月下美人

月下美人

かわいいひと




日番谷の机の上の山のような書類を見ると思い出す。
十番隊の隊長としてやって来て暫くの頃だ。
乱菊の元へ知り合いが入れ替わり立ち替わりやって来ては皆、同じ様な事を口にする。
「日番谷隊長って、どうなの?」
努めて曖昧に訊ねてはいるが、つまりは子供に隊長職が務まるのか、という事だ。
卍解に至る事が隊長の条件の一つであるから腕の方は兎も角として、その他こなさなければならない業務は多々ある。
事実、デスクワークを苦手とし、副官以下が迷惑を被る例も多かった。
訊ねられるその度に乱菊は一笑して答える。
「腕は申し分ないし、デスクワークは藍染隊長と同格かしらねぇ」
五番隊の藍染隊長といえばデスクワークに於いて右に出る者は居なかった。
その藍染と同格と言われれば感嘆の声しか出ない。
乱菊はその声を聞く度に満足したものだった。

そんな事もあったと、手を休め書類の山をこなす日番谷の席に視線を止める。
自然と笑みがこぼれる。
「松本ー、何笑ってんだよ。暇なら肩でも揉んでくれ、俺は疲れた」
視線に気がついて日番谷が口を開いた。
「暇じゃないですけど・・・・。昔を思い出していただけですよ」
微笑みながら立ち上がり、日番谷の後ろに回る。
肩に手を載せ、ゆっくりと揉む。
「昔って、何だ?」
「隊長がここにいらっしゃって暫くの頃ですよ。皆が入れ替わり立ち替わり来て・・・」
「ああ、ガキに隊長が務まるのかってやつか?」
「藍染隊長と同格よ、って言うと皆に羨ましがられて・・・・」
「そんなに、こなしてねぇよ。お前の買い被りだ」
「あら、そんな事ないですよ。伊勢なんて、いつも言ってますよ。羨ましいって」
「京楽は、やんねぇからなぁ」
そうですねぇ、と笑っていると髪を引っ張られる。
「乱菊・・・・」
名を呼ばれる。
はい、と答え目を閉じると唇が重ねられる。
ずるい、と乱菊は思う。
いつも眉間に皺を寄せ大人じみて見せるのに、この時だけは子供の表情をする。
数少ない、日番谷が子供の表情をするのは・・・・乱菊が欲しいとねだる時・・・
口にしたら怒られるけど、かわいいと思う。
愛しくて、愛しくて。
目を閉じているのがもったいなくて、そっと開く。

視線を絡め取られる。

「お前、何で目ぇー開けんだよ」
唇を離すと悪態をつく。
「そう言う隊長こそ、何で目瞑らないんです?」
「・・・・・」
黙りを決め込んだようで口を開こうとしないので、そのまま肩揉みを再開する。

「お前がかわいいからだ・・・・」
「えっ?」
「お前がかわいい顔するから・・・・見てたかったんだよ!」
真っ赤な顔をしてふてくされる姿が堪らなく愛おしい。
「隊長・・・・こちらを向いて下さいな・・・・」
死魄装の袖を引き、瞳を閉じる。

耳元で囁かれる。
「乱菊・・・・・」

そして、再び唇が重なりあう。


(了)

今日は、ブリーチ16巻(表紙は、待ってました日番谷くんっ!)発売日なので。
内容は全く関係ありませんが(汗)

日番谷くんてキスする時、目開けてそうという妄想から生まれました。
お互いに「かわいいひと」。
髪を引っ張っておねだりという、普段とのギャップにメロメロの乱菊さん~
私もメロメロです(笑)





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