ねこっぽ雑記

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「滑稽俄安宅珍関」

【滑稽俄安宅珍関(おどけにわかあたかのちんせき)】



 最後は「滑稽俄安宅珍関(おどけにわかあたかのちんせき)」。「勧進帳」で有名な安宅関が「この関を通りたい者は一芸を見せよ」という変な関として登場。様々な人たちが様々な芸を見せるという趣向です。富樫は総白髪+髭の 仁左衛門さん 。番卒は 市蔵さん・亀蔵さん 兄弟。

 まず最初に登場するのは武蔵坊弁慶( 魁春さん )。他の一行とはぐれた弁慶は、巡礼のおつる( 左團次さん 。なんでも30年間諸国を巡礼していたら大きくなってしまったらしい。)と共に安宅関を通ることになります。魁春さんはやけに大きな付け鼻を付けていました。左團次さんのおつるには客席から「かわいい~」の声が聞こえました。

 関を通ろうとした弁慶は例の如く勧進帳を読めと言われます。早速適当な巻物を開いて勧進帳に見せようとする魁春弁慶。でも巻物を開くとメモ用紙がちらりとのぞくんです。「さてはカンニングペーパーか」と笑う客席。するとそのうち変な音楽が始まって、魁春さんのカラオケに合わせて左團次さんが踊りだします。さっきの紙はどうやら歌詞カードだったようです。昼の部ではマイクの関係で少ししか聞こえなかった魁春さんの歌も夜の部では大音量になり、「♪阿波のぉ~なるとのぉ~」の歌詞に合わせて足をグルグル回す左團次さんに大笑い。結局二人は席を通してもらえたのでした。

 次に登場したのは 水谷八重子さん、波乃久里子さん、光本幸子さん 新派 の面々。「私たちも昔は三人娘って言われていたのに今や三婆よ!」などと言いながら花道を歩いてくると目に飛び込んできたのは白髪のお爺さんになってしまった仁左衛門富樫の姿。「えっ!?孝夫ちゃんったらあんなに老けちゃったの!?」「でも孝夫ちゃんと私は3歳しか違わないわよ!」「ねぇ、ちょっと孝夫ちゃんかどうか確かめに行きましょうよ。」と3人は安宅関へやってきます。しかし安宅関は安宅関でもここは芸をしなければ通れない安宅の珍関。というわけでここで新派の女性陣総勢22名が京舞・手打ち式を披露します。「一糸乱れぬチームワーク」(by富樫おじいちゃん)に感激した富樫はもちろん一行の通過を許可。一行を見送った富樫おじいちゃんが「本物の女子はよいのう~」とつぶやいていたのが笑えました(笑)。

 次にやってくるのはゴスペル聖歌隊。宣教師・サンフランシスコザビエルの 團蔵さん と聖歌隊の 松緑さん・亀治郎さん、権十郎さん、亀三郎さん、亀寿さん、芝雀さん の面々(プログラムには芝雀さんのお名前も出ているのですが、私の記憶ではいらっしゃらなかった気が…。もし出ていらしたら大変失礼致しました。)。團蔵さんはいかにも神父さんor牧師さんという格好で、一方聖歌隊は皆さん黒塗り。誰が誰だか分かるまでにかなり時間を要しました。

 さて富樫に一芸を求められた聖歌隊は「天使の歌声」(by團蔵さん)を披露することになります。というわけで皆さんで第九を歌うんですけど……そもそも第九ってゴスペルなんですかね(笑)?ちなみにこの第九の出来は昼の部と夜の部で全然違っていて、昼の部では上手い下手以前にメンバーが思い思いに歌っているため全く揃っていませんでした。最初は「ああ、こういう演出なのね」と思っていたんですが、夜の部の第九は一応きちんと揃っていたんです。「えっ!?それじゃあ昼の部のあのバラバラな歌は思いっきり素だったの!?」とそれはそれでかなり驚きました(笑)。あとは昼夜共に亀治郎さんがかなり自信たっぷりに声を張り上げていてそれはそれですごかったです。

