るんめぐ♪物語

るんめぐ♪物語

初めて出会った人たち


予防注射を1回でもしたら、外出してもいいと聞いていた。
まず、るんを抱いて庭を歩くことから始めて、少しずつ外の空気にふれさせた。

その頃、私は週に1回、教会の一室を借りた在日外国人の支援センターへボランティアに行っていた。その日はボランティアの日ではなかったのだが、返すものがあったので、そこへるんを連れて行くことにした。

12月の比較的暖かい午後だった。自転車の前籠に乗せて、約20分ほどの距離をるんと走った。るんは、初めて見る世界に胸を躍らせていたのだろうか。前籠に乗せたキャリーバックの中から頭を出して、キョロキョロしていた。

センターにつくと、5人のシスターたちにるんは囲まれた。スペイン人、カナダ人、韓国人、そしてブラジル人と・・・。家族以外でるんが初めて会い、抱っこしてもらった人たちは、シスターたちだったのだ。

殺伐とした机の上が、ほんの一瞬、るんの遊び場になってしまった。いつもは、厳しい現実を前に難しい顔をして仕事をされているシスターたちの顔がほころんだ。
るんは、シスターたちの愛をいっぱいいただいた。


ヨーキー






暮れの帰省の時期が迫っていた。
用意していたちわわ用のキャリーバックにるんを入れて、電車に乗るという大きなイベントがあった。しかも、1歩家を出てから実家につくまでは、約6時間あった。それだけの間、この小さな体は耐えられるのだろうか・・・。不安があったが、その日のために、1週間前から特訓に入った。
まず、るんをキャリーバックに入れて放置するのを10分間から始めた。キャンキャン鳴くので本当に可哀想だった。でも、心を鬼にして、1週間で2時間ぐらいまで、時間を引き延ばしてやった。
るんは、随分諦めのいい仔のようだった。2,3日で鳴くのを止めて、大人しく袋詰めになってくれた。

そんな状態に、少し慣れた頃、一人暮らしの伯母のマンションにるんを連れて行ってみた。この日はかなり寒い日だった。るんにしっかり服を着せて、電車で約1時間の伯母のもとへ連れて行った。伯母は犬を飼っていたことがあったので、この私の暴挙に呆れ果てていた。「こんな小さい仔を今日みたいな寒い日に外に出したら、風邪をひいて、すぐ死ぬわよ」と言われて、私も随分、無茶なことをしたと反省した。

でも、一人暮らしで、ほとんど寝たきり状態の伯母は、久々に見る仔犬に目が細くなっていた。伯母のベットの上でるんは嬉しそうに飛び跳ねていた。
こちらは、おしっこをするんじゃあないかとハラハラしながら見守っていた。

伯母にはこどもがいなかった。伯父も数年前に他界して、ひとりでひっそりと暮らしていた。るんのことを電話で話していたので、伯母は、昔飼っていた犬の写真を用意してくれていた。長い黒髪が艶々していた伯母がスタンダードプードル2匹を腕に抱いて、微笑んでいる写真だった。

伯母は、5回流産をしていた。こどもが6ヶ月までお腹のなかで育たなかったそうだ。最後に流産した時は、あと少しでなんとか育つ状態だったという。男の子だった。流産したとき、「おぎゃ」という声が聞こえたと言っていた・・・。

流産をして、伯母が落ち込んでいたときに、伯父がラジオでプードルをもらえるという話を聞いて、問い合わせて迎えたそうだ。そのプードルにこどもができて、8匹のプードルを育てたことがあると言っていた。生まれた子を1匹だけ手元において、あとの仔は手放したそうだ。お金はとらないでみんなあげてしまったという。
伯母の一番幸せな時代がこの写真だったのだな・・・と思った。

そんな話を聞きながらるんは、私の腕の中で「クークー」といびきをかいて
眠っていた。

ふて寝




















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