クレセントムーン1



紅葉が街並みに見え始める頃、俺(水瀬薙)は一人、街はずれの公園ベンチで一息ついていた。

特にすることもなく・・ただ茶を啜っているだけなのだが・・・

「・・・・寒いな。さっきの自販機なんで冷たいのしかねぇんだよ」

と文句を言いながらもちゃっかり買って飲んでいるので説得力がない

「さてと・・またしばらくぶらつくとするか」

茶を飲み終わり空き缶をゴミ箱に投げ入れてからゆっくりとベンチを立ち上がる

・・・正確にはゴミ箱前に落下した空き缶なのだが・・そして歩き始めようと背伸びをした時

「こらぁ~!ちゃんと捨てなきゃダメでしょ~」

と後ろからユルイ声で呼び止められてしまった。

何だ?この気の抜けるような声は・・と返る

そこにはさっき投げた空き缶を片手にこちらを指差している少女の姿があった。

少女は頬を少しばかり膨らませながら近づき空き缶を手渡してきた。

「はい!これ、君が投げたやつでしょ?ゴミのポイ捨てはお姉さん感心しないなぁ~」

何だ?こいつ。

それ以外の言葉が頭に浮かばない俺。

とりあえず怒っている?ようなので無言で空き缶を受け取りゴミ箱に捨てる。

・・・すると少女は

「よくできました♪もうポイ捨てなんかしたらダメだよ?それじゃね~♪」

頬笑みながらこちらに手を振り、走り去っていった。。。

なんだったのだろう?と思う反面、突っ込みどころもあったらしく小声で

「どうみても・・あの子・・俺より年下だろ」

独り言のため、もちろん誰からの返事もなく 木々の葉が風でざわめく音と砂場で遊ぶ子供達の声だけが聞こえた・・・

「あぁ、かったりぃ~」

そう言ってもう一度ベンチに腰掛けて雲一つない青空を見上げながら呟く。

「それにしても、かなり一方的だったなぁ。あの娘」

次会うことはないだろうと思いながらも嵐の様に現れて去っていった少女が少しばかり気になる様子の薙だった。


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