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W`Dな男達 3・4
~~~ 『W‘Dな男達』 act3 ~~~
★愚かだと嘆く必要はない。
何故なら、隣の芝生の住人も我同様の生き物なのだから・・・。
「ホークアイ大佐ぁー! 最終の警備網の確認をお願いします」
「判りました。こちらの人員配置の確認が終わり次第見ますから
私の机の上に」
そう言って積んでもらったデスクの上には、既に数十センチは積まれた書面達がある。
確認し終わったものは直ぐにそれぞれの担当や部署へと回していく為、
先程からひっきりなしに人が出入りしている。
そんな状況では扉の開け閉めだけでも煩くて仕方が無いので、
扉は朝から開け放たれたままなのだが、ここ数日そんな状態が続いているのだ。
普段から忙しい彼女の勤務だが、今は更にそれに二重も三重も拍車がかかっている。
数日後に迫っている式典での警備を一手に引き受けている所為なのだ。
式典では各支部の将軍、将校達が参列する。
その進行をスムーズに滞りなくこなすのも大変だが、それに合わせて滞在する期間も
厳重警戒しておかなくてはならない。
交通網の整備も、宿泊施設の警護も、果ては食事のレストラン関係にもと
目を光らせなくてはならない処は、数多くある。
軍の高官が揃うのだから、これ以上のターゲットになる日と地区も
ここセントラル以外には無いだろう。
この忙しさの中では、猫の手も借りたいような状況なのだ。
ホークアイの元にも、手伝いの名目で事務職員の見習いが回されてきている。
正直、軍の職務内容には全く使えない存在ではあるのだが、書いた書類を運んでもらうだけでも
今はありがたいと思う程逼迫もしている。
「大佐ぁ~、先日ご依頼していた内容の返答が届いたそうですぅ~」
妙に間延びした話し方は、今時の若い者らしい。
が、彼女・・・アリーと言う名の娘は、若いながら良く働くし、文句も言わない。
この激職の仕事場でも音を上げるで無し、コツコツと出来る事を頑張ってくれているのが
ホークアイの好感を得ている。
ただ・・・少々、おっちょこちょいで早とちりな点が、仕事を任せるのに不安を抱かせるのだが。
その彼女の呼びかけで、確認していた書面から目を上げる。
「依頼していた?」
何か別件で頼んでいた事でもあっただろうかと首を傾げながら、差し出された封筒を受け取る。
そして・・・。
「――― すっかり忘れていたわね・・・」
そこには確かに以前、自分が直々に依頼した業界の協会の名が記されている。
ホークアイの依頼内容は、なかなかに難しい条件があって、あちら側も直ぐには
適任者を見つけられないと言われていたのだ。
――― 何も、こんな時に・・・・・――
と溜息を吐きながら、開けられた封筒から取り出した書面を見る。
1枚目にはその人物との面接希望日時と迎えを希望している場所が明記されていたのだが、
まずはそれに驚かされた。
「今日!?」
何度読み直しても、書かれている日付が今日を差しているのは間違いないようだった。
田舎から出てくる為、不慣れな都会では心許無いので、迎えを寄越して欲しいと
書かれている場所は、確かに駅を出て1番に目に付くカフェではある。
が、何故こんな急な予定になったのだろうかと言う疑問は、封筒に押されていた消印を
確認して納得した。
現在、軍関係以外の書籍関係は全て検閲が入っている。
重要度が低いとみなされ、検閲が後回しになっていたのだろう。
「困ったわね・・・」
秒刻みのスケジュールをこなしている今。とてもではないが、迎えに行って
直に面接をしている時間も取れない。
どうしようかと思いながらも、紙を捲ってその人物の紹介が書かれている書面に
目を通そうとした瞬間。机の上の電話が鳴り響く。
ホークアイのデスクに直通でかかってくる電話内容は、至急や緊急と決まっている。
殆ど無意識で、ワンコールで受話器を上げると。
「ホークアイですが」
『大佐ですか? ブレダです!』
馴染みのメンバーの焦り気味の声に、ホークアイは嫌な予感を浮かべる。
「ブレダ中佐、どうしたの?」
『蜂が仕掛けてきました!』
「仕掛けて!? 一体、どこに」
ガタンと音を立てて、椅子から立ちあがる。
それを見ていた手伝いのアリーも、驚いたように成り行きを黙って見守っている。
『セントラルから一駅先の駅です。向うはここを封鎖したいようです。
