夢の世界へ

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お通夜・お葬式

家に帰ると、お婆ちゃんが堰を切ったように泣いた。
80歳過ぎて、何度も自分の“死”を見つめたこともあるだろうに
その自分よりも先に亡くなってしまったことが割り切れなくて
呻るように泣きながら、佑汰を抱きかかえた。

仏間に行くと友達が、
佑汰の為に準備してあったベビー布団を敷いてくれていた。
その上に佑汰をそっと寝かせ掛け布団を掛けた。
唇がほんのり紅くて
穏やかな寝顔である。
お兄ちゃんと、お姉ちゃんが見に来て
ほっぺを撫でたり、力無い小さな手をさすったりした。
お通夜は翌日に延ばして貰った。
今晩ゆっくり初めての我が家で、初めての家族と一緒に過ごさせたい。

その夜、旦那が仏間に布団を敷いて
佑汰の隣で佑汰を眺めて眠った。
私が入院していたので、
産まれてからずっと佑汰に付きっきりだったのは旦那である。

翌日からはお通夜とお葬式の準備で忙しくなる。
悲しんでばかりはいられない。
せめてもの佑汰にやってあげられることである。
しっかりしなくてはならない。

お通夜の日・お葬式の日
沢山の人の色々な言葉が目の前を交差する。
取り方によっては傷つく言葉もあったのだけれど
相手にしてみれば、
どうにか慰めたいと思ってる言葉だから。
『考えようによっては、
長年育ててきたお兄ちゃんやお姉ちゃんが大変な事になるより
長年育ててない分、悲しみは少ないじゃない。しっかりね。』
→でも、みんな私の大切な子供だから優劣なんて無いんだけど…
『産まれてきて短い間しか生きられなかったけど
今はどうしてと思うけど、絶対何かしらの産まれてきた意味が
あると思うから。。。』
→佑汰は無駄死にした訳?意味がなければ産まれてはいけないの?
『密葬だから町内会には連絡しなくてもいいよね』
→産まれて間もないから家族で内々の葬儀だけど密葬のつもりはありません

やっぱり精神的に弱くなってるんだ。
解けない方程式が頭の中を埋め尽くす。

葬儀が終わり、
家族と私の実家の家族とで火葬場に向かう。
実家の母が
『こんな悲しい思いをするのなら、もう孫は産まないで。。。』
とポツリ。
私は年とった母や姑に申し訳ないことをしたと、心から思った。

小さな骨壺を仏壇に置いて
近くのスーパーに夜買い物に行った。
佑汰が亡くなったからといって
家族に夕飯を食べさせない訳にもいかない。
でも、すごく不思議な感覚を味わった。
私というロボットを内側から操縦して買い物をしている感覚。
近くのスーパーなので、何も知らない知人に会う。
声を掛けられる。軽い会釈で挨拶をする。
遠くに、葬儀に来てくれて一緒に泣いてくれた知人を見かける。
知り合いの人とだろうか?笑顔で何か話をしている。

今買い物をしている私も含めて
地球は動いているんだ。と思った。
自分が自分では無いような、すごく不思議な感覚。




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