c - Rakuten Inc
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
1019955
HOME
|
DIARY
|
PROFILE
【フォローする】
【ログイン】
Selfishly
金猫の恩返し Off本版4章
『 金猫の恩返し 』オフ本版
四章 ~ 独占欲の芽生え ~
「あら?」
「おやっ?」
双方が上げた声は、どちらも意外な場面での対面に、軽い驚きを表している。
4組の瞳は、その場の見知りの相手と、見知りでない相手の上を、さりげなく交差していく。
「やぁ、思わぬ処で逢ったものだね。 いつ戻ったんだい?」
最後の言葉は、特定の相手への問いかけだ。
「ん、さっき」
短い返答の後に、自分を見つめている隣の女性に、小さく頭を下げる。
そのエドワードの仕草に、ロイが自分の連れの紹介が遅れていた事に気づいた。
「ああ、こちらは友人で、カタリーナ・シュヴァルツ嬢だ。
で、ケティー、こちらが…」
自分の部下達を紹介しようとする言葉は、連れの女性の言葉によって攫われる。
「今晩は、リザさん。 お久しぶりね」
「はい、お久しぶりです。 カタリーナさんも、お元気そうでなによりです」
互いに軽い会釈を交し合って、挨拶をする。
「ああ…、君たちは逢った事が有ったかな?」
「ええ、以前、貴方を迎えに司令部に寄った時に、案内して頂いたのよ」
「そうだったか? じゃあ、こちらは…」
「鋼の錬金術師、エドワード・エルリック氏ですわね」
美しい女性に、改まって名を呼ばれ、エドワードが目を瞬かせる。
「あっ、はい、そうです。 今晩は」
慌てて会釈を返すエドワードに、カタリーナと紹介された女性は、優しい笑みを向ける。
「今晩は。 ご高名はお伺いしておりました。
1度、お目にかかれればと思っておりましたが、願いが叶って嬉しいですわ」
からかいを含まない、親しげな言葉が妙に気恥ずかしくて、
エドワードは「どうも…」と小さくだけ返した。
そんな控えめな様子に、好感を抱いたのか、カタリーナの笑みが更に深くなる。
そして、ロイはと言えば…。
そんなエドワードの態度に、少々不満を抱いていた。
日頃、自分には、忘却武人な振る舞いも解さない彼が、妙齢の美女の前に出ると、
妙にお行儀良くなるのが、いまいち納得がいかない。
『全く…、その数十分の一位、私を敬う態度を見せても、罰は当たらないだろうに』
目の前ではリザも含めて三人で、楽しげな談笑が続いている。
最初は物怖じしていた風のエドワードも、カタリーナの気さくな態度で緊張を解いたのか、
薄っすらと頬を染めながらも、笑顔で返事を返している。
すっかり蚊帳の外に置かれた気にさせられたロイは、面白くも無さそうに、その光景を眺めていた。
「ごめんなさいね、お引止めして。
また機会があったら、ぜひ近い内にお会いしたいわ」
世辞ではないカタリーナの言葉に、エドワードも素直に頷いてみせる。
その後、リザとエドワードは、ロイ達の少し離れた席に付いて、メニューを見始めていた。
互いのメニューを見せ合いながら、楽しそうに話している様は、
さすが恋人同士と言うには歳が離れすぎてはいるが、似た色彩を纏っている者同士だから、
仲の良い姉弟と言うところか。 ロイは目の端で、そんな二人の様子を捕らえながら、
行儀悪くテーブルを指で弾いている。
「お止めなさい、行儀が悪いわよ」
そんなカタリーナの言葉に、はっと気を取り戻したロイが慌てて、
付いていた肘と弾く為に乗せていた手の平を、下ろす。
