2007/01/20
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カテゴリ: 試飲会
Weinforum in Trier
ワインフォーラムの会場となった、ローマ時代の温泉遺跡。

高校の頃、定期試験の後には必ず成績優秀者のリストが発表された。各クラスに張り出されるA4の紙に僕の名前が載ることは滅多に無かったが、それでもたまに載った時は、それなりに嬉しいものだった。試験前のしんどさが報われた思いがしたものだ。

この週末、トリアーではラインラントファルツ州の品評会で金賞を受賞したワインを集めた試飲会が開催されている。いわゆる公的審査番号AP Nummerを交付する試験場が行う品評会で、香・味・調和をそれぞれ5点満点で採点し、満点を獲得-1項目でも4.5点を下回ると落第-したワインのみに金賞が与えられる。いわば100点満点の優等生ばかりを集めた試飲会である。ワインリスとは、さながら成績優秀者一覧といったところか。

試飲に提供されたのは約150種類、ゼクト、エルプリング、リヴァーナー、ブルグンダー系白、赤、辛口・中辛口・甘口リースリングとアウスレーゼ、アイスヴァインと貴腐ワインにセクションが分かれている。その全てが金賞受賞ワインであるからして、いずれも公的審査の観点から、生産年・品種・格付けに相応しい、完璧なワインである。

「グラスの中の品質」Qualitaet im Glase 。畑を格付けして等級を行うフランスのシステムに対し、ドイツワインはいかなる畑からも優れた品質のワインを造り得るという建前のシステムをとっている。実際、この試飲会ではあまり知られていない畑のワインが、有名な畑のワインに並んで試飲に供されていた。そして畑毎の品質の差は、少なくとも僕の印象では、ごくわずかであった。畑の差はもとより、カテゴリー内ではどのワインの香味の差もまた、試飲につれて鈍感になった僕の舌では、まるで物差しで測ったかのようにごくわずかであるように思われた。

考えてみると、典型性-ティピシティが審査の上で絶対的な重きを占めている以上、個性的なワインは排除されて当然なのかもしれない。試飲審査に際して審査員に明らかにされるのは生産年、品種、格付けのみである。そして大半は現役の醸造家が務める彼らは、それぞれの要素に期待される典型的な個性が出ているかどうかを基準に審査する。その際、畑の個性は考慮されない。Qualitaet im Glase- クリーンで欠陥のない、優等生こそ公的機関の金賞に相応しいのだ。いずれも粒ぞろいの優れたワインであり、その大半は5Euroを中心に3.3~9Euroと手頃な価格である。ハレルヤ!ドイツワインの良心がそこにはある。

だが、しかし。ワイン好きには典型性より個性の方が100万倍面白いのである。畑の個性に醸造家の個性、この二点こそ肝心かなめなのだ。一口飲んで脳裏に葡萄畑の斜面とそこに深く根を張った葡萄樹が浮かび、一口飲んでは醸造家の相貌が見え、彼なり彼女なりの哲学が伝わってくる。そうしたワインが、飲みたくなるワインであり、高いお金を払っても買いたくなるワインなのだ。そして公的品評会の審査には、この二点が欠落している。

その点、併設されていた国あるいは州の栄誉賞を受賞した9醸造所のスタンドは興味深かった。ゴー・ミヨにもランクインしている醸造所もあるが、これから上を目指して切磋琢磨している醸造所達である。ワインにも野心が滲んでいる。濃厚でアロマティックで飲み応えのあるワインが多い。ピースポートのシュペーター・ファイト醸造所はシュペートブルグンダーNo.1の凝縮感とパワーは、モーゼルでもここまで出来るのかとインパクトがあった。ベルンカステルのザンクト・ニコラウス・ホスピタル醸造所の濃厚でアロマティックなリースリングは極めて魅力的、それに対してミュルハイムのバウアー醸造所のほっそりと引き締まったリースリングは、これぞモーゼル!と言いたくなる。典型的ではあるが、それを超えて醸造家の筆跡が感じられるのだ。

