フィンとリーフのトラキア博物館

フィンとリーフのトラキア博物館

フィンのトラキア戦記(2)



最新更新情報:12月23日、第30話をアップしたよ~

パート(2)は第30話までだよ!!
<第26話・再会・母と娘>

マンスター城地下にある、ロプトの秘密神殿に乗り込んだ私たちを待ちうけていたのは、ベルドの部下である「ベルクローゼン」の魔道士たちだった。
しかしエーヴェル奪還に燃える私たちの敵ではなかった。突然敵がリワープの魔法で目の前に現れても、待ちかまえていたリノアン様やサラ嬢の光魔法で、次々と倒されていく。何よりマリータの活躍は凄まじいものだった。
「お母様の道を阻むのであれば、決して容赦しないわ!!」
マリータが叫ぶのと同時に、流れるような剣の動きで、魔法を放とうとしたロプト兵を次々と切り伏せていく。しかも彼女のそばには必ず父であるガルザス殿が側についていた。
「マリータ大丈夫か、いくぞ!!」
「はい、お父様!!」
ガルザス殿も流れるような動きで、娘のマリータに負けじと次々とロプト兵を切り伏せていく。
気がつくと、この2人だけで大半のロプト兵を倒していた。
「俺たちの出る幕ねぇな・・・」
「ふっ、でもあれだけいい表情をしているマリータを見るのも久しぶりだ。実の父と出会えたんだ、当然か」
フィアナ義勇軍の仲間であるオーシンとハルヴァンは2人の戦いぶりを見て、こうつぶやいていた。

そしてエーヴェルが閉じ込められているという部屋の前にたどり着く。ここにも狂戦士軍団が待ちかまえていたのだが、間りーたの必殺剣「流星剣」が炸裂し、一瞬にして壊滅させる。
「ここ、この部屋にいるよ」
サラ嬢が言うと、リフィスが鍵を開ける。扉が開き中にはいると、中には1人の石像だけがたっていた。しかしその石像こそ、探し求めたエーヴェルその人だった。

「サラ、頼む」
「うん、わかった」
サラ嬢が石像の前にたち、キアの杖をかざし目を閉じる。呪文を唱えると石像が優しい淡い光に包まれる。
しばらくすると淡い光が消えていく。すると石灰色だったエーヴェルの体が本来の肌の色に戻っていく。

「え・・・こ、ここは・・・?」
石化から解放されたエーヴェルは、呆然とした様子であたりを見回していた。

「お母様ぁっ!!」
今まで我慢していたマリータが、思いきりエーヴェルに抱きついた。
「マリータ・・・よかった正気に戻ったのね。本当によかった・・・」エーヴェルも娘が正気に戻ったのを喜び、マリータを優しく抱き止める。
「エーヴェル!!」
そしてリーフ様とナンナも嬉しそうにエーヴェルのもとへ駆けつける。一瞬唖然としていたエーヴェルだったが、リーフ様の姿を見て笑顔になる。そしてリーフ様とナンナ、マリータは順番にこれまでの経緯を交互に話す。
「一年も・・・」あの悪夢の出来事から1年が過ぎていたことを知ったエーヴェルは信じられないといった様子だった。無理もない。彼女にしてみればその間の「時間」は完全に止まっていたのだから。
「でも、リーフ様も本当に立派になられて・・・」エーヴェルは素直にリーフ様の成長を喜んでいた。彼女にしてみればほんの一時であったの思う。私からみても立派になられたリーフ様をみて、感激を隠せなかった。
「それも皆エーヴェルのおかげだよ。あの日フィアナ村にたどり着いた僕たちを優しく迎え入れてくれたエーヴェルには本当に感謝の言葉も見つからない」
「実はね、私も十数年前にフィアナの海岸で倒れていたところを、村人が助けてくれたの。その時の私はそれまでの記憶をなくしてて、名前さえなくしていたのです。今のエーヴェルという名前も自分でつけたもの。だからあの日、故郷を追われてフィアナ村に逃れてきた王子たちをみて見捨てることができなかった。昔の自分自身をみているように思えたから・・・ですから私は何もしてません。いまのリーフ様があるのも、リーフ様自身努力なされた結果です」と、エーヴェルは自分がフィアナ村にいた理由を始めて語った。彼女の姿を見てやはり私は確信を持った。記憶を無くしているというがおそらくあの方であることには間違いない。
そして私たちが話している側で、マリータは泣いているばかりだった。無理もない、操られていたとはいえ、自分の母親に剣を向けていたのだから、その罪悪感というのもあるのだろう。彼女が泣いているのを見たエーヴェルは、マリータをそばに引き寄せる。
「あらあらまるで子供みたいじゃない。そんなに泣きはらせては、せっかくの美人が台無しじゃないの。ほら、涙を拭いて・・・」
「お母様・・・わたし、わたし・・・」
「ごめんねマリータ、ずいぶん心配させてしまって・・・」
と、そこにガルザス殿がエーヴェルのもとへ。
「このまま去ろうと思ったのだが、やはり一言だけ言わせて欲しい。娘を・・・ここまで育ててくれたこと、礼を言う」
「え、娘って・・・」突然のことにエーヴェルは驚くものの、マリータが生き別れになっていた父親なのだと説明した。
「俺の妻はこの子を生んだあとにすぐに亡くなったが、その後、一緒に旅をしていた。だが俺が少し目を離した隙に、奴隷商人に連れ去られてしまったのだ。見つけた時にはすでに奴隷商人たちは町の自警団に潰された後だったのだ」と、ガルザス殿
「そうでしたか・・・コノートの町で奴隷商人たちを見つけた私は、幼い子供に鎖をつけて歩いているの彼らが許せず、すぐに戦いとなったのです。その時に身寄りのないこの子を引き取ったのです。すぐに父親を探したのですが、見つけることができずにフィアナ村へと戻ってしまったのです。申し訳ありませんでした。もう少し私がよく探していれば・・・」

