内容を考えられているので、間違ったことは書かれていないという安心感があります。通級指導がマンガで読めるのは、この本が初かも?やはり、マンガはいい。ちなみに、LD・ADHD・ASDなどのテーマでは、それぞれマンガの名作がすでにあります。「通級」も、もちろんその中で出てくることもありました。でも、「通級」自体がテーマというのは、初めてだと思います。(関連する過去記事:こちらのマンガもオススメです!)▼読み書き障害がテーマのマンガ『ぼくの素晴らしい人生』がおもしろい(2018/10/21)▼コミックエッセイ『うちの子は字が書けない~発達性読み書き障害の息子がいます~』(2017/8/7)▼ADHDの理解のために、マンガ+専門家による解説の『うちの子はADHD』(2020/2/17)▼ アスペルガー父によるこだわりの子育てが魅力的なマンガ『プロチチ』(2020/1/13)▼『光とともに・・・』の未完のラスト2話が、雑誌掲載 (2016/2/28)▼『海ちゃんの天気今日は晴れ』 ~いわゆる「大変な子」を含めた学級指導の一例として(2013/5/7)
2020.06.20
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エッセイマンガが好きで、よく読みます。今回読み終えたのは、『うちの子はADHD』。『漫画家ママのうちの子はADHD』(こころライブラリー)(かなしろにゃんこ。、2009、講談社、1540円)【1000円以上送料無料】これが、よかった!!こういう本でよくあるのが、マンガに対して専門家の解説は数ページ、といったパターン。コミックエッセイなので、当たり前といえば当たり前。解説はあくまでも添え物、というのが通常・・・。しかし、この本は、解説が26ページもある!(「おわりに」の2ページも含む)そのおかげで、ADHDの定義や特徴、成長とともに移り変わる行動特性、環境調整、薬物療法、ペアレントトレーニングなどなど、それぞれコンパクトに要点をまとめられており、「ADHDの教科書」と言ってもいいくらいの内容となっております。1人の子の事例だけでは当てはまらないこともたくさんあるので、ADHDに関する一般的な知識を補足してもらえるのは、ありがたい。解説を書かれているのは、田中康雄先生。児童精神科医で、「こころとそだちのクリニック むすびめ」の院長。特別支援教育の分野では以前からよくお名前をお見掛けする先生です。本書の解説の文章からは、子どもへのあたたかなまなざしが伝わってきました。「この解説だけでも、値打ちがある!」と思います。今後、「ADHDについて知りたい」という方に出会ったら、「とりあえず、これを読んでみたら」と、すすめます。以下は、ブクログに投稿したレビューです。(^^)漫画家ママの うちの子はADHD (こころライブラリー)著者 : かなしろにゃんこ。講談社発売日 : 2009-06-26ブクログでレビューを見る»ADHDの子どもについて理解するための第一選択として、オススメ!マンガなのでエピソードからADHDの特性が大変わかりやすい。(もちろん、ADHDがみな同じわけがないので、一例でしかないが。)そして、マンガの後にはこの道の第一人者、田中康雄先生の解説がかなり詳細にわたって書かれている。その中で田中先生が「トットちゃん」の例なども引きながら、普遍的な大切なことについて語られている。子育て中の親だけでなく、学校関係者や支援関係者にもオススメ。「どうしたらいいか」という悩みにも、かなり的確に応えてくれる。調べてみたら、続編や系列書も出ていました。思春期編と就労編もあり、それぞれ興味深いテーマです。発達障害 僕にはイラつく理由がある! (こころライブラリー) [ かなしろにゃんこ。 ]うちの子はADHD 反抗期で超たいへん! (こころライブラリー) [ かなしろにゃんこ。 ]発達障害 うちの子、将来どーなるのっ!? (こころライブラリー) [ かなしろにゃんこ。 ]
2020.02.17
