Blue kiss

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占い

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内覧会まであと3日。部内は、会場の設営のための
準備で慌しくなっていた。
ダイアモンド宝飾専門の会社が年に一度開催する
得意客向けの内覧会。
今回はその新作の発表会の目玉に、
特別出展として
プラチナだけで創られた、ドレスの展示がある。

その「目玉」にどのネックレスとティアラを合わせる
のかが、まだ決まっていなかった。

キタミさんは、会議室のテーブルに紫色の別珍の箱を
いくつか並べ始めた。

「朝香さん、これ見ていただけませんか?」
キタミさんは3つの箱を順番に開けると
わたしの顔をゆっくり見上げて微笑んだ。

「すっごい・・・ですね・・」
3つの箱の中には、どれも自分が一番と言わんばかり
の煌く作品が収まっていた。
その豪華さもさることながら、
どれも斬新でかつ優美なデザインで溜息が洩れた。

わたしがネックレスにクギ付けになっていると
キタミさんは「朝香さん、どれが好きですか?」
と聞いてきた。
「どれがって・・・みんな素敵。」
思わず下を向いたままわたしは答えた。

「ひとつだけあげると言われたら?」
キタミさんは覗き込んでいる私の頭の上から
さらに聞いてきた。

「え?」
「あげるといわれたら?」
その言葉を聞いた瞬間、わたしの眼が
3つのネックレスを厳しく査定し始めた。

そして
ほどなくそれは決まった。
「これです。」
両手でそのネックレスの箱を指して
わたしはキタミさんを見上げた。

キタミさんはにこっと顔を和らげると
「よかった。朝香さんも僕と同じ意見だ。」といった。
「そう、ですか・・・?」
「これで決まりです。これを使うことにします。」
「キタミさん?」
「ありがとうございました。」
キタミさんは、紫色の箱をパタン、パタンと閉めると
わたしを見て会釈をした。

「どうしたんですか?今日はこのためにいらしたの?」
帰ろうとするキタミさんに
わたしは急いで尋ねた。

「そうです。占いを。」
「うらない・・・?」
「当たりました。」

キタミさんはとても嬉しそうに上着に袖を通しながら
学生のように大きな口をあけて笑った。

「では、また明日!」
キタミさんは右手を軽くあげると
会議室からかっこよく出て行った。

「占い。」
わたしは独り言を繰り返した。
また、謎がひとつ増えてしまった。


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