武士道からイエスへ
無私無欲「命もいらず、名もいらず、官位もいらず、金もいらずという人は始末に困る。
だが、この始末に困る人でなくては大事はできない。なぜならば、こういう人は、
ただ単に無欲というだけでなく、日々道をおこなっているからだ。
正しい道を歩き続けているからこそ自信があって、何もいらぬと言えるのである。」
これは西郷隆盛が、山岡鉄舟のことを言ったことばであるらしい。
このような人といっしょに仕事をしたい。
仕事というのは、金儲けの仕事ではなくて
自分の信じるところのことを、一銭ももらわずにするという働きのことである。
私の知人にホームレスを助けている人がいる。
ボランティアとして人のために、駅前を掃除している人もいる。
それが国を動かすような働きであるならなおさらであろう。
山岡鉄舟のような人が隣人にいればと思うなら、そのような人に自分がなればと
誰かが言っているようだ。評論家になることは容易いが、実行するのは
至難のわざである。
だがしかし、である。これに当てはまる人がイラクにいるではないか。
米軍にテロを仕掛けたり、日本人だけでなくイラクに駐留している
諸外国の軍隊を派遣している国の民間人を
拉致している民兵たちがそれに当てはまるような気がしてならない。
彼らは、命がけである。名もいらず、金もいらず、事に向かっている。
イスラエルに報復をかけて体に爆弾をまきつけて、突進している人たちは、
山岡鉄舟の生き方とどう違うというのだろうか。
ものごとをある一方から見ると、まるで反対の意見、主張となってしまうことがある。
勝海舟は、江戸城を無血開城した。
同じ国民同士が血を血で洗う戦争を避けた功績をだれもが賞賛する。
だがこれを武士の風上にもおけぬと義憤を抱いた人がいた。福沢諭吉である。
明治２４年に彼は、「やせ我慢の説」を書いている。
封建社会を真っ向から非難して
万民平等を唱えて、
「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と言った人が
江戸城に立てこもり戦うのが、武士の意地だと主張したのである。
日本人の魂を失ってなにが文明開化かというその胸のすくような主張は、
物事に処する心構えに関することだからであろう。
「小さな虫けらでも、鉄槌が下されれば、その足を張って抵抗するのに
２７０年も続いた徳川幕府が何の抵抗意識もなく、ひたすら講和し、
薩長に哀訴したような振る舞いは古今世界に例がない。」
言われればそうである。
やせ我慢はどこに行ったかと言うのだ。
福沢諭吉は第２次世界大戦の終結時ならどのように言ったであろうか。
軍部が最後の意地を突きとうせという主張である竹やりをもってして
B２９を突き落とせと言うたであろうか。
ものごとの根幹を失うと、
人の主張は両者が正論となり両者が愚論ともなる恐怖の穴ぐらに
もぐりこんでしまう。
武士道も儒教も禅も人の道を説く高邁諸説もどのような教えも、
我ら凡人にはどの声が羊の牧場の餌かと迷うばかりである。
だから、山岡鉄舟のごとくに生きることに落ち着くしかないのではないか。
それを実行するためには、たいへんなエネルギーが必要となる。
だからそのエネルギーをこれからも書いて書いて書きまくりたい。
そしてそれを自分に当てはめなければ、医者の無用心、論語読みの論語知らず、
人に宣べ伝えておきながら自分は失格者になると言ったパウロの警告を
無駄にすることとなる。
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