カタリーナはロイが居ずまいを正すのを待って、話しかける。
「素敵な少年ね」
「…偉く気に入ったようじゃないか」
「そうね、魅力的な殿方には、誰しも惹かれるもんじゃなくて?」
カタリーナから返ってきた言葉に、ロイが驚かされたようにな表情を浮かべる。
「君…。 鋼のとは、歳が離れ過ぎてるだろ? 大体、彼が年上の女性に弱いのは、
母親を亡くしているからであって…」
憮然とした表情で、言葉を止めたロイに、カタリーナが冷ややかな笑みを浮かべて、
ロイが止めた言葉の先を続ける。
「私のような小母さんじゃ、相手にして貰えないと?」
相手からの視線が痛いほど突き刺さってくるのに、ロイは顔を背けてかわす。
「別に、そんな事は言ってない。 君の魅力は、私が一番解っているからね。
ただ、彼はまだ幼くて、君のお相手には力不足と言ってるんだ」
そう告げて、ちらりと離れた席に視線を流す。
そこでは、先ほどと変わらず、出てきた料理を、二人して仲良く分けては、
話に華を咲かせている様子が目に入る。
「あらあら、一体どちらに妬いているのやら…」
そんなカタリーナの呟きなど、気も漫ろなロイには届いていないようだ。
「不機嫌になるのなら、見なければ良いものを…」
エドワード達の様子を窺っては、渋い表情を濃くしている自分の事には、気が回らないのか…。
そんなロイの様子を観察しながら、呆れたように嘆息する。
***
「じゃあ、私達はこちらだから、一緒に帰るわね」
「あっ? ああ、わかった…」
急なカタリーナの提案に驚いたが、意外に馬が合うのか、
楽しそうに話している様子に、了承するしかない。
「エドワード君、今日はご馳走様。 ありがとう」
「ううん、こっちもいつもお世話になるばかりだから、少しでも返せれば良かったよ」
「今度は、私ともお食事しましょうね」
そんなカタリーナの誘いに、少しだけ気恥ずかしそうな様子を見せ、躊躇いがちに頷き返す。
「…二人とも、車が来たようだ」
「あら、もう? 待ってるときには、なかなか来ない癖にね」
名残惜しそうに、目の前の車に乗り込む女性陣に、残ったロイとエドワードが小さく手を振って見送る。
「…我々も、帰るとするか」
「おう…」
華やかな女性陣が退場すると、その場には気詰まりな空気が生まれる。
それを払拭する為のロイの提案に、エドワードも同意を示して歩き出す。
「今度は、どこを廻って来たんだね?」
「ああ、この前まで西方の街に居たんだ」
「西方にね、何か良い情報はあったのかい?」
「う~ん、良いって言えば良くない事も無いけど、まぁあんまり決め手になるようなものは無くてさ~」
最初はそんな風に、他愛も無い近況から始まった会話は、気づけば言い合いになっていた。
「君は大体、戻るときには連絡を寄越すようにと、何度も言っていただろう?」
「何でイチイチ連絡しなきゃならないんだよ! 大体今日だって、
とっとと帰ってデートなんかしてるあんたが悪いんじゃないか!」
何故そんな流れになったかと言うと、ロイがリザとエドワードとの組み合わせを珍しがり、
どう言う経緯かと聞いてきたからだ。 本当は、夕刻に着いたエドワードが、
新しい情報の有無を尋ねて司令部の、正確に言うとロイの元へと出かけてきたのだが、
すでに執務室の主は不在で、代わりに丁度帰る準備をしていたリザが居たと言うわけだ。
「だから、ちゃんと連絡を寄越しておけば、私だって待っていたさ」
「どうだか。 あんたの事だから、美人のお誘いがあれば、さっさと帰ってんじゃない?
