其の三


ことはすぐ分かったよ。
声を掛けると君は不機嫌そうにこっちを見たのを覚えてる。
話をしたら君の冷たそうな顔がほころんでいったね。
僕はそれが嬉しくていろんな話をしたんだ。
僕は君の部屋から見える海と夜景が好きだった。
雨の日には二人で時間を忘れて映画を何本も見たね。
雨の日が好きになったのはあの日からだよ。
君は僕がしている指輪を欲しがったね。
これはね、この町でしか売ってないんだ。
これをしてると幸せになれるんだよ。
二人で同じものをしたら二倍幸せになれるかな。
そんなことを思いながら君にも買ったんだ。
君がこの町を出ると言ったとき、僕には理由が分からなかった。
僕は頭で理解できるほど、大人なんかじゃない。
君が選ぶその道の先に今より大切な何があるんだろう。
大人になると大切と思う順序が変わっていくのかな。
最後に二人で会うのが怖くて友達を連れて行った僕は
子どもじみていたのかもしれないね。
でも、君の顔をまっすぐにに見ることができなかったんだ。
あの時、何を話せばいいのか僕には分からなかったよ。
たわいもない話をし続ける僕を見る君の顔に、
笑顔はもうなかったことに気付いてた。
僕はさよならなんて慣れてないよ。
君がこの町を出るとき、僕に泣きながら電話してきたね。
僕も大人になったら君の選択の意味が分かるようになるのかな。
僕はこの町で生きていくよ。
ねぇ、君はいまでもあの指輪をしてるの。




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