Selfishly

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Pa 1、『きっかけ』


彼らは、いつでも戻ってきていた、
どんなに、ふらりと旅立っていても。
だから今度も必ず戻ってくると信じている。
が・・・、
行方をくらませて、一切の足取りも見つけられずにいる今、
信じる事は、居もしない神に祈るような想いに変わっていく。
『はやく。はやく・・・。』と・・・。


~ スローライフ ~

            Pa1、『はじまり』




ひっきりなしに鳴る電話の音や、厳しい声音で指示を飛ばす上官、
随時に飛び込んで行く連絡、報告を伝える者。
軍の司令部の中は、いつでも そんな慌しい空気に包まれている。
が、それも第1戦で勤務する者達がひしめき合う場所では であって、
彼のいる重厚な扉に守られた中では、
そんな空気も伝わってこない。

はずだったのだが・・・、
扉の中は 下士官たちの居る司令部となんら変わりない情景が
繰り広げられていた。
「ハボック少佐、先程の事件の詳細はまとめてくれましたか?」
凛とした美しい声音が問いかけると、
「すんません、ホークアイ中佐。まだっす。」
と情けない返事を点いてないタバコを咥えながら
ハボックが返す。
「昼までに提出してくれないと困るわ。
昼からは 次の案件が山積みなんだから。」
困ったわねと言う表情も綺麗な彼女に、
しばし見惚れていたハボックだが、
時計をチラリと見て、これは やばいと
「必ず 昼までには出させてもらいます!。」と
書類に取り掛かった。
締め切りには、自分の上司よりもはるかに怖い彼女のこと、
守れなかった時の自分を想像して、
口に咥えていたタバコが、ポロリと落ちた事も気づかず
真剣に仕事に手をつけた。

「中佐、先日他方司令部から問題が上がって来ていた件での
 対応策が一応できたんで、中将に見てもらって指示を願います。」
いかつい見かけとは違って、綺麗な丁寧な字でびっしりと
書かれた書類を受け取りながら返事を返す。
「ありがとう、わかったわ。 これは中将にお渡ししておきます。
あなたは、次の警備の案件を考えておいて下さい、
ブレダ少佐。」
うっすと返事を返して、もどって行く後姿に
「ファルマン大尉とフュリー少尉は、
まだ査察から戻らないのかしら?」
ブレダが足を止めて振り返り、彼女の問いに答える。
「先程の連絡では、現場の確認も済んだんで
 後、小1時間程で戻ってくるって事でしたが。」
それを聞いて、「ホッ」と表情をほころばして
「良かったわ。何とか午後からの会議に出ていけそうね。」
ひょいっと顔を上げたハボックが、
「そうっすよね。中将の見張りが居ないと
 中佐もおちおち会議にも出れませんからね~。」
ご苦労様ですの表情を浮かべて、ハボックがホークアイの
顔を見ると。
ほんとにねーと苦笑交じりに奥の扉を見つめる。

扉の中には、黙々と仕事を片付けているロイがいる。
昨日、脱走を図り仕事を溜まらせたお仕置きとして、
山積みの書類と一緒に缶詰めにしてあるのだ。
今日は この部屋からは一歩も出さない つもりの彼女だった。



前任の大統領 キング・ブラッドレイの、
国を巻き込んでの暗躍事件は、
軍の上層部を慌てふためかしたが、
まさか 軍のTOPである大統領が軍を操作して戦いを
作っていた事など、民衆に知られるわけにはいかない事情だった。
軍の威信は、そのまま自分達の地位の安泰に繋がる事でもあったので
この事件は内々に葬り去られる事になった。
事情を知る者は消してでもと考えた彼らだが、
巨大な力を有して勇猛を馳せたキング・ブラッドレイが居なくなった今、
アメトリスの国は、内側からも外側からも多くの危険に面していく事は
想像に容易かった。
そんな中で、暗躍を未然に塞いだロイを消すことは非常にまずい事となる。
戦力としても、優秀な軍人としても ロイの力は必要だった。
苦肉の案として、ロイが大統領暗殺を企てた者達から身を挺して庇い
負傷した事とし、その功労として破格の昇級として中将の位を与えた。

