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フィンとリーフのトラキア博物館
剣聖と黒騎士と・・・(その6)
最終更新情報:10年3月16日、第22話をアップしました!!
<第21話・聖戦士も風邪には勝てず?>
ベルンにて女王ギネヴィアから引いたカードの結果、北国イリアへと向かうことになったデュランたち。
馬車で移動を開始すると、まずは国境に向けて順調に歩を進めていく。
出発した翌日にベルンとイリアの国境を超えると、冬将軍との異名を持つイリア地方の厳しい自然の猛威が襲い掛かった。
事前にベルンで準備を整えていたとはいえ、イリアの寒さは彼らの想像を超えていた。
国境を越えると彼らの目の前には一面の銀世界が広がっていた。
そして雪がしんしんと降ったかと思うと、突然強風が吹き始め積もっていた雪が風で舞い上がって吹雪となり、あっという間に視界は0に近い状況となる。
デュランたちも少し進んでは休憩を繰り返しながら進んでいたのだが、エイミとエイシャの体力を心配したデュランとエルトシャンは、国境を越えて最初の村にたどり着いたところで休むことにした。
村にある宿屋で休憩を取っていたデュランたちは、改めてイリアの自然の厳しさを痛感した。
「ギネヴィア女王から聞かされていたけど、ここまで寒さが厳しいとは。以前行ったことがあるシレジアでもここまでひどい吹雪なんてなかったよね」とエルトシャン。
「『冬将軍』とはよく言ったもんだな。あのまま進んでいたらさすがの僕たちも危なかったよ」と、反省気味のデュラン。
「それにしてもいつになったらこの吹雪は治まるのでしょうか、心配だわ・・・」と不安を隠せないエイシャ。
「さっき宿屋の主人に聞いたら、まだ1日~2日くらいこの吹雪は続くそうよ。残念だけどこの村でしばらくは足止めになりそうね。だけどねエイシャ、何も急ぐ旅じゃないんだし、リーフ様やアレス様もゆっくり楽しんでっておっしゃってたじゃない」と励ますエイミ。
「そうだよエイシャ。せっかくの長期旅行なんだ。楽しまなきゃ損だぞ・・・って、はっくしゅん!!」とここでデュランはくしゃみをする。
「そういえば僕もさっきから鼻がむずむずしだして・・・くしゅん!!」エルトシャンも気がつけば鼻が真っ赤である。
「あら、あなた。デュランお兄様、風邪ですか?」とここでエイシャがかばんからエッダの司祭コープルから貰った風邪薬を取り出した。
「朝からずっと馬車の手綱をエルトシャンと交代で引いてたもの。ずっと馬車の中にいた私たちと違って冷気にあてられてたから、風邪をこじらせてしまったんだわ」とエイミもあわててベッドの用意をする。
「おいおいエイミ。何もそんな大げさにしなくても・・・」とデュランが言うものの
「何を言ってるの。風邪は早めに治さないとほおっておいたら、どんどん症状はひどくなるのよ!!ほら、早く着替えて着替えて!!」反論する間も与えずエイミはデュランに対し着替えを進めさせる。
やがてそれぞれの部屋に戻った4人。はじめは2部屋の予定にしていたのだが、エイミとエイシャが事情を説明し、女性陣2人は同じ部屋で休むことになり、デュランとエルトシャンはそれぞれ別室で休むことにしたのだった。
「エルト・・・大丈夫?」
「う~ん、そこまで言うのなら僕も着替えてこようかな。これ以上エイシャに心配をかけるわけにはいかないからね」不安な表情を見せるエイシャにエルトシャンは笑顔で励ますと、別室に移動し着替えを済ませる。
「いくら聖戦士でも、風邪には勝てない・・・か・・・」エイシャに看病をしてもらった後、エルトシャンはぽつりとつぶやいた。
