厳選おやじギャグ



 だるま食堂に、見るからに貧相な身なりの男が駈けこんできた。
「定食あるかい?」
 食堂のおやじは、すまなそうに答えた。
「アルバイトならあるけど、ずっとというわけにはいかないよ」


 ● 整理整頓 ●

 なんて、だらしない娘なんだ。 
 勉強もしないが、部屋なんか散らかし放題で、掃除一つしようとしない。
 かあちゃんがついに怒った。その迫力にさすがの娘もたじたじだ。ところが、しばらく部屋でごそごそやっていた娘が、一時間もしないで外へ遊びにいこうとしている。かあちゃんが台所の方で大声を上げている。
「もう整理は終わったの?」
 事情を知らないおやじは厳しい表情で聞こえないふりをしていたが、なぜか顔が真っ赤になっていた。


 ● 抜いて ●

「結婚記念日おめでとう。まず、シャンペンで乾杯だ。抜いてくれないか」
「えっ、こんなところで?」
「…って、なんで、こんなところで服脱いでるんだよ」


 ● ミステリーサークル ●

「超常現象研究家のイワクラだ」
「あっ、こんにちは」
「この大学の構内にミステリーサークルがあると聞いて来たんだが」
「ここですけど」
「ここ?」
「ミステリー研究サークルです。今読書タイムなので、お話なら後にしてください」
「…い、いや、もういい。し、失礼した」


 ● 座頭市 ●

「そんなに強ええ男なのか」
「ああ、おらあ、あんな強ええ奴は見たことねえ」
「で、名前はなんていうんだ」
「仲間内じゃ、『座頭市』と名乗っているようだ」
「こりゃあ、夜を待って闇討ちするしかねえな」
「ああ、卑怯なようだがそれしかねえ」

 …彼らひとり残らず返り討ちにあった事は言うまでもない。


 ● 遍照金剛空海 ●

 真言宗の開祖、遍照金剛空海の名は、天地を覆うが如く雄大で荘厳である。だが、その名の由来を知っている人はあまりいない。
 かつて修行時代、托鉢もままならず今にも飢え死にしそうになってついに地に倒れた時のことである。
 ひとりのよれよれの百姓オヤジが珍しそうに近づいてきた。
 そして、差し出された手には、冷えた握り飯が…、
「食うかい?」


 ● 聖人と教祖 ●

 聖人と教祖が出会った。
 彼らはお互いの教義を認め合い、そしてお互いに「あなたこそ救世主である」と主張した。
「すばらしい。あなたこそ、仏陀だ」
「私は仏陀ではない。あなたが仏陀だ」
「いや、あなたこそ仏陀なのだ!」
 その敬虔な譲り合いは熱を帯び、あたかも討論の様相であった。
 突然、中に割り込んできたおまわりさんが二人を止めた。
「往来の真中で、ぶった、ぶたないと、大人げないぞ。どちらが先に手を出したのか知らないが、その続きは署で聞こう!」
「いや、この人が先に私のことを仏陀だといったのです」
「彼も、仏陀といった」
「何いっているんだ。君が先じゃないか。先に行ったほうが悪いだろう」
「ふん、あんたなんか、仏陀じゃない」
「お前なんか、仏陀じゃねえよ!」
 二人はいがみ合って、声を荒げた。
 間に立ったおまわりさんはついに叫んだ。
「結局、ぶったかぶってないのか、それをはっきりしろ!」


 ● おやじギャグ ●

「どうせ、俺ってばおやじギャルさ」
「それを言うなら、おやじギャグだろう」


 ● 大人の関係 ●

「お姉ちゃん。最近いつも夜どこへいってるの?お父さんも、あの男とはどういう関係だって、心配しているよ」
 姉はめんどうくさそうに答えた。
「おとなの関係よ。子供にはわからないわ」
 弟は、それを聞いて思った。
「おとなの缶ケリって、そんなに面白いんだろうかなあ」