が、それは建て前であって 実は彼らは ロイの報復が ただ怖かったのだ。
文武とも優れて、巨大な力を有していたキング・ブラッドレイを倒したロイを
阻害する事で、自分も同様の末路を辿るのではないかという想いが
ロイに対する処分を甘くしてしまった。
この報告を聞いたロイは、「それならば」と甘い処分をいつか後悔するだろう
上層部の面々を笑いながらも、受ける事にしたのだった。

身体の回復とともに、一時は失明するのではと危ぶまれていた右目も回復し、
以前よりは 視力は落ちて見えにくくなったとはいえ
ちゃんと見えるようにまで回復した。
復帰後1番に 自分の直属の部下達を呼び集め、
自分の執政室を司令部として造り替え、将軍の部屋に下仕官が出入りすると言う
異例な施策を取った。
現在 軍の上層部には、お飾りにと優も不可もない人柄が買われて大統領に選抜された人物と
自分の引退まで 出来るだけ私腹を肥やすことしか頭にない者達ばかりで、
実質の軍のTOPはロイだと言っても間違いではない。
権力を手にした彼は、次々と腐敗しきっていた軍部にメスを入れ、
外敵と社交を開いてにらみを効かし、遅れていた街の施策を進めていき
民衆の指示を得ていている。
「アメトリス建国以来の 若い大統領の誕生」
それが 今のロイに冠する呼び名だ。

膨大な仕事に忙殺されながら あっという間に日々は過ぎて行った。
そんな彼が 時折、執務机に設置されているロイ直通の電話を
じっと見ている時がある。
ロイの机には 2つの電話が設置されている。
1つは 通常の中将にかかってくる電話と、
もう1つは、自分の大佐時代に電気工学に強いフュリーに作らせた
専用回線だ。
この電話の番号を知っているのは、自分の直属の部下達と
今は亡き親友のヒューズと、
今 ここに居ない鋼の錬金術師のエドワードとアルフォンスだけである。
毎日、出勤すれば顔を合わせる部下達は
余程の内密の任務で動いている時以外は この電話にかけるような事はない。
従って この電話が鳴ることは、ここ1年ないままだった。
それでもロイは、この電話が鳴る事を待っている自分がいる事を解っていた。

「では中将、私は会議に出かけてきます。
 外では大尉と少尉が控えておりますので、
 何かございましたら、彼らにお申し付け下さい。」
暗に、『部屋から出るな』の意味を込めて告げて
ホークアイが退出して行った。
「わかった・・・。」と不承不承返事を返したロイは
部屋に 完全に設備が完備されていると言うのも困ったものだと
ため息とともに考えた。
中将ともなると、執政室には バス・トイレにベッド、果ては簡単な料理くらいは出来る
キッチンまで備わっている。
どこにも出る口実が作りにくい。
一時休息と、 やる気なく持っていたペンを、ポロリと机に転がし、
ふと専用回線に目が入ると、また あの子供達の事が頭に浮かんできた。

部下には 話していないが、彼らは捜し求めていた賢者の石を見つけ
それを使う為に姿を消したのだ。
彼らが姿を眩ます前の夜、
「あんたには世話になったから。」とエドワードが自宅にやってきた。
彼は 自分達が今からしようとしていることを
手短にロイに伝えた。
そして、「ありがとう」と最後にしめくくって立ち去ろうとした。
今になっても、何故 自分があの時にあんな行動を取ったかはわからないが、
ロイの直感が このまま行かせてはならないと伝えていた。
咄嗟に エドワードの肩を掴んで抱き寄せ、
彼に最後の命令を伝えた。

必ず 戻ってきて、元気な姿を見せる事を。
例え どんな結果になっても、必ず連絡をしてくる事を。
「上官命令だ。」と小さな身体を抱き込んでいた手に、
約束だとばかり ぎゅっと力を込めて伝えた。
ロイの突然の行動に驚いたエドワードだが、
「上官命令なら仕方ないな。
 わかった、約束は守る。」と泣き笑いの顔をロイに向けて
腕から去っていった。