現在、応戦中で何とか死守してますが、応援至急頼みます!』
「判りました。私も直ぐに向かうわ。それまで何とか持ち堪えて頂戴」
『アイアイサー!!』
受話器を置き、すぐさま内線ボタンを押して各部署に次々と指示を飛ばしていく。
そして、自ら出かける為に手早く身支度を整えると。
パサリと机の端に寄せられていた封筒が落ちる。
「・・・・・そうだったわ」
気を利かせたアリーが拾い上げた封筒の事を思い出して、思わず眉を顰める。
この封筒の中身も次元は違うとはいえ、緊急を要する内容なのだ。
暫しの間考え込むが、決断をする。
「アリー。マスタング大将の家政婦を雇う話はしていたわね?」
急に話を降られ目を瞠るが、すぐさま思い当たりのある彼女は頷く。
「はい、以前にお伺いした気がします」
その彼女の言葉に頷いてから、話を続ける。
「で、至急で申し訳ないのだけど、その人物とやらが本日、到着する予定らしいの。
あなたが行って、そうね・・・人柄を見極めて悪くないと判断したら、
即仮採用をして、大将のご自宅まで連れて行って頂戴」
「わ、私が・・・ですか?」
彼女が驚くのも仕方がない。例え、たかが家政婦の採用とは言え、送る先が先なのだ。
「ええ。今回の条件はハードルが高すぎて、この人物を逃したらそうそう見つからないわ。
身元等の調は、向こう側で入念にされている紹介者なので、
臨時でも構わないので押さえて置いて欲しいの。
私もこちらが落ち着き次第、確認に向かいます」
「はっ、はい!」
ここに手伝いに来ての初の責任ある任務だ。アリーの頬も紅潮している。
「詳しい事はこの中身を確認して頂戴。取り合えず、待合まで時間がないから
あなたも直ぐに出て欲しいの」
そう言って、待合の時間と場所を伝え封筒を渡す。
「判りました! 直ぐに出掛けます」
「ええ、頼むは。―――それと、ご自宅に連れて行って、逃げられないようにね」
と更に念を入れて頼んでおく。協会には先に惨状はきちんと説明してあるし、
それに伴っての手当ても提示してある。が、それでも実際、目の当たりにして怯む懸念もある。
「・・・・・頑張ります」
とアリーが重々しく頷くのを確認し、ホークアイは素早く立ち去っていった。
「が、頑張らなきゃ・・・。と、兎に角待ち合わせの場所に急がなきゃ」
封筒の中を確認する事さえ念頭から抜け落として、アリーはひたすら時間に
間に合うようにと司令部を後にしたのだった。
*****
「久っさしぶりだな~」
大勢の人々が溢れかえったホームの中。エドワードは、田舎者宜しく
珍しそうにキョロキョロと周囲を見回しながら出口へと向かっていく。
反対側のホームの1本がやたらと列車街の人で賑わっているのは、流れているアナウンスで
納得した。
どうやら列車事故か何かでその線が止まっているようだった。
田舎の列車なら良くある事なのだが、このセントラルでは滅多には起らないのか、
立ち往生している人々の表情も困惑気味だ。
「相変わらず、ここら辺も大変なんだな・・・」
そんな感想を浮かべ、エドワードは待ち合わせに指定された場所へと歩いていく。
*****
「列車が動かない!?」
セントラルから二つほど先の駅で、きちんとした身なりの男性が駅員に事情を窺っている。
「ええ。この先の駅でトラブルがあったらしく、現在この線は止まってます」
「そ、そんな・・・」
顔色を蒼ざめさせている男に同情したのか、駅員が親切に別のルートを説明してくれる。
「そんなルートでは時間に間に合わないんだ!
今日逢う人物は、これからの我が社を、いやこの分野を担うべき人材なんだ!」
そんな力説をされても、動かないものを一駅員に何か出来るわけも無い。
「取り合えず、復旧されましたらアナウンスが入りますんで、待って頂くしかありませんな」
そう言って去る駅員を、また別の者が説明を求めて詰め寄っていく。
「ど・・・・・どうしたら・・・」
動揺しつつも、別の方法をと考えを巡らせ、どうにも出来ないと判った段階で、
急いで駅の公衆電話へと走っていく。
そして・・・・・ずらりと待ち並ぶ人達を見て、がっくりと肩を落とした。
*****
「あのぉ~。ここはどこでしょうか?」
鄙びた駅で、初老の男性が戸惑いがちに自分を起こしに来た駅員に尋ねてみる。
「どこって、終点の ですが?」
聞いた事があるようなないような駅名に、その老人は目を丸くする。
「お爺ちゃん。兎に角、電車を降りてもらえないかな?
