みみりんの心・・・時を重ねて

みみりんの心・・・時を重ねて

3   愛しい気持ち



7   ・・・ふれあい


(3)   愛しい気持ち





駅で荷物を受け取った私たちは 予約してあった駅前のホテルにチェックインした。

時間はもう3時半・・・彼は何時頃 仕事に戻るのだろう・・・

その事だけが気になっていた。



荷物もそのままに、ロビーでアイスコーヒーを頂いた。

ほろ苦く冷たいそのコーヒーは 乾ききった咽を潤したが、

上気した貌と火照った身体を沈める事は出来なかった。

私は相変わらず彼の貌を見ることが出来ず、

器用にストローを回す大きな手ばかりに目が向いていた。




飲み干した空のグラスから 氷の音だけが聞こえるようになった頃 

「行こっか。」と おどけて見せて 彼は立ち上がった。

私は荷物を持った彼の後を 小走りで付いていったが

・・・緊張で 胸が張り裂けそうだった。





部屋でのことは ここには書かない。




・・・5時半になって 彼は立ち上がった。

私は泣いた・・・ただ 泣いていた。

今度はいつ逢えるのか・・・そう問い掛けた。

「きっと またすぐ逢えるから。 それじゃ 行ってくる。」そう言って 笑顔で行ってしまった。

窓から外を見ていると 外に出た彼がこちらを振り返った。

それじゃ、またね・・・と言うように 大きく手を振り、

そのまま駅に消えていった。  




私を残したまま・・・。




切なさと愛しさと寂しさが 私の心を覆っていた。



せめてもう少し 時間があったら良かったのに・・・

せめてもう少し 一緒に居られたらよかったのに・・・

せめてもう少し・・・




そのまま部屋に留まっていることが出来ずに 私は独り電車に乗った。

何処に行く当てもなかったが 大阪方面に行ってみた。

電車の中でも 涙が溢れ出た・・・




予備知識もなく ガイドブックも持たない私は ただ電車を乗り継ぎ ウロウロと彷徨っていた。

・・・気が付くと 有名な心斎橋の傍に来ていた。

グリコのネオンを見 食い倒れ人形の横を通ったが それでもひたすら彷徨っていた。

心はそこにはなかった。

ただ・・独りで居たくなかっただけ・・・雑踏の中で 彼を愛しく思い続けていた。



もう夜の9時過ぎ・・・夕食も食べていないことに気付いたが、そのまま京都に戻ることにした。




どこか分からない駅まで歩き 路線図を見ると、彼の住む街の駅名を見つけた。

詳しい住所は聞いたことがなかったが 最寄駅名は記憶していた。




・・・せめてその駅を通って帰ろう・・・

そう思い 電車に乗った。

随分遠回りだったが 何度か乗り継いで その駅に到着した。

私は居るはずのない彼の姿を追い求め 目を凝らしてホームを見回した。

降りて 捜したい衝動に駆られたが・・・電車は 私を乗せたまま動き出してしまった。




切なさだけが 心を支配していた。


いつしかまた 泣いていた・・・



次の日 独りで京都観光をしている私に 一通のメールが入った。








   <彼からのメール>



    ありがとう




  またおいで・・・

  今度は私が愛に行く・・・

  愛しているよ







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10月8日 更新しました






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