「無理はしないで、今日はゆっくり休んでね。私はエイミお姉様と一緒に休むことにしたから。何かあったら、そこのひもを引っ張ってくれたらすぐにかけつけるから。じゃあ、おやすみなさい。エルト」とエイシャが言うと、エルトシャンも「うん、おやすみ」と片手を挙げて応えた。
「せっかくの旅行なのに、まさか風邪を引くなんて・・・」はぁ、とため息をつくデュラン。
「仕方ないわ。ずっと寒い中移動し続けたもの、急激な温度変化についていけなかったのね」と苦笑いを浮かべるエイミ。
「とにかく今日はゆっくり休んで。エイシャから薬をもらって、飲んで少しは楽にはなったと思うけど、油断は禁物よ。私はエイシャと同じ部屋で休むことにしたから。何かあったらそのひもを引っ張って。私もすぐに駆けつけるから。それじゃ、おやすみなさい、あなた」
「うん、おやすみ」
そういうとエイミはデュランのおでこに優しくキスをして、部屋を後にした。
結局2人の風邪は翌日になっても治まらず、吹き荒れる吹雪と共に3日ほど、村に滞在することになるのだった。
そして吹雪が治まった翌日、デュランたちはお世話になった村の人たちにお礼を述べて、再びイリアの最大の都市エデッサへと向かった。
第21話・完
第22話に続く・・・
<第22話・闇の賢者と竜の血を引く女>
イリア名物『冬将軍』の影響もあって3日間、イリアとサカの国境付近の村で足止めを食らったデュランたちだったが、ようやくエデッサにむけて馬車を走らせた。
これまでの吹雪が嘘のような天気で、街道に雪は積もっているものの、馬車の移動に支障はなく順調に進んでいた。
デュランたち4人の会話も弾んでいたのだが、突然エルトシャンの表情が引き締まった。
「どうしたんだエルトシャン。急に表情をこわばらせて」と、デュランが訪ねる。
「デュラン兄貴、悪いけど今すぐに馬車を止めて」とエルトシャンが馬車を止めるように指示を出す。
「どういうことだ?」
「静かに!!もうすぐこっちに来る!!」エルトシャンの言葉に、思わずデュランも怪訝な表情をする。
デュランは一旦馬車を降り、あたり一体を見回すが、敵が出てくる様子は一向にない。
「エルトシャン、敵がいるとは思えないんだが・・・!!!」デュランはエルトシャンにそう伝えようとした途端、殺気を感じたようで、腰から槍を取り出した。
突然馬車が止まったので、様子がおかしいと感じたエイシャとエイミは馬車の外に出ようとした。しかし突然馬車の中に入ってきたエルトシャンに止められる。
「ちょっとエルトシャン、どうしたの。突然馬車を止めて」エイミが言うと、「ごめん、エイミ。悪いけど、少しだけのあいだエイシャのことを頼むね」
「どういうことなの、あなた。いったいなにがおこってるの?」心配そうにエイシャも訪ねる。
「大丈夫。すぐに終わるから、ちょっとだけ我慢してね」そういうとエルトシャンは父アレスから譲り受けた魔剣ミストルティンを荷物の中から取り出すと、慌てて馬車の戸を閉めた。
「エルトシャン、来るぞ!!」デュランが父リーフから譲り受けた光の剣を身構えた瞬間、20人前後の謎の兵士たちが現れた。
しかしこの兵士たち、肌の色は白く黒髪であり、金色の瞳を光らせながらエルトシャンたちに近づいてくる。しかしこの兵士たちには生気がまったく感じられないのだ。
「エルトシャン、こいつらは・・・」
「うん、『モルフ』だよね、やっぱり。レンスターでの事件でこいつらを操っていたネルガルは死んだはずなんだけどな・・・」
このモルフというのは以前アグストリアで起こった『ベルクローゼン事件』と、その数年後にレンスターで起こった『黒い牙事件」にて、首謀者である闇の魔道士ネルガルによって生み出された戦闘用兵士たちである。
このモルフの特徴こそ、今対峙している兵士たちの表情そのものだった。
しかしいずれもチュラたちの活躍によって、モルフたちは倒され、首謀者であるネルガルも死亡した。