これは車庫に入るんで、乗ってもらってちゃ困るんだよ」
駅員にそう言われて、老人はよぼつく足でホームへと降り立った。
そして、人気の無い周囲を見回してしゃがれた声で独り言を呟く。
「参ったなぁ~」
ポリポリと頭を掻きながら、手に持っていた封筒を見つめる。
そこには、セントラル家政婦協会の紹介状が入っている。
老人は長い間、途方に暮れたようにホームで立ち尽くしていたのだった。
*****
はぁはぁはぁと道を走りながら、アリーは空模様を眺めて焦っていた。
タクシーを飛ばしたはいいが、交通渋滞に巻き込まれ動けなくり、そんな車に
見切りをつけて、残りの距離を走り出したのだが、運悪く天から涙の雫が
落ち始めてきているのだ。
本降りになるまでに、何とか指定の場所に着きたいとは思うのだが、
そんな彼女の願いとは別に、雨はどんどんと雨脚を酷くしていく。
指定のカフェに着いた時には、彼女は頭から足先までぐっしょりと濡れ鼠のように
なってしまっていた。
が、そんな事は構ってはおれない。彼女には尊敬するホークアイ大佐から任された
使命があるのだ。
カフェには雨宿りを兼ねてか込み合っている。
アリーは目当ての人物を見つけようと視線を彷徨わせ、自分がその相手を全く
知らないことに気づいた。
「そ、そうだ。確認しなくちゃ・・・」
と手に持っていた封筒を見て、更に慌てる。
鞄も何も持たずに飛び出した所為で、手に持っていた封筒も彼女自身のように濡れそぼっていたからだ。
「だ、大丈夫よね・・・」
恐る恐る封筒の中の書類を取り出して、―――がっくりと肩を落とす。
書類はインクが滲んでおり、文の原型が判らない有様になっていたからだ。
それでも必死に読み取ろうと努力してみるが、滲み具合が広がりすぎていて
読める箇所の方が少ない状態だ。
添付されていた人物写真も同様・・・いや、更に酷い有様で。
「ど、どうしよう・・・」
じっと目を凝らして、読める少ない部分を解読してみる。
名がEDから始まり、姓がICで終わる名前。
身体特徴は少々小柄な、性別男性。
髪がブロンド。
そして、錬金術関連にやや見識有りの文字だけが、何とか読み取れる。
「ED・・・という事は、エド?」
思わず呟いた声に、まさか返事があるとは思っていなかった。
「はい? 呼んだ?」
入り口を塞ぐようにして立っていた自分の背後から、返事が帰ってきたのに
アリーは飛び上がらんばかりに驚いた。
そして、振り向いた瞬間、思わず目を瞠る。
「え~と? 俺、あんたに会った事があったっけ?」
自分を凝視している相手に覚えがなくて、エドワードは頭を傾げて見せる。
「・・・・・・」
エドワードの問いかけに答える事無く、自分を値踏みするような視線に
思いあたる事が浮かび上がってくる。
「あんた・・・もしかしたら、今日会う予定の面接の?」
その言葉に、アリーはどっと身体から力が抜ける。
「おっ、おい! 大丈夫か?」
座り込みそうなアリーを素早く支えると、エドワードは慌てて彼女の様子を窺ったのだった。
アリーは目の前で旺盛な食欲を見せている青年――辛うじて見える――に
驚きの眼差しを向け続けている。
探し人が判らず途方に暮れていたときに、偶然にも相手に出会え、
安堵した途端、足から力が抜けそうになったのを助けて貰い、
正気に返ったとこで、勢い込んで面談をしようと切り出したアリーに、
エドワードと名乗った青年は、先にと彼女のずぶ濡れの服を
あっさりと乾かしてくれたのだった。
余りの手練の凄さに、唖然としている彼女にエドワードが気さくに返した言葉が。
「お茶代って、驕ってくれんの?」だった。
勿論、経費なのでお好きな物をと告げると、青年は嬉々としてメニューを
ずらりと読み上げ始めたのだった。
「いやぁ~、助かったよ! 節約兼ねて、昨日からな~にも食べてなかったからさ」
そう言って嬉しそうに食べている彼からは、卑しさは感じられない。
食べ方も恐ろしく早いし大喰らいなのだが、がっついた感じを受けないのは
彼がきちんと躾を受けてきた家の出なのがわかる。
彼の食欲が一段落をするのを見計らって、アリーは採用の条件などを
再度、確認する。
「お聞き及びとは思いますが、依頼の内容が内容ですから、勤務環境や
仕事内容などは、一切極秘で他言無用にして頂きたいのです」
そう切り出した彼女の言葉に、エドワードは勿論と頷き返した。
どこの会社でも同様だろうが、研究内容は社外秘が普通だ。
今更、わざわざ改めて確認する程でもない。
「それと・・・勤務に当たって、先に済ませて頂きたいお仕事が」
「先に?」
そんなに急ぐ研究にでも関わっている部署なのだろうか?と胸の中で
首を傾げる。
「ええ・・・。兎に角、先にある程度手を付けなくては困る状況と説明を受けております。
ただし、有る程度成果を出して頂ければ、ご提示した給与以外にも
特別ボーナスを弾むとのお言葉です」
その提案にエドワードの瞳が閃く。
「・・・マジで?」
「はい! 嘘は申しません。
それに必要な経費は全てお支払いしますし、おっしゃって頂ければ
こちらでもすぐさま取り揃えも致します」
その言葉にも感心させられた。
「なかなか、気前が良い様だけど・・・。
俺、やばい事には手は貸さないぜ?」
連絡を取った時に、ちゃんと研究内容は確認してはあるのだが、
胡散臭い好条件には、気をつけるに越した事が無い。
「いえ、危険があるような事は決して!
