[救急外来3]



[救急外来3] 

縫うのに一番時間が掛かった。
縫っている内に麻酔が切れ始め、チクチク痛み始めた。
思わず顔をしかめると看護士さんに、
「我慢して下さい。切った時に比べたら痛くないでしょ」と言われた。
「いえ、切った時は痛くなかったんです」と言い返してしまった。
「あっそうなの」と言って、看護士は立ち去った。
言い返した事に反省しつつも、(だって本当だもん)と思う。
医師はたんたんと喋った。
「なんで切ったんですか?」「結構切りましたね」
「筋肉まで行ってなくて良かった」「もうしないで下さいね」
「失敗しました」と私は言ってしまった。これはもちろん、
「深く切りすぎた」と言う意味なのだが医師には「自殺に失敗した」
と言う意味で取られたのだろう、かなりムッとされた。
生きていたくても、死ななければいけない人を見て来て事だろう。
ムッとされて当然だ。深く深く自分を恥じる・・・
暫くして・・・「終わりましたよ。消毒に明日来れますか」の声。
ココは大きな病院で、昼間は大変に混む。私は考えてしまった。
「消毒に来て貰った方が良いんだけど・・・
近所で遣って貰える所あればそこでも良いんだけど?」
「はい!あります!」即答!
遠いし混むこの病院に予約無しでくるのは避けたかった。
「じゃ近所の病院で必ずやって貰ってくださいね」
「はい。ありがとうございました!」
来た時と違い私はシャンとして処置室を出た。
恥かしかったし、もう大丈夫!と思って欲しかったから。
待合室で会計を待った。もう神経は冴え切っていたので、
自分の姿がみっともなくて嫌だった。想像以上に血で汚れていた。
足も手も顔もタンクトップも。ジーンズも。
見えないように身を丸めて会計を待った。
暫くして会計から呼ばれた。金額は1万9千円。
「自傷行為だと保険が利かないので・・・」と言う事だった。
私は高く感じた。お金が無かったから。輸血しなくてラッキーだ。
第二の後悔。
お金も無いのに・・・なんて馬鹿な事をしたんだ。私は・・・




[帰宅]


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