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気づけば、もう 2月中旬。そろそろ次年度への引き継ぎに向けて、準備をし始めています。特別支援教育において、年度をまたぐ時期は最重要の時期です。引き継ぎの書類を、新しい学校や新しい担任に分かりやすいように書いて残さねばなりません。保護者や本人の意向も、反映させねばなりません。その中で、近年は必ず引き継がないといけないこととして「合理的配慮」という言葉が、ずいぶん知られてきました。多くの場合、個別の教育支援計画にその欄が設けられていて、引き継いだときにすぐ分かるようになっています。ただ、この「合理的配慮」という言い方については、分かりにくかったり、誤解を受けやすかったりします。教育現場への導入初期には、「今までも配慮はしてきた。通常の配慮とどう違うの?」という質問をされることがよくありました。僕の説明がふさわしいものであるか、全く自信はありませんが、僕の場合は、以下のように説明させてもらっていました。「学校で学ぶ上で必要欠くべからざる変更または調整であり、保護者・本人の意向を受けて学校と合意形成した内容のこと。”配慮”とは言うけれど、原語のReasonable Accommodationを直訳すると、合理的な変更または調整、という意味になる。学校の先生が、その子のためを思っていろいろと工夫したり配慮したりすることはとても重要だけれど、先生個人の判断で行ってきたそれらの配慮や手立てとは、違う」一応英語科の教員免許も持っていますが、 Accommodationの意味はよく分かっておらず、自分なりに「合理的配慮」について勉強した結果、上のような説明になりました。ところが、それならば最初から「配慮」と言わずに「変更または調整」と言えばいいんじゃないの?という疑問がわきます。今朝読んだ「障害児を普通学校へ」の会報No.382に、同じ話題が書かれていました。この1月に一木玲子さんが学習会の中で説明された内容だそうです。====================・「合理的配慮という言葉は、してあげるという上から目線の言葉ではないか」という意見については、一木さんから障害者団体で障害者差別解消法の見直し作業が始まっていて、「合理的変更」「合理的調整」と考えていこうとしているという説明がありました。(同会報 p7より)====================自分も同じことを思っていたので、実際に名称変更の動きがあると知って、感動しました。5年後くらいには、「合理的配慮」という言葉は、変わっているかもしれませんね。ちなみに「障害児を普通学校へ」の会報は、インクルーシブ教育を実践する上での知識・情報にあふれており、いつも実践への勇気をいただいています。ここで紹介された情報に直接当たってみることも多いです。同じ号の別のページでは、例えば片桐健司先生の次のような説明がありました。現場の教員を勇気づける、名言が含まれていると思いました。====================・松本キミ子さんは、「絵の描けない子は私の教師」という言い方で「キミ子方式」という独自の絵の指導法を提案しています。教員にとって、どうやってその子とかかわっていいか悩ませる子との出会いこそが、教員にとって最大の学びの場になると思います。(同会報 p15より)====================引用ついでに、同会報p17から、北村小夜さんの名言を引用して、締めくくりたいと思います。====================・『足りないのは 通常学級の 包摂力です』(同会報 p17より)====================▼障害児を普通学校へ・全国連絡会ホームページ
2020.02.11
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昨年の終わり、とっても面白いマンガとの出会いがありました!きっかけは、大阪大学の小野田正利さんの講習会。小野田さんは学校と保護者との連携について研究されている方です。講習会で配布された資料に、「発達障害の保護者に見えている世界」という資料がありました。(初出は『内外教育』誌「普通の教師が生きる学校~モンスターペアレント論を超えて」第148回(2013.11.22))その中で、逢坂みえこ「プロチチ」が、わりと詳細に、1000字程度も紹介されていて、興味を持ちました。出版社からの内容紹介から、一部抜粋すると、こんなマンガです。=========================多彩なストーリーで魅了する逢坂氏による本格男性育児マンガ。