妖精の館

妖精の館

新たなる出会い、そして…

kaworu



「よっしゃ、未だはじまってないな!」
「それは良かったけど、なぜ僕まで来なければいけなかったんだい?」
中学総合体育大会。
その全国大会がなんと、この町で行われる、ということでスポーツ少年達はいきり立った。
たとえ、自分が参加できなくとも、高レベルの試合を身近で観戦できる良い機会だからだ。
因みに、今日行われているのは、競泳。
世界規模の大会も行える、という名目で立てられた箱物施設の中で行われている。
それに、優勝候補として友人(幼馴染)が出ると言うので観戦に来た面々の台詞である。
間に合った、とガッツポーズをしているのは、いかにもなスポーツ少年。
日に焼けた肌と、短く切った髪。
体躯も、さほど身長が大きい、といったわけではないのだが、しっかり鍛えられている。
それにさほど不満、と言った風もなく疑問を提示してるのは、一見スポーツとは縁がなさそうな少年である。
アルビノ、と言うのだろうか?
病的なほど白い肌に、灰色がかった銀髪、鮮血を思わせる赤い瞳。
さすがに中学生だけあって、天然の黒髪が多い中でやたら目立っている。
その容姿が秀麗といっていいものであるのも、目立つ要因の一つであろう。
神々しささえ感じさせるほど整った容姿の中、笑みの形につり上がった大き目の口が決してそのバランスを崩すことなく配置され、親密さを感じさせるものとしている。
中学生にしても、少々華奢な体躯も少年の美しさを損なうことになっていない。
ただ、スポーツとは更に縁がなさそうな様子を助長してはいる。
ただ、女性っぽさ、にはつながってはいない。
その二人プラス一人。
この少年もかなり整った容姿をしているのだが、銀髪の少年に比べると、どうしてもひけを取っていることはいなめない。
何よりも、かもし出す雰囲気のようなものが、違った。
不可思議な、衆目の関心、視線を無意識に集めてしまうような輝きのようなものがないのだ。
例えるならば、人気絶頂のアイドルと、落ち目のアイドルの差だろうか?
少々例えは悪いが…。
「まあ、せっかく弟が出るんだから、一緒に付き合ってくれてもいいでしょ」
 その落ち目のアイドル…、失礼、宇崎光一(うざき こういち)は、二人を取り成すように声をかける。
「まあ、僕の監視役だからね、彼は…」
そう言って、プールで軽くアップを始めている光一の双子の弟、星夜(せいや)を見やる。
監視、あまり穏やかでない単語である。
しかし、それを発した少年も、それを聞いた少年たちも当たり前のように聞き流している。
銀髪の少年が監視される対象であることを当然と思っているかのように…。
「だけど、結果が決まっている勝負をわざわざ見る義理はからね。
 少々失礼させてもらうよ。
 この会場から出なければ問題はないだろうからね」
 そう言い切ると、二人の返事も待たずに離れていく。
「化け物が…」
「はじめっ」
 複雑な空気を消すようにその場を離れた少年に向かって、ぼそりと吐き出した台詞に一応といった咎めの言葉を発する。
 光一も一応咎めてはいるが、自分自身も同じ考えであることが隠しきれていないのだ。
 観月はじめもそれが解ったのだろう、反省する様子は見えない。
 視線にも嫌悪の、そして畏怖の感情を含ませて去っていった方向を見つめている。
 競技が始まり、沸き始めた会場内で、その空間のみが静寂に満ちていた。

