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7月
★ ~『 ふとある事に気づく』~
初夏の日差しが暑さを増す季節。
外では汗ばむような気温であるだろうが、
空調が快適に整えられている執務室の部屋では
外気の暑さも届いて来ない。
ここ最近、ロイはある事に気がついている。
忙しくしている時等はよいのだが、
ポカリと時間が空いた時などや、
今みたいに 埋もれるほどの書類を片付けているときに
ふと気がつくと、窓から外を眺めることが多くなった。
そんな上司の行動に気づいている部下の面々からは
「また、大佐が飛んでちゃってるよ。」と囁かれている。
仕事に支障をきたすほどではないので、
優秀な副官にも黙認してもらっているが、
気がつくと また窓の外を眺めている自分に気づく。
そんなに気になる事があるのなら、確かめに出るなり
確認させるなりすればよいものを、
別に何がと聞かれても、特に浮かばない。
ただ何となく、としか自分でも答えようがない。
そんな大佐の変な行動を、今日も扉の向こうの部屋では
色々と話題にのぼっている。
「大佐、また外見てますね~。」
「ええ、先ほどまで熱心に仕事をして下さっていたんだけど。」
苦笑交じりに答えを返す。
「何か ここ最近ひどくなってませんか?」
司令部内の部屋では禁煙とあって、さすがに火は点けてはいないが、
ヘビースモーカーのハボックだけあって、
唇でタバコをはさんだまま器用に話をしている。
「そうね・・。これ以上頻繁になられては困るわね。」
困ったわと綺麗な顔に目を眇めている表情も、
見ている者に、「綺麗だな~」と素直に思わせる女性である。
「最近、エドワードさん達から連絡がないからでしょうか?」
「そうかもな~、以前まで月に1回は定期報告に戻ってくるって
連絡があったけど、今月に入っては まだ連絡もないしなー。」
仕事の手を休めながら 顔を上げて話に加わったフュリーに
返事を返しながら、うなずいている。
「けど、そうやってエドワード君たちの帰りを待って 窓を眺めているなんて、
まるで 大佐、恋煩いみたいですね~。」
なんだか、そんな大佐って可愛いですよね、と恐ろしい話をさらっと
話せるフュリーは 天然である。
フュリーの 爆弾発言に ギョッとする他の面々も、
「確かに・・・。」とうなずきたくなるような
ここ最近の上司の行動を思い出していた。
ロイ・マスタング。
若干29歳の若さで、大佐の役職についている。
東方司令部では セカンドの地位にいるが、実質は引退間近の司令官に
代わって全権を任されているTOPでもある。
それだけでも、もてそうな要素なのに
眉目も秀麗で、声も落ちついた大人の魅力が響き渡るセクシーボイス。
機知とウィットにとんだ 人を惹きつける会話術。
性格は 直属の部下達以外なら 文句なしの社交的で人当たりが良い。
そんな彼だから、とにかくモテル。
軍の内部も もちろんの事ながら、
街に査察ででれば、ひっきりとなしの美女や可愛い女の子に
声やお誘いをかけられ、
軍内部だけでなく、街の男性達からも煙たがられる存在だ。
本人も 誘われれば断る理由もないしと、
毎日、自分の気が向いた女性とデートを楽しんでいた。
何故「いた。」と過去形なのかと言うと、
華やかな醜聞が絶えなかった彼にしては珍しくも、
ここ最近、女性達から遠ざかっているからである。
春位から、査察と言ってはデートに出かけていた回数も
だんだんと少なくなってきて、
翌日、ホークアイ中尉に 叱られる事から朝がスタートするという
昔に良く見られた日常の風景もめったになくなり、
そして、初夏の頃からは、全くなくなった。
代わりに取るようになった行動と言うのが、
今は旅に出ている子供達が ここイーストシティーに居る間中、
やれ食事だ、たまには見聞を広げる為にやら、
息抜きをするためにと色々理由をつけては、
何かと 子供達を構うようになった。
子供達と言うのには、やや 語弊があるかもしれない。
もっとはっきりと言うと、兄の方のエドワードを
構い倒すようになっていた。
先月には、なんと 家まで入れたとの事を聞き、
雨が降ったからというアクシデントがあったとしても、
家に他人を入れるのを極端に嫌う上司が、
あっさりと家に入れ、あまつさえ シャワーまで貸したとなれば
「まさか。」とは思いつつも、この上司が 綺麗ではあるが
間違いなく男の子のエドワードを特別視している事は
司令部の面々気づかすにおれずにはいれなかった。
が、本人は自分の行動の偏りに気づいておらず、
保護者の責任を感じて構っていると信じているようだ。
ロイを良く知る面々からすれば、
この大人の振りした めんどくさがりの面を持つ子供なロイが
保護者ぶる事さえ信じられないと考えている。
が、何にせよ 本人も自覚をしていない事でもあるし、
皆も素直に納得できる事でもなかったので、
今までも誰も、あえてその事には触れようとはしてこなかった。
「まさか」は「やはり」と思考が移り始めた時に、
ガタンと大きく椅子を引く音が、扉の中から聞こえてきた。
何事か!と扉を開けてみて見ると、
扉を開けて、まるで身を乗り出すかのようにしている大佐の姿があった。
「大佐、危ないから止めてください。」と声をかけようとした時に
先にロイが 窓の外に大きく声を張り上げていた。
「鋼の! 戻る前には 先に連絡を入れるようにと
伝えていただろう。」
窓の外には、その声にきがついて返事を返しているのか、
エドワードの声が聞こえてくる。
「大佐かー。ワリィー忘れてた。 もう、近くまで来てたから、
連絡するより来た方が 早かったし。」と全く反省した風でもない声が
後ろにいる面々まで届いてきた。
クルリと振り返りながら、
「全く、彼には 報告義務の重要性をきちんと教え込まないと
いけないな。」とつぶやきながら、スタスタと司令部から出て行こうと
足を進めて行く。
「大佐、どちらに!」と声をかけるホークアイ中尉の声も聞こえてないのか、
「全く、急に帰ってこられても仕事が終わってなかったら
時間が作れないではないか。」とぶつくさとつぶやきながら、
それでも嬉しそうな表情を浮かべて扉を開けたまま去っていった。
残された後の面々は、呆然と大佐を見送り、
『大佐、もうそれって 変 じゃーなくて、恋っすよ。』と
大佐の不可思議な行動の数々に答えを見つけていた。
気づいていないのは、変な行動をしている本人ばかりである・・・。
その後・・・、
大佐に「お茶に行こうと」強引に連れ去られたエドワードの荷物を持って、
アルフォンスだけが、司令部に顔を出した。
それを見たホークアイ中尉は、溜まっている書類をにらんで
綺麗な顔に般若の表情で大佐の帰りを待ち受けていたとか、
戻った大佐が、エドワードを食事に誘うのが翌日になったとか。
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