●研究美術●ミマキング診療所

宮古島~Voyage~

2日延長した旅も終わり、無事臨時便で帰還。
そのままの足で、以前からチケットを購入していた
パフォーマンス、ダムタイプの"Voyage"を見に行った。
大阪のシアタードラマシティーなんて大きな劇場で
現代美術のパフォーマンスが公演できるのは
やはり、成功例にちがいない。
何かしら成功者についてまわる、明るい未来を感じたくて
見に行ったのだが、その内要はかなり暗かった。
映像のテンポも光の使い方も音のタイミングも申し分なく
何ごとも盛り込みすぎず、遊びを残してすっきりと
スマートにシャープに押さえた演出は、プロを思わせた。
でも映像と音と光の織りなす中、演技者の鍛えられた動きの
その奥に流れるテーマが、救いようのない程、暗い未来を
感じさせて、立ち直れないくらいに気分が沈んでしまった。
友達がすぐそばにいるのにお互いが相手の声しか聞こえない
暗い洞くつ(?)の中で、懐中電灯の灯りだけでの演技。
一人が相手を蹴落とす。友達なのに。
荒れた海の映像の中で、地図にタイプライターで
自分の居場所を知らせる文章を打っていく。
それをびんにいれて放り投げる。でも誰にも気付かれないだろう。
台風前の(?)風にゆれる木々の元で眠りに着く女の人。
その回想録、夢が英語で永遠と語られ、映像がはるかかなたに飛んでゆく。
遠い景色から自分の姿。
実は、毒を飲んで死んでゆくその頭の中の言葉だったことが
最後に判明する。
薄れていく自分。溢れる言葉。意識が切れる。
などなど...。夜見る夢のように、次々とイメージの羅列が
続き、それらを見る者が自分でつないでいって、
一連のパフォーマンスとなるのだが、
たぶん誰もそこに明るいイメージは見出せないだろう。
荒れる海も風になびく木々も、つい昨日まで見ていた風景。
懐中電灯も地図も、今見るにはあまりにも身近すぎた。
普通にくらしていても、どこかで感じている人と人との距離感。
埋もれてしまいそうな程、自分の居場所がわからなく恐怖。
気付いていてもなるべく感じないようにしていたもろもろの
事柄を、見せつけられて、ただ、それだけで、
その先の打開策を暗示してくれるわけでもなく
ただただ、暗い気分になってしまうだけだった。
"Voyajge"という意味は「五里霧中」か、はたまた「生存競争」か
と思うくらいだった。本当の訳は「航海」。
でも「遭難」を連想させる「航海」だった。
自分が沈みやすい気質になっている時期で過手に連想して
暗くなっているだけかもしれないが。
ダムタイプは有名だが、そのリーダーが亡くなってからは
名が売れてしまった分、その後の維持が大変で、ピークは
過ぎてしまったという。
いくら名が売れても、彼等が生きていくのは大変だろう。
明るい未来を気軽に見れない、出口の見えない暗礁に囲まれて
いるのだろう。ものすごく共感する。
でも人まで暗くさせたらいけないと思う。
もし私がつくるなら、奥に流れるメッセージが、
人に力を与えるような、
そんなものにしたい。
「遭難」しても楽しめる「航海」がいい。
映像は最後に、地球の表面を赤い+の照準点が
基準線の上を正確に移動していき
地図のない地図上(地球のてっぺん)で止まった。




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