がらくた小説館

アウトロー

友人は酒を飲むと妙に気が大きくなる癖がある。

今夜も友人の武勇伝に付き合わされることに……。

「俺は昔は相当な悪でな。毎日のように生傷が絶えなくて……」

から始まって

「暴走族は三つほど潰したよ」

と、話が段々飛躍していく。

いつもはそれを聞き流していれば良かったのだが、今日は少し違った。

たまたま長いカウンターの横に座っていた中年の男が話しに加わってきたのだ。

「兄ちゃんも結構やるんやな。まあ、実は俺も昔は結構ならした方でな」

途端に目の色を変えて

「おいちゃんもそうなんや。うん。見たら分かるよ。やっぱ昔取った杵づかってのは完全には消せへんからね。聞かせてや」

と聞き返す友人。

俺はひたすら二人の戯言を聞き流す。

「……で、俺はそこで右のクロスを打ったわけよ」

「まじで~おっちゃん。相手は何人いたの?」

「10人はいたわな。でも一番強いやつをワンパンでやってもたら終わりやがな」

話は尽きない…。いい加減勘弁して欲しかった俺だが、実はもう一人俺と同じ立場の男がいた。それはこの胡散臭いこのおっさんの連れらしき若者。

いかにも大人しそうで、たぶんこのおっさんの部下だろう。二人の話に頷くだけで、まだ一言も発していない。

よほど酒は強いのか、聞きながらもひたすら酒を飲んでいる。この量で素面なのが信じられないほどだ。

酒に弱い俺は、さすがにやりきれなくなり、嘘ぶいて

「実は俺は昔、本職の人と揉めたことがあるんですよ」

と二人の話に介入してみることにした。

以外にも二人は目を輝かせて耳を傾けてきた。完全に目がいっている。

「相手が本職でも俺は一歩も引かない性格でね」

とむちゃくちゃなことを言っても、ついてくるのだから仕方が無い。

「ナイフにびびるようじゃ男やないよ」

とか

「100人を相手にした」

とか

「地元じゃ俺を見たら警察官も道を開ける」

とか、でたらめを並べてやった。

そしていつしかそんな嘘話が面白いことに気づいた俺は、これでもかと言うほどに饒舌に作り話を繰り出していた。

そしていつしか閉店の時間をむかえ、俺達3人は追い出されるように店を出た。

缶コーヒーで酔いが醒めてきたころ、誰からともなく出た言葉があった。

「一番凄いのはあいつやな。あれだけ酒飲んでるのに、金も払わんで、とんずらやからな。上には上がいるもんや……」



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