って言うか、無くても誘って出かけてるかも知んないしさ」
「ほぉー、それは私がもてる事へのやっかみかね?」
「はん! 何であんたのだらしなさを、俺が羨まなきゃならないんだよ」
「だらしな…。 酷い言い様じゃないか。 私は博愛なだけで、別に身持ちが悪いわけじゃない。
それに、今日の彼女だって、友人だと紹介しただろうが」
「友人…ね。 な~んか、あんたが言うと、邪ぽくねえ?」
「君ねぇ…。 それを言うなら君も、年上の女性を前に、えらく鼻の下を伸ばしていたようだが?」
「伸ばしてない!」
「伸ばしてた!」
と、先ほどから続く口論は、第三者が聞いていれば、痴話喧嘩かと、呆れ果てられる内容だと、
どうして二人とも気づかないのか…。
そして、バタンと大きな音を立てて扉を閉めた後に、二人ともハタと気が付く。
「「何で、一緒に戻ってるんだよ…」」
異口同音で呟きを落とす。
そう、言い争っている間に、二人仲良く、ロイの家に戻ってきている事に、
今の今まで気づいていなかった二人だった。
「まぁここまで来てしまったんだ、上がりたまえ」
先に気を取り戻したロイが、そう告げて、促す。
「いや、いいよ。 今ならまだ、そんなに遅いって時間でもないし…」
「馬鹿を言うな。 遅くないって…。 こんな時間に子供だけで、帰させるわけに行かないだろ。
四の五の言わずに、さっさと入りたまえ。 アルフォンス君には、きちんと連絡を入れておくんだぞ」
それだけ告げると、ここで揉めていても埒が明かないと思ったのか、
さっさと中へと入っては、照明を点けていく。
取り残されたエドワードは、一つ大きな嘆息を付くと、言われたとおりに、
中に後を追うように付いていく。
結局その日も、恒例化され始めているお泊りをして、
翌朝は二人揃って、ロイの家で朝食を取っている。
「鋼の、そのソースを取ってくれ」
「ん、ほらよ」
昨夜の諍い等なかったような、和やかな朝食風景だ。
「で、今日はどうするんだい? このまま司令部に行くか?」
「んー、どうしようかなぁ。 ここも、ちょっと片付けて行きたいしな。
あんたも、忙しいのはわかるけど、ちょっとは掃除もしろよな」
エドワードの言葉に、ロイは周囲を見回す。
「そんなに、酷い程じゃないだろ?」
確かに、きちんと片付いているとは言えないが、乱れている程でもない。
男の一人暮らしなら、こんなものだろうに…。
「あんたに諭すだけ無駄だよな…。 司令部には後から顔を出す、
あんたは先に行っといてくれ」
「そうか? わかった」
エドワードの返事に、あっさりと返すと、ロイはそれ以上エドワードの行動を気にするでもなく、
食事を終えて出勤の準備を始める。
出掛けに、
「そうだ、今日はアルフォンス君も誘って、うちで食事をしないか?」
「ここで?」
「ああ、いつも君ばかり泊まる事になってるだろ? たまには、三人でと言うのも悪くないだろ?」
ロイの突然の提案に、戸惑いながら。
「悪くはない…けど」
「ちょっと面白い論文が手に入ったんで、君らの意見も聞いてみたかったんだ。
丁度良い時に、戻ってくれたもんだ」
そう勝手に話を進めて、迎えに来たハボックに手を上げて、歩き出していく。
「おはようございます。 おっ、エド、またお泊りか?」
「おはよう。 ん、昨日バッタリと会っちゃってさ」
二人が言葉を交わしている間に、ロイはさっさと車に乗り込んでいた。
「あれ? 今日は一緒に乗ってかないのか?」
玄関の扉が開け放たれているのに気づいたハボックが、怪訝そうに聞いてくる。
「ああ、まだ片付けとか終わってないし、どうせ今日も、ここに居ることになったから、
それなら買い物とかもしときたいしな」
「へぇー? まぁ、頑張れよ」
手を振って立ち去るハボックに、エドワードも振り替えしてから、家の中に戻っていった。
