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資料

《説明》
　数量指示売買とは、一定の面積・容積・重量または尺度について売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金が定められる売買契約のことである。数量指示売買は、売主の瑕疵担保責任の一つにあたり、売主による原始的に一部不能のときに発生する、買主の信頼保護を図るための法定責任である。
　今回の判例は、土地の測定のミスにより数量不足であった当該土地の部分につき、かりにその不足分があったとして得られていただろう利益（履行利益）が売主の責任として課されるか否かが焦点となった判例である。
　債務不履行責任と瑕疵担保責任と比べると、前者は売主の過失責任を原則的にとるため、売主の過失を証明できなければその不履行責任を負わせることはできない。しかし一方の後者は、法定責任であるため、売主の過失・無過失を問わない。したがって、無過失責任である瑕疵担保責任の損害賠償に履行利益までも負わせるには、売主にあまりに酷ではないか、という考えから瑕疵担保責任においては、履行利益は損害賠償の範囲外とされている。
　しかし、今回の判例をみてみると、「・・・その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達するうえで特段の意味を有するものではないときは、・・・（履行利益について）その損害を賠償するべき責めを負わないものと解するのが相当である。」と判示した。したがって、最高裁判決においても、この場合は瑕疵担保責任の場合は、履行利益は損害賠償として含まれないことになる。しかし、「その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達するうえで特段の意味を有するものではないとき」と限定し、そして、今回の事件での裁判の過程においてもその数量が特に重要であると示してはいない、ということから判断している。つまり、数量について特段の意味を有するときは、場合によっては履行利益を負わせることができる、ということに留意する。
売買における瑕疵担保責任（民法第570条）の法的性質については、法定責任説と契約責任説とが対立しています。

法定責任説の論理は次のとおりです。
特定物売買においては目的物に瑕疵があっても完全な履行である。→ しかし、それでは特定物の買主の保護に欠ける。 →そこで、特定物の瑕疵について、法律（民法）によって特別に規定された売主の責任が、瑕疵担保責任である。

法定責任説の帰結を列挙すると次のとおりです。
1：民法第570条は、特定物のみに関する規定である。
2：不特定物の場合には、民法第412条・第415条・第541条による催告・解除によって対処する。
3：賠償範囲は、信頼利益である。

契約責任説の論理は次のとおりです。
売買契約の内容には、目的物に瑕疵が無いことも含まれる。→しかし、売買という契約類型の特殊性から、債務不履行責任（契約責任）の内容を修正する必要がある。 →そこで債務不履行責任（契約責任）の特則として設けられた責任が、瑕疵担保責任である。

契約責任説の帰結を列挙すると次のとおりです。
1：特定物・不特定物を問わず、売主には完全履行義務がある。
2：特定物売買にも債務不履行の規定が適用される。
3：特定物売買の場合に、瑕疵修補請求を認める。
4：不特定物売買の場合、無催告で解除を認める(民法第570条)。
5：賠償範囲は、履行利益である。

契約責任説は、特定物か不特定物かによって区別する法定責任説の立場を、宗教の教義のようなものであり、「特定物ドグマ」であると批判するわけです。

数量を指示して売買をした物が、不足していた場合は、買主は、代金減額請求できます（民法５６５条）。「数量を指示して売買する」とは、当事者が、売買の目的である特定の物が一定の数量を有することに主眼を置き、代金もこの数量を基準として定めた場合です。
土地の売買では、土地の面積が表示されますが、それだけでは、数量を指示したことになりません。面積の表示は、土地を特定するためのものであり、登記簿上の面積は、実際の面積とは違うからです。
土地を分譲する際、面積および単価を表示し、各区画の価格を決めた場合は、原則として、数量指示売買となります。契約書中で、数量および単価を表示し、後で、実測し、数量に増減があった場合は、代金を増減して清算するとの条項がある場合も、数量指示売買に当たります。
以上の場合以外は、数量指示売買と解釈することは難しいです。通常、数量は目的物を特定する手段と見られているのです。
相談者の場合、「土地１３８．２４m2、代金７４６４万円（約５４万円/m2）」との表示は、目的物を特定し、一応の代金計算の根拠を示したのです。数量指示売買とはならないでしょう。

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