・・・一応、ちゃんと生息できるのは確認されてますし」
焦るように返された言葉に、今度は心の中ではなくエドワードは首を傾げる。
「生息・・・? 何、住むとこの話?
確か、こっちで部屋も用意してくれるとは言ってたけど・・・」
「え? そうなんですか? 何しろ担当者が不在なもので、
細かな点は判らないのですが、――― 余り環境は良くないかと」
最後の方は、話しに聞いている通りならかなり控えめに告げた事になる。
それでも、ここで受けないと言われると、折角自分を信頼して任せてくれた
ホークアイ大佐に顔向けが出来ない。そう強く思いながら、熱心にくどいていく。
「ああ、それは全然大丈夫。俺、若い時に旅続きだったんで、
どんな場所でも寝れるし、多少治安が悪かろうが平気だしさ」
そう明るく笑い返すエドワードに安堵するのと、疑問も湧いた。
―― 若い時って・・・、今も十分若いけど ――
こうやって目の前に座られていると、彼の若さと際立った美貌が良く判る。
先程からこのカフェに居る男女ともが、エドワードの容姿に並々ならぬ
感心を持った視線を向けていると言うのに、この本人は気づいていないのだろうか?
「で、勤務はいつからすれば良いんだ?」
エドワードにそう訊ねられて、それまで彼の事をじっと眺めていた自分に
思わず赤面する。
「あ・・・、じゃ、じゃあ引き受けて下さすんですね!」
「まぁ俺も、あんま贅沢言ってれる立場じゃないしさ。
住むとこまで用意してもらえるってんだから、大助かりだ」
先日、住んでいたアパートから追い出された身の上だ。
ホテル住まいする金もないのだから、渡りに船だ。
「そうですか! ありがとうございます!!
勤務は、直ぐにでも取り掛かっていただけるなら、上も大喜びと思います」
「そうなんだ? じゃあ、今日早速用意してもらう部屋に住まわせてもらうのってのも
有り?」
「はい、大丈夫です!
ただ、そのぉ・・・先程も言ったとおり、余り環境は良くないんですが・・・」
エドワードの気が変わらないようにと窺いながらも、念を押して伝えておく。
「OK、OK! 全然、構わないぜ。
良かったぁ~、今日野宿しようかと思ってたからさ」
物凄く物騒な事を、あっけらかんと告げるエドワードに、アリーはもう何度目か
判らない驚きを抱くのだった。
では早速と、案内をしてくれると言うアリーと一緒に、タクシーに乗り込む。
途中で色々と買出しをして行くのだが、彼女の買い物が妙に大量だ。
「確かに部屋を掃除するには必要だろうけど・・・多すぎないか?」
車の中の助手席やトランクに目一杯詰め込まれた掃除用具の数々。
確かに部屋の掃除をするには必要だろうが、たかが一部屋掃除するにしては
大量すぎる。
エドワードがそう考えながら尋ねてみるが、アリーはとんでもないという表情で。
「これでも足りないとは思いますが、不足分は明日にでも直ぐに手配させて頂きますので、
当座の分だけでも買っていくほうが良いんです」
「・・・そっか?」
何やら腑に落ちないのだが、もしかしたら廃屋か何かを見つけてあるのだろうか?