徳田直は、生真面目でこだわりだしたら止まらない性格。対人関係でトラブルの多い直は、現在無職。専業主夫として息子太郎の育児に専念。当初、自らの立場に戸惑い悩んでいたが、「プロの父親」として育児する事を仕事と捉え、これまでにない感覚が目覚めていく。=========================小野田さんは「アスペルガー症候群と育児というテーマを的確に漫画で描き出しており、学校で購入し、PTA文庫として貸し出すことをお薦めしたい作品だ。」と書かれていました。もともとは小野田さんも、花園大学教授の橋本和明さんに紹介されたそうです。発達障害の疑いのある保護者の場合、「社会性、共感性、柔軟性」が発揮できない場合があるけれど、このマンガで出てくる父親のように「具体的な子育て技術」をもてば養育の改善が期待できる、という内容だったようです。【中古】 プロチチ 1 / 逢坂 みえこ / 講談社 [コミック]講談社の青年漫画誌「イブニング」で2011年から連載されていたマンガです。全巻でも4巻しか出ていません。さっそく、全巻セットをネット注文して、読んでみました。おもしろい!!!キャラクターといい、ストーリーといい、めちゃくちゃおもしろいのです。これは、隠れた名作!そういうわけで、もっともっと世間に知られていい作品だと思うので、ここに大々的に紹介しちゃいます。少し古いので、新刊ではもう買えません。中古か電子書籍での購入になります。その点が、残念。中古で全巻セット、見かけたら、絶対おすすめですので、即、購入されるといいですよ♪特に、僕のように、「発達障害」と「子育て」の両方に関心があれば、ハマること、うけあいです。【中古 古本セット】_プロチチ_コミック_1-4巻セット_(イブニングKC)ただ、タイトルだけは、「プロフェッショナル・父」という意味なのですが、「プロ父」としたほうが、分かりやすかったような気がします。父親による子育てというのが一般化してきている現在、そのテーマが分かりやすい方が、売れた気がするなあ。なぜすべてカタカナにしたのだろう・・・。ちなみに、1巻~4巻の僕自身の感想は、以下の通り。(感想投稿先ブクログからの転載)◆1巻◆これは、すごく、おもしろい❗️アスペルガー症候群の父による子育てマンガ。赤ちゃんを育てるときの「あるある」連発。「不思議だ。 なぜ育児中の時間速度は 3倍速で過ぎてゆくのか」(p50)大変だからこそ、育児はおもしろい ◆2巻◆アスペルガー症候群の「プロ父」による抱腹絶倒の子育てマンガ第2巻。安定のおもしろさ。今巻は、1歳になった息子ちゃん。保育所問題も絡めて、今巻も「あるある」爆発。インフルエンザあるあるについては、身に覚えのある人も多いのでは。インフルなんて吹き飛ばせ!な、2巻。 ◆3巻◆保育所のママ友とのコミュニケーションに始まり、今回も子育てあるある満載。僕自身も、子どもの保育所時代を振り返り、懐かしくなりました。「虐待」という重いテーマも。(ただし、重くなりすぎず、じーんとする感じで終わります。21話目の終わりの大ゴマ、ほんと印象的でした。)22話の「はやくしなさい」も、秀逸。「大人には「ただのわがまま」にしか見えないことでも 子ども本人には絶対譲れない理由があるのだ」(p70)は、名言。◆4巻◆稀有なクオリティの子育てマンガ。まだ続く? と期待を持たせつつ、最終巻。保育所のお祭りの話や金魚を買う話、「おばあちゃん」が突然訪ねてくる話など、今回もネタてんこ盛り。最後は、うるっときました。子育てと金魚の育て方に詳しくなれる!(笑)電子書籍の試し読みなら、以下のリンクから、各巻の第1話がまるごと読めます!▼プロチチ(1)- 漫画・無料試し読みなら、電子書籍ストア BookLive! ▼講談社コミックプラス「プロチチ」既刊・関連作品一覧
2020.01.13