「人間は面白いね、本当に」
 背中に向けられた言葉と、視線に気づいているのか、柔らかな微笑を浮かべてつぶやく。
 まるで、己が人ではないかのように。
 会場の奥、売店や化粧室につながる通路だ。
 会場の声援が多少ボリュームを押さえられて伝わってくる。
 今回の大会では、オリンピック候補の筆頭にも数えられ、世界記録保持者でもある星夜が出場しているため、前回以前の大会よりも観客数もマスコミの数も桁違いである。
「人は繁栄し、豊かさを求める。
 その犠牲になったものには目も留めず。
 己自身の犠牲にすら気づかずに…。
 僕にはわからないよ」
 外見の年齢にはそぐわない、全てを見透かしたような憂いに満ちた瞳で、つぶやく。
 先ほどの笑みとも、台詞ともどこか対照的だ。
 けれど、どちらも本心なのだろう。
「ご、ごめんなさいっ!」
そんなことを考えていたせいだろうか?
 それとも、会場の音に気を取られていたためだろうか?
 曲がり角から近づいてくる足音に気づかず、正面衝突してしまう。
 運動神経も外見から想像されるように悪いわけではないのだが。
「いや、こっちこそすまなかったね。
 大丈夫かい?」
 かなり急いで走ってきたのだろう、息を切らせながら謝罪する少年に、気遣いを見せる。
 それが、当然に感じられるほど、少年が疲れきっていたからだ。
「だ、大丈夫です」
 買出しの帰りだったのだろうか?
 大量のペットボトルや、おにぎり等の軽食がたっぷり入っていたビニール袋からこぼれ出たものを拾いながら、どこか恥ずかしそうに、本当にすまなそうに返事を返す。
「取り合えず、立ったらどうだい?」
 そういって差し出された手を反射的に取り、初めて顔を上げて相手の顔を見る。
 その表情にかすかな驚嘆と、賞賛が浮かぶ。
 同時に、先ほどの恥ずかしさとは違った、恥じらいのようなものが浮かぶ。
「そんなに持つのは大変だろう。お詫びに一緒に持っていくよ」
「えっ、そんなの悪いよ。あ、あの…」
「僕はカヲル。渚カヲル。君は?」
「ぼ、僕は碇シンジ。あの、…渚君」
「カヲルでいいよ。碇君」
「僕も、あの、シンジでいいよ」
 照れくささと、恥ずかしさのない交ぜになった表情でシンジは言葉をつむぐ。
 それに対して、銀髪の少年、カヲルは余裕のこもった微笑である。
「走ってたのは僕だから。お詫びなんて…」
「そんなこと、言わないでくれないかい?
 そんな状態の相手を放って置けるわけがないだろう?
 それでは、走らなくてもまた誰かにぶつかってしまうよ」
 カヲルの言葉はもっともだった。
 シンジはカヲルと同じくらいの年齢に見えたが、カヲルと同じように決して運動向きと言える体型をしていなかった。
 女性の母性本能をくすぐりそうな可愛らしい顔立ちに、大きな瞳が印象的だ。
 ひどく純粋そうな本人の内面を表しているかのような、不器用そうな瞳である。
 詩人の中原中也を思い出させるような…。
ぶつかった時の感覚からすれば、運動など学校の授業以外ではしていないであろうことが推測された。
 それが、ペットボトルなどのそれでなくとも重たい水物を大量に両手に抱えているのだ。
 どう考えても、無理がある。
 先ほどまで、それをもって走っていたことさえ不思議だ。
 どちらかというと、振り回されていたのだろうか?
 大荷物を持った、高齢者に、つい手を貸してしまうのと同じ心境に見舞われてしまう光景だ。
「シンジ君が気にすることはないよ。僕が手伝いたいだけなんだから」
「でも…」
「君に好意を感じたから、って事ではダメかい?」
「好意?」
「好きってことさ」
 言葉とともに、極上の笑顔。
カヲルのその言葉に、新鮮な驚きが表情に表れる。
 まるで、初めて聴いた言葉であるように。
 同時に、茹蛸のように真っ赤になっていたが…。
「で、でも会ったばかりなのに…」
 そういって、戸惑いをあらわにするシンジに、カヲルも新鮮な驚きを覚えていた。
 カヲルの顔を見たときの反応もそうだった。
 自分の容姿が人に驚きや賞賛の念を与えるものであることは自覚していた。
 しかし、カヲルが今まで対峙した人間のほとんどは、その感情にプラスして、嫌悪、嫉妬といった負の感情を纏わり付かせていたものであった。
 光一や、はじめのように。
 カヲルのことを知らないことから来たものだろうか?
 シンジからはそれがまったく感じられなかった。
 それは、とても新鮮で、人間といった枠を超えて『碇シンジ』という個人に興味を抱かせるには十分であった。
 そして興味を超えた、好意の感情すら彼の心に与えていた。
(とても繊細そうで、不器用そうな人間だね。人の世界で生きるのはきっと辛いだろうにね)
「人の好意は素直に受け取るべきだよ。そうしてただ、感謝を述べればいい。
 それが最大の報酬だからね」
 そう言って優しく、包み込むような笑顔を見せる。
 そして少々強引に、シンジに言い聞かせると、先に荷物を持ってしまう。
 シンジがそれを更に奪い返せるような性格ではなさそうである事を見越しての行動だ。
「あの、ありがとう」
 少しうつむき加減に、礼を口にする。
 やはり、照れた表情を浮かべて。
「それで良いんだよ、シンジ君」
 相手の行動を肯定するような笑みで、シンジの礼に応える。
 そうしてシンジが残りの荷物を持って追い着くのをまって、歩き始める。
「何処に行けばいいんだい?」
「あの、B側の3の出口の近く」
「一人ではないんだろう?他の人たちはどうしたんだい?」
 もし、連れと一緒に買出しに行っていたら知り合え無かっただろうから、この方が良かった、と考えながら言葉を紡ぐ。
「あの、ミサトさんと、アスカ、あの、保護者の人と、ミサトさんが僕と一緒に保護者をしてる子なんだけど。席を取ってて…」
「それは一人で大丈夫なんじゃないかい?」
「あ、あの、僕が一人だけじゃんけんに負けたから。男だし」
「人が良いんだね、シンジ君は」
「僕なんて…。それよりカヲル君の方が、いい人だよ」
「当たり前のことをしているだけだよ。
 それに、君だから手伝ってるんだよ…」
 囁きかけるような不思議な声音。
 再びシンジが真っ赤になる。
「あの、カヲル君て、すっごく綺麗だよね。
 声も、顔も…。いい人だし。
 女の子にももてるんじゃない?」
 自分で自分の前にでっかい墓穴を掘ってることに気づかず、必死にシンジは話題を変えようとする。
(変だ、僕。カヲル君は初めて会ったばかりの人なのに…。
 何だか安心する。
 綺麗で、何かドキドキするけど。
 今まで他の人といてこんなにすぐ、普通に打ち解けられたことなんて無いのに)
(好き、って言われたから?でも、それだけじゃない気がする。
 僕も好きなのかな?カヲル君のこと…。嫌いではないけど)
「どうかな?
 そういったことは自分ではなかなか気づけないものだからね」
 気になる?
 シンジの真っ直ぐな問いに微妙にはぐらかした答えを変えす。
 逆にからかうような意図さえにじませて。

