みみりんの心・・・時を重ねて

みみりんの心・・・時を重ねて

1   手



(1)   手





一歩一歩 踏みしめるように、私は彼に近づいていった。

最後は 少し小走りになっていたと思う。

気配を感じた彼が 貌をこちらに向けた。

そして、ちょっぴり照れたように私を見た。

・・・私はその貌を凝視出来ずに 少しうつむきながら

小さな声で 「こんにちは」 と言った。

彼は 「お帰り」 と 笑顔で答えた。




私には 彼の声以外 何も聞こえなかった。

側を通る人々も 目に入らなかった。

ただ 私は彼の手を見つめていた。

大きくて 少しごつごつした 暖かそうな手だった。




その彼の手が 私の手を握った。

触れ合った瞬間 想像していたよりも もっとたくさんの電気が走り

二人の心が通じ合った・・・気がした。




彼の言葉は 聞いていて心地よい響きの柔らかい京都弁だった。

「疲れたやろ・・・食事しよ!!」

そう言うと 私の手を引っ張って、駅に隣接されたホテルのレストランに連れて行ってくれた。



レストランに向かうエレベーターの中 二人っきりになった。

・・・私はこみ上げてくる涙を堪えながら、彼の腕に自分の腕を絡ませた。

やっと逢えた喜びと嬉しさ ちょっぴりの不安を打ち消すような愛おしさが 私の心を包んでいた。

ほんの数十秒だが 彼の腕に頭を預け、幸せを噛み締めていた。





・・・その時の幸せな気持ちは 今でも忘れない。








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10月5日 更新しました







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