「また偉く気にいったもんですねぇ」
突如と掛けられた言葉に、読んでいた資料から顔を上げて訊ね返す。
「何がだ?」
怪訝そうな上司の様子に、ハボックの方が軽く驚く。
「大将のことっすよ。 今日も泊めるんでしょ?」
「あぁ、鋼のか? さぁ、今日は弟も来るから、泊まりはしないかもな」
「でも、大佐が人を招くってのも、珍しい事もあるもんですよねぇ」
感心したようなハボックの言動に、ロイはどうでもよさそうに肩を竦めてから、資料へと目線を戻す。
「成り行き上だ。 それに相手は子供だぞ、下手な警戒心は必要ないだろ?」
「いや別に、警戒心云々の話じゃないんですけどね」
そんなハボックの言葉には、もう関心が無くなったのか、上司は手元の資料に集中を見せている。
「まぁ、あいつらにとっても、いい事だよな」
そう結論付けて、ハボックも運転に集中する。
***
「よっしゃ~、終わったー」
綺麗に掃除された邸は、造りに相応しい輝きを取り戻していた。
ロイの身分に相応しい官舎は、余り住居に関心を払わない持ち主によって、
捨て置かれていたままだったが、こうして手入れしてやれば、やはりなかなかに立派なものだ。
エドワードは満足気に、周囲を見回し、次いで壁にかかっている時計を見る。
「やべ、そろそろ買出しに出なくちゃ」
ロイが出て行った後、アルフォンスに電話して伝言を伝えると、快く了承の返事が返ってきた。
となると、今日の夕食を作るのは、また自分になるわけだ。
なので、アルフォンスとの待ち合わせは、市場で落合う事にした。
できればその前に、少し品揃えを調べておきたい。
慌しく出かける準備を整えると、預かった鍵で施錠をして、市場への道を急いでいく。
「う~ん、今日は何作ろうかな…」
エドワードはリザに教わったレシピの中から、ロイが好きそうなものを検索する。
少し前から、リザには暇がある時に、ちょこちょこと料理を教わっている。
いくらエドワードが料理が出来るとは言っても、作る回数が多くないせいで、
レシピもバラエティーに限られてくる。 師匠の元で教わったのは、主に肉料理が中心だった。
それはそれで、エドワードにとっては嬉しいのだが、ロイの年齢や仕事柄を考えると、
もう少しバランスが整っている方が良い気がしていたのだ。
で、たまたまリザに、バランス良く食事を取る方法を訊ねた所、色々な料理方法を教えてもらい、
それ以来、何かと教わる事が増えていた。
そのお礼も兼ねていたのが、昨日のレストランでの食事と言うわけだ。
ロイはしつこく理由を聞きたがったが、何となく本当の事を言いそびれている内に、
言い合いしている内容が、逸れてしまったのだが…。
エドワードは昨日レストランで見た光景を思い出す。
本当に綺麗な女性だった。 自分たちの母親とは、違う雰囲気を持ってはいたが、
凛とした姿が印象的な美女だった。
『大佐って、ああいう人が好きなんだ…』
食事中に、何度か盗み見るように二人の方を見ていたが、凄くお似合いの二人だった。
いつも胡散臭いとしか映らなかったロイの言動も、酷く優雅に見えたのは、
その場に相応しいカップルだったからだろう。
それが何だか、酷く悔しい気がした。 どうせ自分など、一緒に居ても、
あんなにしっくりとは思われないだろう、逆に違和感を持たれても仕方ない。
『大人と、子供か…』
そんな当たり前の事が、何故今更気になるのか…。
「気にするような事じゃないだろ、俺!
そうだよな! もう、つまんない事を考えるのは、無し・無し!」
ふるふると頭を振って、余計な雑念を追い払うと、目の前の品定めに集中しようとする。
そんな矢先…。
「まぁ、エドワードさんよね? 嬉しい偶然だわ!」
華やかな声が自分を呼んでいる?