「バカシンジ!!おっそーい!!
 試合始まっちゃじゃない!」
「ごめん、アスカ」
「シンジ君が誤ることでは無いと思うよ」
「あんた、何者よ…、って、渚カヲル!!」
「アスカ知ってるの?」
「あんたバカァ?わが町の有名人じゃない。
 宇崎星夜と並ぶ天才よ、わが町の誇る」
「えっ、カヲル君も競泳やるの!」
「あんた、本当に自分のことしか興味ないのね!」
 惣流アスカ。
 赤毛に、碧眼。
 抜群のスタイルを誇る美少女だ。
 勝気で強気な表情と、態度、言動がひどく印象的だ。
 プラスオーバーアクション気味なところが…。
 人によって、好きか嫌いかがかなり分かれそうだ。
 シンジにあきれたような、どこかホッとしたような感情の言葉を放っている。
「そんなこと無いと思うけど…」
「渚カヲルも宇崎星夜の名前も知らない時点で回りに興味なさすぎ!
 渚カヲルは世界でも評価されている天才ヴァイウォリニストよ!
 顔も、宇崎星夜共々TV映えするから、引っ張りだこでしょっちゅう出てるじゃないのよ!」
「それは、ほめ言葉かな?」
「あっ…」
 やっと本人の前であることを思い出したのか、いきなり静かになる。
「ちょっと、心配で勢いつき過ぎたかしら?」
 愛想笑いを浮かべてカヲルに対する。
「で、何でシンちゃんと一緒に?」
 肩より少し長い、ストレートの髪の美女が、袋からビールを取り出しつつ問いかける。
 葛城ミサト。
 元も良いのだろうが、ばっちり化粧を施された顔が、少年たちには大人を感じさせるだろう。
 それに似合わず、さばさばとした印象のある快活そうな女性だ。
「大荷物を持って、ふらふらと彼が歩いていたので、つい手を貸してしまったんですよ。
 ね、シンジ君」
「う、うん」
「めっずらし~。シンちゃんがもう打ち解けてるのね♪
 シンちゃんなんか試合興味なさそうだし、彼と一緒に回ってきたら?」
「ちょっと、ミサト!?」
「せっかく、シンちゃんにおっとこまえのお友達ができそうなんだから、暖かく見守ってあげましょ♪」
「そういう問題じゃないでしょうが!」
「くぅ~、やっぱりこれが一番ね」
 ビールをぐいっと飲み干してから。
「良いじゃないの。せっかく席取れたんだから、みんなしっかり楽しみましょ」
「お言葉に甘えて、一緒に行くかい?シンジ君?」
「え、うん」
「シンジも何肯いてるのよ!初対面の相手でしょうが」
「まあ、まあ、アスカ」
「じゃ、行こうか、シンジ君」
「うん、アスカごめん」
「勝手にしたらっ」
 しり上がりの不機嫌な口調で、返事が返る。
 それが終わらないうちに、カヲルはシンジをその席から連れ出していた。
「まさか、こんなところにあんな有名人がいるとはねぇ」
「ミサトっ!」
「シンちゃんは人と関わらなすぎ。それを直すいい機会だと思わない?
 結構強引そうな子だったし、内向的なシンジ君のリハビリにはちょうど良いでしょ。
 人から与えられた以外の環境を知れば少し回り見てくれるかもよん」
 にやにや笑いながら、アスカに応える。
「な、何いってんのよ」
「顔があかいわよん、アスカ。
 でも、噂本当だったのかもねぇ。
 宇崎星夜と渚カヲルが知り合いだって話」
「すっごい、組み合わせね。
 色んな意味で」
 地元で行われる、星夜の試合を見に来ている(しかもかなり並んで席をゲットした)自分のミーハーなファンぶりは棚に上げて、アスカはポツリとつぶやくのだった。


