型をこよなく重んじるも、嵌ることをめっぽう嫌がる作曲家の日記

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2020.06.08
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カテゴリ: 今だから
​​​​​​​​​​​ 人が何をするために、どんな使命を持って生かされているのか、
などということを最近よく感じます。
​それは良いことも悪いこともあり、
そのとおりにしていなければ軌道修正されることもあります。
その因縁は長い時を​経てわかります。

​​​ そう考えると、最近の新型コロナウイルスの一件は、
今はこれまでのことを振り返って感謝し反省し、

世の中が浄化されリセットされる機会を与えられたのかもしれません。
​今、何が良くて何が確かでという社会がなく、人の脆さを見た気がします。

話を音楽に戻します。
パリに留学していた四半世紀前のこと、
以前に書いたかもしれませんが、アルジェリア人の女学生の友人がいました。
アルジェリアは当時治安が悪く、そのためにパリに来ていたと聞きました。
彼女はとても賢くエリートで、しかもチャーミングで気が利く優しい人、
北アフリカ出身でイスラム教、フランス語を話す人としてとても新鮮でした。
また、アルジェリア人のイメージがものすごくアップしたことを憶えています。
外国では少し嫌なことに会うと、その人の国ごと悪く思ったりするものですが、
もちろんそれも行き過ぎた見方だと思います。
​​​
ある時、パリでもっとも流行っているアルジェリア人シンガーだということで、
ぜひ聴いて欲しいと1枚のポップスのCDをプレゼントしてくれたのです。
足繁く現代曲やクラシックのコンサートに通っていましたが、
何とこれが留学中もっとも刺激的な音楽のひとつになりました。
感覚的にも日本人に近いと感じていた彼女の中の文化はまったく違うのだと、
当時カルチャーショックに匹敵するくらい聴いたことのなかったものでした。

その後、この種の音楽は日本でも北アフリカ系のレストランのBGM、
J-POPでこの曲を参考にしたと感じられる曲が出たりしましたが、
当時はさまざまなアジア音楽までは聴くことができても、
イスラム圏の音楽が日本にはあまりに入って来ていませんでした。
世界から見れば、日本で見ていることは偏ったうえごく一部なのです。

YouTubeが素晴らしいのはかつては聴けなかった

アルジェリア人のステージ名Idirの音楽も聴くことができます。
Idir - Les Chasseurs de lumières(「灯の狩人たち」のような意味)


このような独特の民族性を感じさせる音楽は、
理論で考えた音楽よりも文字どおり理屈抜きでインパクトをもたらします。
土俗性や民族性は音楽の素材としては無敵なのかもしれません。

師から作曲した音楽には必ず国籍が必要だと教えられたことがあります。
海外から日本や日本人を見た場合はまだまだ特異だと感じるでしょう。
それはアルジェリア人の彼女に見たのと同様に文化に触れた時です。
人は人に対してまず最初に自分との違いをチェックするのかもしれません。

師が音楽の国籍のことを言った際に、
師の師であるアンドレ・ジョリヴェがそう言ったと言うのですが、
今振り返ると、ジョリヴェの音楽はフランス人であるにも関わらず、
アジアをはじめ北アフリカなどさまざまな音楽的要素を用います。
その基は独特の民族性を表す旋法を駆使したことが挙げられ、
民族性を取り払った旋法を操ったオリヴィエ・メシアンと対照的に、
同時代にまったく独自の世界をつくろうとした二人の作曲家です。

実を言えば、ジョリヴェのことは学生時代あまり好きではありませんでした。
ピアノ協奏曲の印象が強くともかくごちゃごちゃしていると思い、
もっと洗練された響きを憧れていました。
師がジョリヴェの直弟子だったことから、
研究テーマをジョリヴェにしている院生の
論文指導がよく担当になり、
文献がないために楽曲分析を繰り返しているうちに理解を深めました。
このピアノ協奏曲は傑作だと思うように変わりました。



ジョリヴェは演奏される以前に比べて機会が増えていると思うのですが、
演奏者はほとんど内容を理解しておらず難しい分野と言えます。

このことは、演奏はされるがあまり好んで聴かれてもいないという、
最近特有の現象を生んでいると思います。


話をIdir ことアミッド・シェリエ に戻します。
Idirは約1ヶ月前の5月2日に70歳でパリの病院で亡くなりました。
死因は肺線維症とのことですが、
この病気は新型コロナウイルスに感染した場合に発症します。
新型コロナウイルスに罹患したかどうかは定かではありません。
彼のことを思い出したことと彼の死が偶然重なりましたが、
住みやすい社会、差別のない民族を尊重する社会、
真に芸術的な音楽の台頭を期待します。





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最終更新日  2020.06.08 05:04:15
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