Selfishly

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Pa6、『二人の共同生活』


~ スローライフ ~
         Pa 6『二人の共同生活』H17,11/27 16:00


ロイは、自分の腕で眠るエドワードを見つめていた。
先ほどまで、泣きじゃくっていた彼が
安心したように眠る表情に、心が温かくなる。
起こさないように、そっと抱き上げて立ち上がると、
少し背が伸びたと言っても、機械鎧をはずしたせいか、
そんなに重さを感じない。

『背負っていた物が、いかに重かったかが
  解るな・・・。』
立ち上がり、しばらく逡巡していたが
その後は 迷わず、1階のロイの寝室に足を向けた。
2階に客間が有るにはあるが、長らく使用していないそこは、
寝かせるには、余り良い環境ではないだろう。

扉を開けて中に入ると、二人で寝ても さほど問題の無い
ベットの片側に エドワードを降ろす。
横に腰掛けて、寝てる彼の顔を見る。
扉から入る わずかな灯りにも輝く金髪が
彼の顔に ほつれている。
ロイは その髪を そっと払ってやり、涙の跡が残る頬を
ぬぐってやる。
「良く約束を守ってくれたね。
 ありがとう。
 ゆっくりとお休み。」
眠るエドワードに 微笑んで、自分も寝るために軍服をぬぐ。
1年間いなかった彼が、こうして 自分の横で眠るのを
不思議な思いで感じながら、ロイは 明日のエドワードの
驚きを想像して、静かに横で眠りについた。


・・・小鳥のさえずりが聞こえる、
 周りが明るいな・・・、朝かな・・・。

どうやら昨日は、幸せな夢をみていたようだ。
今も、なんだか 心が温かい。
すごく、安心して 熟睡できていた自分を感じて、
エドワードは、覚醒前の ぼんやりした頭で
、そんな事を思いながら ゆっくりと目を開ける。

『!?』
思わず、目を開けて入ってきたものに 驚き、
危うく飛び起きそうになった。
『た、大佐!?
 な、なんで??』
彼を抱きかかえるように寝ているのは、
ここしばらく見なかった、自分の上司である。

エドワードが、身じろいだせいか
彼は、うっすらを目を開け
「昼前になったら、起こしてくれ・・・。」と
一言言い捨てると、
呆然とするエドワードをほって、
また眠りに戻っていった。

とにかく起きよう・・・。
ロイと違って、すっかりと目が冴えてしまったエドワードは
ロイのように寝なおす事も出来ないし、
こんな状況では、そんな事は どうあっても
考えられなかったので、
寝ているロイを起こさないように、
そっとベットから抜け出して、部屋の外に出る。

『そうか俺、昨日 話していた最中に・・・。』
昨日、ロイに ふいに抱きしめられた時の事が浮かんだ。
ロイは、彼を抱きしめて
エドワードに語りかけてくれた・・・ずっと。
『良くやった。
 頑張ったな。』と。
思わず、泣いてしまった自分をロイはずっとあやしてくれた。

何故、大佐の前で泣いてしまったんだろう・・・。
昨日の自分が、顔から火が出るほど恥ずかしくなる。

・・・きっと大佐が、あんまり優しかったからだろう・・・。
自分が犯した罪は、身体が戻ったからと消えるものでも
消せるものでも、本当は・・・ない。
でも、大佐は「それでも、罪は贖われたんだ。」と言ってくれた。
・・・まるで、もうエドワードが苦しまなくていいと伝えたいように。
その想いが嬉しくて、解ろうとしてくれるロイが嬉しくて
思わず心の箍が外れてしまった。

思い出すと、また涙腺が緩みそうになるので
取りあえず気分を変えるためにも、洗面所を借りて
顔を洗う事にした。

「それと、朝ご飯でも作っておくか。
  昼ごはんかもしんないけど。」
よっしゃ! と気合を入れて、昨日使ったキッチンへ向かう。
昨日、一緒に料理をしたから 食材があるのと
使いがっても解っている。