エドワードは驚き、声のほうに視線を向けてみる。
そこには飾りっ気ない服装の女性が、にこやかに微笑みかけていた。
「…カタリーナさん?」
エドワードは目を丸くして、目の前の女性をマジマジと見つめてしまう。
「驚いた? そんなに感じが違うかしら?」
にこにこと笑みを浮かべて、エドワードを見つめている女性は
、確かに昨日の夜、ロイと食事をしていた美女だった。
『雰囲気が全然違う…』
エドワードは無作法にあたると解っていても、目の前の女性を眺めるのを止めれないでいた。
昨日はバランスの良い肢体を引き立てるドレスを纏い、髪も綺麗に結い上げられ、
施されている化粧も、美貌を引き立てていた妖艶な美女は、今、陽の下では、
シンプルな服は動きを妨げない事が重要視されているような作りの物だし、
綺麗な栗色の髪も、無造作に一つに束ねられている。 しかも、ノーメイクのようだ。
そんな色気も素っ気もないような格好なのに、酷く目を惹くのは、彼女の美貌もあるだろうが、
溌剌としたパワーが溢れているからだろう。
そのパワーに押されるように、お茶へと誘われたのを断れずに、気づけばカフェで向かい合っている。
「エドワードさんも、昨日みたいにきっちりしている私の方が良かったかしら?」
悪戯っ子のような笑みを向けて、聞いて来る彼女をじっと見つめて考える。
確かに、昨日のような姿も素敵だとは思うが、今の彼女の方が、なんだか彼女らしい。
本質が顕われていると言うか、好感が持てる。
そんな事を、つっかえながらも伝えると、カタリーナの笑みが大きく広がった。
「お世辞でなくそう言ってくれた男性は、あなたを含めて三人目ね」
「三人だけ…?」
そうなのだろうか? 不思議そうにエドワードが呟く。
「そうよ。 男の人は、口では自然体が良いとか何とか言うけど、
結局着飾った綺麗な女性が好きなものなのね。
だから、こちらの方が良いって言ってくれたのは、ロイとあなたと、もう一人だけね」
「大佐も…」
それには少し驚かされた気がした。 ロイが付き合ってきた女性達は、
常に美しい装いと麗しい美貌の持ち主が多いと聞いていたから、
てっきり昨日の夜のような彼女が好きなのかと思っていたからだ。
『それだけ、彼女が特別…ってわけなのかな…』
そんな考えが浮かぶと、少しだけ胸の奥が重くなった気がする。
そして、何故そんな風になるのかが、エドワードには不思議に思える。
「ええ。 まぁ、あの人は元々女性の外見に然程関心もないから、
どうでも良いのかも知れないけど」
「関心がない?」
疑わしそうなエドワードの様子に、カタリーナが笑いながら頷く。
「そうなのよ。 巷ではプレイボーイのように言われているけど、
元もとの気性が面倒くさがりでしょ? 女性にもマメさが無いから、
結構振られたりもしてるのよ?」
「大佐が振られる…てるんですか!」
「まぁ正確には振られてるんじゃなくて、自然消滅しちゃうってとこかしら。
本人、それも気にしてないから、悪循環よね」
可笑しそうに笑うカタリーナの話に、エドワードは驚きの連続だった。
「で、でも、カタリーナさんは、続いてるんだろ…ですよね」
「いいのよ、改まった話し方しなくても。 私もエドワード君って呼んで良いかしら?
代わりに、エドワード君もいつもの話し振りで話して頂戴、 ね?」
そう告げる笑顔が、優しくて、エドワードも思わず頷いて返す。
「私とは友人同士として長いからで、恋人だった事は1度もないわよ?」
「えっえー、ど、どうして?」
これだけ素敵な女性なのだ。 ロイの趣味ではなかったという事なのだろうか?