「いや、すべては俺が悪かったのだ。幼い子供を引き連れて旅をするなど・・・娘はあなたに拾われて幸せだった。勝手なことかも知れないが、これからも娘のことを見てやってくれないか?」
「ええ、マリータは私の娘です。これからも私が育てていきます。ですがガルザス殿、一つだけ約束をしてください」
「なんだ?」

「1年に一度はフィアナ村へ立ち寄ってください。それだけです」
「わかった約束しよう」
「お父様、お母様・・・」

2人の話す姿をみて、マリータは再び涙を流していた。

エーヴェルが合流し、いよいよ残すは今回の諸悪の根源であるベルドを倒すのみとなった。

そして私たちは神殿の最深部へと突き進むことになる・・・

第26話・完
第27話に続く・・・

<第27話・闇司祭ベルド>

エーヴェルを無事救出した私たちは、いよいよ地下神殿の最深部へと進んだ。
そこはとても地下の一室とは思えないほど、広い空間が広がっている。
「この神殿の中央部に、闇司祭ベルドはいる。奴の部屋に入るには、周囲にある6つの子部屋にあるスイッチを押せばいい。だがそのスイッチをベルドの戦士たちが守っているぞ。相当強敵という話だ」とガルザス殿は語った。



ガルザス殿の話を聞いた我々は、忠告に従い部隊を6つに分けることにした。リーフ様の部隊にはナンナと賢者に昇格したアスベルが行くことに。
そして私の部隊には、ランスリッターの一員であるカリオンと、なぜかアルスターの王女であるミランダ様と同行することになった。
早速部屋の中に入ると、案の定ロプトの重騎士兵が襲ってきた。私が銀の剣でロプト兵たちを一蹴すると、負けじとミランダ様がエルファイアーの魔法で、カリオンが銀の槍でそれぞれロプト兵たちを倒していく。

兵たちを全員倒したと思い込んでいた、その時であった。凄まじい殺気が部屋の中を包む。すると凄まじいスピードで矢がこちらに向けて飛んできたのだ。とっさに槍ではじくも連続で撃ってくるとので、反撃のきっかけがつかめない。

するとミランダ様が「いい加減にしなさい!!」と怒りを爆発させ、再びエルファイアーの魔法を唱える。先ほどとは比べものにならないほどの爆炎が、敵のスナイパーの体を包んでいった。爆炎に包まれたスナイパーは、なす術もなく倒れていく。
敵兵がいないか改めて確認を取ったあと、リーフ様の合図が出るまで待機した。やがてリーフ様の合図が出ると、私は子部屋の奥にあるスイッチを踏んだ。

すると神殿内に震動が起きる。治まると中央部に通じていた扉が開かれた。そして私たちは中央部の方へと急いだ。

神殿の中央部ではベルドの親衛隊が攻撃を仕掛けているところだった。急いでリーフ様の部隊に加勢し、リーフ様に襲いかかろうとした狂戦士たちを倒していく。全滅させ玉座の間へと向かうとそこには、エーヴェルを石化させた張本人である、暗黒司祭ベルドがいた。