朝食権昼食なので、余り手間暇かけた物が作れるわけでもなく、
準備は ほどなく終わった。
『昼前に起こしてくれって言ってたけど、
 もう、いいのかなー?
 大体、起きた時点で昼に近かったし・・・』
どうしようかと思案したが、
仕事に遅れさせるわけにもいかないので、
再び、ロイの寝室に入っていった。

今朝は、慌てて良く見る暇も、心の余裕もなかったが、
こうしてロイの寝室に入ってみると、
落ち着いた、居心地の良い部屋だ。
木の素材を使った家具に統一されており、
色調も落ち着いた色合いでまとめられている。
『大佐って、以外に地味な好みなんだな。』
もう少し、エドワードに家具とかの知識があれば、
そこに置かれている家具が、アンティックの高級な品の良い
ものばかりである事や、
使われている物の素材が一流品である事がわかっただろうが、
まだ、若い彼に そこまで見抜く事はできない。

「中将・・・。中将。
 ご飯できたけど?」
なんと言って起こせば良いのか解らず、
取りあえず、そう声をかけてみた。
ロイは、めんどくさそうに目を開け
「・・・もう少し・・・。」とシーツに包まって眠りにつこうとする。
「もう少しって・・・、
 あんた出勤は何時なんだ?」
とにかく、時間を聞いとかねばと 必要な事を聞こうと、
声をかけると、シーツの中から、
「・・・12時にハボックが来る・・・。」と
寝惚け声で返してきた。
「12時!!
 12時って言ったら、もう1時間もないじゃないか!

 起きろ! 起きろってば!!
 遅れるぞ~!!」

包まっているシーツを、乱暴に引き剥がし
それでも、ぐずるロイをゆすって起こしにかかる。
エドワードの、暴挙にさすが寝るのもままならずに
「・・・わかった!
 わかったから、起きる。
 起きるんで、そうゆすらないでくれ!」
不承不承、身体を起こしエドワードを見る。

ベットに座るとエドワードに向き合い、
「おはよう、鋼の。」と寝起きのくせに
やたら、さわやかに朝の挨拶をする。
「お、おはよう。
 っても、もう昼だけどな・・・。」
そうやって挨拶をし合うのも、なんだか妙に照れくさく
思わずぶっきらぼうに返事を返す。
そんなエドワードを、見ながら
『くすっ』と笑いながら、ロイもベットから出る。

「食事はキッチンかな?」
「お、おう。」
「すぐいくので、先に行っててくれ。」
「わかった。」
着替えるのだろう、ロイを置いて
食事を温める為に、エドワードもキッチンに戻る。

着替えるにしては、少々遅い気がしていると
シャワーを浴びてきたのか、
髪を湿らせて、上着を手にかけたままでロイが入ってくる。
「おはよう。
 やぁ、美味しそうだね。」
そのまま、落ち着いて席に座るロイを見て
「あんた、時間ないのに 落ち着いてるなー。」
思わず感心してしまうエドワードに、
「まぁ、多少は許してくれるさ。」
食べても?と伺ってくるロイに、
どうぞと示す。
「いただきます。」と きちんと挨拶をして食事に手をつける。
つられてエドワードも、挨拶をして食事をはじめる。

「それで、鋼の。
 今夜なんだが、今日は休日出勤なんで、
 午後からの会議に出席すれば帰れるから、
 早めに戻る。」
「え? うん・・・?」
急に、ロイの予定を聞かされて返事に困るエドワードを
無視して、ロイは そのまま話を続ける。
「なんで、また 食事を作って待っててもらえるかな?」
「えっ、それは構わないけど・・。」
「話の続きも聞かなくてはならないし、
 こちらも今後の事を話さないといけないしね。

 どこかに、宿をとっているかい?」

「いや・・・、
 昨日 話が終わったら 戻るつもりだったんで、
 宿は取ってないんだ。」
そう言えば、肝心な話を昨日してなかった事に気づいて
ロイの話の意味するところを理解した。