そんなエドワードの考えが読めたのか、カタリーナはふふふと小さく哂う。
「そうね…、正直に言えば、最初は恋人前提で付き合おうかという時期もあったのよ。
でも、ロイは私の求めている恋人像とはかけ離れていたわけ。
私は自分が唯一でなくちゃ嫌なの。 何番目の恋人になって、
終わるような恋をしたくもないし、そんな相手もお断り。
自分だけを見つめてくれて、誰よりも私を大切にしてくれる、
そんな人でなければ、怖くて付き合えないわ。
でも、ロイはそんな恋人にはなりそうもないし…、
いえ、結局は私が、彼の特別になれなかっただけね」
そう語る彼女の瞳が、酷く哀しげに映って、エドワードは焦って言葉を告げていく。
「そ、そんな事はないと思う。 カタリーナさんは、凄く綺麗だし、優しいし、良い人だもの。
大佐もそんなカタリーナさんだから、こうしてずっと付き合って来れてるんだと思う。
だから、大佐の特別になれないとか、そんな事はないぜ、きっと」
一生懸命なエドワードの励ましに、カタリーナの頬にも明るい笑みが戻る。
「ありがとう、貴方はやっぱり、素敵な人ね。 ロイが特別に想う筈だわ」
「えっ、俺なんか別に…。 ええー!? 俺は別に大佐の特別とかってわけないし!」
「あら? でも、一緒に寝泊りまでしてるんでしょ?」
「ね、ね、寝泊りって…。 偶々、そう偶々たま~に、リビングのソファー借りてる位で…」
慌てふためくエドワードの様子を、カタリーナは笑顔で見守って、そして静かに語り出す。
「ロイは警戒心が強い人でしょ? 仕事柄、そうならざる得ないんでしょうけど、
どこか人を弾いているような処があるのよ。 だから、人と距離を置くし、簡単には踏み込ませない。
私も付き合いは長いけど、あの人が家に人を招いてるなんて、聞いたことないし、勿論私も行った事もないわ。
それだけ、あなたは特別なのよ」
彼女の言葉に、エドワードは茫然とするしかない。
自分がロイの特別云々は別として、家に人を招かないとは思っていなかった。
始まりが始まりだっただけあって、気軽に人を上げるのは、少々無用心だなと思った程だったのだ。
「…そうなんだ。 俺、てっきり、大佐はいつもあんなのかと。
だから、鍵とかも渡してくるんだとばかり…」
「鍵? ロイの家の?」
今度はカタリーナが驚く番だ。 大きな瞳を、更に丸くしてエドワードを見つめてくる。
何をそんなに驚かれているのかはわからないが、エドワードは彼女の問いかけに、正直に頷く。
「そう…、それ程なのね…。
良かったわ、 ロイにも漸く、そういう人が現れたのね」
彼女が何をそれ程感心しているかは、エドワードには判らない事ばかりだが、
彼女の慈愛に満ちた笑みが、酷く嬉しそうで、思わず見惚れていた。
「ケティー」
呼び声に、振り向くようにして手を振って答える彼女に、
呼びかけた男性も、手を振り返しながら、近づいてくる。
「エドワード君、私の婚約者のダンよ」
「婚約者!」
「ええ。 ダンこちらが噂の、エドワード君よ」
驚いているエドワードを余所に、カタリーナは自己紹介を続けていく。
「やぁ、君がエドワード君ですか? ケティーから、噂はかねがね」
誠実そうな男性は、メガネの奥に、人の良さそうな瞳を細めて、笑顔で握手を求めてくる。
出された右手を逡巡の上握り返すと、相手も力を入れ替えして答えてくる。
そんな二人の挨拶が終わると。
「で、ダン、一体どうしたのよ?」
「どうしたのよって、ケティー。 君が午後の診療時間が迫っていると言うのに戻ってこないから、
見に来たんじゃないか」
相手の言葉の内容に、今度はカタリーナの方が慌て出す。
「ま、拙いわ。 午後は、急ぎが多かったのよ」
バタバタと片付け出して、席を立つと、エドワードが伝票を掴む前に、取り上げてはレジへと走っていく。
「ごめんなさい、エドワード君。 今度またゆっくり、話をきかせてね。 じゃあ!」
呼びに来た婚約者を引き連れて、カタリーナは足早に去っていく。
その横で、律儀にエドワードに会釈をしてくる婚約者に、エドワードもペコリと頭を下げる。
