< 新しい避妊具 >

ナンパ、得意ですよね。」

 毎度の事だが、「今日こそこいつを殴り倒そう」と思わせる本田君の発言だ。
しかし彼の憎まれないキャラクターに阻まれて私は未だに手を挙げることなく過ごしている。
「どういう根拠でそんな事を言うのかな。ナンパというのは中高生の頃、度胸試しでやった程度でそれ以降は無いよ。」
「じゃあ、なんで切れ目がないんですか。」
 彼の頭の中の私は一体どういう人間なのだろうか。

 切れ目がない=シームレス
そんな名前のコンドームがあったような気がした。
 それにしても、彼の質問はいつも唐突で、尚かつ、自分と私の人間性に大きな隔たりがあるのを前提に質問しているようだ。
彼に言わせると、私はタブーを伴った目新しいことをいつも抱えているように見えるらしい。
 まるで新開発の避妊具のように好奇心の対象としてその物自体の存在もさることながら、使われるシチュエーションを想像させるとワクワクするような複線を持った怪しげな存在なのだろうか。

「これ、新開発の避妊具なんだよ。一緒に試さない?」
彼から見た私は、単なる女友達にもこう言うであろう存在なのだろうか。

 私は既婚者だが、女友達はいる。
 しかし、あくまでも友達である。
 男女の間に親密な友情は無いという人もいるだろうが、それは否定したい。
 性欲や恋愛の対象にならずに尚かつ親密でいることは時間をかけた男女の間柄では良くあると思う。
 気が付いたら何となく肉体関係になっていたと言う事はあったが、その後友情に戻ることはある。
 この点についてモラルに厳しい諸兄からは友情とは言えないとご指摘を受けるだろうが、私の中では友情なのだから他の言葉ではくくられたくない。

 しかしこの曖昧で説明しにくい状態を数学者にありがちな、何でもきちんとした公式にあてはめたがるタイプの本田君には理解できるのだろうか。

「で、何が言いたいの。」
私は本田君に聞いた。
しばらく口を開けたまま、言葉が出なかった本田君が躊躇しながら小声で言った。
「結婚前に思い残すことなく遊びたいと思って。」
私は彼のこういうバカが付くぐらい素直な所は好きだ。

「新型の避妊具をあげよう。やらせてくれそうだと思った女の子にそれを見せて『これ、新開発なんだよ。一緒に試さない?』と言ってご覧。」


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