「なら、問題ないな。」
食事を終えて、ロイがコーヒーを楽しんでいると、
門のチャイムが鳴る。
「ハボックだな。」
椅子にかけていた上着を持ち、立ち上がる。
エドワードも立とうとしたが、ロイに制される。
「まだ、ハボック達には 君の事は知らせてないんだ。
 今日、話を聞いてから考えるんで その後で。」
と言われ、エドワードは 椅子から立ち上がれずにいた。
「わかった。
 いってらっしゃい。」
自然に そう声をかけるエドワードを嬉しく思いながら、
「いってきます。」と返事を返して部屋をでる。
出しなに、
家にある物は 何でも使っても構わないからと
言葉を添える。
「わかった、ありがとう。」と返事を返すエドワードに
微笑みながら、ハボックが待つ門に向かう。

「おはようっす!」
チャイムを鳴らして、わずかな時間で出てきた上司に
内心驚きながらも、ハボックは時間的には 少々合わない挨拶をする。
「ああ、おはよう。」
門を出て、後部座席に落ち着いたのを見計らって車を出す。
「中将、なんか良いことあったんっすか?」
「?」
「いや、なんか機嫌が良さそうだから。」
長年組んでいる部下達には、上司の事はお見通しのようだ。
「ああ、あったよ。
 すごく良いことがね。」と答えながら、
 嬉しそうに微笑んでいる自分に気づかずにロイが返事を返す。
『こりゃ、本当に機嫌が良さそうだ。』とうなずきながら、
「良かったっすね。」と返事を返す。
「ああ、本当に良かったよ・・・。」
流れる街の景色に目をやり、本当に良かったと心に再度
つぶやきながら・・・。


「さて、時間があるから 片付けでもしてやるか!」
一宿一飯の恩義だと思いながら、エドワードは ロイが
出て行って一人になった家を見渡す。
男の一人所帯にしては、なかなか綺麗に保たれているのを見ると
ロイが綺麗好きなのがわかる。
が、忙しい仕事についているだけあって、
細かな所までは、さすが手が行き届かないのだろう。
うっすらとホコリが積もる棚や、磨かれてないガラス。
整理されずに放り込んである食器等など、
エドワードは 綺麗に掃除をしていく。
少し、ためらいはあったが
ロイも何でも使って構わないと言ってるからは
大丈夫だろうと、寝室のシーツや洗濯物も洗う事にした。
2階までは さすがに手が回らなかったので、
ロイが使っているだろう1階だけを集中して掃除をする。

突き当たりの奥の扉を開けると、
そこは、広い書庫だった。
どの部屋よりも広いだろう部屋に、所狭しと本棚と本が
並んでいる。
「うわぁ~、さすが・・・。」
錬金術以外の本も数多くある そこは、
規模は小さいが、質の高い図書館と思えるほどだ。
熱心に並んでいる本や資料を眺めていると
「あっ、この本持ってるんだ!
 これ、読みたかったんだよなー。」
と次々と興味を引かれる背表紙を見つける。
思わず本に手を伸ばしそうになるのを堪えて、
積み上げられている本を、分類をチェックしながら
多分 ここだろうと思われる所に直していく。
しばらくすると 片付ける本もなくなり、
エドワードは名残惜しそうに部屋を出て行く。
「あ~あ、こんなに持ってるのが解ってたら、
 借りときゃー良かったよー。」と残念と思いながら。

あらかたの掃除も終わり、少し早いが夕食の準備をする。
昨日も今朝も時間がかけれなかったから、
たいした物が出来なかったが、
今日は 少し、手間をかけて作ってもいい気になっている。
親切にしてくれたロイに対するお礼も込めて。
多分、最後の料理になるだろうから・・・。


ロイは イライラしながら、会議の席についていた。
さっきから、ここに集まった連中は
進展も解決策も出そうに無い、(出す気がないのかも知れないが)
事を延々と話をしている。
『時間の無駄だな・・・。』

「皆様、若輩のみで差し出がましいのですが、
 その件に関しては、宜しければ私が対応致しましょう。」
言葉こそ礼儀に適っているが、言っている事は傲慢な事を
ロイが言うと。
その場にいた者たちは、あからさまに「ほっ」とした顔をして
「そうかね、中将!」
「そうですな、マスタング中将に担当してもらえれば
 解決もすぐに出来る事でしょう。」