「あっ、運転手さん。車を止めて下さい。
エドワードさん、ちょっと上司に電話して来ますね」
道路にあった公衆電話へと走り去るアリーを眺めながら、
エドワードは感慨深い思いで街並みの風景に目をやっている。
―― まぁ~た帰って来ちまったなぁ ――
二度と戻る事はないだろうと思っていた街なのに、再びこの地の土を踏む事になるとは・・・。
それも、まだ2年程しか過ぎない内に。
―― 皆、どうしってっかなぁ~――
以前、一緒に闘ってきたメンバーの顔を思い出す。
こちらでの生活が順調になれば、顔くらい合わせに行ってみようかと思う。
きっと皆、驚く事だろう。
エドワードがそんな思いに浸っている間、アリーは上司にと連絡を取っていた。
が、忙しい自分の上司は鎮圧が意外にも簡単に終わった事件の事後処理に
追われていたらしく、電話は人づてに伝えられ返事が返された。
兎に角連絡は取れ、指示も貰ったので、アリーはエドワードの待つ車へと帰っていく。
「エドワードさん、上司と雇い主の方が早速家へと
向かうそうです。私達は先に行って、待っておきましょう」
「ああ、判った。
――― けど、俺にそんな丁寧な言葉使わなくて、いいぜ?」
「いえ、上司からもくれぐれもと言われてますんで、失礼があっては・・・」
「やっ、どっちかと言うと、それだけ畏まられてるほうが肩凝るし・・さ。
俺の方が年下なんだから、さん付けもしなくていいぜ」
そう言って、手の平をひらひらさせてみせるエドワードに、多少躊躇いつつも
じゃあ・・・と口調を砕けたものに変えた。
「でも、エドワードさ・・・エドは偉いのね」
「何で?」
アリーの突然の言葉に、エドワードが不思議そうな表情をする。
「だって・・・あんな凄い錬金術が使えるだけじゃなくて、家事まで出来るなんて」
男の子なのにと言う言葉は、失礼に当たるかもと省いて話す。
「そっか? 別に一人暮らしだったから、やるしかなかっただけだし」
「それでも偉いわよ」
「対した事ないって」
からからと笑って返すエドワードに、アリーは好感を持つ。
自分の今の部署には居ないが、やたらと威張っている人間が多い中
彼のように控えめに自分を告げる人間は少ない。
若いのに出来た青年だと感心している間にも、アリーが告げた住所へと車が到着した。
「でけぇ~」
立派な邸の前に立ち、エドワードは目をまん丸にして見上げている。
暫く眺め、ふと気づく。こんな大きな家を、まさか自分独りの為に
用意されたわけではないだろうと。
「ここって、寮かなんかなのか?」
「いいえ? 寮ではないわよ。持ち主の方も一人暮らしと窺ってるし」
「ふ~ん」
という事は、自分は居候という立場になるのだろうか?
それとも、挨拶だけして別に用意されている場所へと移るのだろうか?
玄関のエントランスに荷物を置き、アリーが差し出してくる物を見つめる。
「鍵? 何、これで開ければ良いわけ?」
「・・・ええ、お願いね。私はここで待ってるから」
エドワードは頭を傾げながら鍵を受け取る。
「何で? ここで待たなくとも鍵、預ってるなら一緒に入れば?」
エドワードのその言葉に、アリーはブンブンと音が鳴りそうなほど
大きく首を横に振る。
「私は・・・無理よ。エドワードだけ、先に進んで頂戴」
必死に言い募るアリーの瞳には、懇願さえ含まれている気がして、
エドワードは仕方なしに預った鍵を鍵穴に差込み、さっと扉を開いた。
そして、思わず目の前に広がる光景に、目を擦る。
そして、勇気を出してもう一度、目を見開いて眼前の状況を再確認してみるのだった。
静かに、速やかに扉は閉じられた。
そして、ぎこちなく首を回して立ち尽くすアリーの方に視線を向けると。
「・・・・・ここ、何?」
と、見たものの答えを欲して問いかけるのだった。
それに返されたのは、引き攣った頬に無理やり貼り付けられた彼女の笑みだけであった。
~~~ 『W‘Dな男達』 act4 ~~~
★愚かだと嘆く必要はない。
何故なら、隣の芝生の住人も我同様の生き物なのだから・・・。
「えっ・・・と」
何と言って確認をすれば良いのだろうか?
珍しくもエドワードの優秀な頭脳は、現状を把握しきれず言葉を
探しあぐねている。
確か自分は、今度採用された企業が用意してくれた部屋へと向かっていたはずだ。
そして着いた先には、とても自分ように用意されたとは思えない邸宅があり・・・。
てっきり会社の寮か(と言っても、それでも立派過ぎる気もしたが)、
社長なり上司に挨拶をする為に訪問したのか。
そのどちらかだろうと思ったのだが。
寮と言うよりは・・・・・倉庫?
いやいや、倉庫ならもう少し出入りしやすい構造をしているだろう。
ちらりと確認した中は、薄暗さとその他の光景ではっきりとは見ていないが
作り自体はかなり手が込んでいて、元は重厚な高級感溢れる内装。
・・・だったはずだと思わせられる作りだったような気が。
脳内でグルグルと不明瞭な考えが渦巻いている。
だろう・だったはずだ・ような気が等など、不確かな単語を付けてしまうのは、
今見たものを消去しようとする記憶の本能が働いているからだろうか。
つまりエドワードは、見たものを認識したくないと思っているわけだ。
玄関前のエントラスン・・・これは見た目も、手入れも完璧にされている。
その前で佇んでいる両者間では、さっきからずっと沈黙が張り詰められている。
が、いつまでもこうして現状で立ち止まっていても解決しないと判断したのは
エドワードの思考の切り替えの早さだ。
「アリー」
エドワードがそう呼びかけると、ビクリと肩を竦ませて慌てて返事が返ってくる。
「はっ、はい!」
「そのぉ・・・さ。――― ここって、俺が住む・・部屋ってわけじゃないよな?」
そう話し笑い顔を作ろうとしたが、頬が引き攣ってしまったので笑いは半分失敗した。
が気持ちを切り替えて、軽く頭を振ってそんな馬鹿げた考えを消し、
今度は軽い調子で話し出す。
「まさか、この――廃屋掃除して、俺の部屋にする。な~んて事はなぁ・・・」
そう言いながら、目の前に聳える概観は立派な建物を見回す。
いくら廃屋だろうと、ここは相当高級な邸だ。たかが新人の一人に用意するには
大袈裟すぎる。
そう考え直して独り頷いていると、目の前に立つ女性は奇妙な表情を浮かべている。
その表情は同情・・・憐憫のようにも見えるのが気になる。
―― ま・・さか・・な ――
たらりと頬に冷や汗が伝う気がしたが、心の中の葛藤は「嫌々、違う違う」と否定し続けている。
そんなエドワードの内心を読んだのか、アリーは小さく嘆息を吐き出して、
徐に唇を開けたのだった。
「ここは・・・別にエドワードの住む家と言うわけでは・・・」
と最初に告げられた言葉に、エドワードは大きく安堵の息を吐き出す。
「―― だよなぁ~!
