新潟  柏崎・刈羽観光案内

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吉井の三枚岩 源義経


昔の話でありました。
カンカンと日が照りつける真夏の道を、源義経の一行が 吉井にたどりつきました。今朝から 一滴の水ものんでいない一行は はあはあと熱いいきをはきだし きちがい犬のようにきょろきょろと 水を求めて歩きました。体の中の水は もうとっくの昔 汗になって流れ出して 今はもうでる汗もありません。のどがひりひりとかわききって 息をするたびに のどにかきむしられるような痛みを 覚えました。

目がくらくらにくらんで 足がふらふらになった けらいの亀井清六が 足をふみはずして がけ下に落ちてしまいました。

「大丈夫か」

と 弁慶が大声で呼びましたが 返事がありません。しばらくして 又

「亀井 大丈夫か」

と 弁慶が がけ下にむかって声をかけると「水だッ 水だッ 水があるぞォ」

と 亀井の声がしました。水と聞いて一行は きちがいのように がけをすべりおりました。亀井のそばには コクン コクンと音をたてて 水がわきでていました。

「ああ 天下のかんろだ」

と 一口飲んで 義経が叫びました。

義経に続いて 一行はわれさきにと ゴクン ゴクンとこの水を飲みました。

「ああ 生き返ったようだ。まったく天下のかんろだ。」

と 口々にほめそやしました。

亀井清六がみつけたのだから 亀井の井戸と 名をつけよう」

と 大将の義経が言いました。

思わぬひまどりをした一行が 吉井の御中山(おなかやま)にさしかかった時は もう夕暮れでした。

ふいに一行の目の前が まっくらになりました。よく見ると 雲にとどくような大きな青鬼が一匹 一行の前に たちはだかっていて 両手をひろげて 通せんぼをしていました。

太いがんじょうな二本の角 まっかに血ばしったおおきな目玉 人を二三人ぐらい ぞうさなくぱくりと飲み込むような大きな口 口にはまっしろい岩のような歯が ぎっちりならんでいました。

そうです。まるで牛のおばけそっくりの青鬼でした。

一行はあまりの恐ろしさにタジタジしましたが 弁慶は

「ここにおいでの方は 源氏の大将義経さまだぞ。じゃまをしないで どいた どいた」

と 御中山がびりびり震えるような 大声でどなりました。

だが 青鬼は 畳のような大きな舌をペロペロなめずり よだれをタラりリタラリと流し

大きな口をかっと開いて 義経をガブリと一飲みにしようと おそいかかりました。

これを見て 弁慶は腰の刀を スラリと抜くが早いか

「エイッ」「エイッ」「エイッ」

と 青鬼めがけて 三太刀きりつけました。真っ赤な血柱が

「シュッ」「シュッ」「シュッ」

と 三すじ立ちあがり それが赤い霧になって 御中山を赤く染めました。

後に ここを赤坂と土地の人が言うようになりました。

赤い霧がおさまって見ますと 青鬼のかわりに 目の前に大きな岩が たちふさがっていました。

この大岩が青鬼にばけたのか あの青鬼が大岩になってしまったのか 大岩が三個所 太刀できられ四枚になっていました。しかし御中山の 細い峠道いっぱいにたちふさがっているので通り過ぎる事ができません。

「どうしようか」

と思っている時 突然ゴウーッと 大風が空から吹いてきました。と 切られた岩のひとつがヒューと 風にのって 空たかくまいあがりやがて矢のように早く 佐渡の方へ 飛んでいきました。

吹き飛んだ一枚の岩のあとには 人一人通れるだけの 平の道ができていました。

「これも八幡様のおかげだ」

一行は このふしぎな出来事に驚きの声をあげました。義経は 八幡様にお礼をもうしあげようと東の方を見ますと 山の滝が 月に光って 源氏の白旗のように輝いて見えました。

「おお 源氏の白旗のように見えるぞ。神様がわれわれを 見守っていられるしょうこだ。弁慶 あそこは何と申すところだ」

「あそこは 滝谷と申します。なるほど 源氏の白旗のようでございますな。」

義経一行は 白旗のようにかがやく滝にはげまされて 旅をつづけていきましたとさ。 





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