夢の世界へ

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佑汰の入院

私が退院した日の手術は
血の出入りの穴が閉じてしまわないように
取りあえず心臓に風船を入れる手術でした。
心臓にカテーテルを通し、風船を入れ、一旦閉じる。

一回目の手術は成功して
翌日の午前中に病院の方から電話有り。
『今日からおっぱいを飲ませますので、冷凍にしたものを
クーラーボックスに入れて持ってきて下さい』
私は嬉しくて、初めてのおっぱいを冷凍にして
クーラーボックスに沢山詰め込んで日赤のある渋谷に向かった。
初乳は黄色み掛っていて、
いかにも栄養たっぷり、抗体力たっぷりに見えて
少しでも飲んで、少しでも元気になって欲しい。

仕事をしている旦那に連絡を取ると
『もしかしたら会わせて貰えるかもよ』と言われ
まだ退院翌日のふらつく足腰で、慎重に電車を乗り継ぎ
それでも一刻も早く病院に着きたくて休むことなくゆっくりと急いだ。

病院の新生児集中治療室の受付を通り
入り口で待っていると、完全装備の看護婦さんが来て
冷凍おっぱいを受け取り、
『今日は会えませんが。。。』と
小さな紙を渡された。
見ると其処には佑汰の体重が『2540グラム』と書かれていた。
哺乳量の欄も有り、穴の開くほど見入っていたら
『またいらして下さい』と言われ、
絶対会えると思っていたので、帰りはトボトボと足が重かった。

翌々日、旦那と車で病院に行った。
冷凍おっぱいを持って。
受付で待っていると、また小さな紙を渡された。
『体重2564グラム・哺乳量20ミリリットルを8回』
なんか飛び上がりたくなる程、すごく嬉しかった。
そして今日は会えるとのこと。
真っ白い白衣とマスク・帽子を被り、
手を何度も洗い消毒液を繰り返し付け
集中治療室の入り口を緊張して入っていった。

佑汰は一番奥にいた。
産まれたときの姿より、一回りも二回りも小さくなったように見えた。
看護婦さんが、
佑汰に付いている機械の説明をしてくれた。
『これは心臓が閉じてしまわない様にする点滴で、
その下はその薬の後遺症を緩和する点滴で、
胸と足の管は血圧と心音を測定する器械に繋がっていて
口に入っている管はおっぱいを胃に入れる管。
手足は動かないように柔らかい当て木をして
哺乳瓶の吸い口は、口寂しくて泣くのでおしゃぶり代わりです
体温低下を避けるのに光を当てています』と。
泣くまいと思ったのに、涙がボロボロ出てくる。
看護婦さんがティッシュをくれた。
『今日はちょっと機嫌が悪いけど、いい子いい子してあげても
大丈夫ですよ』
手も、足も、体も、顔も、機械に繋がる管で一杯で
私は、そっと何も付いていない頭を撫でてあげた。
初めて佑汰に触れた。
小さな佑汰が、私が触ることで壊れてしまいそうで怖かった。

その後、先生に今後の事の説明を受けた。
2回目の手術に成功し、良い方向に行けば抱っこも出来るし
直接おっぱいも飲ませられます、とのこと。
何もなく良好ならば、1年を過ぎた頃退院も考えられます。とのこと。

私は帰りに
バスと電車の運賃カードを買って帰りました。

翌々日、病院から電話有り。
『容態が急に悪くなっているので、手術予定日を繰り上げて
明日やります。明日朝一番で来て下さい。』
血の引く思いがした。
身体も心も、震えが止まらなかった。


手術

手術は心肺装置を使い
1度心臓を止めて心臓の血管を付け替える手術です。

どんな状況だったかは詩のページをご覧下さいね。



病院の霊安所から葬儀社の車に行くときって
病院の裏口から出ていくんですね。
考えてみれば当然のことですが。。。
佑汰は小さいので棺には入れずに抱いて帰りました。



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