『この、税金泥棒たちめ!』
彼らは、手間がかかる事は とにかくやりたがらない、
自分達が安寧に過ごせるのが何よりと言う、
軍人にあるまじき姿勢だが、
おかげでロイが好きに出来るので、文句もつけれない。
そうして、ロイが膨大な仕事を引き受けることになるのは、
前大統領が居なくなってから、続いている。

ロイが、返事をした事で会議は速やかに終わった。
ロイは『やれやれ』と思いながらも、自分の執務室に戻る。
「中将、お疲れ様でした。」
歳を感じさせない綺麗な副官が、彼をねぎらう。
「あぁ、本当に疲れるよ。
 私に押し付ける算段なら、最初から会議など開かずに
 直接回してくれる方が、時間が無駄にならずにすむ。」
憮然とした表情で告げるロイに、
お察しします。とロイの言葉に同意するように
リザもうなずく。
「さて、後は何か急ぎの事は?」
「いえ、本日は もう、ございません。
 昨日に きっちりと終わらせて下さってましたので。」
「そうか、なら 私は帰らせてもらう事にするよ。」
そう告げるとロイは、自分の席に着くこともなく、
執務室を後にしようとする。
「はい、それは構いませんが?」
日ごろなら、そんなに急いで帰ろうとする事も無い上司の
行動に?と思ったが、特に急ぎの用事もない事でもあるので、
そのまま「お疲れ様でした。」と見送る事にした。
「では、ハボックに送らせる準備を・・・。」と言いかける副官に
「いや、今日は 私が運転して帰るので構わない。」と
これもまた、いつもと違う事を言う。
「しかし、それでは・・・。」と困り顔で返事を渋ると、
「大丈夫だ。十分注意して帰るから。」と
ロイが やや強引に言い切った。
「・・・それでは、車の手配をしておきます。」
納得はしかねるが、この上司が こういった態度の時には
言っても聞かない事は長年の経験でわかっている。
そうなると、できる事は できるだけ希望に添えるように
する事位だ。
「あぁ、わがままを言ってすまないね。
 後は宜しく頼む。」
「はい。
 明日の明日のお迎えは、いつもどうり自宅の方で
 宜しいでしょうか?」
「いや、車もあるから 朝も自分で運転してくるよ。」
「でも・・・、明日は 遅らせない会議が朝一に入ってますし・・・。」
出勤に関しては、微妙な上司の行動を 不安に思うので、
素直に返答が出来ないでいると、
「あぁ、大丈夫だ。
 今は 絶対に遅れなくて済むんでね。」と笑って告げるロイの顔を見て、
さらに疑問を浮かべるが、充てには出来ない上司の言葉だが
それ以上、強く言うわけにもいかないので
「・・・はい。」と返事を返すだけにする。
(朝、誰かに張り込ませておくしかないわね。)
と、もしもも考えての対策を考えながら、去っていく中将を見る。

「なんか変じゃないっすか、中将?」
成り行きを見ていたハボックが、リザに声をかける。
「そうね。 機嫌は良さそうなんだけど・・・。」
「っすよね。今朝もですが、
 お偉方の会議の後で、あれくらいで文句を収めるっのも
 珍しいですし。」
執務室の面々は疑問を残しながら、「「う~ん?」」と
中将の機嫌の良さと、日ごろ無い行動に頭を傾げていた。


その後、ロイは 帰る道すがら
いくつかの店に寄り道をして、目当ての物を手にいれ
待つ人が居る家に戻るのもいいものだと
ハンドルを握る手も軽快に、帰り路についていた。
思ったより早く帰れるかと思ったのだが、
色々と寄り道をしていると、丁度良い時間に家に着く事になった。
日の長くなっている今は、まだ家には電灯は点いていないが、
誰かが居ると思うだけで、なんだか いつもより家が明るく見える。
チャイムはいいだろうと、そのまま門を入り玄関の扉を開ける。