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特別支援学級や通級という制度を利用するためには、現状では「教育支援委員会」というところで話し合いがなされた上で、決定されることになっています。実は希望者がどんどん増えているという背景もあり、その条件が厳しくなっているような気がしています。条件として課せられるものの代表が、「診断書の提出」でしょうか。はたして、特別支援学級や通級に入るために、診断書は本当に必要なのでしょうか?実は、昨日丹波篠山市で大阪医科大学LDセンターの竹田契一先生の講演会がありました。竹田先生によると、「診断書はいらない。文科省は言っていない。」とのことでした。断言されたので、僕としては、かなり驚きました。「診断書をとるために今はどこも予約がいっぱいで何ヶ月も待たないといけない」ということでした。教育支援委員会に諮るには、期日までに用意しないといけない、ということになるので、それまでに間に合わないというケースが多発しているのは、確かに気になっていました。ただし、「専門家の所見は、あった方がいい」とのことでした。竹田先生からは、無料で発達相談をされているNHK厚生文化事業団の紹介もありました。診断は医師でなければできませんが、「専門家」ということになると、かなり多くの専門家が対応できることになります。(NHK厚生文化事業団の相談事業は、後で調べると、それを紹介しているブログが見つかりました。 ▼「NHK 発達相談会のおしらせ」(ブログ「空色の国」内)保護者に対して専門機関をおすすめすることはわりとあるのですが、そのときに、「診断書をとってください」という具体的な言い方は避けた方がいい、と思いました。「教育支援委員会」は、各学校や、各自治体に設置されています。実は、自治体によっては、診断書を必須にしているところがあります。この件は非常に気になったので、家に帰ってから調べてみました。 たしかに、国が出しているものには一言も「診断書」が必要という言葉はありませんでした。「専門家の意見を含め、総合的に判断」となっています。特に、診断の中でも「学習障害」については診断できる医師が少ないように思います。学習障害を扱ったマンガ『ぼくの素晴らしい人生』第4巻では、診断書を求めて主人公が非常に苦労する様子が描かれています。同書p26では、せっかく病院に行ったのに、医師から「診断書は出せないです。」と言われてしまうシーンが描かれています。(主人公はもう大人になっているので、大人の学習障害の診断はさらに得られにくいということは、あります。)『ぼくの素晴らしい人生』第4巻(愛本みずほ、講談社、2018)ネットで見られる公文書の中では、総務省のサイトの中に次のようなものがありました。========================諮問庁:文部科学大臣諮問日:平成29年6月2日答申日:平成29年11月27日事件名:学習障害児の医師の診断書及び意見書の不開示決定(不存在)に関する件学習障害の医学診断基準が記載されている文書の不開示決定(不存在)に関する件内容の一部抜粋: 学習障害という用語が法令上規定されてからも,そこには医学的診断基準はおろか学習障害の定義も規定されておらず,このため,当然に ,法令関係の文書では,審査請求人が開示を求める「学習障害の医学診断基準が記載されている文書」は作成されていない。また, 法令以外の文書では,学習障害という用語が法令上規定される以前に学習障害の定義を記載した文書は存在するものの,そこに医学的診断基準は記載されていない。▼http://www.soumu.go.jp/main_content/000518777.pdf========================上の文字がおっきくなっちゃったのは、PDFからコピーしたら勝手にそうなったためで、他意はありません。直らなかったからです。(^^;)「学習障害」(限局性学習症)の診断基準は、DSM5などのアメリカのものなどがあるにはあるのですが、上の答申は、日本ではそれを診断できる医師が足りていない状況を端的に表している気がします。発達障害支援のサイト「りたりこ発達支援ナビ」には、次のような記述がありました。 「地域によっては、通級指導教室や特別支援学級などへの入級にあたって診断書を求められることがあります。幼稚園などの場合でも、園への助成金などの支給のために、診断書の提出を求められることがあります。これも文部科学省などが通達している特別支援教育の方向性からすると、本来あってはならないことだと思うのですが、残念ながらそのようなルールが設定されている地域もあるようです。」(▼発達障害、医師の「診断書」はどんなとき必要?(「りたりこ発達ナビ」内))特別支援教育の条件整備は自治体によって差があったり、教員の意識についても地域や学校で差があったりするようです。すべての必要な子どもたちが、多様な学びの選択肢を利用できるようになると良いのですが。