慌しく去っていった彼女の姿が見えなくなった頃、彼女が話した言葉が浮かんでくる。
「まさかな…。 カテリーナさんも、何か誤解してるのかもだよな」
きっとそうだと思い直して、エドワードはアルの待つ場所へと歩いていく。
その足取りが、妙に軽い気がするのが不思議だ。
昨日の夜のどんよりとした気分も、今朝よりも、出掛けよりも、ずっと軽くなっている。
そんな自分の心境の変化など、気にかける事もなく、エドワードは今日の夕食のメニューを組み立てて行くのだった。
***
後日、カタリーナからの電話で、ロイは頭を悩ませる事になる。
分析医の彼女が、人を混乱させるような言葉を言う筈は無いが、
言った言葉がロイを困惑させる事になったのは、事実だった。
「ロイ、愛があれば歳の差なんて、関係ないわよ」
「はっ?」
「人がどう言おうと、私はあなた達の味方よ、頑張って頂戴」
「頑張るって…。君、誰の話を一体…」
「あんな良い子はいないわよ。 あなたには、勿体無いくらい」
「だから、君は誰の話をしてるんだね?」
カタリーナの言葉に、全く思い当たる事が無いロイが、そう訊ねれば。
「勿論、エドワード君の事よ。 困った事があったら相談に乗るから、遠慮しないで連絡頂戴ね」
言うだけ言うと切れた通話に、ロイは唖然と受話器を眺める。
「エドワード…鋼のがどうしたって?」
困ったことがあったらではなくて、困らせてるのは君だろう。
そんな呟きは、相手には当然届かないまま消え去っていった。
***
三人で取り囲む食卓は、賑やかそのものだった。
レパートリーも豊富な食事に、ロイは驚き、エドワードへの賛辞を惜しまなかった。
機嫌よく隣のキッチンで、片付け物をしているエドワードを置いて、
ロイとアルフォンスは、一足早くリビングで寛ぐ。
「しかし、君のお兄さんは料理が上手いね」
つくづく感心したようにロイが呟く。
「そう言って貰えれば、リザさんに教えてもらってる兄さんも、喜ぶと思います」
アルフォンスの言葉に、ロイが驚く。
「中尉に?」
「そうですよ。 僕らのって、どちらかと言うと、大雑把な料理が多かったんです、師匠の教え柄。
だけど兄さんは、大佐に食べさせるなら、もう少しバランスが良い方がって思ってたらしくて。
中尉なら、女性だから料理も沢山知ってるでしょ? 今日の献立も、半分くらいは教わった料理じゃないかな。
そう言えば、昨日は、料理を教えてもらっているお礼にって、中尉を食事に誘ってたっけ」
そんな話をしながら、アルフォンスは、ロイが話していた研究論文が置かれているのに気づき、
ロイに許可を取って読み始める。
ロイはと言うと、意識は隣で働いているエドワードの方へと流れていく。
昨日は、リザやらカタリーナに囲まれながら、嬉しそうな様子を見せていたエドワードに、
些か気分を害された気がしていたが、元を質せば、ロイの為に良かれと思っての行動が一因だったとは…。
ロイの心の中に落ちた安堵の吐息は、本人には何の為かも気づかれないままに、小さく溶けていった。
↓面白かったら、ポチッとな。
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
人生、生き方についてあれこれ
「かたづけなはれ~~」(`ε´ )
(2026-05-26 22:13:06)
楽天ブックス
【電子書籍PR】私立校・中高一貫校…
(2026-05-27 22:30:04)
NARUTOが好きな人、投稿はここだって…
ナルト柄のTシャツ再び!パープル色…
(2025-08-27 07:10:04)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Create
a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
評判のトレンドアイテム情報
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: