行こか戻ろかイギリス生活

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2004年5月 - カレッジA学期末発表会


マリベル先生のクラスが大学のイブニングコースの一部である為、私達のクラスも学期末発表会に参加することになった。場所は学内の劇場。と言っても、普段はバドミントン部が練習に使っていて、体育館兼用だ。

先生は、完全な初心者、初級、中上級の3レベルをもっているが、今回の演目は初中上級クラス全員でセビリア-ナス、次に初級クラスがサパテアート、中上級クラスのカラコレスと続いて、最後に中上級クラスのブレリアで締めくくることになった。私はカラコレスを習っているときクラスの半分ほどしか行けず振りを完全に覚えていなかったので、セビリア-ナスとブレリアだけ参加だ。

当日朝10時から、照明合わせと音響のリハーサルであったが、ロンドンの地下鉄と列車がテロ騒ぎか何かで一時止まっており、先生とギタリストが来られないらしい。先生なし、音楽なしで、皆オロオロする中、ちょっと年配の生徒が進み出てパルマを叩き出して、皆一応これに合わせて踊り出してみるが、ボロボロのフラフラ。

この発表会のデレクターと思しき男性が、あきれて首を振りながら、「ちょっと皆、セビリア-ナスの出だしのステップはこうだろ?」とやって見せた。見たところ、どうもバレエの先生のようで、ちょっと動きがバレエっぽいがセビリャ-ナスは踊れるらしい。私達は舞台の上で小声で「あんなバレエ野郎に教えてもらう筋合いはない。こんな奴にフラメンコは判らない」と変な意地をみせながら、悪態をつく。

このデレクターが、今度は私達が一列に並んで踊っていると、前で踊っている人がお客さんに完全に背を向けているので縦に2列に並んだらどうかと言い出した。これには、若い血の気の多いクラスメートの一人が「先生のいないところで勝手にフォーメーションは変えられない」と強く反発。収集がつかない状態になってきた。

照明アシスタントの「本番では頑張ってね」と呆れ声を背に、皆、危機感のかたまりでそのまま隣のジムに直行しすぐさま練習開始。

ギターも無いし、先生も来ないので手探りでやるしかなく、段々皆の機嫌が悪くなっていく。マリベル先生はコンパスにはかなり厳しいのでここのクラスの生徒は足は完璧だが、スタイルがいまいち。(私が分析する筋合いではないのだが)。そのうち、スペインで踊っていたことがありかなりカッコ良く踊れる生徒の一人が、コンパスだけはやたら正確なインド人の生徒を捕まえて「もっと腕を引き下げなさい」などと振り付け指導を始めた。私も、彼女に同感だった(もう少し腕を何とかしたらずっと良いのにと常々思っていた)ので黙って観ていると、若くて血の気の多い例のクラスメートが「それはマリベル先生のスタイルではない。勝手な事をするな。マリベル先生のやり方が気に入らないなら、このクラスに来る資格はない」と文句を言い出した。ひょええぇ、先生を尊敬する気持ちは判らないでもないが、「あなたは誰?」と思った。

険悪な雰囲気の中、一旦解散。また夕方5時に集まる事にした。皆口々に先生が今日現れることを願っている。先生はスペイン人な為、意外にお気楽なところがあるので、まさかとは思うが、もう来ないのではないかという不安を隠し切れない。

5時にみんな衣装を持って集まった。あ、先生が来た!「ごめんなさいね」を連発する。皆口々に今朝の出来事を報告。セビリャ-ナスのフォーメーションの件では、「あ、それもそうね。どうでもいいけど」とあっさり変更。あの大騒ぎはなんだったのか思い、可笑しかった。何回か通しで稽古した後、生徒全員ホッとして着替え始める。よそのスクールの発表会と違って、ここでは中上級クラスはほとんど本物のドレスを着ている。ちょっとびっくり。

本番前は少し緊張したが、気持ちよく踊れた。(気持ちよすぎて形がくずれたかも)。ブレリアスではギターが緊張していたのか、走ってしまい、普段よりかなり早いブレリアになってしまったが、皆何とかついていった。いいステージだったと思う。

イギリス人の観客は、もちろん皆盛り上がることもなくお行儀良く黙って眺めていた。でも最後ににいただいた拍手は大きかった。彼らはこのようにしてアプリシエーションを表現する。

私達の出番が終わると、今朝の照明アシスタントが走り寄ってきて、「今までで、あなた達のが一番良かった」と驚きを隠しもせず、私達を褒めちぎった。
私達は前半の最後で、舞台から控え室に戻るとき、バーに飲み物をとりに来ていたお客さんの何人かから「上手だったね」と声を掛けてもらって嬉しかった。いろいろあったが、楽しい一日だった。



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