2019.08.23
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eラーニング講義の続きを観ました。▼前回はこちら2時間以上続けて観ると、さすがに疲れました。自宅学習だと、時間がある時は連続で視聴することもできますが、やはり休憩は必要ですね。(^^;)今回は、小林玄(しずか)先生と、上野一彦先生。始語や始歩はおよそ1歳~1歳6ヶ月、というのは、以前習ったのですが、忘れていたので、もう1度覚え直します。特別支援教育の講義の中で一番ありがたく感じる内容は、具体的な事例。上野先生の講義では、LD(学習障害)の子どもが実際に通常学級の中で受けている支援例として、まずiPadで黒板を写し、次にそのiPadを見てノートに写している子を写真付きで示していただきました。上野先生は、実際に出会われた子どもたちの話を笑顔で話されるのが、とても素敵です。また、「障害と健常は連続する」「障害は特徴ある個性と考えるべき」という、大変重要なメッセージも話してくださいました。小林先生の講義では、「学力の指導」のところで、これも大変具体的な指導内容を教えていただきました。・○○○の言葉を1文字換えて別の言葉にする、等の音韻認識のトレーニング・単語カードと単語カードを並べて文を作る際に、間に入る助詞を選ばせる「統語」のトレーニング・意味のある言葉のまとまりを探す「ことばさがし」・教科書のテキストデータを使って、1つの単語が行をまたがらないように改行する 読み支援等々・・・。一番印象に残ったのは、漢字を覚える指導例で、「転」を、「車にムかって転ぶと危険!」というイラストで覚えるもの。車へんが、本当に車になっていたりなど、楽しいイラストで、インパクトがありました。
2019.05.26
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5月のはじめのブログで、eラーニングのことを書きました。▼教員免許更新講習を eラーニングで受講する!せっかくなので、eラーニングの講義で学んだことを、こちらのブログに残していきたいと思います。本日が講義初視聴。一番のおめあてだった、上野一彦先生の発達障害についての講義から視聴。タイトルは、『教師に求められる発達障害の理解と支援』です。放送大学のときのビデオ講義とは違って、スライドも同時に映し出されるので大変分かりやすかったです。資料としてダウンロード資料(PDF)が示されていましたが、手元にダウンロードしておかなくても、同時上映されるので大丈夫でした。ただ、講義のウインドウの横にまだスペースがあるので、僕の場合は資料PDFを別ウインドウで開いて、講義の真横に平行して表示させました。そうすることで、今現在のスライド以外も表示させられるので、便利でした。1つの講義動画は、上野先生のUnit1が、20分弱。Unit2が30分弱。これぐらいの時間だと、忙しい中でもちょっとずつ見ていくことができそうです。僕は特別支援教育の勉強は今までしてきているので、知識としては知っていることは多かったですが、今までの知識を体系的に整理し直すことができました。Unit1「発達障害のある子供たちを取り巻く環境」で興味深かったのは、「障害分類」の国際比較です。アメリカの場合は、数の多い順(支援の多さ順)、イギリスの場合はニーズによる分類、というのが特徴的でした。日本の障害分類も今後変わっていきそうな可能性を感じました。Unit2「発達障害について」では、「脳は様々な情報のタンスのようなもの」という分かりやすい比喩のもと、LDやADHD、ASDについての定義をもう一度勉強し直すことができました。上野先生のご説明は本当におすすめで、ADHDの説明の場面でも、「ADHDをもつ子供の力」というのがいくつも示され、とても説得力がありました。弱みを強みとして理解するリフレーミングのしかたがとても素晴らしい、と感じました。▼『教師に求められる発達障害の理解と支援』(eラーニング講義) https://www.sainou.or.jp/e-learning/course_5.php
2019.05.25
