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14 妹『愛子』の影響力

14 妹『愛子』の影響力
novel06

猪突猛進、直情的な麗子にとって、常に冷静で客観的な判断をする妹は正に目付役であった。麗子は妹を『愛子』と呼ぶ。上野のマンションに住み虎ノ門のフグ料理店に勤めている。麗子と四歳違いだが精神的には愛子の方が大人である。日本での生活は質素で堅実、浮付いたところは一切ない。そんな愛子の唯一心配の種が姉であった。土門との関係は最初から反対していた。

「姉さんがどんなに尽くしても彼は来ない。家庭を捨て姉さんと一緒になるとは思えない」

愛子は事あるごとに意見をした。

「あなたの言いたいことはわかる。例え遊ばれても私が勝手に愛した人だから彼に罪はないの。遊ぶつもりならもっと若くてきれいな人を選ぶわ」

麗子はいつも土門をかばった。愛子は相変わらず関係を続ける麗子に愛想が尽きていた。

麗子は子供を産むことを愛子に打ち明けた。思いがけない告白に愛子は激怒した。

「何を考えているの。中国の両親が許すはずないでしょ。父親の違う子供同士が一緒に生活してうまく行くはずない。そんな理不尽なこと世間が認めない」


「両親は説得するつもり。私の好きなようにさせて」

「心配するとかしないとかの問題ではない。絶対にしてはいけないことなの。よく考えてご覧なさい」

「あなたは人を愛したことないの。命をかけて愛した人の子供を産んで育てることがそんなに悪いこと」

「姉さんは自分勝手な人間ね。父親のいない子供がどんなに不幸かわからないの。二人の子供にさえ母親の責任を果たせないくせに。それに土門さんを愛しているなら彼を困らせることはしない方がいいわよ」

「…………………」

麗子は言葉に詰まった。愛子の言うことも一理ある、と思った。いつも非難ばかりする愛子を『おせっかい焼き』と思っていたが、今回の忠告は身にしみた。

「今すぐ堕しなさい。私がついて行って上げる」

二、三日後、麗子は愛子に連れられ亀戸の病院で中絶手術をした。無念さと虚脱感を味わった麗子は、一刻も早く土門に逢いたいと思った。そしていつの間にか公衆電話の前に佇んでいた。

「あなたに今すぐ逢いたい。マンションまで来て、待っています」

土門に中絶のこと告げなかったが、声の調子がいつもと違う麗子の様子に『何か起こったのか』と不安がよぎった。

マンションの前に立った土門はえたいの知れない不安感に襲われ、出来ればこの場を回避したいと思った。ドアを何度かノックしたが応答がない。土門はマンションの前、車の中、近くの公園と場所を変えながら約三時間待った。しかし麗子は現れなかった。『約束はきっちり守るのに』と戸惑いながら怒りが込み上げて来た。

電話の内容を聞いた愛子が『今は逢わない方がいい』と麗子をマンションに帰さなかったのであった。麗子は土門に逢うことなく傷心のまま中国へ旅立った。中絶のことは一ヶ月後に帰国した麗子から直接聞かされた。

15 水商売への転身



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