「ええい、こうなったらワシが直々にこのヨツムンガンドで、全員あの世へと送ってくれるわ!!」
ベルドが魔法を放とうとしたその時である。ベルドのまわりを奇妙な霧が包んでいく。
「・・・・・・・・・!!!」ベルドが何か口を動かしているようだったが、声にはなっていなかった。つまり沈黙の魔法サイレスが発動したのだ。

得意の闇魔法を封じられたベルドになす術はない。リーフ様が光の剣で豪快にベルドを切り捨てる。

マンスターの地にようやく平和が訪れた瞬間だった。全員歓喜に包まれる。私も銀の剣を鞘に治めるとふうっ、とため息をついた。普段は槍ばかりなので、剣はあまり得意ではないのだが、それなりに使いこなせたので安心した。だがマスターナイトになっている、私の妻ラケシスには一度も勝てないのだが。

「さあ、みんな地上に戻ろう!!」リーフ様が高らかに言うと全員が頷いた。


第27話・完
第28話に続く・・・

<第28話・セリス軍合流と小さな別れと>

闇司祭ベルドを倒した私たちは、城下町でセリス軍がコノート城を制圧したことを知った。

「あれだけ強固なコノート城を短期間で落とすとは、さすがはセリス様だ」
リーフ様がおっしゃるのも無理はなかった。コノート城にはブルームが率いるフリージ軍が駐留しており、もし私たちが挑んでいれば、どの位かかったかわからない。

セリス様の指揮官能力の高さを改めて実感した。

その後セリス様の部隊が、マンスター城へ入ったとの報を聞き、私たちもそこへ向かう。

リーフ様は、セリス様とがっちり握手を交わしたあと、これまでのいきさつを話した。そして正式に我々レンスター軍は、セリス様率いる『解放軍』に合流した。

マンスター城ではいくつかの出会いがあった。エルトシャン様のご子息であるアレス様がセリス様の軍に加わっていたのである。
早速ナンナがラケシスから託されたエルトシャン様からの手紙をアレス様に手渡す。初めは怪訝な表情で手紙を見つめていたアレス様であったが、次第にくぎいるように手紙をみた。
やがてアレス様はセリス様のもとへいき、何かと話はじめたかと思うと、後に握手をかわした。どうやらアレス様が抱いていた誤解が、エルトシャン様の手紙で解けたようだった。

ほかにもフリージ軍を除籍していたオルエン将軍と聖騎士フレッド、アマルダ将軍がアゼル様とティルテュ様のご子息とご息女であるアーサー公子とティニー公女、そしてティルテュ様の妹君であるエスニャ様のご子息とご息女であるアミッド公子とリンダ公女と面会をした。
その後、ヴェルトマーの公子ではあるもののフリージの血もひいていることもあり、アーサー公子を年長として3人は新生フリージ家の騎士として復帰することとなった。

そしてシレジア王子であるセティ様は妹君であるフィー様と再会を果たした。そしてフィー様が率いる天馬騎士部隊に、あらたにカリン率いる部隊とミーシャ将軍が率いる部隊が合流し、フィー様を団長とする「新生天馬騎士団」が結成することになった。

新たな出会いがある中で別れもいくつかあった。まずランスリッターの重鎮としてまとめ訳となっていたゼーベイア将軍が、レンスター城守備のために、レンスターへ戻ることになった。そしてアルスターのミランダ王女もコノモール将軍と共に、祖国であるアルスターへと戻っていった。そしてマギ団も故郷であるマンスターを復興するために残ることになった。
解放されたとはいえ、未だに帝国軍の脅威がきえたわけではないのだ。何時また襲ってくるかも知れない帝国軍を警戒してのことである。



そしてエーヴェルを救ってくれたサラ嬢やセイラムは、ロプト教団の脅威から身を守るためにレンスター南部にあるソルウッド村にむかった。よけいな混乱を避けるためとはいえ、リーフ様は2人に申し訳なさそうな表情で頭を下げた。


だがエーヴェル率いる「フィアナ義勇軍」が離脱することは私たちにとっても意外であった。
理由は最近フィアナ村やイス村など周辺で、リフィス団とは違う新たな海賊たちがあらわれ、村人たちを苦しめているという。
村人たちにとっては「フィアナ義勇軍」だけが唯一の救いの手なのである。海賊たちをこのままほおっておけない、いますぐ助けに向かうことが必要なのである。

