2011年12月06日
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カテゴリ: 秋山真之伝記
 連合艦隊先任参謀「秋山真之」中佐の対バルチック艦隊用の戦策は、

 11月25日 に書いたように、

 『先頭を斜めに圧迫する如く敵の向首する方向に折れ、

 勉めて併航戦を開始し、爾後戦闘を持続』

 することでした。


 11月13日 14日 に書いたように、

 この陣形に持ち込むことができれば、連合艦隊は圧倒的に有利になるのです。

 (図のB艦隊が連合艦隊、A艦隊がバルチック艦隊)



 しかし、バルチック艦隊は、

 連合艦隊と雌雄を決するために日本海に乗り込んでくるのではなくて、

 取りあえずウラジオストックへの回航を望んでいることでしょう。


 旅順艦隊(ロシア太平洋艦隊)との海戦(黄海海戦)を経験した真之は、

 この事を当然予想していました。


 したがって、なまなかな方法では、

 この陣形に持ち込むことができないことも、判っていた筈です。


 そこで、真之は、その前段として、

 下図のような陣形に持ち込むことを考えたのでしょう。



 この場合、もし、連合艦隊が直進したとしたなら、

 バルチック艦隊も直進した筈です。


 なぜなら、反航戦になりますから、

 砲撃可能な時間は限られてしまうからです。


 バルチック艦隊は、ある程度の損害は生じるでしょうが、

 ひたすらウラジオストックへ針路を取ればよい事になります。


 距離Aが10,000mを超えたところで、

 連合艦隊が左に転舵した場合、

 この距離では、砲撃してもまず当たることはありません。


 バルチック艦隊は、

 連合艦隊が同航戦に持ち込もうとしていることを察知して、

 例えば、左に回頭してこれを避けるかもしれません。


 しかし、この距離Aが8,000mであったらどうでしょう。

 既に砲撃可能な距離になっています。


 連合艦隊は、回頭している間、

 速度は出ませんし、砲撃もできず、ほとんど無防備なのです。


 バルチック艦隊は、針路をそのままにして、

 回頭している連合艦隊の艦艇に砲火を集中する筈です。


 ただ、当時、この距離での艦砲射撃は当てることはできても、

 当たる確率は極めて低かったのです。


 つまり、連合艦隊は相当な打撃を被るでしょうが、

 反撃する余力を残したまま回頭を完了し、

 最初の図の陣形、つまり丁字戦法に持ち込むことができるのす。


 日本海海戦の完璧な勝利の要因として、あまりにも有名な「東郷ターン」を評して、

 当時連合艦隊参謀「飯田久恒(ヒサツネ)」少佐は、後に、

 『あの場合、ああいうこと(東郷ターン、または大回頭、または大角度の正面変換)をされたことは、

 東郷長官の直感というより外はないだろうと思います。』

 と、語っているのですが、少しの説得力があるはずもありません。


 真之の伝記の言葉を借りれば

 『将軍(真之のこと)の作戦についてのみいえば、

 それは決して投機的でなく、どこまでも科学的組織的であったのだ。』

 ということなのだと思うのです。


 話を元に戻すと、

 連合艦隊は、二番目の図のような陣形で、

 バルチック艦隊と相まみえれば良かったのですが、

 この重要な局面で、

 通信担当の飯田参謀が致命的なミスを犯してしまうのです。





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最終更新日  2011年12月07日 14時59分44秒
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