1
maya
秋風に
我に返りて
メモを取り
おりくさん
「秋風や 急かるるものの 謎めきて」
2
maya
台風の
雨戸打つ音
どしゃぴしゃと
おりくさん
「台風の 子を奪ふごと 雨戸打つ」
3
maya
湯の音と
朝日まばゆい
目覚めかな
山の端に
雲たなびきて
湯気の中
おりくさん
「新涼の 気を吐く樹林 露天風呂」
4
maya
山粧い
静寂破る
鯉のむれ
おりくさん
「静寂を 破る緋鯉や 秋深し」
「刻々と 山彩りて 鯉太る」
5
maya
強風に
スカート舞う道
曼珠沙華
おりくさん
「曼珠沙華 より濃き紅を 秘めて観る」
6
maya
人の手の
ありがたさ知る
秋の暮れ
おりくさん
「雛のごと 道に迷ひし 秋の暮 後押しくれし 人の背を見る」
7
maya
名前ゆえ
紫式部
誇らしげ
おりくさん
「音信の 粒を数える 実むらさき」
8
maya
闇迫る
窓辺の空気
秋色に
おりくさん
「消えてまた 生まるる寂や 秋の夜」
「病に勝つ 開き直りや 秋の夜」
9
maya
露草や
幼き頃の
おままごと
おりくさん
「露草や 恥ずかしがり屋で 初心なひと」
10
maya
曼珠沙華
さだめ知らずに
赤く咲き
おりくさん
「曼珠沙華 口には出せぬ 火の心」
11
maya
秋の海
夢見るごとく
光るなり
おりくさん
「秋汐に 夢の足音 寄する波」
12
maya
萩の花
ゆれて迎える
墓参り
おりくさん
「萩を背に 逢ひ度き母の 笑み給ふ」
13
maya
鈴虫の
鳴く声ききて
眠る夜
おりくさん
「泡沫(うたかた)の 浮世に沈み 虫の声」
14
maya
栗のいが
手に刺さるとも
かき集め
おりくさん
「買ひ求む 福々とせし 丹波栗」
15
maya
聡明に
紫式部
咲き誇り
おりくさん
「深みゆく 絆とも見ゆ 実むらさき」
16
maya
台風の
雨に聞くなり
月祭り
おりくさん
「文面は 異郷の友の 月見かな」
17
maya
台風の
雨に聞くなり
月祭り
おりくさん
「名月に 見え隠れする 珠玉あり」
18
maya
秋の風
カレンダーめくる
手に涼し
おりくさん
「若き日を 引き連れて来し 秋の風」
19
maya
赤まんま
珊瑚色して
草の海
おりくさん
「三十年棲み いつしか庭の 赤まんま」
20
maya
柿剥けば
わらぶき屋根の
里思い
おりくさん
「シンボルの 我が渋柿を 守り棲みぬ」
21
maya
くるみケーキ
かぐわしき香や
家中に
おりくさん
「胡桃入れ 小さな幸の ケーキ焼く」
22
maya
薄野に
風よ吹け吹け
銀の波
おりくさん
「薄野は 祖母のふところ 亦逢ひぬ」
23
maya
秋朝や
鏡に向かい
髪とかし
おりくさん
手櫛する 二の腕白し 実むらさき
24
maya
はじらいの
うすももいろの
花野かな
おりくさん
「うす紅の 薔薇はマリアの 息づかひ」
25
maya
蒼い空
ただ一面の
秋の色
おりくさん
「秋天や吾ら地球に立ちて生く」
26
maya
紫苑咲く
道で会う人
微笑みて
おりくさん
「 母強し 紫苑群がる 身過ぎさへ」
27
maya
水玉は
薔薇のつぶやき
朝風に
おりくさん
「バラに附く 露は王女の 真珠とも
28
maya
急ぎ足
思いつのりて
秋の風
おりくさん
「羅(うすもの)を ひるがせをんな 行き過ぎぬ」
29
maya
秋晴れに
天地の怒り
ニュース聞き
おりくさん
「台風禍まだきに地揺れニュース流る」
30
maya
オレンジの
地平線超え
宵闇へ
おりくさん
「黄落を前に夕陽の大いなる」
31
maya
今生は
いかにありとも
空澄みて
おりくさん
「今生を噛み締め見上ぐ秋の空」
32
maya
秋めきて
創作展に
集う人
文化祭
生命の賛歌
あふれ出て
おりくさん
「高齢化無縁の華や文化祭」
33
maya
秋雨や
魔女の箒も
役立たず
おりくさん
「秋雨や家事はさて置き手に鉛筆」
34
maya
柿むこか
パソコンしよか
困ちゃうな
おりくさん
「柿むこか パソコン三昧 続けよか」