「?」
出て行った時よりも、綺麗に磨き上げられている周りを見渡す。
しばらくして、パタパタと歩く音が響いて、
エドワードが顔を覗かせてきた。
「お帰りー。 早かったな。」
昨日と同じエプロンを付けて出てきたエドワードに
思わず微笑んで 「ただいま」と挨拶をする。
家の中は、食欲を刺激する良い香りが満ちていた。
「言い匂いだね。」
キッチンに戻るエドワードに続いて歩くと、
「ああ、食事は いつでも出来るぜ。
 でも、先に風呂に入るか?」
『ご飯に、風呂か・・・ まるで。』
エドワードは気づいていないだろうけど、
そのセリフに思わず笑みが浮かんでしまう。
言ったら、暴れるだろうから言わないが・・・。

「そうだな、先に風呂に入ってくるか。

 そうだ、これを」
とロイは手に持っていた沢山の紙袋をエドワードに渡す。
「これって?」
首を傾げて受け取った袋を見るエドワードの可愛い仕草に
また、微笑がもれるのを感じながら、
「おみやげ」と告げて浴室に出かける。
後には、「おみやげ?」と受け取った物を呆然と見ながら
立ちすくむエドワードだけが 残された。

浴室や脱衣所を見て「やはり」と思ったのだが、
どうやら彼は家をかなり綺麗にしてくれたようだ。
ロイも生活に支障がない程度にはやっていたが、
なかなか綺麗にとまでは行かなかった。、
が今は どこもかしこも、綺麗できちんと整理されている。
彼の律儀な性格の成せる行動なんだろうが、
良い心かけだ。
今頃、ロイの渡したお土産を見て どんな表情を浮かべているかを
ウキウキとしながら、ゆっくりと綺麗に磨き上げられた浴槽に
浸って想像する。
風呂を出ると、着替えを持って来なかった事に気づいた。
いつもなら、タオルを巻くだけで着替えを取りに行くのだがと
思っていると、タオルの横には 洗濯され きちんと畳まれた
パジャマと下着まで置いてある。
多分、昨日 ロイが着て寝た物を洗って置いてくれたのだろうが、
本当に気がつくことだ。

風呂に入りさっぱりとした上、更にエドワードの気遣いに
気分を良くしたロイが、リビングに戻ると
もらった包みを開けるのをためらっている彼が
神妙な顔で座っている。
「どうしたのかね?
 気に入らなかったら替えてくるから
 開けてみたらどうだい?」
エドワードのためらいが可笑しくて、
促すように言葉をかける。

「・・・でも、なんか迷惑かけた上に
 こんな物までもらうのも・・・。」
「構わないじゃないか。
 家を ずいぶん綺麗にしてくれたようだから、
 そのお礼だと思って。
 それに、せっかく君の為に選んだんだから
 開けてみてくれると嬉しいのだがね。」
自分も、エドワードの前に座って さらに、エドワードに
開けるように進める。

エドワードも、くれた本人が そこまで言ってくれるのを
無下にする事も出来ずに、
恐る恐る もらった物を開けてみる。
「うわ~、
 高そう・・・。」
思わず お礼よりも、そんな言葉が口に出た。
紙袋の中からは、いかにも質の良さそうな 一目で高級品とわかる
衣服がシャツから、ズボンや靴や靴下に下着まで
コーディネイトが楽しめそうな程、入っていた。
「こんなに・・・。」
困惑した顔で、並べた品を見つめるエドワードに
「似合いそうだと思ったのを選んでると、
 多くなってしまったんだが、
 まぁ、着替えにと思って。」
悪びれなく、言うロイに
「着替えって・・・、こんなに?」
いまいち、ロイの感覚がわからないエドワードだったが、
気持ちは嬉しいので、素直に礼を言う。
「ありがとう・・・、
 勝手に押しかけといて、こんな物までもらって。」
「気に入ってもらえれば十分だよ。
 好みの合わない物があれば、替えさせるが?」
と聞いてくるロイに、
とんでもないとばかりに首を横にブンブン振り、
「いや、俺にはもったいないようなのばかりだよ!」
「そうかね?
 そうでもないと思うが?」
エドワードなら、もっと彼に合わせた高級品でも
見劣りするなど有り得ないだろうに・・・とロイは思う。
彼が、正装する姿も見てみたいものだな。
驚くほど、目を惹く青年になるだろう。

食事をと言ったエドワードに、君も風呂に入って
着替えてくるように言い、
食事のセッティングをロイが引き受けた。
エドワードは、やや戸惑っていたようだが
ロイの強引さに押し切られ、浴室に向かっていった。

ゆっくり出来たのか?と思うような短時間で戻ってきた
エドワードが姿を現すと。
『ほぉー』と思わず彼の姿を観察する。
ロイが選んだ淡い青のシャツに、生成りのズボンを穿いただけの
シンプルな格好だが、均整の取れたスリムな身体には
良く似合っている。
『これは、もうしばらくもすると、
 女性がほっておかないだろうな・・・。』と
自分のコーディネイトの良さに満足する。
「あの・・・、ありがとう。
 すーごく着心地いいよ。」
少々照れているのか、風呂上りのせいか
うっすらと頬を上気させて返す風情もなかなかである。

そんな普段見れない彼の雰囲気を
いつまでも見ていたいが、
余り 構いすぎると、彼のことだ
へそを曲げないとも言えないので、
「それは良かった。」と さらりと流して目を離す。

「ずいぶん、料理にも頑張ってくれたようだね。
 時間がかかったんじゃないか?」
「うん、まぁ。
 でも、昨日から世話になりっぱなしだし、
 これ位は、たいした事じゃないしな。」
 そう答えながら、食事を進めて行く。
「君の彼女になる人は、大変だな。」
これをたいした事がないと言えるエドワードの腕前の
上を行く女性を見つけるのは、
なかなか難しいだろう・・・。
ロイから見ても、今日のエドワードの料理は
バランス・味・見た目も満点だ。
「そっか?でも、
 あんたもかなりの腕前だと思うぜ。
 昨日の手際のよさを見て思った。」

「まぁ、私は 一人暮らしが長いしね。
 どうせ食べるなら、不味いものより美味しいほうがいいし。
 それにしても、今日の料理はかなりのものだな。」
家庭で、これだけの食事を作る家は そうはないだろうと
感心しながら ロイが褒める。
「まぁ、あんたにはお世話になったからな。
 最後位は、少しくらいは気合入れてみた。」
食事をしながら、そんな言葉を さらっと言うエドワードに、
「最後・・・?」
ロイが そうつぶやいた言葉はエドワードには届かなかったのか、
熱心に目の前の肉を切り分けるのに集中している。

『最後・・・。
 そうだな、もし鋼のが 国家錬金術師を辞め、軍から抜ければ
 私との関係は終わる事になる。』
その事に何故、今の今まで思い及ばなかったのだろう?
鋼のが、昨日来た段階でわかりきっていた事なのに。

食事を止め急に黙り込んだロイを変に思い、
「中将? なんか嫌いなものでもあったのか?」
心配そうに声をかけてくるのに、はっと気づき、
「いや、どれも好みにピッタリだ。」と
笑顔を作り食事を続ける。
その後の食事は、味がいまいちわからなくなったが、
エドワードの手前、美味しそうに全て食べ終えた。

食後はリビングに移り、
ロイはワインを、エドワードはカフェオレを持って
話さなくてはならない話を続ける。
「で、君は 今後 どうしたいのかな?」
答えは予想できるが、本人からきっちりと聞いて
確認をしない事には、なんだか落ち着かないロイは
先に自分から気になる事を聞いてみた。

「うん、それなんだけど。
 取りあえずは、国家錬金術師は辞めさせてもらおうと思う。」
エドワードが、そう答えるだろう事は よく解っていたにも
関わらず、しかも 自分から切り出した事の答えなのに
思ったより気落ちする自分がいた。

「そうか・・・、
 で、その後はどうする気なんだ。」
「それなんだけど・・・、
 俺は、医大に行こうかと思っているんだ。」
「医大?」
「うん、俺が自分でしてきた事を考えてみたんだ。
 俺らは、無くなった体を 運良く錬金術で取り返せた。
 けど、そうは出来ない人がほとんどだ。

