助産婦メモルの日常~Happy Birthな毎日~

ゆりかごの歌



ゆりかごの歌

小さな赤ちゃんが大好きなママのお腹の中で亡くなった。

静かなお産が終わったその夜、ママはパパと2人の時間を過ごしていた。

「・・・眠れない・・・。」

そう言うママに

「今日はゆっくり休む?」

と、助産婦は眠剤を勧めたが、ママは断った。

「私が眠らないと、赤ちゃんも心配でゆっくり眠れないよね・・・。」

「しゃーないな。赤ちゃんのために覚えた歌やけど・・・。」

「お前のために歌ったるわ。」

ゆりかごの 歌を
 カナリヤが うたうよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

ゆりかごの 上に
 びわの実が ゆれるよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

ゆりかごの つなを
 木ねずみが ゆするよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

ゆりかごの ゆめに
 黄色い月が かかるよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

病室に静かに、そして心地よくパパの歌声が響いた。

ママは静かに眠りについた。

そしてパパは亡くなった赤ちゃんとの面会にナースステーションを訪れた。

ママの前では決して涙を流さなかったパパは

小さな赤ちゃんを腕に抱きながら、

初めて、涙をこぼした。

そしてまた歌い始めた。

今度は亡くなった赤ちゃんのために・・・。

ゆりかごの 歌を
 カナリヤが うたうよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

ゆりかごの 上に
 びわの実が ゆれるよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

ゆりかごの つなを
 木ねずみが ゆするよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

ゆりかごの ゆめに
 黄色い月が かかるよ
ねんねこ ねんねこ
 ねんねこよ

次第にパパの歌は涙で声にならなくなっていたが、

パパの腕に抱かれた赤ちゃんは

まるで本当に眠っているかのように、

きれいで穏やかな顔をしていた。





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