全員別れると思ったのだが、なぜかマリータだけは私たちの軍に残ることになった。そういえば最近ナンナがデルムッドとマリータが仲良く剣の稽古をしているのを見ているのを聞かされてた。どうやら息子にも気になる彼女ができたらしい。ナンナにとっても親友であるマリータの残留のことは嬉しかったようだ。

私はラケシスと恋人になるまでに、2年近くかかったというのに一体誰に似たのであろうか・・・

さまざまな出会いと別れがあったが、私たちはこれから本格的にトラキア王国に向けて進撃を開始する。

戦いはこれからなのだ。


第28話・完
第29話に続く・・・

<第29話・いざトラキアへ>

私たちは、セリス軍と合流し「解放軍」として従軍することになった。まずはミーズ城へと向かうことになる。

ミーズへはほぼ一本道なので迷うということはない。だが、道幅が広くなく逃げられる場所がほとんどないので、逆にいえばトラキアの竜騎士軍団からすれば格好の的になる。
しかも、ミーズ城の手前には遠距離攻撃砲「シューター」が多数配置されており、進軍は容易ではない。

しかしセリス様とリーフ様は、迷うことなく進軍をすると決断した。

マンスター城をあとにしてから数刻後、前方上空にトラキアの竜騎士部隊が襲いかかってきた。
道幅が狭い上に上空からの攻撃だったので、一瞬怯むもののすぐにたてなおし反撃に出た。

特に伝説の武器をもつ聖戦士の活躍は目ざましいものがある。アレス様の魔剣ミストルティン、ブリギッド様のご子息ファバル様のもつ聖弓イチイバル、シャナン様の神剣バルムンク、そしてセティ様の風の魔法フォルセティと4つの聖なる武器の競演はすさまじい。

ほどなく竜騎士部隊を全滅させると、今度は私たち騎馬部隊が中心となりミーズ城へ突撃を開始した。

遠方に構えていたトラキアのロングアーチ部隊が慌てて私たちの方へ攻撃の照準を代えようとしたのだが、機動力でかなうはずがなかった。私も勇者の槍を振るいながらトラキア兵を切り捨てていく。

ロングアーチ部隊を一掃し、ほかの部隊の到着を待った後、私たちはミーズ城へ突入した。

城内の兵はほとんど竜騎士だったのか、わずかな重騎士だけであった。ほどなく倒すと玉座の間には、城の主であるジェネラルが立ち尽くしていた。銀の槍と命中率の高いキラーボウを持ち、私たちを威嚇する。

だが魔法騎士に昇格したアゼル様とティルテュ様のご子息アーサー様が、炎の上級魔法であるエルファイアーを放つと、敵将が大盾で防ぐ。しかしそれがアーサー様の狙いだった。
「いまだ、ティニー!!」
「はい、お兄様!」
アーサー様の妹君であるティニー様が、雷の最上級魔法であるトローンを放った。巨大な電撃の塊が敵将の体を包むと、凄まじい放電とともに、敵将は倒れた。魔法剣士に昇格したとはいえ、ティニー様の魔力は目を見張るものがある。もちろんアーサー様も2人の魔法の血を継いでいることもあり、威力は凄まじいものがあった。

敵将が倒れたことにより、トラキア兵の抵抗も止んだ。
かくして私たちはトラキア王国の北の拠点であるミーズ城を制圧した。

すると不意に私の目にあのマンスター城近辺にいた、あの女性竜騎士が飛び込んできた。
彼女はミーズ城が制圧されたことを悟ると、トラキア城の方へと飛び去っていった。
だが私は見逃さなかった。彼女の持っていたあの槍は・・・間違いなくゲイ・ボルグであった。

キュアン様が持っていたはずのゲイ・ボルグの槍を、彼女がもっているということは・・・まさか!!
いや、彼女があの槍をもっている以上確信できる。間違えるはずがなかった。

彼女は・・・キュアン様とエスリン様とともにイード砂漠で死んだと思われていた、リーフ様の姉君であるアルテナ様だったのだ・・・


第29話・完
第30話に続く・・・

<第30話・姉と弟>
ミーズ城制圧後、私はずっと考え込んでいた。そう先日の戦いで見かけた女性竜騎士のことだ。
彼女が持っていた槍は、間違いなくキュアン様が持っていた「地槍ゲイ・ボルグ」である。ゲイ・ボルグを装備できるのは、槍騎士ノヴァの血をひくキュアン様と、イード砂漠で亡くなったとされているリーフ様の姉君であるアルテナ様である。