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先週の土曜日に、民間教育サークルの特別支援教育セミナーに行ってきました。そこで配られた「正進社 教材カタログ 2019年度版」を見て、びっくり。発達障害の子どもたちなど、必要な子どもたちに向けた様々な工夫を取り入れて改善されていることが分かりました。小学校市販テストの合理的配慮については、以前に「ルビうちテスト」が増えてきたことなどを、このブログで書きました。▼業者テストの「ルビうち」が標準対応に! (2017年06月10日の日記)今は、さらにそのほかの工夫もどんどん導入されているんですね!「正進社 教材カタログ 2019年度版」から、少し紹介したいと思います。このカタログの中では「合理的配慮」という言葉が頻繁に使われていて、なんでもかんでも「合理的配慮」扱いになっているような気はしますが、それでも、こういった教材の工夫で救われる子どもたちもいると思うので、大変有意義なことだなーと思います。(1) マス目式解答欄解答文字数がはっきり分かるというのは、実はかなり大きな支援になります。( )という枠だと、思いっきり枠からはみ出してしまう子がいます。答えもその中に含んではいるんだけれど、どこまでが必要なのかの判断ができずに、長く書きすぎてしまうのです。(逆に、短く書きすぎてしまう子もいます。)そういった子どもたちに、このマス目式解答欄、とてもいいですね!(2)漢字採点シート漢字の採点基準が複数の先生でバラバラ・・・ということはわりとよくあることのように思います。「合理的配慮」という意味で、書字障害の子どもの漢字の採点で大目に見る、といったこともされています。この教師用付録の画期的なところは、文化庁の出している表を載せているところ。文化庁は、簡単に言うと、「これも、あれも、OK」ということを言っています。その漢字だと分かれば、トメ・ハネ等の細かいところで減点したり、間違いと見なす必要はないのです。ともあれ、新出漢字の指導の時には正しい書き方を細かく教えることが一般的であるため、そういった指導とテストの採点基準と、こういった文化庁指針のあいだで、ズレが生じるわけです。必ずしも文化庁指針のとおりに採点しなければならないわけではありませんが、そういった報告が出ていることをご存じない先生方も多数おられるわけで・・・正進社さんのこの指導資料は、先生方への情報提供という点でも、非常に有意義だと思います。▼常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について - 文化庁なお、上のPDFの中でも、以下のような記載がされています。========================実際の教育現場では,使用する教科書や,それに基づく教材等に示された字形以外の字形は誤りとする評価が行われることがある。(略)「字体についての解説」についての理解そのものが十分に広がっておらず,その内容が知られないまま,指導した字形に沿った評価が行われる場合があるとの指摘もなされた。========================知られていない「字体についての解説」を教師に知らせる役割を教材会社が担ってくださるのは、ありがたいです。なお、この件については、マチポンブログさんの記事が、かなりわかりやすいので、よければ合わせてお読みください。▼文化庁指針(漢字のとめ・はねなど)への誤解と早とちり②(3)筆算方眼これも、支援を要するお子さんの場合、有効だと思います。筆算を練習させるノートには、マス目がありますものね。テストの時も、マス目があったほうが、いい。他社の業者テストでも、これは、見たことがあります。中学・高校と進んで行くにつれて、マス目なしでも書ける力は必要になってくる気もしますが。習いたての頃は、マス目ありで、いいんじゃないでしょうか。(4)フォーカス・テスト特別支援学級の学習指導では、問題が多すぎると、1枚あたりの問題数を少なくして、たくさんのプリントに分ける、といったことをされているところがわりとあります。これを業者がやってくれるとは、なかなかすごい。「全国学力学習状況調査」のように、問題が冊子になっていて複数のページに分かれていると対応できない、という子の場合にも、あらかじめこういう形式の問題をさせておくと、いい気がします。なお、この「フォーカス・テスト」については、LD学会でもポスター発表されたそうで、そのときの発表内容も記載されています。(4)QRコードで動画閲覧最近はQRコードをいろいろなところで見かけるようになってきました。こちらのパンフレットにもQRコードが載っていて、目的の動画をすぐに見ることができます。子どもたちにとっても、先生たちにとっても、有効な支援になると思います。