あれから1年がたとうとしている。
今だ 連絡も、ロイの独自の捜査網でも 彼らはまだ見つかっていない。
「いったい、どこで何をしているやら。
鋼のは、本当に私の言うことを聞かないねー。」
エドの替りにと、専用電話をにらんでみる。

その時、いきなりの鳴らない電話からコール音が流れ出した。
一瞬の動揺で、思わず手を伸ばすのが遅れたロイだが、
冷静さを装って、受話器に手を伸ばす。
「もしもし、ロイ・マスタングだが。」と声を出すと、
『・・・・。』向こうからは何の応えも無い。
「もしもし?」何なんだと思った瞬間に もしかしたらと頭に浮かんだ事が
思わず声になっていた。
「・・・鋼のか?」
しばらくして、やっと受話器の向こうから返事が返ってきた。
『大佐ごめん、おそくなった。』
流れてきた声は、以前と変わらず響いてくる。
「本当だ。君があんまり待たせるものだから、
 中将になってしまったぞ。」
叱っているつもりで話すが、声には 嬉しさが隠せない。
「へぇ~、あんたが中将なんて 軍はよっぽど人材不足なんだな~。」と
以前と変わらず小生意気な彼が変わらないのが
とても嬉しく感じる。

「ところで、今は どこからかけているのかね?」
『実は セントラルの市内からかけてる』
まさか、こんなに近くまでエドワードが来ているとは思っていなかったロイは
「戻ってきているのか!?」と声を少々大きく聞き返してしまった。
『たい、じゃーなくて中将だっけ?
 あんた声大きいよー。
 俺の耳は あんたと違って、まだ悪くないんだからな。』
ぶつくさと文句を言うエドワードにつられて、
「私は まだ若いんだ、年寄り扱いはしないでもらおうか。」
不貞腐れて言い返すロイに、電話の向こうのエドワードが
『くくくっ』と笑い返しているのが聞こえてきた。
「全く君ときたら・・・。
 まぁいい、それで すぐにこちらには来れるのかね?」
と聞くと、言いにくそうにエドワードが返してくる。
『・・・出来たら、軍には行かずに済ませたいんだ。
 今後の事も話さないといけないしな。
 で、たい・・、中将の家に行かせてもらっても構わないかな?』
「それは構わないが、私は まだ帰れないが・・・。」
どうしたものかと、後に残っている仕事を換算していると
『あぁ、それは大丈夫。
 適当に時間つぶしてるから、帰ってきてからでいいよ。』
とエドワードが答えるので、
出来るだけ早く帰るからと約束をした。

電話を切った後、思わず呆然となって
今あった事を反芻してみた。
「本当に鋼のから電話があったんだな・・・。」
扉の外の、他の者にも声をかけて聞かせてやりたい気分になったが、
今は取り合えず我慢だ。
まずは、鋼のが無事なのかどうなのかを確かめる事が先決だ。
電話では 変わらない様子だったが、
1年も行方を眩ませていたのには、
それ相応の理由があるだろうから。

とにかく、今は出来うる限り迅速に業務を処理し、
少しでも早く帰れるようにする事が先決だな。
よし!とばかり気合を入れて、扉の外に待機している面々に呼びかけた。
「ハボック、ブレダ、ファルマン、フュリー!
 業務を指示するから すぐに集まれ。」
戦時中でも、作戦中でもないのに
緊張感漂う上司の呼びかけに、皆 扉の中に駆け込んでいった。

彼らが再び逢えるのまで、後 数刻・・・。


(あとがき)
思わず始めてしまった自作ストーリー・・・。
設定やらが 怪しいのや、変わっているのには
目を瞑って下さい!!
今回は 電話越しにしかエドは登場しなかったけど、
次回からは 二人のお話を進めて行く予定です。
良ければ、お付き合い下さい。


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