水木茂さんがお亡くなりになりましたねえ・・・
じつはこの「結婚しない鉄道員」に、今日から水木茂さんの漫画に登場する妖怪が、登場する予定だったんです。
予定・・・いや、今後の展開に必要不可欠な妖怪ですから、登場させますけど・・・・タイミングがいいのか悪いのか・・・・
とにかく・・・・水木茂先生のご冥福をお祈りします。
「結婚しない鉄道員」(仮題43)
恐山に向かって、Kと花子を乗せた竹夫の車は、ゆっくりと進んでいった。
スピードが出ないわけではない。
竹夫の車は法律順守のカーナビを積んでいるから、時速60キロなら60キロで・・・信号が赤なら停まる・・・そのほか、絶対に交通警察官には捕まらないように走るのだ。
もちろん、カーブの多い恐山街道だから・・・それなりに徐行するし・・・前の車がゆっくりならば、その車に合わせてスピードも加減される。
ぜったいに違反や事故を起こさない車なのだ。
ところが・・・・
まだそれほど走ってないうちに・・・・目の前に警官が現れ・・・赤い旗を振られた。
「はい・・・お急ぎのところすみませんね。・・・ちょっとお聞きしたいことがって・・・・すみません、免許証と車検証を出していただけませんか?」
「あのう・・・なんですか?スピードは出してませんし・・・シートベルトだってちゃんとしてますけど。」
竹夫は窓をあけてそう答えた。
「いや、法律を順守していただいてることは認めてるんですけど・・・・ちょっと質問・・・・よろしいですか?」
竹夫は頷くしかなかった。
「スピードを出してないんですけど・・・・女ほかの車も走ってないような道路で・・・なぜスピードを出さないんですかね?」
「え?」・・・と竹夫は答えに詰まった。
「この見通しのいい道路で・・・ふつうの人ならもう少しスピードを出すでしょ?・・・・それが不思議でね?」
「でも、スピードを出したら捕まるでしょ?」
「そうなんですけど・・・違反の数が多くって点数がないっていうならわかりますけど・・・調べたところ免許証もきれいだし・・・・」
この警官はいつの間に調べたのだろう。
「それじゃ気を付けて」
これだけで済んだ。
もちろん違反をしていないわけだから、すぐに解放されたわけだが・・・
「ねえ・・・今の警官・・・おかしくない?」
車が走り出してまもなく・・・花子が口を開いた。
「あれは敵の警備よ。」
Kがあっさりと答えた。
「敵の警備?」
「違反もしていないのに、停める警官がいる?・・・・何か事件があって、緊急取締りならわかるけど、どこを探しても他のお巡りさんはいなかった。・・・ひとりで取締りをしている警官なんて、いるわけがないじゃないの。・・・あれは敵の警備係よ。」
「敵って?誰なのよ。」
「それがわからないから、あたしたちは調査に来てるんでしょ?」
たしかにおかしなことだと・・・・竹夫も思った。
その後車は順調に走り・・・ちょっとゆで卵のような匂いがしはじめる。
硫黄の匂い・・・恐山はお寺でありながら、参拝客には温泉としても有名なところで、その匂いであろう。
「地元 の人にはいろいろな効能のある温泉としても有名なんだよ。・・・近所の子供なんか、この恐山の温泉でアトピーが治ったって・・・」
聞きもしないのに、花子が教えてくれた。
まもなく湖が見えてくる。・・・「宇曽利湖」である。
そして恐山駐車場に到着した。
「ああ・・・ちょっと疲れましたね?」
「疲れよりも、南森くん・・・・頭は重くない?」
「え?ああ・・・あの薬のおかげですかね?・・・これだけ恐山に近づいたのに、全く頭が重くなることはありません。」
竹夫はKから、薬を貰って飲んでいた。
「ま、少し緊張していることもあるんだろうけど・・・何ともなければいいんだ。」
Kはトランクからいろいろな装置を取り出しながらそう言った。
「Kさん、あの受付の人たちがこっちを見てますよ?」
山門の前に入山料を徴収する受付があって、中にいる数人がこちらを見ている。
「大丈夫よ・・・あの人たちが普通の人なら、テレビの撮影機材にしか見えないから。」
たしかにいろいろな装置はそのように見えるかもしれない。
でも最後に取り出したピストルやライフルは・・・・武器だという事が、全くの素人でも分かる。
しかしそれも大きなバッグの中に入れるとわからない。
入山料を支払うときに、係員から聞かれる。
「その荷物はなんですか?」
「撮影機材です。」
「寺務所から許可は出てますか?」
すると・・・Kがその書類を出した。
どうやらお寺の方には撮影という事で許可を貰っているようだ。
なんなく境内に入り込み・・・・すぐに寺務所に挨拶に行く。
それほどの説明はしなくてよかったという事は、何の調査かもお寺の方ではわかっていたという事だろう。
各装置を組み立てる。
カメラのように見えるものは・・・GPSでかく測点をコンピューターに取り込み、戻ってから平面図を作成する機械だ。
もちろん、高さも自動的に検測するから、出来上がった図面は地図のようなものになる。
アンテナのようなものは、敵のアジトを調べる器械だ。
山の中に異様な空間などがあると、音波によって教えてくれる。
そんな装置がいっぱいあった。
「さ、行きましょうか?」
見た目はカメラのような装置が一番重そうなのだが、実はそうでもない。
重いのは武器の入ったバックだったから、一応竹夫が持った。
真正面に中門があって・・・・その奥に立派な建物が見える。
「とりあえず真正面の建物から調べるんですかね?」
竹夫が質問した。
「建物に敵がいるわけがないでしょ?・・・建物なんか撮影している振りするだけでいいのよ。」
竹夫はほっとして緊張が緩んだ。
「でも・・・ほら本堂の陰から変なものがこっちを見てるわよ。・・・振返らないで!!」
Kに言われて真正面を見たが何も見えない。
「Kさん・・・なにも見えまえんよ。」
竹夫が言うと・・・
「シッ!!・・・あなたどこ見てんのよ。・・・・本堂って言ったら中門の横だよ?・・・真正面にあるのは地蔵堂!!」
小さな声だが鋭い口調でKが言った。
「恐山菩提寺」のご本尊は「お地蔵さま」で・・・たくさんのお地蔵様が善男善女から寄せられていた。
それが地蔵堂に祭られている。
本堂は中門の左手にあり・・・そのようには思えないのだが・・・・建物の入り口に欄間があり・・・・ここに「恐山7不思議」の一つがあった。
仏教のことは詳しくないが、逸話の中に割れた水瓶の話しがあって、その情景が欄間にはあった。
ところがこの水瓶だけ・・・・なぜか誰も磨かないのにずっと白く輝いているのだ。
今度読者のみなさんが見る機会があったら見てほしいと思う。
その本堂の方をちょっと見ると・・・なにも見えない。
「誰もいませんよ。」
「あの本堂の玄関の柱のずっと下の方・・・まだいるよ。」
Kが見ている方向に・・・・竹夫は愕然とした。
目玉に手足がついて動いているのである。
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