Selfishly

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Pa12 『アルフォンス 1』


スローライフ
        ~ Pa12 『アルフォンス』
H18,1/9 4:00




『あれ・・・?
  ああ、そうだった。』
寝起きの頭でぼんやりと いつもと違う室内に
自分が寝ている経緯を思い出す。

品良く、居心地良く整えられたロイの家の客間で
目覚めたアルフォンスは、
着替えをした後に、向かいのバスルームに
洗顔をしに入る。

階下では、朝食の良い匂いがしてくるので
兄が起き出している事がわかる。
静かに階段を下りていくと、
キッチンからは、楽しそうに話す声が聞こえてくる。

昨日も思ったのだが、中将は兄に
こんな風な話方をする人だっただろうか?
以前も、別に嫌な話し方をするとは思った事は
なかったが、なんだか 今の中将は別人のように
穏やかに、優しく話をするようになったと思う。
もちろん、一緒に暮らしていて
親しみが生まれているからかもしれないが・・・。

「おはようございます。」
挨拶をしながらキッチンに入っていく。

「おはよう、良く眠れたかね。」
「はい、おかげさまで。」
声をかけてくれたロイに挨拶を返す。

「アル、そこに座れよ。
 もう、メシも食べれるからな。」

「ごめん、遅くなっちゃって。」
起きるのが遅くなり、手伝えなかった事を詫びて席に着いた。
「いいぜ、これは俺の仕事だからな。」
さも、当然そうにアルの食事の準備をしてやり
渡してやる。
ロイには食後のコーヒーを淹れてやる。

「ありがとう。」とカップを受け取る中将のカップで
気づいたのは、
昨日、エドワード専用のマグカップと色違いのお揃いのカップだった。
アルフォンスは 何となく、「ムッ」とした気分になる。

「エドワード、仕事の事なんだが、
 これから 受験が終わるまでの間は休んでくれて
 構わないからね。」
淹れてもらったコーヒーを美味しそうに、
お揃いのカップを大切そうに手で包みながら
そう、中将がエドワードに話しかける。

「えっ、なんで?
 別に家事くらい大丈夫だぜ。」
中将の申し出に、意外そうに言い返す。
「しかし、せっかくアルフォンス君も来てくれているんだから
 勉強に身を入れて頑張ってもらった方が、
 私としても安心できるしね。」
中将の気使いに、兄さんは戸惑ったような表情をする。
「でも・・・。」と尚躊躇う様子を見せる兄さんに、
中将は微笑んで、話を続ける。

「なに、家事位は私にも出来るからね。
 君が受験の間位は、私が代わろう。
 たまに、自分でやらないと腕も鈍るんで
 丁度いい。」
そう言いながら、兄を安心させるように微笑んで
見つめる。

中将の提案に、しばらく考えるそぶりを見せた兄さんは
その後、きっぱりと返事をした。
「ロイ、気持ちは すごく嬉しいんだけど
 やっぱり、今までどうりで俺がやるよ。」
ニッパリと笑い そう断りをいれる。

「しかし・・・、」中将は兄さんの申し出に
困ったような表情を浮かべて言葉を続けようとした。

「あんたの気持ちは嬉しいけど、
 家事は別に それ程大変なものじゃないし、
 俺の気分転換にもなるしな。

 けど、少々 手抜きになる分位は大目に見てくれよな。」
ニコリと笑ってそう言う兄さんに、中将は
仕方ないと思ったのか、
「もちろん、手を抜いてくれて構わない。
 と言うか、そうしてくれると私も安心だ。」
と妥協線を示した。

「ありがとう。
 んじゃ遠慮なく そうさせてもらうな。」
素直に感謝の気持ちを表して礼を言う兄に
中将は 嬉しそうにしていた。

その後、ハボック少佐が迎えに来て
慌しく出勤をしていく中将を
兄さんは見送りに行った。

玄関先から聞こえてくる二人の会話を何気なく耳にしながら
ぼんやりと、以前の二人のやりとりとは違う事を感じていた。
以前は、何かと兄を挑発するような言動をしては
兄を怒らせては、食って掛かられていた。
兄も そんな中将には反発心やら対抗心を前面に押し出して
相対していたのに、
今の二人の関係は、互いを思いやっている事が
傍から見ていても解るほどだ。

帰宅も間々ならないと聞いた 忙しい中将が、
家事などする暇がない事は
兄には良くわかっていたのだろう。
でも、言った限り中将は それをする為に
無理をする事が兄にはわかっている。
だから、エドワードにしては珍しく
「手抜きを」する事を中将に伝えて、
中将に安心してもらえるようにしたんだろう。

以前、そのスタンスで助け合ってきたのは
自分達だった。
無茶をする兄を さりげなく、そしてしっかりとフォローする自分。
兄も 自分には全幅の信頼を持って任せてくれていて
どんなに煩い事を言っても、きっちりと聞いてくれていた。
その時には気がつかなかった、
兄 エドワードが、こんなに気配りをする人間だったとは。

もしかしたら、
もともと兄は 人の面倒を見、気を配ってやるのが
得意だったのかも知れない。
あの頃は、自分に世話を掛けることで
自分の存在価値を 自分自身が疑う事がないようにとの
心配りだったのかも・・・。

兄の知らない1面を解り、複雑な気分になる。
『なんだか嫌だな・・・。』
そんな思いが表情に表れていたのか、
キッチンに戻ってきたエドワードが、
「どうした、アル?
 そんな難しい顔して。」と気に掛けて声をかけてきた。

「ん~、別に。
 今後の勉強のプログラムを考えてただけだよ。」
と、何もないという事を伝えて、
兄に余計な気を使わせないようにした。
『これ以上を、気を使わせるような
 子供だとは思われたくない。』
特に、今の中将と兄の関係を思うと。


食後には、二人で手分けして家の掃除や洗濯をした後に
いよいよ、本題の勉強に入る事にした。
まずは、兄の理解度をみる為に
過去の受験問題をテストしてもらう。
問題を解くのに、苦戦している兄を見ていると
百面相が見れて、すごく面白い。
表情豊かな兄さんは、思った事が すぐに顔に出る。
眉を寄せる程 考えているかと思えば、
ふくれっつらで文面を読み返したり、
考えている仕草の ペンで自分の唇をたたいたりと
今 何を考えているのかが手に取るようにわかる。
『面白いな~。』と眺めていると

「・・・出来た、一応・・・。」と
兄にしては 珍しく気弱に問題用紙を出してくる。
それを受け取り、回答と照らし合わせる。
その間、兄さんは 判決を言い渡される犯罪者のように
神妙な顔をして こちらを伺っている。

「わかった。」
僕が そう言うと、机に乗り出して聞いてくる。
「どうだ、何とかなりそうか?」
期待に満ちた兄さんの問いかけに
「うん、問題ないよ。
 兄さんは コツを掴みさえすれば、
 これ位は すぐに解けるようになるから。」
そう、安心させてやる。
「本当か!」
嬉しそうに笑う兄に、
「うん、ただし 相当頑張ってもらう事になるけど?」
と問いかけると、
「うっ」と詰まったような声を出したけど、
もともと、困難な事にこそ持ち前の実力を発揮させる兄だから
「よし、わかった! 頑張る。」と
やる気を見せてきた。

「まずは、兄さんのカリキュラムなんだけど、
 このテストの結果から考えてみたんだ。」
そう話し出すと、真剣な表情でうなずいてくる。

「文学の歴史や傾向、作者・作品・作風とかは
 僕が要約して説明するから、兄さんは それを
 暗記してくれれば大丈夫だよ。」
そう言う僕に ホッとしたように
「そうかー、暗記なら大丈夫だ。」と嬉しそうに言う。

「うん、それは全然大丈夫だと思うよ。
 それで、何作かは 代表的な作品を読んでもらって
 感想の書き方を練習する。」

「感想? レポートとは違うのか?」
不思議そうに聞き返してくる。

「うん、兄さんが解っているレポートも もちろん、
 必要になるんだけど、
 入試の時には、作品からの読み取りのレポートじゃなくて
 そこから受けた主観や、作者の深層の読み取り、伝えたいことを
 きちんと受け取って尚、それに対する自分の考えを
 書くのが必要なんだ。」

そう話すと、急に難しい顔つきになって唸り出す。
「ううー、それって苦手かも。
 俺が書いた感想ってのか?
 いつも、模範解答とはかなり違ってたからな~。」

「そうだね、これも そうなんだけど
 多分、兄さんは質問の内容が良く理解できてないから
 書く内容が変わるんだと思うんだ。
 きちんと、質問の意図さえ捕らえられれば
 そんなに難しい事でもないから、大丈夫だよ。」
そう、安心させるように笑って言ってやると、
頼り切る表情を向けて、お願いしてくる。