 ● も、っていって ●

「あなた、男でしょ。なんで私が荷物持たなきゃなんないのよ。少しは持っていってよ」
「も」
「…あんた結局持たないつもり」

「公園へは、この道にずっと沿って行ってください」
「そ、そ、そ、そ、そ…」

「この廊下歩くときは、必ず黙って行ってください」
「だま!だまだまだまだまーっ」

 ● 戦車 ●

 ある日のうららかな昼下がりのことである。
 小さな町を横切る国道に、自衛隊の戦車群が陸続と行進し、町外れのガソリンスタンドに結集した。
 狭い空間に戦車がひしめき合って、一般車は近づくことも出来ない。スタンドのおやじは慌てふためいて、司令官らしき人物に詰め寄った。
「こんなところで、何をするつもりなんだ」
「演習だ」
「まさか。大変な事になるぞ。誰の許可があって、こんな無茶をするんだ!」
 司令官はあくまでも冷静に答えた。
「戦車OK、と聞いて来たんだが?」
 おやじはため息をついて、店の前につってあるボロ看板を指差した。そこに、曲がりくねった文字でこう書いてあったのである。

 『洗車OK』


 ● ねずみ小僧お縄になる ●

 市井に身を隠したネズミ小僧のあばら家に、ある夜、突然目明しが尋ねてきた。
「小判は?」
「な、ないっ!そんなもの、ここにあるはずないだろう!」
 出し抜けの尋問に冷静さを失ったネズミ小僧は、あわてて逃げようとして、あっけなくお縄になってしまった。
 ところが、大手柄の目明しの方こそ訳がわからない。
 だって、「こんばんは」って、挨拶しただけなんだから。


 ● お見合いの席で ●

「やらしくお願いします」
「そうかい、ウッヒヒヒ…」
「…娘さんは、『よろしく』って言っているんですけど…」
「し、失礼しました」


 ● 暇人 ●

 映画館で、たまたまひとりで来ている友達に出会った。
「おまえも暇人だなあ」
 僕は気軽に声をかけたのだが、最近、ますます太ってきた友達は「肥満児」と聞き違えて、大変落ち込んだそうだ。


 ● 寿司屋 ●

 おかしなすし屋だ。
 今朝の新聞に開店広告が入っていたから、ちらし寿司一人前を出前したのだが、店員は入ってくるなり、僕の手に紙を握らせて、
「チラシ一枚持ってきました」
 そう叫んで、脱兎のように走っていってしまった。


 ● 勘違い女刑事 その1 ●

 最近、警察の不祥事が続く。
 O県警の射撃訓練場で、教官が女性刑事にぼこぼこにされるという事件が起こった。
「射撃スタイルを指導するのに、私の身体を触ることは我慢できました。でも、その後、耳元で『パンティー売って』って囁いたのよ。こんなひどいセクハラ許せませんわ」
「ち、違うんだー。射撃スタイルが決まったから、『ぱーんって撃って』と言ったんだー。信じてくれ!」
「同情するけど、とりあえず続きは取調室で聞きますので…」


 ● 勘違い女刑事 その2 ●

 凄惨な殺人現場である。強姦殺人らしい。
 警部が、犯人の遺留品である下着をつまみあげて叫ぶように言った。
「まだ、そんなに遠くは行ってないはずだ。すぐに追いかけよ」
「……ひどいわ」
「き、君。何してんだ」
「だって、『すぐ臭い嗅げよ』っていうんだもん。それにしてもなんて、ひどい臭いなの」


 ● デパート ●

「二階は婦人売り場だから、三階の子供売り場で待ってて」
 かあちゃんの買い物に付き合っていたおやじは、ふと思った。
 …このデパートは人身売買やっとるのか。


 ● 誉め言葉 ●

「この野郎、ふてえ奴だ」
「ふふっ、ありがとう。それは誉め言葉だね」


 ● 自慢 ●

「お前のような息子をもって、父さんは鼻ガタガタだ」
 それもいうなら、鼻高々。


 ● お嫁さん ●

「ふつつかな嫁ですが…」
 といって、家にやってきた兄ちゃんのお嫁さんは、本当に二日間だけで実家に帰っていってしまった。


 ● 薬屋の娘 ●

 ご近所の薬屋の看板娘は美人で有名である。
 男の子は競って彼女を笑わせようとする。すまし顔の彼女が我慢できなくなって、ついに笑い出す声をみんな聞きたいのだ。
 「くすり」と。


 ● 嵐を呼ぶ男 ●

 石原裕次郎をイメージして。
 ♪ おいらはドラマー、やくざなドラマー。 
  ……嵐を呼ぶぜ。
   ジャブだ!フックだ!荒塩だ。 
 ファン「何で、荒塩なの?」
 裕次郎「俺は、荒塩飲む男だぜ!」

