ワンコの社会化期とワクチン接種について



私は、ペットショップで犬や猫を狭いガラスケースに陳列して販売するという事に対して賛成できない。
色々とこの「生体展示販売」について思う事はあるのだが
社会化期に絞っただけでも、犬の習性を無視した行為であると思う。

先進国ではこの社会化期を日本よりももっと重要に考え、
その他の問題とも合わせて、早期に子犬を母犬から離し新しい飼い主の元へ行かせる事がないよう配慮がされている。
狭いケースの中で展示販売されている事も少ないそうだ。
日本はまだ遅れていると言えるだろう。

社会化期が何故大切か。

この時期に様々な経験をさせる事の重要性は、
この限られた生後10数週間の経験によってその後の犬の生涯が大きく左右されるというところにある。

1950年台、犬の社会化期について調べた研究者達がいた。
子犬を2つのグループに分け、14週齢まで一切人間との関わりを持たせなかったグループと、十分に触れ合いを持たせたグループに分け、どちらもその後数ヶ月、外界との接触を遮断した。

外界との接触を遮断された数ヶ月後、
人間との関わりが一切なかったグループは、その後どんなに可愛がっても人間に慣れる事はなかった。

人間との関わりを持ったグループは、
やや慣れる事ができたがその後も関わり方をやり直さなければならなかった。

 と言う結果が出た。

この結果から何が分かるかと言うと、
子犬の時期に経験しなかった事は生涯受け入れる事ができないという事と
子犬の時期に経験させた事でも、その後も継続して経験させていく必要があるという事だ。

色々な音や他の犬、家の外の世界、人間との関わり方など、
この時期に経験させておくべき事は多いと思う。

犬は人間との生活を「群れ」とみなすと言われている。
一緒に外出する事も多いだろう。
家族以外の人からも可愛がってもらえる犬にするためには、
この社会化期の過ごし方がとても重要になると思う。

誰に触られても動じない犬になる事は、
犬にとっても幸福な事ではないだろうか?





ワクチンについて

犬の社会化期の事を話す上で、ワクチンの事は切り離して考える事はできないだろう。

子犬の抵抗力には、子犬自身が生まれ持ったものの他に
母犬からもらった抵抗力とがある。
移行抗体と呼ばれているものは、生後時間の経過と共に効力を無くし消失してしまう。

予防注射は、この移行抗体が切れた時期に行われる。
1回目を生後50日前後で行い、2回目をその後3~4週間隔で行うのが一般的なようだ。

2回行う意味は、わずかに残った移行抗体によりワクチンが異物として排除され、効力が得られない可能性がある事と、2回打つ事によって抗体価をより上げるという事だろう。

(最近はある程度移行抗体が残っていても効果を発揮しやすいハイタイターというワクチンもあるが、高力価のためアレルギーの原因になる事もあるとか。)

母犬からもらった抵抗力が切れると、感染症に罹りやすくなる。
法的義務のある狂犬病以外の予防接種も飼い主の義務だと思う。

(余談だが、子犬や子猫を拾った場合、風邪などの感染症に罹患しているかどうかで生後どのくらいかがある程度推測できる。)

このワクチンの時期と社会化期は同時期にある。
ここで何が問題かというと、ワクチン未接種の抵抗力の弱い子犬を外に連れ出す事によって、感染症に罹る可能性があるという事だ。

人によっては
「ワクチンが終了するまで外に出してはいけない」と言われる事がある。
この考えは、ある意味間違っていると思う。

一度失ってしまった社会化期という時期は、二度と取り戻す事はできない。
個人的には、社会化期は犬の健康と同じ位重要なものだと思っている。

何も、抵抗力の弱い赤ちゃんを道路や草むらで遊ばせなさいと言っているわけではない。
(人間の看護婦をしていてこんなお母さんが本当にいたのには驚いた事があるが・・・)

ワクチン終了後、抗体が体の中に出来上がるのには2週間ほどを要する。
ワクチンが全て終わり抗体が出来上がるまで待ち、この時期を家の中だけで過ごさせると、社会化期に外の世界を全く知らないまま育ってしまう、という事になる。
繰り返すが、この時期の過ごし方がその後の犬生に及ぼす影響は大きい。

私が推奨するのは抱っこでの散歩である。
地面に下ろさずとも散歩はできる。
外の世界とはどういうものかを教えてあげられる。

前にこの話をある人とした時、
「抱っこでの散歩も感染の危険性があるから駄目だよ」と言われた事があった。

「もしそうなら、獣医さんに子犬を予防接種で連れて行くのは自殺行為なのネ?」

と、強気の事を言ってみるテスト☆

自称愛犬家のペットショップの人の言う事は、
鵜呑みにしない方がいい(ペットショップの人だからと言って知識があるとは限らないのは悲しい事実です)。

他の犬には触れない、地面には下ろさない、体調が悪そうな時には行かないなどに注意して、早くから外の世界を見せる事は、犬にとっても一緒に暮らす人間にとってもとても大切だと思う。

(追記
ワクチン接種の時期は恐怖を覚える時期でもあるので、ワクチン接種の際は恐怖心を取り除くようご注意を。)

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