「宜しく頼みます!」と真剣に頭を下げてくる兄さんに、
なんだか、昔の僕達に戻ったようで
嬉しくなった。


「んで、大将の受験勉強は はかどってるんっすか。」
帰宅途中の車の中で、ハボックが そう聞いてくる。
「ああ、先生が良いらしくて
 順調のようだよ。」

「そりゃー、良かったっすよね。
 来て貰った甲斐もありましたよね。」
そう、素直に喜ぶハボックの言葉を
「ああ。」とだけ短く返して、考え込む。

アルフォンスが来てから3日ほど過ぎる。
勉強は順調に成果を上げているらしく、
エドワードも嬉しそうだった。
もともと、向学心が大盛な彼だから、
知らない事を吸収できるのは嬉しいらしい。

ただ・・・、
ただ、ロイと過ごす時間が少なくなったのが
仕方が無いとは解っていても 寂しい気にさせられる。
そして、
たまに 兄弟二人の絆の強さを見せ付けられるような時や
ふたりの間に入れない時には、
悔しさみたいな思いが浮かんでくる・・・が、
多少の 自分の考えや感情などは
エドワードの為に我慢するべきだと思っている。

ロイは、自分が感じて思っている事と同じことを
実は、アルフォンスも味わっているとは
思いもよらなかった。


夕食後、今までなら 楽しく談話するのが通常だったが
エドワードの受験勉強中は、 その後もエドワードと
アルフォンスが勉強をする時間に当てられる事になっている為、
ロイは 手持ち無沙汰な時間を仕事を持ち帰ってするのに
あてるようにした。
勉強は 日中は書庫を使って行っていたりもしているようだが、
夕方からは エドワードの部屋か リビングで行っている。
書庫を使っても構わないとは言っているのだが、
リビングの方が 家事をするにも何かと便利と
言う事もあり、
ロイが仕事を持ち帰ってきていない時以外は
そこに居る事が多い。

「ふぅ~」
一段落した仕事の手を止めて、時間を見ると
そろそろ 深夜に近い時間になっていた。

二人は もう、寝たのだろうか?
自分も 寝る前に喉を潤してからと
書庫を出てキッチンに向かう。

廊下に出てみると、開け放たれているリビングの
扉から 明かりが廊下を照らしている。

『まだ、やってるのか?』
驚かさないように静かに廊下を歩いて、
リビングを通り過ぎる時に ふと中を覗くと
中で見えた光景に、思わず思考が膠着する。

リビングの中では、大き目のソファーに横になって寝ている
エドワードの姿があった。
頭をアルフォンスの膝の上にし、安心しきって
気持ち良さそうに寝ている。

アルフォンスはと言うと、そんな兄を当然のように
受け止め、自分は本を読みながら
もう片方の手で、寝ているエドワードの髪を
優しく梳いている。
そんな二人に、彼らの絆の強さを見せ付けられた気になる。

以前、1度だけ眠るエドワードを腕に抱いた事があった、
その時 ロイは、安心しきって身を預けるエドワードに
喜びを持ったのだが、今のアルフォンスも同様なのが
見て取れた。
そして、エドワードも 多分、ロイの時以上に
自分から安心してアルフォンスに身を預けているのだろう。
それも、何度も・・・。
多分、二人は そうやって、過酷な運命から身を守りあって
生きてきたのだろう。
わかってはいるのだが、面白くないと感じる自分がいる。