 それに、病で亡くなる人もいる・・・。
 錬金術の力で出来ることは、本のわずかな事だ。
 特に人の生死には、何にもできない・・・。」
そう語るエドワードの表情は、失った者を思い浮かべているのか
沈んで見える。
「だから、少しでも人の生死に関われる事を学びたい。」
「それで、医学か・・・。」
「そう、俺ら生体に通じていたから、
 一から新しいことを始めるよりは、
 今 使える能力も使っていきたいしな。」
エドワードが、そう考えるのも不思議ではない。
もしかしたら、幼い頃に母を亡くした頃から
考えてたのかもしれない。
ただ、その道を選べなかっただけで・・・。

「それは良いことだと思うが、
 どこに行くかは考えているのかね?」
「うん、色々と調べてみたんだけど、
 行くからには 1番良い所で学びたいんで、
 そうなると結局、セントラル国立大が1番施設も
 充実してるし、進んでるんだよなー。」
「国立大か。
 確かに セントラルのは、医学も最先端で取り入れてるし
 教授連も実際に腕のたつ医師が多いと聞いた事があるな。」
「そうだろ?
 難関だけど、やってみる価値があるよな。」
自分で納得させているのか、腕を組んでうんうんと首を
動かすエドワードに、ふと聞いてみた。
「で、どこから通うのかね?
 まさか、リゼンブールからと言うわけにはいかないだろう。」
「うん、それは絶対に無理。
 だから、こっちで下宿探すつもりだし。」
ロイの聞き方が面白かったのか、笑いながら手を振って答える。
「下宿・・・、そうだな。」
何やら、一人で納得しているロイを不思議そうに見る。
「で、生活はどうするのかね?」
エドワードの事だ、国家錬金術師の間に引き出せる研究費用を
私財に溜めておくなんて、器用な真似はしてないだろう。
案の定、エドワードは 金が無い事も認める。
「うん、あんまり金はかけれないから、
 学校は奨学生で入るのを狙って学費はタダにしてもらって、
 後は バイトかな?」
「なるほど・・・、バイトか。」
「うん、勉強はおろそかに出来ないから
 あんまり負担が無くて、高給なのがいいんだけど、
 そんなに都合いいのは無理だろうから、
 まぁ、そこら辺は適当に探すよ。」

「鋼の。
 君は医大の事は知っているのかね?」
「?」
「医大に入ると、1年間は課題に追いまくられて
 それをこなすだけでも大変らしい。
 しかも、2年になると専門のコースを選んで研究が始まるし、
 3・4年にもなると実技研修が入り、バイトするような暇は
 なくなるそうだよ。」
ロイは、知り合いから聞いた話をエドワードにしてやる。
「そっか・・・、そうなると
 2年間で卒業までの分かせがなくちゃな~。」
う~ん、と考え込むエドワードに
ロイは すました顔で提案を告げる。
「鋼の。
 国家錬金術師を辞めるのは賛成だ。
 で、医大に行くのも 大変、良いと思うよ。
 でも、その為には 住む所と、稼ぐところが必要だ。」
 そうだな?と確認するようにエドワードに伝える。
「うん、そうだよな・・・。
 中将が 言ってる事から先に考えとかないとダメだったんだよな。」
 やや、気落ちしたエドワードに
「そこでだ。
 私が条件に合う勤め先を考えてやろう。」
と笑顔で言う。
「えっ! 中将が?」
「そう、勉学をおろそかにせず、
 生活費に困らず働ける職場を。」
「・・・、そんな都合いいとこあるかな?」
「あるとも!
 簡単な家事手伝いをして、住み込みできて
 高給な仕事がね。」
本当か?と疑うような顔を向けるエドワードに
ニッコリと笑って、その後に続く言葉を続ける。
「私の家の家政婦だ。」



[ あとがき ]
二人の共同生活のはじまりです~。
このお話は、書いてて楽しいので良いです。
この後も、色々なエピソードを入れたいのです~。
このシリーズの二人には、とことん日常を楽しんで欲しい!
日常で、気づく色々な相手の違う面が見れる事が
楽しめる生活ライフを味わって欲しいですね。

まぁ、まだ私の腕では たいした事は書けませんが・・。((((((^_^;)




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