言っちゃぁ何だけど、・・・ここって廃屋か何かなんだろ?
部屋に向かってるってのにここに着いたから、ちょっと驚いたけどさ。
あっ、もしかして最初に言っていた『急な仕事』って、ここの事?
何? ここを壊すとか、分解するとかすればいいのか?」
それなら合点も良くと言うものだ。
安心した為か、饒舌に話し出したエドワードにアリーが慌てて首を振って否定してくる。
「と、とんでもない! 壊すとか分解?とかなんて、とんでもない!
ここを、そのぉ ―― ちゃんと住めるようにして頂かないと・・・」
「――――― 住めるように?」
エドワードは大きく目を開き、頭を傾げた。
そして、顔の前で方手の平を振って、顔を背ける。
「無理無理! ってか時間の無駄だって。
こ~んなとこ住むようにするまでどんだけ莫大の時間がかかるかわかんねぇって。
それよりも、さっさと壊すか分解して立て直したほうが早いって」
ちらりと見ただけでアレな状態なら、奥はもっと酷い有様なのが簡単に想像できる。
どれだけ放っておいた廃屋か何だか知らないが、今から手間掛ける時間を注ぎ込むなら
壊して立て直したほうが、はるかに時間短縮が出来るだろう。
エドワードの脳内では、壊す錬成をすぐさま思い浮かべ始めていた。
塵に分解させてしまえば、然程手間無く片付けられるだろう。
その後建てる物は、必要な質量の材料を計算して構築すればいい。
塵に化してしまったものは元には戻せないだろうが、こんな廃屋の中にあるものなら
然して必要な物などないだろうから・・・。
「エドワードさん・・・訂正したくはないのですが。
ここ、ちゃんと人が住んでます」
そのアリーの言葉に、エドワードは思わず思考を止めて視線を向ける。
「・・・・・・はっ?」
ポカーンとしたエドワードの間抜け面まで披露して。
「持ち主は、殆ど帰っては来られてはいないのですが、一応・・・、
ここにお住みの方が」
その後、たっぷり数十秒は呆気に取られ、エドワードが感想の第一声を放った。
「えええええぇーーー! 嘘だろーーー!!」
*****
エドワードとアリーが邸の行く末を憂えている頃。
「全く・・・。
この忙しい時に、わざわざ家政婦の面接などしなくとも」
車中にまで書類を持ち込んで仕事をしているロイは、不満そうにぼやくが
その横に座っている女性の賛同は得れなかった。
「尤もですが、こんな状況にまでなった原因をお考え頂ければ、
そのような不満は出ないのでは?」
忙しいのは何もロイだけではないのだ。
彼の目に余る怠慢、怠惰ぶりのせいで被害にあっているのは、本人ではなく
間違いなく彼女自身なのだから。
その彼女の正論にはさすがのロイも返せる言葉はなく、空咳をして返事を避けつつ
手元の書面に視線を落す。
「・・・・・・まだ、この解析は済んでないのか」
苛ただしげに落された言葉に、ホークアイも書面を覗き込んでくる。
「―― ああ。
どうにも分析に難航しているらしく・・・」
彼女も知っているその案件に、そう返事を返す。
「難航している、そう聞いてからかれこれ一ヶ月は過ぎている。
全く・・・昨今の錬金術師達も、使えない人材が多すぎて困るな」
大きな嘆息を吐いて話すロイに、ホークアイも仕方無さそうに頷いて返す。
国家錬金術師制度が無くなり、多額の報奨金が貰え無くなった段階で、
軍に残る希望を出した者たちは僅かだった。
多少自分の才に自身がある者達は、殆ど大きな企業や財団に就職したり、
自分の研究所を持つなどして去って行った。
おかげで、残った者は余り出来の良くない人間ばかりになってしまったのだ。
彼らも今では、軍の所有している研究所の一職員と言うポジションでしかない。
近来の軍所属の錬金術師達の能力の低下は、ロイも憂慮している問題なのだが、
とても現状、そんな一部所の事にまで関わっている余裕が無い。
「しかし・・・この事件は、この解析が手懸りでキーワードなんだ。
たかが砂粒の分析如きで、こうも手こずらされては折角の解決の手懸りも
掴めない」
ふぅーと嘆息を吐いて黙り込んだロイに、ホークアイも苦々しく頷いた。
