Blue kiss

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お掃除のタイミング

お掃除のタイミング


ただいまぁ・・・

玄関のドアを開けた。
あれ、
何か違う。

なんでこんなにキレイなんだ?
靴が揃ってるし
掃いてるし、

だれ?
Saaじゃないことは分かってる
ヤツは今、それどころじゃないから。

Rii?!

なんてことだ。
何があったのだろう?


部屋に入って見渡す。
この掃除は気まぐれでない。
あとで
本日のこの一大清掃事業の理由を
是非訊かなきゃ。


あれ!
おまけにベランダには洗濯物も乾いてるじゃん。
Riiちゃん
なんだか分からないけど
アリガトウ!!


キレイな部屋に帰宅するって
本当にいい気持ち。

外出中のRiiの顔を思い浮かべて
サンキューともう一度心の中で言う。



ふとみると

整然とした部屋のど真ん中に
部屋を対角線に仕切るように
Saaがうつぶせに転がっている。

「Saa。どうした?」
「・・・・」
「Saa?疲れたの?」
「・・・ううぅぅ・・・」
「いつ帰った?」
「さっきぃ・・・」

時計を見る。
10時半だ。

Saaはこの1週間
留学のためのプレゼン資料に書き込む作文と
格闘している。

毎日、毎日、毎日、
彼女の脳みそを振り絞って書いたものに
担当教師のダメだしが続いている。


このセンセイは
わたしの大好きな女性教師だ。
去年Saaの担任だった。
クラス替えで離れてしまって
本当に残念だったが

一度お酒を飲みに行ったし、
学校に行くと
ひろい校内で、必ず廊下で
バッタリ会うような
相性のいい人なのだ。


「オーちゃん、厳しいねぇ。」
わたしはSaaに声をかける。
「うう・・・でも今日は何も言わなかった・・・」
「ふうん。センセも行き詰まったか・・」
「これ以上、無理だよ。」
「どんなふうに?」
「だんだん、もう私の作文じゃなくなってる・・・」


口惜しさがちょっと嗚咽まじりに
Saaの口元から洩れる。

「そうか。」

わたしはA4のコピー用紙を
2枚引き出して
書き始めた。

20分・・・


Saaが言いたいこと
書きたいことを
代弁するように書いてみた。

「ね、ね、ママも書いてみたよ。」
「ふぇ・・・?」
「読むから聴いていてね。」

大声でゆっくり読むと
Saaが頭を上げてこっちを見た。


眼が充血してる。
その眼がニッと笑った。

「ああぁ・・遺伝だ。・・・」
「なによ。遺伝って。」
「わたしと同じだってことだよ。」
「書きたいことの論点が同じ。」

「ダメ?」
「だめ。」

ふう~~~ん。

受かるための作文か。

受かるための受験勉強
受かるための答えの出し方・・・

付きまとうね。
何処いっても、何やっても。


「Saa、頑張れ。」
「ふぇええぇえ・・・」
「オーちゃんはSaaのこと分かりきってるから
何とかしようって思ってるんだよ。」

いつに無く
自分に対して本気モードのSaa。


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