 ♪ おいらは、トラウマ-、やくざなトラウマー。


 ● 物干し竿 ●

 ファッション物干し竿が密かなブームである。
 団地のベランダに並べられた色とりどりの物干し竿が、主婦たちの個性を演出している。
 大手百貨店のショーケースに展示された物干し竿を眺める彼女たちの顔は、今日もとっても「物欲し顔」だ。


 ● ガードマン ●

 ガードマンとカットバンはよく似ている。
 でもカットバンをしたガードマンはいるが、ガードマンをしたカットバンはいない。


 ● ドコモ ●

 ドコモと子供はよく似ている。
 ドコモをする子供は時々見かけるが、子供をするドコモはどこもいない。


 ● 怒り ●

「俺は怒(いか)ったぞ」
「お、お前、イカだったのか」
「良く聞け、ひどく怒ったといってるんだ!」
「し、しかも、人食いイカだったのか!」


 ● 料理教室での関係 ●

 料理教室で、先生がひとりの生徒を指名した。
「わたしが、こうしている間に、あなたはおろしてちょうだい」
「大根おろしはどこでしょう?」
「そんなものどうでもいいわ。とにかくおろして」
「…?」
「おろしてっていったら、すぐおろして!」
 先生は興奮している。
 どうやら、その生徒の彼氏の母親だったらしい。


 ● 旅立ち ●

「息子が家を飛び出して、飛行機で外国へ行ってしまった」
「寂しいですね」
「年頃でしょう」
「どんな?」 
「非行期」


 ● ドイツ語 ●

「この野郎、どついたろうか!」と、「ドイツ語だろうか」という言葉はよく似ている。私はある種、大阪弁とドイツ弁の普遍的な共通性というものを、そこに感じてしまうのである。


 ● 同棲 ●

 おかまの同棲時代はすぐに破綻した。片方が病院へ入院したのだ。
 近所の人々は、口々に噂した。
「どうせ、痔だい」


 ● 出向 ●

「君は入社面接で、英語はペラペラだ、と自慢していたはずだろう。なぜ、海外出向に応じられないのだ」
「すんません。ペラペラの紙のように薄っぺらな語学力しかない、と言ったのです」


 ● 英語と関西語 ●

 アメリカ人に年齢を聞くのはタブーといわれているが、アメリカ人が関西人に年齢を聞くのもやめた方が良い。
「How old are you?」といったのが、
「歯、折るど、われ!」と、聞こえるからである。


 ● おやじのダジャレ 怒涛の会議編 ●

「新時代を担う人物の育成」は、「信じられない臭い、人糞の行く末」と似ている。

「勝てば官軍」は、「勝手な勘ぐり」に似ている。

「日々の行動革新」は、「ヒヒの子供隠し」に似ている。

「販売管理」は、「半端な缶蹴り」に似ている。

「販売活動の強化」は、「八杯カツどんの許可」に似ている。

「帳簿管理の推進」は、「チョンボ官吏の水死」に似ている。

「信頼確保の手段」は、「死んだイカ食うほうの酒乱」に似ている。

「情報ツールの駆使」は、「女王鶴の櫛」に似ている。


 ● 恐怖黒トカゲついて来た ● 

 今日、お袋と花月行ってきた。

 小学生の私は、母の手に引かれ家路を急いだ。さっきまで、母と一緒に花月劇場
の観劇をしてきたところである。
 夕闇迫る中、ふと気づくと、後ろをピタピタと雑巾を叩くような足音でついてく
るものがある。
 母の顔を見上げたが、ただ前を向いて急ぐばかりである。私は怖ごわ後ろを振り
返った。

 恐怖、黒トカゲついて来た。 


 ● ゲゲゲの鬼太郎 ● 

 妖怪たちの慰安旅行が企画されました。彼らを乗せた妖怪バスが走っています。
 ゲゲゲの鬼太郎はバスに慣れていないせいか、すぐに気分が悪くなりました。思
わず、嘔吐。
 温厚な子泣きじじいも、背中に吐かれたのではたまりません。つい、振り向いて、
「おまえ、ゲ、ゲ、ゲロしたろう?」


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