 こうして一行は通行を許されるのですが、ここで宣教師サンフランシスコザビエル團蔵がトリビアを一つ披露していきます。番卒役の 亀蔵さん は40年以上の独身生活に終止符を打って3月に結婚。しかも相手の人にお子さんがいたため、突然4歳の女の子のパパになったんだそうです。「片岡亀蔵、やるときはやる男だ」の決め台詞(?)を残し、サンフランシスコザビエル團蔵と聖歌隊たちは去っていったのでした。

 次にやってきたのは今を時めくロックグループの「氣志團子」。メンバーは 勘太郎さん、七之助さん、松也君、新悟君 、そして昼の部に 獅童さん 、夜の部に 児太郎君 。マイク持参の彼らはノリノリで氣志團の「One Night Carnival」を披露(もちろん振り付き)していきます。特に獅童さんがめちゃくちゃ決まってました。勘太郎さんは氣志團の振りにも関わらず日舞並に腰が入っていて、5人の中で一人異様な踊りをしていました(本人はいたって真面目)。ちなみに彼らの「One Night Carnival」の最中、富樫おじいちゃんが平和そうにお茶をすすっていたのが結構ツボでした。その後白いスーツに着替えた氣志團子は今度は「世界に一つだけの花」を披露しかけるのですがそこで富樫おじいちゃんからストップが。〈氣志團子〉なんだよー、ちょうどいいところだったのにー。〈富樫〉耳が痛い。〈客席〉(笑)。というわけで無事関所を通る氣志團子。再び花道で「世界に一つだけの花」を歌って引っ込みます。ちなみに白いスーツ姿の七之助さんは妙に甘い雰囲気を醸し出していて、なんだかホストっぽく見えました(笑)。

 夜の部では氣志團子の次に「新三国志3」の主要メンバー( 段治郎さん、右近さん、猿弥さん、笑也さん、笑三郎さん、春猿さん )がそれぞれ「新三国志3」で演じている役として登場。一芸を求められた一行の内立役3人が「稽古不足なので寛容なるご見物を」と断りながらも京劇役者直伝の棒術を披露します。格好は姜維・陸抗・謳凌でありながらもやっていることは孫悟空・猪八戒・沙悟浄なのが笑えました(「華果西遊記」シリーズの中でも披露された棒術なのだ)。どう考えても棒術に向かない衣装を身にまとっての棒術に四苦八苦しながらもなんとか終了。富樫は「師匠の留守を守っていて感心じゃ」と一行の通行を許し、「これからも仲良く師匠の留守を守るんじゃよ」と温かい言葉を掛けていました。

 「新三国志3」の一行が通り過ぎた後突如として流れる「ベルサイユのばら」のテーマ。そして花道からやってきたのは 福助オスカル (笑)!その後ジャワの踊り子の 孝太郎さん 、トートの 高麗蔵さん 、踊る男Sの 玉太郎さん (宝塚名物の羽を背負って登場)、レット・バトラーの 弥十郎さん (非常に格好良かった)、スカーレットの 扇雀さん が登場。皆さん恥を捨てて成り切っていました。ちなみに夜の部には孝太郎さんの妹で本当に宝塚スターだった汐風幸さんがいらしてたんです。「孝太郎さんはよくやるなぁ」と尊敬してしまいました。きっと汐風さんはそんなお兄さんの姿を見て大爆笑していたんだろうな…(笑)。

 さて安宅関にやってきたタンカラヅカ(タカラヅカではなく“タンカラヅカ”)の一行。白浪五人男のパロディーで傘を片手に一人一人名を名乗っていきます。弥十郎さんは「女泣かせのレット・バトラー」の台詞と共に投げキス。客席からは黄色い声が飛びました。福助オスカルは「嫌だ嫌だと断りながら扮装すると気持ちいい」という台詞で客席を大いに沸かせ、高麗蔵さんは「黄泉の国から蘇り、顔色悪くてごめんなさい」と何気に謝っていたのが可笑しかったです。スカーレット扇雀は他の5人が「志ら浪」柄の傘を持っている中で一人だけ白いパラソル。「扇千景にそっくりの…」という台詞に客席は大爆笑でした。