「ミサトといったけ、保護者の女性。
 彼女が言うにはこの試合興味ないみたいだけど、何で来たんだい?」
「アスカに無理やり誘われて」
「さっきの感じでかい?」
「うっ」
 恥ずかしそうなシンジの様子に、微笑をもらす。
「それに、泳げないから」
「カナヅチなのかい?」
「うん、まあ」
 更に恥ずかしそうな様子のシンジに、提案をする。
「じゃあ、近くで見てみるかい?
 僕の席はとてもプールに近いからね」
「えっ、どうして?」
「星夜、この試合ではほとんど招待選手に近い人間の身内だからね。
 それに、あの迫力を見れば何らかの答えが出るかも知れない」
 優しく微笑みかけると、シンジの腕を取る。
「一緒に行こう」
「…うん」
 微笑に見とれて、熱に浮かされたように、ほとんど無意識に答えを返すシンジであった。


「そいつは何者だっ」
「碇シンジ君。さっき知り合ったんだよ」
「あ、あの、迷惑だったら…」
「そんなことは無いから、シンジ君は気にしなくて良いよ」
「騒ぎは起こすんじゃねーぞ」
 はじめの静かな脅しに、対象ではないシンジまでもが少し怯えるが、カヲルは一向に気にした様子も無く、席に着く。
(化け物が人に興味をもつだとっ!そんなことがありえるわけねぇ。
 何たくらんでやがる?)
 ぎすぎすした空気の中、もちろん試合を観戦する余裕など誰にも無く。
 いや、カヲルはあまり空気を気にしてはいないようだったが。
 シンジと光一がおろおろして、何とか和ませようと世間話に興じようとしてみるが、接点のほとんど無く、また、一方は他人に打ち解けにくいシンジでは話が弾むはずも無く。
 やはり、静かで、所在の無い時間が過ぎていくのであった…。
 何かが終わり、そして始まる。
 そんな一瞬の象徴であるかのように。
 二人の出会いが変えていく運命を暗示するかのように。


神理の言い訳

渚カヲル誕生日一ヶ月前、ということで、プロローグ部分のみ、アップ。
予想以上に長くなってしまいました(汗)
これでも、最初より短くしたのです。
おかげで、カヲル君、強引度アップ(笑)
でも、今のところ(暴走状態をセーブしたおかげで)やおいっぽくは無いと思います。
苦手な方でも、まだ大丈夫じゃないでしょうか?
多分、この後多少加筆訂正するでしょう(2003年8月3日現在)
オリジナルキャラの名前は、石田さんが演じたキャラより借りてきています。
遊んでますね(爆)
元ネタ知っている方に一言。
名前のみ拝借であり、性格等は神理のまったくの創作です。
○○はこんな性格じゃない、という非難は受け付けませんのであしからず(卑怯者(笑)
エヴァのキャラはできるだけ本編に似せようと努力しております…。
彼らに関しては「似てないっ」の非難受け付けます(笑)

光一の名前は「とんでぶーりん」の水野光一君より借りています。
キンキの堂本光一君とは一切関係ございません。
一応、注意書き。何か微妙に誤解生みそうな表現があるので(苦笑)
一ファンとして誤解受けたら、いやなのですね…。
名前、変えればよかったんだけど、同一性に気づくのが遅かった…。

初パロ、初やおいということで、切実に感想を待ち望んでおります(笑)
心優しき方は、掲示板、私書箱までお願いいたします。
(本編は9月13日に全編アップ予定。ただ、予定より長くなっているので微妙。また、手間省くために数日前からアップ始めるかも(笑)

本ホームページに使用した「新世紀エヴァンゲリオン」の画像は(株)ガイナックスのガイドラインに沿って掲載しています。配布や再掲載は禁止されています。


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: