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2008.05.22
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カテゴリ: Movie
『ルイ・ブラス』はアブナいだけではない。今ドキの視線で見ると、相当に「キワド」い。

ほとんど男ハーレム状態のドン・セザールのアジト
アルバ公が誘拐され、連れて行かれたドン・セザールのアジトは、筋骨隆々たる半裸の男たちでいっぱい。
男ハーレム
↑右手に見えますのはゲルマン系。左手に見えますのはラテン系。あとはアフリカ系もいるし、遠くにちらっとアジア系も見えたかも。
女性はゼロ。男性だけ集めたハーレムのよう。いいのか、これで??
「ドン・セザールは女タラシ」だとかってサド長官が言ってたけど、女の気配なんてまるでなし。

そのアジトで、アルバ公と2人きりになると、ドン・セザールは「服を交換しよう」と迫る。ルイ・ブラスに対しては徹底的に精神的優位に立っていたアルバ公だが、ドン・セザールの前ではたじだじ。結局言いなりに服を交換することに。

それはいいとしても、「服を交換しよう」の台詞のあと、ドン・セザールは、「いかが?」とかいいながら、こんなふうに……
服を替えよう
唐突に思いっきり胸をはだけて見せたりする。??? 歩くギリシア彫刻ジャン・マレーのたくましい胸はたしかに美しいけどさ。必然性はないよなあ。

でもって、ボタンをはずし始めたアルバ公を、無遠慮かつ心から楽しそうに見つめるドン・セザール。アルバ公もその視線に気づいて、セザールを見やったりする。すると、またもセザールのこの笑顔↓
着替え中
ず~っとアルバ公が服を脱ぐのを見つめながら、自分もガンガン脱ぎ出すセザール。徹頭徹尾明るい表情。淫靡ないやらしさがないところが、逆に妙にソソる。

この2人、セザールはものすごくガッチリとたくましいし、アルバは細身で華奢。こんなに体格が違うのに、服を交換して着れるんかい、などという突っ込みは、この際むなしいのかな。

「どこまで脱ぐの?」と思ったら、なぜかいきなり場面が変わり、男ハーレムで少年が皆から「服を脱がされて」イジメられているという扇情的なエピソードが入ってくる。

いじめられる少年

1940年代にこんな脚本書いていたんですか、恐るべしジャン・コクトー。しかし、監督の演出はちょっとばかり、エグすぎるような気も。全体的にコクトー監督作品のような気品に欠けるきらいがある。

意味なく胸をはだけるアルバ公

こんなふうに乳首まではだけて見せる必要はまったくないと思うわけよ。なんなんだ、まったく。見ていてあんまりビックリしたんで、どういう流れでこうなったんだか忘れてしまった。

コクトーはマレーに、「健康が許せば、ぼくが『ルイ・ブラス』を撮りたい。演出家がうらやましい」と言っていた。『 美女と野獣 』の監督で完膚なきまでに破壊しつくされた体がまだ戻っておらず、コクトーは台本執筆時に転地療養などしている状態だった。

だが、『ルイ・ブラス』のロケの際にはマレーに随行して、ヴェネチア(スペインが舞台だが、撮影はイタリアで行われている)に一緒に滞在していた。撮影所に通うのに、2人はゴンドラかヴァポレットを使う以外になく、そのゆったりしたヴェネチア風リズムの生活に、マレーはやや戸惑っていた。

コクトーは晩年になって別の友人とヴェネチアを訪れたとき、フランスにいるマレーへ手紙で、「あの『ルイ・ブラス』の広場を歩いています。君と一緒にゴンドラに乗っています」と懐かしい2人の思い出にひたっている様子を書いている。

さて、『ルイ・ブラス』の「キワド」さは、まだまだある。

サド長官のキワドすぎる言葉責め

サド長官は、およそ初めから終わりまで、一本調子のサディスティックな口調でルイ・ブラスを言葉で責め続ける。ルイ・ブラスはドン・セザールとは対照的に、ガラスのように繊細な神経の持ち主。王妃への恋に悩んでいるのをサド長官に見すかされ、「誰だ? 誰に恋している?」「言え、誰だ?」とガンガンに責められて、顔をそむけたり、肩を落としたりして、いかにも「もっとイジメてください」状態。

で、なぜかうるんだような瞳で、サド長官を見上げ、「そんなに知りたいのなら……」
うるんだ瞳
↑って、そんなにムキにならなくても。ますます火(サド心)に油をそそぐよう。

「ふふふ…… ういやつじゃのう……」
みたいな、露骨に悪代官風の台詞は…… もちろん、ない。一応慎みのコクトーだし。

で、ルイ・ブラスの恋煩いの相手が王妃だと知ったサド長官は、彼を利用して王妃に罠をかけることを思いつく。長官は、王妃のお付きの女官に手を出したのを王妃に咎められ、失脚させられたのを恨みに思っていた(らしい)。

そして、ルイ・ブラスに、「王妃の……」
愛人になれ
と、そそのかす。こうしてサド長官の手引きで、ルイ・ブラスは身分を偽って宮廷へあがることになる。

なぜか美少年ばかりゾロゾロいる宮廷

ここの…… って一応舞台はスペインなのだが、宮廷は一風変わっている。なぜか女性がほとんどいない。臣下で目立つのは、ラテン系細身の美少年ばっかり。女性といえば、こんなの↓だけ。
いじわるババア
この人(左)は公爵夫人で王妃(右)のお目付け役なのだが、 雅子様 王妃が何かしようとすると、「それは(やっては)いけません」といちいち邪魔するイジワル婆さん。

王妃には親友ともいえるお付きの若い女官がいるのだが、美人はほぼ、この2人しかいないといってもいい。そのかわり、美少年はごろごろしていて、身分を偽っているルイ・ブラスにあてこすりを言って集団でイジメたりする。
いじめる美少年
このシーンは、まるで昨今の日本の学校でのイジメのよう。なんだか胸が痛くなるのだ。

<続く>





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最終更新日  2008.05.22 02:28:44


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