 名乗りが終わると扇雀スカーレットの「こんな歌舞伎みたいなことをしていないで踊りましょう」の一言でショータイムがスタート。ちなみに今回は宝塚歌劇団元花組トップスターの真矢みきさんから教わったんだそうです。なんか扇雀さん中心の逆ハーレムという感じだったなぁ。キス(の真似)をするわ抱き合うわすごかったですよ~。しかも最後に扇雀さんたらスカーレット衣装を脱ぎだしてダルマ(水着のような衣装のこと)姿になっちゃったんですよ(…)。そして全員でラインダンスをしてフィナーレ。足を上げれば上げるほどムキになっているのが傍から観ていると面白かったです。というわけでタンカラヅカ一行ももちろん関所を通過。ちなみに俳優祭翌日、ダルマ姿で踊る扇雀さんの映像が「中村扇雀さん」というテロップと共にワイドショーで放映されているのを目撃しました。

 嵐が去った安宅関へやってきたのは浅草パラダイスの池島卯之助( 勘九郎さん )+α。芸者の格好のまま卯之助に引きずられてきたこの人、なんと中原源吉役の 柄本明さん だったのです。「ここ、浅草でもなければ演舞場でもないよ。俺たち歌舞伎座に来ちゃったよ。」という卯之助の言葉を聞いて「か、か、歌舞伎座――!」と雄叫びをあげる源吉さん。客席からは歓迎の拍手が。そのうち「池島かつ( 藤山直美さん )は博多座で公演中なので来られない」という話題になるのですが、そこへ来ないはずの池島かつさんが登場。なんでも博多座公演はついこの間終わったらしい。そしてここでかつさんが「私、すごくいい男を見つけたのよ。」と言って「おーい、お茶」と呼ぶと、なんと客席を通って現海老蔵の 新之助さん が登場!客席からは「キャー!!」と悲鳴に似た声が響きました。黒紋付の新之助さんはすきっとして非常に男前でした。というわけでここで襲名真近の新之助さんから襲名のご挨拶。

 ところがこの後安宅関を通ろうとした新之助さんは富樫おじいちゃんから一芸を求められます。昼の部では「5月からの公演を頑張りますので許してください」と言って通してもらえたんですが、夜の部は富樫おじいちゃんが客席に向かって「(新之助さんには)5月からの公演でいい芸を見せてもらうということでどうじゃろう」と打診したところ「えーーーーっ!?」と大ブーイング(笑)。これには新之助さんも「俺、何にも考えてないよ(笑)。」と困り顔。結局特別に「それではこの間父に習ったにらみを…」と3日早くにらみを披露してくれました。三方などのものがない中で急なにらみの披露でしたが、若々しく力強いにらみに、客席からは大きな拍手が起こりました。というわけでやっと新之助さんも退場。ちなみに源吉さんはみかんを食べる芸を披露、かつさんはお父さん(藤山寛美さん)の真似を披露して仲良く3人で花道を引っ込んでいきました。

 その後、 友右衛門さん、芝雀さん の担ぐ駕籠屋が安宅関を通りかかります。「駕籠の中にいるのは歌舞伎座の怪人ではないか!?」と言われ、驚く駕籠屋。そして中を空けると……登場したのは 中村雀右衛門俳優協会会長 。というわけで雀右衛門さんからご挨拶があり、最後に出演者全員で手締めとなりました。

 ちなみに昼の部では特別出演した柄本明さんにお礼を言おうと雀右衛門さんが柄本さんの方を向いたら、ちょうど柄本さんが裾をまくりあげてバサバサとやっているところで、雀右衛門さんはしばらくタイミングを失って絶句していました(笑)。また「お手を拝借」の時、他の役者さんが胸の前辺りで適度に手を開く中、スカーレット役だった扇雀さんは「さあ、みんな、手を叩くのよ!!」とばかりに大空に向かって手を広げていて笑えました。また、夜の部では白いスーツ姿の児太郎君を新之助さんが随分かわいがっていました。

 というわけで舞台・客席双方が手を振り合う中俳優祭は幕。熱く、長い一日でした。




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