だが、現実に再びモルフたちはエルトシャンたちに襲いかかったのである。
剣戟の音こそ激しかったものの、数々の戦いで経験を重ねたデュランやエルトシャンたちによって、モルフたちも数を減らしていく。
しかし、最後の1人がエイシャとエイミがいる馬車に向かっていった。デュランとエルトシャンは慌てて追いかけようとするが、やや離れてしまっているため間に合うかどうかは微妙だった。
「エイミ、エイシャ!!」デュランたちの叫び声で、エイミとエイシャは慌てて戦闘の体勢に入るが、モルフはすぐそこまで迫っていた。
ところがそのとき別の方向から魔法が飛んできた。
「ミィル!!」
大きな闇の渦がエイシャたちを襲いかかろうとしていたモルフを飲み込んで、やがて何事もなかったかのように消えていった。
「い、一体誰が・・・それにこの魔法は・・・?」デュランたちにとっては見たこともない、凄まじい闇の魔法の威力に驚いていた。
「大丈夫でしたか、皆さん」デュランたちが振り返ると、藍色に近い青色の服を着て、魔道書を持った緑髪の青年の男性と、エイシャと同年代だろうか紫色のローブを着た紫髪の女性が、エイシャたちが無事な様子を見てほっとした表情で立っていた。
「ああ、おかげで助かりました。私はユグドラル大陸からやってきたデュランと申します」デュランは緑髪の青年男性にお礼を述べると共に、エルトシャンたちともども自己紹介をした。
「私はレイと言います。エレブ各地を旅をしながら、闇魔法でも人のために役に立てないかと研究しています。で、こっちにいるのがソフィーヤで・・・その・・・私の妻です・・・」レイはソフィーヤを紹介すると、なぜか表情を赤くしてしまう。ソフィーヤと呼ばれた女性も照れながらもペコリと頭を下げた。
どうやら2人はデュランたちと同じく新婚らしい。
「それにしてもこんなところでモルフと出会うとはね。ネルガルは死んだはずだと思ってたんだけどなぁ・・・」とエルトシャンが言うとレイの表情が険しくなる。
「ネルガルのことを知っているのですか?」
「ええ、以前私たちが住んでいるユグドラル大陸にこのモルフたちと共に乗り込んできまして・・・僕たちが何とか撃退したのですが・・・」とデュランが話す。
「変ですね・・・モルフを作った主が死んだのであればそのモルフも消え去るはずなのに・・・」とレイも首をかしげる。
「おそらく・・・ネルガルの怨念がモルフたちを動かしているのではないかと・・・」とソフィーヤ。
「そういえばレンスターで戦ったとき、あいつの表情はすでに人ではなかったような気もしたんだけど・・・どことなく顔色も土気色だったし・・・」とエルトシャン。
「ネルガルの場合は闇魔法を極めたというより、闇に魅過ぎられてしまったものでしょうね。闇魔法を極めすぎたものは人が人でなくなると聞いたことがあります。ただ人知を超えた能力を得るかわりに大事なものを失う・・・と」レイは話す。
「う~~~~ん・・・」深刻な話にデュランたちの表情は険しい。
「でもここで話すよりか、エデッサも近いことですし、エデッサの街の宿屋で話しませんか。レイさんたちの旅の話も聞いてみたいです」とエイシャ。
「そうですね。ここにいるよりかはエデッサも目の前ですし、そちらに移動してから話しましょう。私もあなたたちの旅の目的が聞きたいですし。私もエデッサには用がありますので」とレイも賛同をする。
こうしてデュランたちは、レイとソフィーヤたちとともにエデッサの街に向かうことにした。
モルフの警戒はしたものの、敵に会うことはなく、その日の夕方エデッサの街に到着した。
第22話・完
第23話に続く・・・
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