道聞かれ顔

道聞かれ顔

January 21, 2006
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新橋で思い出したことがある。
新橋の裏通り。
大きくない、雑居ビルの1フロア。

ナゾの発明家集団とであったときのことを。



そのとき私は、人生のどん底から、少し這い上がるきっかけを見つけたような時期だった。

自分を嫌い、否定し、
自分を嘆き、後悔し、
泣いても泣いても涙が止まらない。

そんな時期を経て、ようやく動き出したときだったのだ。


自分でなくても全くかまわない。
経験も、特別な才能も、必要ない。
そんな仕事を選んで、
仕事仲間には、自分の話もせず、
どこに住み、
どんな暮らしをして、
どんな人たちと過ごしているのか、話もせず、


何も考えずに、自分の肉体を追い込み、
どこまでいけるのか、ただ、ためし、

今までの自分と、切り離された一人の人間として自分を見つめてみよう。


そんな時期だった。


その仕事で、とある新橋の会社を訪れたのだった。



事務的な用事を済ませば、あとは訪問先の人と接点を持つ必要もない、
そんな用件だったのに。


その会社で私はいつのまにか、
元気なときの本領を発揮して、
夢中になって話しを聞いていた。

小さなその会社には、人が一人だったか、二人ほどはいたのか。
それすら記憶にないけれど、

数々の発明品についての説明を、
分厚いファイルを前に聞き入り、
発明品の一つの浄水器の水で入れてもらったコーヒーを、
心からおいしいと、味わっていた。


怪しげに壁にかかっている、毛筆で書いた格言の額。

どうやらそれが、発明家の親玉、
その会社のドンの手によるものらしかった。



後から人に話せば、皆、人は相当眉唾だと言うけれど、
そのとき私は大真面目で、
その浄水器だって買ってもいいと本気で思い、
そのとき住んでいたところに不似合いに大きかった、というだけが、
断念した理由だった。

どんなに本気だったかと言えば、
アトピーで苦しむ子がいる友人に、パンフレットを送ったり、
その水を、改めて、ボトルにもらいに行って、
水にはうるさい、夫や息子に飲ませてみたり、

挙句の果てには、大金持ちの友人にも話したら、
その人は本気でその会社を買収したいとまで言ったのだから。



結局、私は、浄水器を買わなかった。

発明家も別にしつこく営業もしなかった。


それからしばらくして、私はその仕事を辞めた。

今にして思うと、
私はあの時、ようやく、外の世界に再び目を向け始めていたのだ。

それが、あの発明家との意気投合の理由だったのだ。



地震や、大雪や、そんな天変地異が起こるたびに、
あの会社は今、まだ、あそこにいるのかな。
と、思い出す。

発明家たちは、確実に地震を予知できて、
そのときには、生き延びることのできる土地に逃げるのだと、言っていたから。

そのための土地ももう、用意してあると話していたのだから。

まだいるかな。
そしたら、まだ、東京も大丈夫。


大雪の日に、あの日を、あの人たちを、思う。









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Last updated  January 21, 2006 10:12:26 PM
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お猿@ やっちまったなぁ! http://feti.findeath.net/avv5-p5/ ちょ…
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