ノブたちは、姿を消したまま、じっと魔法の木の根元に居ました。
ザウラブダグは拷問台に縛り付けられている「ハイエナ妖怪」と老人を問い詰めます。
「誰がお前たちを助けたのだ?・・・・どんな魔法使いが助けに来てくれたというのだ?」
それはそれは恐ろしい声で詰問するのです。
サキがそれをしたのですが、もちろん姿を消したままで魔法をかけたのですから、彼らにはまったくわかりません。
「いつから、水滴がお前たちに落ちていないのだ?」
「それは最初からでございます・・・ザウラブダグ様」
助かりたい一心で「ハイエナ妖怪」が答えました。
「ほほう・・・お前はわしの部下だという身分もわきまえず・・・・それを報告もしないでいたのか・・・・このうつけ者!」
そう叱り付けると、持っていた剣で「ハイエナ妖怪」の心臓を一突きしました。
するとどうでしょう・・・・・血しぶきが飛びその血が体にかかった部分からハイエナ妖怪の体は砂のように崩れていき、そのとき急にふいてきた一陣の風とともに吹き飛ばされてしまいました。
隣に縛り付けられていた老人の顔は真っ青になりました。
次は自分の番だとでも思ったのでしょう・・・・
ザウラブダグは、そんな老人を見やりながら、剣にべっとりとついたハイエナ妖怪の血を、自分の舌できれいになめ、拭い取ったのでした。
「今度は胴切りにしてやろうか?」
そういうとザウラブダグは剣を大きく振りかざし、老人の胴体めがけて振り下ろしたのです。
「しまった・・・間に合わない!」
ノブは思わず目をふさぎました。
そんなノブの耳元に優しい声が響きました。
「大丈夫ですよ」
その声を聞き、目を開けてみると、ザウラブダグの剣は水のように・・・・まさしく水になって飛び散ったのです。
その声の主は「緑」でした。
「だれだ!・・・・じゃまをしたのは誰だ!」
ザウラブダグは叫びましたが、もちろん誰も返事をしません。
「お前がそこにいるのはわかってるんだ」
ザウラブダグは叫ぶと先ほどの作りかけの「スティック」を「魔法の木」めがけて振りました。
そうすると、「スティック」の先から稲妻が鋭く飛び出し、一瞬「魔法の木」からこげくさい匂いがしたのです。
これは、ザウラブダグに存在を知られたのではなく、おそらくあてずっぽうで「魔法の木」にめがけたものでしょう。
しかし、そのときにはノブたちはすでにその場を離れていました。
もちろん記憶が戻った「緑」も一緒に・・・・・・
「チッ・・・逃げたか・・・・」
ザウラブダグは舌打ちをしましたが、そのころ魔法使いたちは、透明になったまま通路を駆け出していたのでした。
そして老人はというと、アリのように小さくなる魔法によって、拷問台から解放され、壁の隙間へと身を隠したのでした。
それから、魔法使いたち5人は「ホッキョクグマ」の洞窟へ向かうのですが、「緑」と「ピンク」は手をつなぎあってお互いの無事を喜び合ったのです。
洞窟へ入ると、みなはそれまで透明だった体をいつものように戻しました。
「これで、われわれの存在はザウラブダグに知られましたね」
ノブが言うと緑が答えます。
「すまない・・・・あのお年寄りが殺されると思った瞬間、勝手に剣を水に変えてしまったんだ」
「いえいえ、よくやってくれました。・・・・僕はあの老人を助け出せなかったら後悔していたところです。」
「それにしても、これからはぐっと警戒が厳しくなるだろうな」
モルトスが言いました。
「妖怪兵士の数は108匹・・・・以前は150匹もいたんだが、いつの間にか少なくなったようだ・・・」
前からこの地域にいたサキが教えてくれました。
「それよりも、あの塔に閉じ込められているお姫様の件はどうしましょう?」
「ピンク」が心配そうに言いました。
誰か姫の結婚相手になる、魔法使い以外の人間が、あの塔の部屋の中でキスしないと、姫を人形から人間に戻すことはできないのです。
「それにしても可愛らしいお人形さんだったなあ・・・・」
ノブは独り言のように言いました。
「魔法の木」の広場から「ザウラブダグ討伐隊」の隊長として出発してから早5年の歳月が流れていました。
モーゼのところから、ジンギスカンのところに移り、それから義経を追って日本へ・・・・そして「長靴を履いた猫」のニタリを見つけて白雪姫のスノーホワイト城にも・・・・
今、ようやく「北極」にあるという「ザウラブダグ城」の到着したのです。
この5年の間に、ノブもたくましく成長していました。
「お姫様と結婚するなら、ノブなんかお似合いだろうな」
モルトスにそういわれると、純情なノブはミルミル顔を真っ赤にしました。
「だって僕は魔法使いなんだよ・・・それも伝説の魔法使いって言われるくらいの」
「それじゃあ、誰か勇敢な男性をここへお姫様のお婿さん候補者としてつれてこなきゃなりませんね」
「誰がいいのか・・・・みんなで考えよう」
それからしばらくの間・・・・みんなは喧々諤々・・・お婿さんの候補選びに躍起となりましたが・・・なかなかふさわしい人はありませんでした。
「カラバ公爵は?」
「彼はまだ10歳を少し出たくらいだよ・・・それに白雪姫様のお子様とそのうち結婚しそうだと思うな」
「じゃあ、義経は?」
「あの人は静御前という恋人がいるさ」
「同じ国の人で、桃太郎って言う人がいたけどなあ・・・彼は?」
「桃から生まれたんだぞ・・・・それって人間じゃないんじゃないか?」
「金太郎って言うのもいたなあ?」
「ああ、彼なら、気は優しくて力持ち・・っていうからいいかも・・・・」
「でもあいつは、人の上に立つような人じゃないぞ・・・・だってお姫様のお婿さんということは将来王様になるってことだろ?」
その話し合いは3時間ほど続きました。
「僕はホッキョクグマが心配だからお城に戻ろうと思うんだけど・・・」
「緑」が言うと、「ピンク」はせっかく記憶が戻ったのだから、少し休んでほしいといいました。
「ホッキョクグマは僕が見に行くよ」
サキが言ってくれたので、ノブは近くの魔法広場に行き、太陽の魔法使いと相談してこようと言います。
「北極に近い魔法広場だと・・・・スウェーデンかな?」
「いやいや、マチュピチュへのトンネルを抜けて、ブラジルアマゾンの広場へ行ったほうがいい・・・・」
こうしてノブはしばらくのあいだ、ここをみんなに任せ、アマゾンへ旅立つことにしました。
「ホッキョクグマの件もあるし・・・・急いでくれよ」
モルトスが心配そうに言いました。
「大丈夫・・・太陽の魔法使いの、人形の魔法も解いてもらわなきゃならないし・・・もしかしたら、太陽の魔法使いに、ここに来てもらったほうがいいかも・・・・」
果たして、太陽の魔法使いと無事会うことができるのでしょうか?
つづく
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