だとすれば、このことをリーフ様にお話しなければいけない。

意を決し私はナンナを呼ぶと、リーフ様を連れてくるようにと伝える。
数分後、リーフ様が入ってきた。

「フィン、どうしたんだ。ミーズ城の戦いの後からずっと考え込んでいるみたいだけど・・・」
「お父様どうなされたのですか?」

リーフ様とナンナは、私がずっと考えてこんでいたのを見ていたらしく、2人は心配でならなかったらしい。

「実は・・・リーフ様、ミーズ城の戦いで山頂にいた竜騎士を覚えていますよね?」
「もちろんだよ。トラキアでも女性の竜騎士は珍しいって聞いたから、でもそれがどうかしたのかい?」
「あの女性は・・・アルテナ様です」

「えっ?」

リーフ様はきょとんとされていた、もちろんナンナもだが。

「あの竜騎士のもっていた槍・・・あれはゲイ・ボルグです」

「ゲイ・ボルグだって?どういうことなんだフィン!なぜあの竜騎士がゲイ・ボルグを持っているんだ?」

「そうです。ゲイ・ボルグとアルテナというお名前・・・そして、アルテナ様の体を包んでいた聖なる光。私は一度キュアン様がゲイ・ボルグを持っておられたことをよく覚えております。間違いありません。あの方はリーフ様、あなたの姉上なのです」

「ちょっと待ってくれフィン。姉上はたしかイード砂漠でなくなったはずだ。だとしたらなぜトラバント王は姉上を連れさったんだ?」

「トラバント王がキュアン様とエスリン様を害した時、幼いアルテナ様もご一緒でした。おそらくアルテナ様を自分の娘として育てたのです。ゲイ・ボルグの力が欲しかったのでしょう。あの卑劣な男のやることです」

そのことを聞いたリーフ様は怒りをあらわにした。

「つまり姉上は騙されているというんだな。トラバントめなんということを・・・」

「リーフ様、アルテナ様を助けましょう。弟君であるあなた様の言葉なら、アルテナ様もきっと無視はできないはずです」

「もちろんだよフィン。こうなったら姉上を絶対に助けよう。そして父上と母上の仇を討つ!!」
リーフ様の目は強い決意に満ちあふれていた。


そして数日後・・・

ミーズ城南方から、トラキアの竜騎士隊が迫ってきた。

そしてその竜騎士軍団を率いていたのは・・・なんとアルテナ様だった。

それを確認したリーフ様と私は、最前線に進み向かってくる竜騎士を光の剣と勇者の槍で次々と切り捨てていく。

やがてアルテナ様を見つけたリーフ様は、すぐに大きな声で叫んだ。

「姉上!!待ってください姉上!!」
「お前は何者だ?なぜわたしを姉と呼ぶ」
「私は・・・レンスターのリーフです」
「そうか、お前がレンスターのリーフ王子か。私はトラバント王の娘アルテナだ。寝ぼけてもらっては困るな」
アルテナ様はリーフ様の話を聞こうとせず、攻撃体制に移ろうとした。だが・・・

「聞いてください!!わが両親は17年前にトラバント王に殺された。そのときわが姉上は、レンスターの家宝ゲイ・ボルグとともに行方不明となったのです。あなたがもっている槍こそレンスターの家宝ゲイ・ボルグなのです!!」
と、リーフ様が叫んだ途端、ゲイ・ボルグを持つアルテナ様の体が淡い光に包まれる。

「ば・・・馬鹿な、こんなことが・・・」アルテナ様は信じられないといった様子で表情を強ばらせる。

「姉上・・・!!」リーフ様が再び叫ぶ。

「待て・・・一度トラキア城に戻って父上に真意を確かめる・・・すべてはそれからだ!!」

そういうとアルテナ様は我々に背を向けると、トラキア城の方へと飛び去っていった。

説得できなかったことを悔やんでいたリーフ様だったが、ナンナが「きっとアルテナ様は戻ってきます!」と言うと、リーフ様も表情をゆるめ、いつものリーフ様に戻られた。


そしてアルテナ様が去ってさらに数日後、事態は大きく変化していくこととなる・・・


第30話・完
第31話に続く・・・


「フィンのトラキア戦記(2)」はここまでです。(3)に続きます!!


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