科学が発達していないこの国では、分析や解析にその専門の錬金術師が担当してきた。
が、今の人材不足の有様では、依頼したとしても時間はかかるし、調査内容は
出来も今ひとつ・・・どころか使えないことも多い。
今後を考えれば、錬金術師の能力の向上を図るか、優秀な人材を雇用するか。
それが望めないなら、それに変わる部署を作る必要があるだろう。
「・・・・・・優秀な錬金術しか・・・」
何気なく呟かれた単語から、ロイが何を思い浮かべているかは簡単に察せられる。
「不思議なものだ。
居た時は面倒ばかりかけられていた問題児だとばかり思っていたが、
居なくなれば、その存在の稀有さを思い知らされるよ」
口の端に小さな笑みを浮かべながら、そう語るロイの言葉には深い想いが籠められている。
面倒をかけられていたとロイは言うが、それを言葉ほど嫌がらずに世話をしていたのも
ホークアイは判っている。
嫌な素振りはあくまでもポーズだ。
彼らがそれ以上の無茶をしない為の。
実際あの頃のロイは、彼らの事関しては最優先で処理し動いていたのだから。
本当に迷惑だと思っていたなら、いつまでも放っておいたはずだ。
「困ったものだ・・・」
そのロイの言葉に、ホークアイも全く同様の思いで頷いたのだった。
*****
またしても2度目の硬直した時間が訪れ、衝撃が去ったエドワードは
信じられない気持ちで訊ね返していた。
「・・・・・・ちょっと信じられないんだけど。
ここって廃屋じゃないんだ?」
扉の中の世界を垣間見たエドワードには、それ自体信じられないと言うよりは、
認めたくない気持ちで一杯なのだ。
「はい・・・、エドワードの気持ちは凄く判ります。
けど、本当にここはちゃんとした住居なんです」
力強く返された話に、エドワードはしみじみと大きな溜息を吐いた。
「それって有る意味、大物だな」
呟いた言葉に、今度は間髪要れずに返事される。
「ええ、かなりの大物です」
エドワードはそのアリーの返答が、微妙に自分とのニュアンス違いを感じて訝しむ。
自分としては皮肉を揶揄して言ったつもりなのだが、アリーはやたら生真面目に返してきた。
その違いを確認するかのように尋ねてみる。
「ちなみに、ここの持ち主って誰なわけ?」
車で入ってくる時にした確認では、表札も出ていなかった。
「それは・・・」
伝えるべきか伝えないべきかを考えあぐねているアリーが、門から入ってくる車を目にした途端、
パッと表情を明るくする。
「エドワード、私の上司が着いたようです。
詳しくは上の者が説明してくれるはずなんで!」
と、嬉々としてエントランスを離れて出迎えに駆け出して行く。
「ちょ、おい!」
置いてかれたエドワードが、慌てたように彼女を視線で追う。
そして・・・。
呼びかけようと開いた口を思わず固く引き結ぶ。
何故なら、入って来た車とは軍用車に似ていた。
普通に支給されている軍用車とは趣が違うこのタイプは、エドワードも
何度か乗った経験も、目にした事も有る。
所謂、軍高官用の高級車だ。
中は見通せない仕様だが、エドワードは嫌な予感に身体を緊張させる。
――― これって、何かの罠とか?―――
数年前に軍とは一線を引いたとは言え、エドワードには無関係になり切れない世界だ。
現在のTOP近くにロイ・マスタング大将が立ったから、彼の庇護を当てにしていたわけではないが、
この数年、軍から何の横槍も入らなかった事を思えば、多分に彼の力が働いていた事を
思わずにはいられない。
止まった車に鋭い視線を投げ掛ける。
何かあった場合に、すぐにも逃げれる算段だけは怠らないように周囲に注意を張り巡らしつつ。
そして、ガチャリと開かれた扉から出てきた人物を目にした途端、
緊張も忘れて大声で叫んでいた。
「って――― ホークアイ中佐ーーー!!!!」
向うからは降りる前からエドワードに気づいていたのだろう。
車中から出てくる時にも、驚いたように視線を向けていた彼女の姿が見える。
「エドワード君!!
あなた一体、どうして!?」
足早に近付いてくる彼女の様子に、エドワードも驚きつつも笑顔を向ける。
「それは俺も聞きたいところだけど・・・。
でも、本当に久しぶりだな!