ロイの視線に気がついたのだろう、アルフォンスが
こちらに気づいて会釈をする。
ロイも、素通りするつもりがリビングに
入っていく。

「お疲れ様です。
 お仕事は終わられたんですか?」
兄を気遣ってか 小さめの声で話しかけてくる。

「ああ、無事にね。
 エドワードは寝てしまったんだね。」

膝の上で寝ているエドワードに目を向け、
苦笑したようにアルフォンスが返事を返す。
「ええ、さっき。」

「ベットに連れて行った方がいいんでは?」

「そうなんですが、あんまり 良く寝てるんで
 起こすのが忍びなくて・・・。
 兄さん、最近 勉強後に入試の読書をしているようで
 寝不足気味だったもので。

 起きたらベットに連れて行こうと思ってたんです。」

膝の上で寝ているエドワードを大切そうに
髪を梳きながら、見つめている。

なるほど、身体は兄より大きくなったとはいえ、
まだ、抱いて行けるほどは力が及ばないのだろう
アルフォンスの事を考えた。

「わかった、私が運ぼう。」
そう言うと、アルフォンスの返事を聞くより先に
寝ているエドワードを起こさないように
抱きかかえる。

「えっ、ちょ ちょっと待って・・・。」
慌てるアルフォンスが みなまで言う前に
ロイはエドワードを抱きかかえてしまう。

「睡眠不足のようなら、尚更 きちんと寝かしてやる方が
 体の疲れが取れるからね。」
そう言うと、アルフォンスの返事を聞かずに
スタスタと エドワードの自室に向かう。

そんなロイの行動にあっけに取られたアルフォンスだが、
出て行く背中を見て、はっと我に返り
軽々と兄を抱き抱えていく 男の後姿をギロッと睨んだ。
そして、遅れるもんかと その後を追う。

ロイは 抱きかかえているエドワードを見つめて
自分の腕に還ってきた彼の重みを喜ぶ自分がいる事を感じる。
『少々 大人げない事をしてしまったかな。』
そうは、思うのだが いつまでもアルフォンスに抱きかかえられている
エドワードを見たくないという思いも
無視できないほど大きかった。
だから、とっさに取り返せるチャンスに抱きかかえてしまったのだが。

そんな事を考えていると、エドワードの部屋には すぐに着いた。
静かに扉を開けて 中に入る。
ロイ自身は エドワードの部屋にまでは めったに入らない。
最初に内装の確認をするのに、彼に許可をもらって
入った以来だ。
この部屋には、エドワードしか入れたくないと思っているから、
以前 軍部のメンバーが来て、エドワードがホークアイ中佐に
部屋を貸そうとした時にも、客間の方に泊めるように言った。
アルフォンスの時にも エドワードが一緒で構わないと
言ったのにも関わらず、
ロイは客間を使ってもらうようにエドワードに言ったのだ。

エドワードにしてみれば、勿体無いと思っているようだが、
ロイにとっては そうではない。
エドワードの部屋に 他の誰かの気配が混ざるのが
嫌だったのだ。

部屋に入ると、静かにベットの傍に行き
抱きかかえたままで 器用にブランケットをはいで、
エドワードを横たえる。
そして、肩までかけてやるついでに、
頬に落ちていた金髪を、何度も撫で付けて整えてやる。
そして・・・、名残惜しそうに手を離して
部屋を出る。
扉の外にはアルフォンスが立っていて、
心なしか険がある表情で、ロイを見返してきた。

不満げな事を隠しもせずに
「わざわざ、ありがとうございました。」と
それでも きっちりと礼を伝えてくるアルフォンスに、

「では、私は下に戻るから 君も早く寝るように。」
そうだけ言うと、階下に降りていった。

アルフォンスは、立っていた所から見えた
今の情景を反芻する。
兄を軽々と抱きかかえ、支えられるだろうロイに
素直に嫉妬もした。
が、今みた光景から受け取れるロイの行動は
 それだけの情感ではないような気がする。

壊れ物を使うように丁寧に大切に抱きかかえ、
相手を考えて慎重に降ろす中将の姿は
とても、他人の子供を扱うには過ぎている気がする。
それに、その後 髪を撫で付けてやる時の表情は
我が子でも そこまで愛とおしそうに
見つめる人がいるだろうかと思う雰囲気を
漂わせていた。

『嫌な感じがする・・・。』
ここに来て、二人が一緒にいる時に度々感じる思いが
今 より一層強くアルフォンスの中に生まれていく。
そんな思いを抱えながら、
安らかに眠っている兄を起こさないように
静かに扉を閉めた。





[あとがき]
う~ん、なんだか ロイ→エド←アルの△関係を書いているような気が。
いえ、うちのアルは エドに恋愛心を持っているんじゃーないんですよ。
ただ、重度のブラコンですが。 (苦笑)
ロイへの敵愾心の芽生えは、エドが取られるんじゃないかっていう
危惧から来ております。
もともと、人の機微に聡い彼ですから
敵発見~!な感じでしょうか。(笑)

今日は コミックシティーに行って参りました。
成果の程は、今日の日記に書こうと思います。
お暇でしたら、ついでに見てやって下さいね~。





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