2019.05.19
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2018年も、最後の年になりました。今年1年を振り返ってみたいと思います。今年度最も重点的に取り組んだのは、LD(学習障害)の具体的支援について研鑽を深めたことです。夏休み期間中の8月は、その助走期間。ずっと行きたかった東井義男記念館に行ったり、LDの子のことも考えた学び方であるジョリーフォニックスの研修を受けたりと、今年の8月もいっぱい学びました。9月の運動会代休日。文部科学省の「音声教材推進会議」に初めて参加しました。普段の日だと、通級の巡回指導に当たっていたり、週に1回しか通級指導の時間がない子どもの授業をなくすのは忍びなかったりして、なかなか任意参加の研修に行けないのですが・・・本当に運良く、自分の学校も巡回先の学校も運動会の代休日でお休みだったので、何の気兼ねもなしに行ってくることができました。その日でちょうど大阪での開催があったのは、奇跡的。そこで知った「音声付教科書」。さっそく管理職の許可を得て2学年分を注文しました。(▼「音声付き教科書」普及啓発チラシ)届いた「音声付教科書」は、通級で使うだけでなく、家庭での音読の宿題をサポートするための使用や、通常学級内での使用の模索など、今後につながる取組ができました。11月には、市内の人権教育研究大会の分科会で、通級での取組について発表。デジタル教科書や「音声付教科書」についての共通理解も図ることができました。その場には保護者だけでなく、通級に通う当事者児童にも参加してもらうことができました。今年度から始まった高校での通級担当者も含め、市内の小中高すべての通級担当者が僕の発表した分科会会場にそろい、それぞれ発言いただいたのは、本当に貴重な機会となりました。ほかにも、Facebookで熊本の通級の先生とつながることもでき、私の知らなかった情報をたくさん教えていただきました。「ルビ付き教科書」は存在しないと思っていなかったのですが、「デジタルデータならあるよー。総ルビだけでなく、分かち書きもしてあるよー。」と教えていただき、調べてみたら本当にあったので、びっくりしました。なんと、指導書の付録になっていました。ただ、勤務校で買っている学年別の国語教科書の指導書にはついておらず、6学年全体を見通す「総説編」の付録だったので、新たにそれを買うまでには至っていません。NHKのLDに関する特集番組では、「拡大教科書」を使っている子どももいることを知りました。LDの子どもの学習の助けになるものは、本当にいっぱいあります。市内の特別支援教育担当者向けの会合では、大学の先生から、「まずは情報提供をしていくことが大事ですね」ということも、教えていただきました。率先して学び、学んで知ったことを周りに知らせていくことで、多くの子どもたちが助かるようになれば、と願っています。<関連する過去記事>▼うっかりミスの多い子には(2018/6/5) 深谷式の『ことばプリント』は、今年かなり活用した市販教材です。▼読み書き障害がテーマのマンガ『ぼくの素晴らしい人生』がおもしろい(2018/10/21) 今年読んだマンガの中で一番のヒット作! 冬休みには勤務校の他の先生にも貸し出して、読んでもらっています。▼『読み書き障害のある子どもへのサポートQ&A』 (2018/10/13) この本に書いてある「特別支援学級の弾力的運用」については、特別支援教室構想が出てきた時点の、過渡期の発想である旨を、後で大学の先生から教えてもらいました。▼Wordの音声入力で読書感想文(2018/8/24)▼「読み書き障害」の理解啓発の必要性を訴える・・・つもりです。(^^)(2018/10/21)▼読み書き障害についての福井県の冊子(無料閲覧可)がすごすぎる! (2018/10/17)それでは、また来年。皆様、よいお年を!
