「結婚しない鉄道員」ってタイトル・・・・やっぱりおかしいですよね。
実際は「悲しき鉄道員」っていう歌の原題だって聞きましたけど・・・・そのうちタイトルは代えます。
「結婚しない鉄道員」(仮題7)
竹夫は数日「安部工房」に通ってみたが、状況は全く変わらなかった。
変わらないどころか、マゲワッパ職人の師匠は、竹夫と一切口を利かなかった。
「師匠、どうか弟子にしてください。」
土間に正座して何度も土下座をしたが、全く振返って見向きもしない。
何日経ったであろうか・・・・
「あら、あんたまた来てたの?」
何か用足しに出かけていて帰ってきたばかりの職人の奥さんが、竹夫に声をかけた。
「ちょっとこっちへ・・・」
小さな声で手招きされて・・・・竹夫は一緒に外へ出た。
「あのさ・・・あいつ偏屈だからさ・・・アンタがここに来るくらいなら図書館に行って木の勉強でもすりゃいいのに・・・なんて言ってるよ。」
「それで弟子にしてくれますかね・・・・」
「そりゃどうだか・・・でもね・・・あたしの知り合いの木の伐採をしてる会社の社長さんがね・・・・若いきこりさんを探してるのよ。・・・もしよかったら、そこの会社にしばらくいてみたら?」
私はしばらく考えていた。
「あんた、ここに何日着てても、あの人の気持ちは変わらないよ。・・・それよりそっちの会社で秋田杉の勉強して・・・・それでもマゲワッパ職人になりたいっていうならその時は私が何とか応援するから・・・」
こうして、職人の奥さんに紹介され・・・・竹夫は秋田杉の伐採の仕事に就くことになったのだ。
その会社・・・「ウッドベル株式会社」・・・この秋田県O市には最近やってきた会社らしい。
「きこりの会社なのに・・・なんで横文字の名前なんだろう?」
不思議に思ったが、実はこの会社の社長・・・いろいろな商売に手を出しているらしい。
最初は婦人服とかを扱っていて・・・・そちらの本拠地は東京にあるらしいが、本社はあくまでもO市のようである。
「なんとなく怪しい会社だな?」
竹夫はそう思ったが、秋田杉の勉強をさせてもらい、いつかはマゲワッパ職人に・・・・と思っていた竹夫は我慢することにした。
その社長に声をかけられた。
「ああ・・・南森君と言ったかな・・・明日から出張だ。・・・この女性と一緒に青森県のM市の営業所に行ってくれ。」
竹夫はその女性の顔を見て「あっ」と小さく叫んだ。
「レディ・マッスル」・・・そう、竹夫のテントに勝手に忍び込み、朝には食料を盗んで逃げたあの中国曲技団の女性だったのだ。
しかし、竹夫にはそんなことはどうでもよかった。
「あのう・・・俺、秋田杉のことを勉強したくてここに来たんですけど。・・・」
「わかってるよ・・・・M市には青森ヒバがあってな・・・それも木の勉強の一つだから。・・・」
「秋田杉のことを勉強したいんですけど・・・」
「ものには順序があるんだ・・・2か月ほど・・・・青森ヒバの勉強をして来い。」
「なにをするんですか?」
「もちろん青森ヒバの伐採だよ。」
「この女性は?」
「飯炊きだよ・・・意外とこんなデカいのに繊細な料理を作るんだ。」
こうして・・・運命の糸に弄ばれて・・・南森竹夫はレディ・マッスルと一緒に本州の最北端・・・青森県M市に向かう事となったのである。
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