畑の個性という点では、ザンクト・ニコラウス・ホスピタル醸造所がベルンカステラー・リング加盟醸造所として、グローセス・ゲヴェクスを出品していた。グローセス・ゲヴェクスは畑の格付け-公的審査の趣旨とは対立する-であり、VDPとラインガウ醸造所連盟が90年代前半から音頭をとって推進してきたシステムだが、VDPとラインガウに続き、昨年からベルンカステラー・リングも独自の畑の格付けをグローセス・ゲヴェクスとして発表した。VDPとの最大の相違は、VDPが辛口のみであるのに対して、ベルンカステラー・リングは中辛口も含めている点である。

そして、ザンクト・ニコラウス・ホスピタル醸造所が試飲に供していたのはベルンカステラー・グラーベン2005のリースリング・ハルプトロッケン。濃厚で素晴らしくアロマティック、口いっぱいに広がるフルーツ感と調和、完熟したリンゴ、桃のヒント、繊細なタンニンに綺麗なアフタ。申し分ない中辛口リースリングである。

だが、問題はその値段だ。15Euroである。同時に試飲した同じ畑、同じ生産年のリースリング・シュペートレーゼ・ファインハーブは7.60Euroとほぼ半額ながら、グローセス・ゲヴェクスに勝るとも劣らない出来栄えであった。非常にフルーティでアロマティック、みずみずしい完熟した果物いっぱいの、とても魅力的なワイン。醸造所の個性がよく出ている。

グローセス・ゲヴェクスとシュペートレーゼの差にあえて値段をつけるとすれば、僕ならせいぜい3Euroだ。もちろん、醸造所にはそれなりの主張があり、セレクションを厳密に行い丁寧に醸造した自信作で、醸造所団体の官能審査にも合格してお墨付きも得ているのだろうが、2倍の価格付けには納得しかねる。

もしも正当化する理由があるとすれば、マーケティング戦略以外には考えられない。新たなカテゴリーである「グローセス・ゲヴェクス」をプレミアム商品として位置づけるには、品質もさることながら相応の価格もプレステージとして必要なのであろう。VDPとラインガウのグローセス・ゲヴェクス及びエアステス・ゲヴェクスにも同じことが言える。

畑の格付けが価格ゾーンの引き上げに利用されるのは、ありがたい話ではない。それくらいなら、没個性であってもあくまでもQualitaet im Glaseに留まる方がいいのか...?。
結局のところ、カテゴリーでもなく格付けでもなく、よい仕事をしている醸造家を知り、彼のワインを基準に自分なりの価値観を築き上げていくより他ないであろう。
そういう意味で、試飲会はいつも貴重な機会なのである。





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Last updated  2007/01/21 06:39:30 AM
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入場料は要るのでしょうか?  
緑家 さん
きりあん師匠、おはようございます。いつもながら最新の情報ありがとうございます。
現地での試飲会は有名無名にかかわらずいろんな醸造所のワインが試せるので羨ましい反面、その中からキラリと光るモノを選別するのは大変な作業でしょうね。格付けと価格の関係については、なるほどそういうことだったんですね。市場でのアピール性、差別化などということももちろんですが、目先が変わって面白いと単純に喜んでた自分がバカでした(笑)。
シュペーター・ファイト、ザンクト・ニコラウス・ホスピタル、バウアー醸造所ですか。また訪問されたらレポート楽しみにしております。
それでは遅ればせながら今年もよろしくお願い致します。
(2007/01/21 08:23:42 AM)

Re:入場料は要るのでしょうか?(01/20)  
mosel2002  さん
緑家さん、おはようございます。

なんだかんだ言っても、色々試飲するのは楽しいことです(^^)。ザンクト・ニコラウス・ホスピタルは日本にも受けそうな気がしますけれど、もう入っているのかな?

GGやEG、高いといってもフランスの1er CruやGrand Cruに比べたらまだまだ可愛いものですけれどね(笑)。近い将来にはアルザス並にはなる可能性は大でしょう。

こちらこそ、今年もよろしくお願い致します。
(2007/01/21 08:52:38 AM)

Re[1]:入場料は要るのでしょうか?(01/20)  
mosel2002  さん
おっと、書き忘れていました。
入場料は金曜と日曜が20Euro、土曜が23Euro、学割が18Euroです。21日日曜は11時から19時までやっています。
(2007/01/21 09:04:51 AM)

盛況ですね  
J.Y さん
こんにちは、J.Y でう。

曜日で微妙に入場料が違うのがちょっと不思議ですね。

ザンクト・ニコラウスとシュペーター・ファイトは、
ヘレンベルガーホーフさんで扱いがあるようです。
シュペーター・ファイトは、ヘレンベルガーさんの試飲会で、
2003年リースリング シュペートレーゼ甘口
を試したことがありますが、2003年としては酸があって好印象でした。
赤が良いですか~。さすがに、日本には無いかも(^^;

教科書的な金賞ワインかもしれませんが、そんなワインたちの中から、
光るワインを見つけ出すのは、ワインのバイヤーさんにはやりがいありそうです(笑)
野心的な醸造所も良いですね。
そういう仕事してそうな人も、会場にはいらっしゃるのでしょうか?

それでは (2007/01/21 05:00:14 PM)

Re:盛況ですね(01/20)  
mosel2002  さん
J.Yさん、

>曜日で微妙に入場料が違うのがちょっと不思議ですね。

昨年も金~日にかけて開催されたのですが、約3000人の来訪者の半数が土曜に集中して、試飲に支障をきたすほどの混雑だったようです。

>ザンクト・ニコラウスとシュペーター・ファイトは、
>ヘレンベルガーホーフさんで扱いがあるようです。

お~、さすが。がんばってほしいです(^^)。

>そういう仕事してそうな人も、会場にはいらっしゃるのでしょうか?

金曜は近隣の醸造所の人たちや地元のガストロノミー関係者は見かけましたけれど、もしかしたら土日にいらしているのかもしれません。

ではでは。 (2007/01/21 06:43:35 PM)

Re[1]:盛況ですね(01/20)  
J.Y さん
またまたJ.Yです。

>昨年も金~日にかけて開催されたのですが、約3000人の来訪者の半数が土曜に集中して、試飲に支障をきたすほどの混雑だったようです。

>金曜は近隣の醸造所の人たちや地元のガストロノミー関係者は見かけましたけれど、もしかしたら土日にいらしているのかもしれません。

それはまた、強烈ですね(^^;
そこまで混雑していると、集中して試飲と言うわけにも行かないので、
バイヤーの人たちは居なさそうに思いました。
プロ向けの試飲会とかがあるのでしょう。

それでは
(2007/01/21 08:16:22 PM)

Re[1]:盛況ですね(01/20)  
rotenfels さん
mosel2002さん、J.Yさん、こんばんは
遅レス失礼します。

>ザンクト・ニコラウスとシュペーター・
>ファイトは、ヘレンベルガーホーフさんで扱いが
>あるようです。

この件ですが、ヘレンベルガー・ホーフに
問い合わせたところ、シュペーター・ファイトでは
なく、レナート・ファイトを扱っているようです。

ファイト違いですが、ゴルトトロップフェンの
シュペートレーゼでしたので、1本入手して
みました(^^)

全然話は違いますが、ヴィノテーク拝見しました。
昨年の1月につづき1回/年のペースに
なってきましたね。
次回も楽しみにしています(^^)
(2007/02/06 11:09:22 PM)

Re[2]:盛況ですね(01/20)  
mosel2002  さん
rotenfelsさん、

>全然話は違いますが、ヴィノテーク拝見しました。
>昨年の1月につづき1回/年のペースに
>なってきましたね。

恐れ入ります。時々、小さな記事も書かせて頂いています...目立たないですが(苦笑)。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げますm(..)m。
(2007/02/07 10:03:56 AM)

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李斯。@ お久しぶりです。 御無沙汰しております。 何時も拝見してい…
pfaelzerwein@ Re:ひさびさのドイツ・その64(04/05) 「ムスカテラー辛口」は私も買おうかと思…
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