2018.12.31
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録画していたNHKの発達障害特集。今日は帰宅後に時間があったので、そのうちの「ADHD」の特集を見ました。番組の内容は、NHKのホームページでも確認できます。▼子どもの発達障害 徹底解説「注意欠如・多動症(ADHD)」(NHK「きょうの健康」)行動療法として、ポイントシステムが紹介されていました。島根県立大学(出雲キャンパス)の取組です。「なるほど」と思いました。いい行動をすると、ポイントが増えます。悪い行動をしても、怒られることはありません。淡々と、本人の目を見て、減点が告げられるだけです。シンプルだけど、非常に効果的だと思います。なお、こちらのトレーニングメニューについてふれられている2011年の論文も、ネット上で見ることができました。▼いずもサマースクールの実施と課題 (島根県立大学短期大学部出雲キャンパス研究紀要 5, 249-258, 2011)上のリンク先のPDFを見れば、プラスポイントとマイナスポイントのカテゴリーを確認することができます。望ましくない行動には、「タイムアウト」が併記されているものもあります。タイムアウトとは、別の場所で1人で静かに過ごさせる方法です。「怒る」「叱る」というやり方は一切とっていないのが、特徴的です。
2018.12.04
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昨日の日記で「勤務市の人権教育研究大会で『読み書き障害』についての発表をすることになりました。」とふれました。その発表原稿の仮原稿が土曜日にできあがったのですが、せっかくなのでその最初の部分をここで紹介したいと思います。まだ直す可能性が大いにありますが、むしろ直す箇所があればご指摘いただければありがたいです。(ここで載せるのは、ほんのさわりだけですけど。)発表自体は11月17日土曜日です。興味のある方がいらっしゃいましたら、別に誰でも参加できる会ですので、ぜひいらしてください。(^^)■読み書きに困難のある子の学習保障~通級指導担当の立場から~===========================1. はじめに このレポートでは主として小学校における読み書きに困難のある子どもたちをとりあげる。教科書の音読がたどたどしかったり、文字を書くことが苦手で自力ではなかなかスムーズに書けなかったりする子どもたちである。こういった子どもたちの中には、「読み書き障害」(ディスレクシア)の診断を医療機関で受けている子どもたちも含まれている。しかし、「読み書き障害」については一般にほとんど知られておらず、本人・保護者・教師に気づかれないまま、他の子どもたちと同じように読み書きができないことを苦痛に感じている子どもたちもいると思われる。「読み書き障害」については少数ながら当事者が手記を出版しているが、「学校では理解してもらえず、読み書きの困難さにより学習意欲が喪失した」と語っていることが多く、教職員の多くにその存在や手立てが知られることに課題があった。今でも教職員の理解には差があると思われ、最も専門的に読み書き障害への対応をおこなっている通級担当が、教職員への情報提供と連携を進め、必要な子どもたちに必要な手立てがとられるようリーダーシップをとる必要が高い。「読み書き障害」の理解啓発が重要である理由は、読み書きの困難さの理由が脳の機能障害にあるからであり、単に量をこなす指導が意味をなさないからである。スムーズに読み書きができる者には理解できないのだが、通常の読み書きを行うための脳の回路が使えない場合、別ルートを代替して文字を読み書きしようとする。例えば字を書く場合、文字の一つ一つについて、形を思い出しながら書くために時間がかかるし、「こんな形だったかな」と苦労しながら、線を付けたし、正しい字形に近づけていくことになる。スムーズに読み書きができる者の「書く」行為とは、全く異なる苦労がある。「読み書き障害」のことを知らなければ、単に文字を読み書きするだけのことにどうしてそんなに苦労してしまうのかがわかず、単に練習が足りないからだと思い込み、とにかく量をこなすことで改善しようとして、よけいに読み書きを嫌いにさせてしまうことも起こりえる。そうではなく、障害を理解し、本人に合ったやり方で読み書きを指導したり、または読み書きを代替する手段(代読や読み上げソフトの利用、音声メモの利用等)を検討したりしていくべきだと思われる。(以下、略)===========================ご意見募集中でーす。
2018.10.21
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