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佑汰のこと
はじめに
二年前に次男の佑汰を
『完全大血管転位』という先天性心臓疾患で亡くしました。
当時、ある思いを持って産んだ子供なだけに
ショックも大きかったのですが、「悲しみを乗り越える」と言うよりは
「悲しみに蓋をする」と言った方が正確かもしれない対処をしました。
そうしなければ、自身が潰れてしまいそうでした。
あれから2年の月日が流れて、
色々考えるところもあり、何時までも自分の中に潜む心の瘤を
見て見ぬふりをずっと続けていくのも悔やまれるので、
どうにか冷静に言葉で書くことが出来るようになった今、
文章で何処まで表せるかわかりませんが、書き留めて残してみたいと思います。
誰しも皆、死というものは遅かれ早かれ来るものなので、
佑汰の死=悲しみの最たるもの だとは思ってません。
それよりも佑汰が産まれてきて生きたことに誇りを覚えます。
高齢出産
旦那が『子供がもう一人欲しい』と言い出したのは、
私が37歳を迎えた頃の事。
長男・長女も学校に行くようになり、
姑との同居も10年を超えて生活リズムが安定してきたので
元々一人っ子の旦那にしてみれば同姓の兄弟を作ってあげたかったのと、
3人くらいは子供が欲しかったのが、
ようやく思い描く事が出来るようになったから。
でも産む私にしてみれば、
大人に成りつつある長男・長女と旦那と姑と私の大人3人の中に
あと一人増やすとなると、当時食事をしていた6畳の部屋に
大人5人・子供1人はとても生活できない。
それと私の年齢である。今からすぐ妊娠したとしても産むのは38歳である。ちょっと辛い年齢である。
仕方がないので旦那には、産める環境でなければ鳥だって卵は産まない。
と断ったら、里子でも貰おうかとか家を建て替えようか等という話しも出てきて、結局、家は建て増して、私は妊娠した。
今から思えば妊娠生活は、以前の妊娠の時と違ってちょっと大変だった。
3ヶ月の頃は少し歩くだけでもお腹が張り立っていられなくなったりもした。
仕方がないので自転車を歩行補助機代わりにして生活していた。
お腹が大きくなってくると夜中体が痺れて動けなくなる。
歩く速さが普段の半分もないくらい遅く、辛く、横断歩道も青のうちに渡り終えない。
産婦人科の病院も歩いて10分くらいの距離を休みながら30分以上掛ってしまう。
休むのも立っているとお腹が張って苦しいので途中の歩道の手すりや公園の腰掛けられるところに腰掛けて休まなければ、お腹の張りが収まらない。
車に1時間くらい乗っているだけで、身をよじらなければならないほど痛くなる。
(長女の時は産むその日まで車を運転していたのに。。。)
こんな異常も、高齢の妊娠のせいと思っていた。
そして私が38歳になった秋に佑汰が産まれた。
以前日記に書いた通りなのでコピーします。
【今日は2年前に死んでしまった次男の佑汰の誕生日。
なので、今日の日記は佑汰の事を書きましょう。
2001年11月2日、午前11時45分。
2880グラムの男の子が産まれました。妊娠期間36週の出産です。
産まれてすぐの元気な泣き声をテープに入れて貰い、普通ならば
へその緒付きの赤ちゃんを抱かせて貰って記念写真を撮って貰えるのに
今回は違ってた。
取りあえず生まれたての佑汰と一緒の写真は1枚に撮ったものの
抱かせては貰えず、すぐに産後の処置を済ませ保育器に入れられ
酸素を付けられて泣いている。
様子が普通の赤ちゃんと違っていた。手足の色が手袋・靴下を
付けているみたいに赤黒い。小児科医がいないので理由は
分からないが、どうも様子が違うらしい。酸素を入れて様子を見る。
産後、私は病室に返されたが、心配で新生児室の前で
まだ産んだばかりでクラクラしながら佑汰をずっと見ていた。
見ている限り、酸素の管が取れてても元気そうに手足をばたつかせ
泣いている。まるまるして可愛い。全然元気と安心してベットに就く。
翌朝、やはり状況改善されず、婦長が深刻にそれでも私を
気遣いながら日赤に搬送依頼の電話を掛けてくれた。
1時間と少し、日赤の小児科医付きの救急車が病院に到着し、
佑汰は保育器に入ったまま旦那と日本赤十字病院へ向かう。
病名は『完全大血管転位』先天性の心臓疾患です。
産後、すぐに手術をしなければ助からない病気。
私の退院の日が1回目の手術の日。
退院した足で無理をしても日赤へ行くつもりでした。
それまでの3日間の入院中、辛かったけど沢山の心に触れた。】
入院生活
入院生活は、やることが何もなかった。
ベットの上で佑汰の無事を祈る毎日。
それと溜まってパツンパツンに張ったおっぱいを
長時間掛けて痛さを堪えて絞り出し、洗面所に捨てることと
新生児の講習(お風呂の入れ方・ゲップの出させ方)に出て
他のママ達の笑顔の初体験をボーっと眺めていること。
お見舞いに来てくれた知人と話すこと。
そんな中でも、とても嬉しく思ったこと。。。
一緒の日に産んだママが、
初めての子供にも関わらず毎日少しの時間、
赤ちゃんを私に預けてくれたこと。
『早く元気になって、抱けるといいね』と力付けてくれた。
お見舞いに来てくれた友達の中でも
フィリピンから日本にお嫁に来た子で、長男の友達のママ。
舅・姑の元であまり自由が効かない中、旦那さんに無理に連れてきて貰い
お見舞いに来てくれた。
辿々しい日本語で
『退院したその足で何時間も掛けて一人で手術に立ち会ってはダメ。
フィリピンの友達も同じ事をして心臓を悪くして亡くなった。
そんなことになったら残されて悲しむ人に取り返しがつかないよ。』
と注意してくれた。
彼女のこの一言は、大きかったなあ。
私の退院した足はゆっくりと自宅に向かった。独りきりの退院。
秋ももうすぐ終わりを告げる北風が
ポカポカの秋晴れの落ち葉を鳴らす中、
ゆっくり、ゆっくり荷物を提げて、一歩一歩、歩いて帰った。
お見舞いに来てくれた近所のおばさんの一言は悔しかった。
『産まれてすぐに手術なんて、小さいのに考えられないくらいに可愛そうね』
悪かったですね。
「すぐに手術しないと確実に死んでしまうのです。」
と言ってるにも関わらず、
『でも産まれたばかりなのに可愛そうじゃない』と、黄色い声で捲し立てるばかり。
なんか、うんざりです。
おばさんの頭の中では、新生児の可愛そう度は
治すために手術する > 手術せずに死亡する
という方程式があるらしい。
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