うたのおけいこ 短歌の領分

うたのおけいこ 短歌の領分

2024年06月09日
XML
カテゴリ: 現代短歌の曠野
梅内美華子(うめない・みかこ)


ティーバッグのもめんの糸を引き上げてこそばゆくなるゆうぐれの耳


乳房当たらぬように抜け来し雑踏の振り返りたれば秋のまたたき


みつばちが君の肉体を飛ぶような半音階を上がるくちづけ


わが首に咬みつくように哭く君をおどろきながら幹になりゆく


重ねたる体の間に生るる音 象が啼いたと君がつぶやく


夜半の道君ひとりする物思い知らざれば照るわれは 若月 みかづき


截るごとにキャベツ泣くゆえ太るときもいかに泣きしと思う夕ぐれ


スピンクスのわれが投げにし言葉の輪からんと君の首に落ちたり



歌集『若月祭』(平成11年・1999)



女性ならではの鋭敏な身体感覚が横溢している、現代短歌の名作歌集。
男の身体でも詠んで詠めないことはないかもしれないが、このように優美な感じにはならないだろう。

截る:「きる」と読むのだろう。截断(せつだん)する。

話は変わるが、伝統的で優雅ではあるが書くのも読むのも難しい旧(歴史的)仮名遣い(例・ゆふぐれ)を用いるか、分かりやすい新(現行)仮名遣い(例・ゆうぐれ)を選ぶかという、短歌実作者であれば必ず直面する、それなりに重大な岐路・選択・決断がある。そう遠くない昔(俵万智以前)は、一流の歌人は旧仮名というイメージも、確かにあった。
個人的には、梅内さんが(格調高い文語体でありつつ)新仮名遣いを採っているのを見て、これが決め手になり、私も途中で旧仮名から新仮名に変更した覚えがある。今となってみると、新仮名にして良かったと思っている。読者に媚びるわけではないが、読んで分かりやすいということも大事だと思う。梅内さんは、いわば一種の師範であり、恩人である。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2024年06月11日 06時21分56秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

くまんパパ

くまんパパ

コメント新着

くまんパパ @ 紅葉シーズンになりました やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
やすじ2004 @ Re:ジョージ・ハリスン  美しき人生(11/23) こんにちは!! 紅葉狩りに行きましたか?…
くまんパパ @ 私も危機感を持っています akiさん、ありがとうございます(^^) 以前…
aki@ この様な書き込み大変失礼致します 日本も当事国となる台湾有事を前に国民の…
くまんパパ @ 笑顔は絶やさないでいたいですね(^^) やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
くまんパパ @ 体に気を付けて、のんびり行きたいですね やすじ2004さん、いつもありがとうござい…
やすじ2004 @ Re:松任谷由実  ハロー、マイ・フレンド(08/16) お元気ですか 今日も湿度が高い一日でした…
くまんパパ @ 男と女の契り 七詩さん、いつもありがとうございます。 …

キーワードサーチ

▼キーワード検索

お気に入りブログ

徒弟制度の利点を活… New! しぐれ茶屋おりくさん

2024秋旅 雨かぁ~つ… New! ナイト1960さん

相方が付き合ってく… New! masatosdjさん

散歩で見つけたお花… 蘭ちゃん1026さん

家族 ミセスkarimeroさん

岬麻呂旅便り334・南… けん家持さん

「恋心」「人魚姫」… 47弦の詩人さん

システムエンジニア… モモンガ2006さん
こだわる男の「モノ… こだわる男の「モノ&ファッション」さん
マリリンワールド まりりん824さん

サイド自由欄

*このブログサイトは、ご覧の端末によっては管理者の意図するフォント(書体)やレイアウトが正確に表示されない場合があります。ご了承下さい。
なお、フォント表示の設定は、(ウィンドウズの場合)左下のスタート・アイコンから入って、設定(歯車)→個人用設定→フォント入力の画面で出来ます。


新宿会計士の政治経済評論
アトリエぺんちゃん
山下達郎 サンデー・ソングブック
松村邦洋 DJ日本史
東洋経済オンライン
世界は数字で出来ている
お料理速報
パンドラの憂鬱
Forbes スピリチュアルババア
goo 教えて!goo

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: