ナ チ ュ ー ル

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星間炭素鎖分子

岡武史氏 との共同研究(1964~66)では、 HC7NやHC9N (シアノトリアセチレン、シアノテトラアセチレン )を星間に発見している。いかに炭素鎖が、星間分子として生成するかを探求している研究者である。

星間分子である炭素鎖分子とは、炭素原子が直線状に結合した分子で、 HCnN , CnH, CnH2, CnS, CnOなどの系列が知られている。これまで知られている最も長いものはHC11Nである。炭素原子の数の割に水素原子が少ない不飽和な分子で、一般に化学反応性が高い。そのため、地上環境では存在しないが、低温(摂氏-263度)で希薄(地球大気の千兆分の1)な星間分子雲では数10万年の寿命を持つ。 


岡武史  名誉教授(シカゴ大学)は、分子研レターズ「天体化学 Astrochemistry」にこう書いている。「天文学は、科学的思考の源であり、最も歳経た学問ですが、又最も若い学問でもあります。僕が今教える物理と化学は、大昔僕が習ったものと本質的に変わりません。しかし天文学は基礎から変わってしまいました。宇宙の神秘は物理、化学と桁違いの豊かさで、天文学は永遠に若い学問であると思われます。」「原子、分子、物質の学問である化学と、星、銀河、宇宙の学問である天文学は本質的に繋がっています。先ず C,N, O等化学を豊かにする原子の原子核は高温、高圧の星の中で、核融合反応により生成します。原子の存在比は星の進化の結果であり、天体核物理で説明されます。 逆に星は分子雲の重力凝縮から産まれ、その際分子が熱廃棄の役割を果たします。」

クロトー教授は、このような天体化学 (Astrochemistry)の探求後、1985年「C60:Buckminsterfullerene」に到達した。

一方、岡武史博士は、1980年に実験室での 「星間分子であるH3+」の分光学的な観測を成功させた。この観測により、H3+が正三角形構造であることが実験的に確認された。

H3+発見の歴史

1911 J. J. Thomson **Discovery of H3+
1913 NielsBohr *******Theory of H
1928 堀健夫 *******Analysis of H2spectrum
1935 Charles Coulson **Theory of H3+
1967 Gerhard Herzberg**Spectrum of H3+
1980 岡武史 ***********Search for H3+

H3+ は水素原子3個と電子2個からなる+1の電荷を持ったカチオン分子である。星間空間や水素ガスの放電中に、多量に存在する。星間空間は密度の比較的大きなところでも、地球上に比べて低圧(およそ10−15気圧以下)であり、他の分子との衝突頻度が少ないことからこのような反応性の高いイオンでもある程度の量が存在することができる。星間空間ではこの分子が他の多くの分子生成にとって出発分子であり、星間空間の化学において最も重要な役割を担っているといえる。また、H3+ は分子中にある2つの電子が共に価電子であり、最も単純な三原子カチオンでもある。
H3+ の3つの水素原子は等価であり、構造は正三角形である。つまり、3つの原子核が2つの電子を共有する、共鳴構造を取っている。



後年クロトー教授は、岡博士のことをこう語っている。
「岡武史博士(現在シカゴ大学)は、私の知っている最も偉人な日本人科学者である。彼は大変良い友達でもある。もし彼が偉大な科学者であることを知りたければ.. Modern Physicsに載っているH3+の素晴らしい仕事を見られることを薦めたい。我々は(1960年代から)一緒に仕事をした。私は分光学に興味を持ったが、彼があまりに素晴らしかったので私は何か別のことを研究したほうが良いと思った。そこで宇宙で炭素鎖を発見したことを言いたい。」




参考文献
ハロルド・クロトー「C60-バックミンスターフラーレン 地球に舞い降りた天空の球」ソフィアサイティク No.11 2000
篠原久則「ナノカーボンとの運命の出会とオデッセイ」 分子研レターズ No.65 2012
岡 武史「天体化学 Astrochemisry」 分子研レターズ No.66 2012


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