中佐も元気そうで良かったよ」
そう挨拶しながら、差し出された手を握りながら、彼女も珍しい満面の笑みを浮かべ返してくる。
「ええ、こちらは相変わらずよ、皆。
あなたも元気そうで良かったわ。
アルフォンス君も元気に大学生活をしてるって、彼から連絡を時たま貰うのよ」
「アルから? 何だよ、あいつだけ連絡とかしてたのか」
拗ねたように頬を膨らませる様子に、以前の頃を変わらないエドワードを彷彿させる。
「あら? エドワード君も連絡くれても良かったのよ。
あなたが面倒くさがらないでいてくれれば」
茶化すように言い当てられたエドワード当人は、罰が悪そうな笑みを見せてくる。
「・・・御免。俺って、そういうの苦手でさ」
「判ってるわ」
気にしていないと言うように、ホークアイが優しく微笑んで答えてくれる。
二人が旧友を深めている間、その成り行きを唖然と見つめていたアリーが
控えめに声をかける。
「あっ、あのぉ・・・。大佐はエドワード、彼とはお知り合いで?」
そう声を掛けられて初めて、二人は自分達以外の第三者が居た事を思い出した。
「ああ、アリーにも話した事があったでしょ?
彼は、エドワード・エルリック。鋼の錬金術師よ」
「元だぜ? そっか・・・、もう大佐になってんだな」
訂正を入れながらもしみじみと時間の経過を実感する。
「エドワードが!?
い、いえエドワード様があの!?」
驚きと感激の無い混ざった表情で、自分を見つめてくるアリーに
エドワードは居心地悪そうな表情で返す。
「いきなり様付けじゃなくていいって。
もう止めてんだから、関係ないし」
エドワードがそう言っても、軍で所属しているアリーに取ってみれば
伝説になっている鋼の錬金術師と対等に話すなど出来るわけも無い。
「アリー、彼は余り堅苦しいのが苦手なの。
普通に話してくれて大丈夫よ」
そう上司のホークアイが言ってくれなければ、この後黙ったままいるしかなかっただろう。
「でも・・・一体どうしてエドワード君がここに?」
最初の疑問に戻るホークアイに、エドワードも不思議そうに首を傾げた。
「俺も今、そう思ってたとこ。
俺、今日 社の面接を受けに来てたんだ。
で、そこで会ったのがアリーでさ。気づけばここに来ていたわけ」
「面接に?」
暫し考え込みながら、アリーの方を向きなおして告げる。
「アリー、家政婦協会の封筒を」
そう言いながら差し出された手に、おずおずと躊躇いながら汚れた封筒を差し出す。
そして、その中身を取り出して、ホークアイは深い嘆息を吐いた。
「・・・・・これでは読めないわね」
乾いた所為で余計に読みづらくなった書面に、何となく想像がついた。
「アリー、このような場合は、まずは協会に確認を入れるのが先でしょ?
連れてきたのがエドワード君だったから良かったものの、厄介な人物だったら
どうするつもりなの?」
少し咎めが混じった言葉遣いに、アリーは申し訳ありませんと頭を下げるしかない。
そんな二人のやり取りに、大よその経緯を察してエドワードが笑う。
「何だ、人違いか」
「そのようね・・・。ごめんなさいね、余計な手間を掛けさせて」
申し訳無さそうに頭を下げるホークアイとアリーに、エドワードは笑いながら
首を横に振る。
「いいって。俺も確認してなかったのが悪かったんだしさ。
それに・・・、この家に入らなくて済むんだから、ホッとしたぜ」
心からの安堵の笑みを浮かべるエドワードを、ホークアイは微妙な表情を
浮かべながら見つめる。
「で、ここ一体誰の家なんだ?
俺、てっきり廃屋で壊すために依頼されたのかと思ってたら、
アリーがここには人が住んでるなんて、冗談みたいなこと言うしさぁ」
自分と無関係になったと思えば、気持ちも軽くなる。
「・・・冗談だったら良かったんだけど・・・・・・・」
「って事は、本当に住んでる奴が居るんだ!?
はぁー、どんな物好きなんだ、そいつ。
俺なら、ここに住む位なら、さっさと潰して違う家建てるぜ」
「全くその通りよ。
壊せるものなら、私としても恥を広める前に消滅させたいくらい」
ホークアイの実感の籠もった言葉に、エドワードも判る、判ると大きく頷いた。
「――― で、誰の?」
と好奇心一杯に尋ねてくるエドワードに、ホークアイは困ったように口を開こうとした矢先。
「悪かったな・・・・物好きで」
と、不貞腐れたような声が、車から降りてきた人物から掛けられた。
その人物を目にした時、エドワードは先程以上に驚いて凝視する。
「・・・あんた」
思わず言葉に詰まるエドワードに、ロイは苦笑しながら近付いてくる。
「――― 久しぶりだな、鋼の。
いや、エドワード・エルリック」
そう挨拶をしてきた人物は、間違いなく以前世話になっていた、
ロイ・マスタング、その人だった。
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