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そして現在…「メシまだなの~はやくして~」頭をバリバリ掻きながらドカっと椅子に腰掛け僕に食事をせかさせる…「はい少し待っていて下さい。あとはお皿によそるだけ…っと」今日のメニューはニラレバ炒めだ。御飯をよそり、一つ一つテーブルに並べていく。「すずさんも少しは手伝ってくれてもいいのに…」と呟くと、すずさんはムッとして、お箸でぼくを指しながらお行儀の悪いのも構わずいつもの台詞を言った。「何いってるのよあんた居候なんだから家事手伝いするのは当たり前でしょ?うだうだ言わない!」そう言い、僕が作った夕飯をガツガツと男のように食べる。テレビをつけると、ヒモ特集が放送されていた。ひも男の生活密着取材というタイトルで隠しカメラで撮った映像が流れる。同棲している女の人を送りだすと、食事の片付けをして、掃除をすると、おこずかいをもって外に出かける。出かけたら、一緒に暮らしている人とは違う人と会いデートをして、仕事から帰ってくるころに戻り料理をして、おこずかいをもらう為にごますり。そして、愛してるよとか囁いて愛しあって熱々以上は放送はできないので、司会者の映像に移りひもの生活について批判する。そのテレビを黙って僕達は見ていた。人事ではない生活風景にちょこっと、気まずくなった。そう思っていたのは僕だけだったかもしれない。なぜなら…「サイッテーよねー!この男!すきな女は一人にしろってのよ!養ってもらってる分際で!生意気よ!自分で稼げってのよ!女もおんなだけどさ!騙されていることに気づけってのー」と食事の後のお茶をグビっと一口飲むとドン!と怒りをあらわすようにテーブルに置く。「そ…そうだね…僕はそんなことしてないからね」念のためそういっておく。僕もヒモとかわらぬ生活をしているからだ。すずさんは僕の方を見てきょとんとした様子で「なにいってるのよ、あんた、ヒモじゃないでしょ?」「え!そ、それは…そうだけどぉ…」僕は戸惑った。僕もすずさんに養ってもらってる身だ。どうみても、どう考えてもヒモ生活だ。すずさんは決定的にヒモとは違うといった口調でいった。「だって!ヒモはあくまで彼女の彼氏でしょ?カイトは違うじゃないの。恋人じゃいし 「…………」僕は言葉につまった。すずさんは僕のことを弟のように思っていて、異性として僕を決して見ていないといっているようなものだ。僕は少々傷付いた…「まぁ確かにカイトはよく私に尽してくれているし…一言でいうなら奴隷みたいなものよねー」奴隷…僕はヒモすら成れない…奴隷なのか?ヒモ以下…頭にぐあんぐあん鐘をつかれたように奴隷という言葉が頭の中でこだまする。「どうしたのカイト?」「べ…べつに…なんでもないよ…」涙声でなんとか答えた。ああ…ヒモが羨ましい…僕もヒモになりいた。いや…ヒモというか恋人になりたい!すずさんは僕のことを異性として見ていない?すずさんの好みの男性はどんな人なのだろう。やっぱり大人の男が好みなのかな?僕は大人の男を目指そうとしても年の差があるし大人びた雰囲気を自分でも持ってないと思うし…でも、将来は持ちたい、絶対そうなりたい。それにしても、すずさんに彼氏がいるとかそう言う話は聞いたことがなかった。もしかして、僕に内緒で彼氏がいるとか…仕事場とか…それとも…すずさんは近頃酔っぱらって帰ってくることが多い。朝帰りとはいわないけれど、帰りが遅い。すずさんの仕事はグラフィックデザイナー。小さな会社らしいけど、残業も多いらしい。一日会社に泊まることもしばしばある。けれど、休みの前の日は酔っぱらって帰ってくるのだ。どこかで飲んでくる。そこで男と会ってるのかもしれない!そう思うといても立ってもいられなくなった。つづきまーす感想待ってます
2011年09月07日
すずにひもあの日は雨が激しく降っていた…僕、網田カイトは、一枚の上着を雨よけにして寒さに凍え、路をいく人々をただ見つめながらズボンがびしょ濡れになってもアスファルトの地面に座っていた…みんな僕を変な目で見る…当たり前だ…僕は浮浪者だ。しかもまだ16歳…普通なら、学校に通っている年頃だ…だけど僕には行く当てがなかった…とても孤独だった…(お腹空いたな…とてもさむい…このまま死んじゃうのかな……)はぁ…とため息を吐く。その息が勿体無くもあってついでに手も暖めてみる…それでも寒い…もっと、ため息みたいな息を吐き、手を温め続けた。寒さを感じるのは体だけじゃない……孤独だ…寂しい…そう思っていたその時、ただ見つめていただけの視界を遮られた。不思議そうにその人は僕に話し掛けてくれた。「君どうしたの?こんなところにうずくまって…寒いでしょ?」と、優しく声をかけてくれた…心配してくれている…腰を屈めて、僕を自分の傘の中にいれてくれた。肩までの短い癖っ気の髪が、かしげた時にさらりと斜に流れた。彼女は遠慮なく僕の顔を覗き込んできた。美人でちょっと幼さが残る、優しそうな面だち。声と同じく不思議そうに困ったような、迷子の子供を慰めるように優く微笑んで、「良かったら家においでよ…ね?」と優しい声でそういってくれた。「……っ」その言葉と声の暖かさで僕の頬から涙がつたって、言葉がつまる。急に心が暖められたせいか、涙がとまらなかった。冷たかったモノが溶かされ体から出た感じの涙…「変な事とかしないからね、安心してって、なんで…泣いてるのよ~私が泣かせてみたいじゃない!」彼女は今度は本当に困惑し驚くき、僕を冗談も交えながらなおさら慰める。うれしくて…って言葉に出したかったけど、声に出ない程嬉しかった…「さ、行きましょう」と手を差し伸べられた…その手も暖かかった…すべてにおいて僕はこの人、すずさんにあたためられた。つづきまーす。恋愛小説コメディです。続けて連載していけるようにがんばります。感想もらえるとうれしいです。新作ではありません。6年前にフォレストに載せたものをイラスト付きにしてまーす。
2011年09月06日
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